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酵素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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プリンヌクレオシドフォスフォリラーゼ(模式図)
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プリンヌクレオシドフォスフォリラーゼ(模式図)

酵素(こうそ)とは生体内の化学反応(代謝)を進行させる生体触媒のこと。タンパク質からなるものが多く、その活性を発現するために低分子の補酵素を必要とするものものある。酵素が化学構造を認識して作用する化学物質を基質と呼ぶ。

目次

[編集] 酵素による反応

一般に化学反応を進行させるには、以下の方法がある。

  • 温度の上昇
  • 圧力変化
  • 塩基触媒(pH の変化)
  • 基質の濃度をあげる
  • 触媒を反応系に入れる
  • 反応に適した状態(水相、気相の選択)を整える

など。ここで論じる酵素は、

  • 反応の前後に変化することがない
  • 化学反応の活性化エネルギーを減少させ、反応を進行させる触媒としての機能を持っている。酵素は金属のような無機触媒よりも以下に示すような優れた性質をいくつか持っている。すなわち、
    • 常温、常圧、中性付近の pH で化学反応を進行させる
    • 基質特異性がある(よく似た基質も見分けて反応を起こす)
    • 基本的に反応の両方向を担う
    • モルあたりの反応の効率が、無機触媒よりも良い
    • 活性部位を持つ

など。特に常温、常圧、pH 7.0 前後で化学反応の活性を有すると言うことは生物体内における化学反応の進行にとって重要である。また、複雑な代謝系の制御も全て酵素が担っているが、この点は酵素の基質特異性による。

一方で、純粋な化学反応の触媒としてみた場合、酵素はいくつかの点で無機触媒に劣る面もある。

  • 高温を与えると、熱変性する
  • 極端な高 pH、低 pH によって変性する
  • 長期間使用し続けると、常温であっても立体構造を維持できなくなる
  • 基質特異性があるということは、逆に言えば化学反応の適用範囲が狭いということである

など。白金などは気体反応などの優れた触媒として用いられているが、酵素は基質特異的にしか反応を起こせず、反応の汎用性が期待できない。また、工業利用を行なう場合では、特に酵素がタンパク質であることが欠点となり、長期間の使用に耐えるとはいえない。ただし、好熱菌、好酸性菌、好アルカリ菌などの酵素(イクストリーモザイム)は極端な温度や pH に耐えうるとされており、こうした極限環境微生物の応用から酵素の工業利用が現実的になり始めている。

[編集] 酵素反応と外的因子

酵素の反応は、常温、常圧、pH 中性付近で働くが、一般に化学反応はこうした外的因子が極端(温度を上昇させるか、pH を変化させる)であればあるほど進行する。例えば、水素酸素に分かれる反応は触媒無しの場合、温度を 3,500 ℃ 以上に上昇させると進行する。しかしながら水の電気分解などは室温程度の温度で進行する。

酵素を用いる系でも低温よりは高温のほうが進行しやすいが、ある程度の高温になるとタンパク質の立体構造を保つことが難しくなり、活性が保てなくなる。こうした熱によって活性を失うことを「熱失活」という。したがって、ある温度を境にして反応速度は限りなく0に近づいていくが、こうした温度のことを「酵素の至適温度」という。

pH についても同様のことが言える。しかしながら酸化還元反応を担う酵素では、反応の進行方向によって「酵素の至適 pH」が異なる場合がある。例えば、以下の反応

リンゴ酸 + NAD+オキサロ酢酸 + NADH

は高 pH、すなわちアルカリ側でさかんに進行する。一方、逆反応

オキサロ酢酸 + NADH → リンゴ酸 + NAD+

は、低 pH、すなわち酸性側で進行する。

[編集] 酵素反応と基質濃度

基質濃度の上昇は化学反応をより進行させるが、酵素を用いた反応系では酵素が有限の場合、酵素量によって反応速度が決定される。すなわち、基質濃度を無限に上昇させても関係なく、反応速度はあくまで酵素量によって決定されると言うことである。これは酵素と基質が複合体を作って反応を進行させるという「酵素基質複合体モデル」によるものである。このモデルによると、酵素を用いた系では以下の式で反応が進行する。

酵素 (E) + 基質 (S) \overrightarrow\leftarrow ES(酵素基質複合体) → E + 生産物 (P)

酵素と基質の反応による酵素基質複合体の生成は可逆的だが、生産物以降は系を変えない限りは不可逆的である。ここで、各反応について以下の速度定数 (k) を当てはめる。

k1: E+S → ES
k−1: ES → E+S
k2: ES → E+P

基質が十分量存在し、これらの物質の各濃度の釣り合いが取れる程度の反応が進行した状態を定常状態という。定常状態では酵素の能力が完全に発揮され、反応速度は最大速度 (Vmax) となる。定常状態では以下の式が成り立つ。

k1[E][S] = k−1[ES] + k2[ES] ([ ]は各物質の濃度を現す)

ここで、以下の式が成立する。

  • K = (k−1 + k2)/k1

この定常状態の時の平衡定数 KKm と表記され「ミカエリス・メンテン定数」と呼ばれる。ミカエリス・メンテン定数とは、酵素と基質の親和性を表すパラメータであり、実測値としては酵素の最大速度の2分の1の反応速度 (Vmax/2) を有する基質濃度となる。Km 値と基質親和性の関係は以下の通りである。

  • Km値が低いと酵素と基質の親和性は高い(酵素と基質は相性が良い)
  • Km値が高いと酵素と基質の親和性は低い(酵素と基質は相性が悪い)

Km 値の高低が親和性と逆の概念なため理解が困難かもしれないが、Km 値を実際に測定すると理解できる。

元来ミカエリスとメンテンの理論では E + S と ES との間の平衡を仮定しており Km はその意味での平衡定数に当たる。しかしこの仮定は k2k−1 よりはるかに小さい特別な場合にしか当てはまらないので、のちにブリッグスとホールデンがより一般的な定常条件を仮定し、その場合でも同様の式が成り立つことを示した。詳しくはミカエリス・メンテン式を参照。

また、Vmax と関連した分子活性 (kcat) という値が存在する。これはタンパク質1分子あたり、1秒間に何個の基質を触媒するか、と言うパラメータである。式は以下のように表される。

kcat = 基質分子濃度 (M)/酵素分子濃度 (M) × 秒

ここで右辺は分子と分母に濃度の単位を持つのでこれを約すと、kcat は s−1 という単位で現される。例を挙げれば、酵素1分子あたり1秒間に100個の基質分子を触媒すれば 100 s−1 となる。極めて分子活性の高い酵素にカルボニックアンハイドラーゼという酵素があるが、この酵素は1秒当たり百万個の二酸化炭素炭酸イオンに変化させる (kcat = 106 s−1)。

[編集] 酵素の生物体内での所在

酵素は生物体内における反応の全てを起こしているといっても過言ではない。そのため、代謝反応の関与する生物体内であれば普遍的に存在するが、大まかに以下の場所に分けられる。

  • 細胞質(細胞内)
  • 生体膜(埋没型、付着型、貫通型など)
  • 細胞外

真核生物の場合は、各細胞内小器官ごとに所在の種類が異なってくるが、生体膜を中心にその外か、中か、生体膜内か、という分類が一番易しい。

[編集] 可溶型酵素

細胞質に存在している酵素は得てして水にも良く溶け、「可溶性酵素」と呼ばれることが多い。細胞質での代謝にはこの可溶性酵素が多く関わっており、得てして球形である。酵素の外部は親水性アミノ酸、内部には疎水性アミノ酸が集まって、球形の立体構造を取っている。

[編集] 細胞外酵素

細胞外の酵素は、細胞外に存在する物質を取り込みやすいように改変したりするために分泌される。また、生物に対して何らかの刺激(熱、pH、圧力などの変化)を与えると、その影響で多量に細胞外酵素を放出したりする現象が見られる。タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)などがこの類に多く、可溶性酵素を同じく球形をしている場合が多い。また、細胞外の極めて厳しい環境に耐えるために得てして頑強な酵素が多く、構造生物学上最初に結晶化され立体構造が決定されていった酵素は細胞外酵素であることが多い。

[編集] 生体膜酵素

生体膜に存在する酵素には、エネルギー保存や物質輸送に関与するものも多く、生体膜の機能を担う重要な酵素群(ATPアーゼATP合成酵素呼吸鎖複合体バクテリオロドプシンなど)が多い。

の3種類に大分することができる。付着型のタンパク質は表面の一部が疎水性タンパク質となり、疎水性の脂質や脂質に付着しているシトクロムなどに結合している。埋没型は、タンパク質のほぼ全体が疎水性タンパク質に覆われており、膜脂質に極めて親和性が高い。貫通型は物質輸送に関わる場合が多い。膜を貫通して小孔を作っている部分はαヘリックスβシートからなることが多い。あるいは、球形サブユニットが膜に円のように配置され、極めて大きな孔を生体膜に空けていることもある(核膜孔など)。

[編集] 構造

酵素はアミノ酸配列によって特定の立体構造を取っており、可溶性の酵素であれば得てして球形をしている。しかしながら、サブユニット同士が結合して活性型となる酵素も存在し、そうした場合には球形のサブユニットが複数個結合した形を取ることもある。

サブユニットの構成が、全く同じタンパク質からなるものを「ホモ多量体」、異なるサブユニットからなるものを「ヘテロ多量体」という。また、サブユニット数に応じて、二量体、四量体など数字を頭に付ける。現在は二量体のことをダイマー (dimer)、四量体のことをテトラマー (tetramer) と英語で呼称することが一般的である。

こうしたサブユニット構成をとる酵素は多々あるが、例を挙げればクエン酸回路のリンゴ酸デヒドロゲナーゼは分子量およそ 35,000 のホモ二量体(ホモダイマー)であり、全体の分子量は 70,000 となる。あるいは硫酸還元菌の H2:シトクロムcオキシドレダクターゼは分子量約 60,000 の大サブユニットおよび分子量約 30,000の 小サブユニットから構成される、ヘテロ二量体(ヘテロダイマー)である。

酵素は、親水基に覆われている表面から亀裂が入るかのように、内部まで裂目が入っていることが多い。反応をおこす部位はこうした亀裂の内部に存在し、その亀裂に基質がトラップされることによって反応が起きる。こうした、反応に中心的な役割を果たす部位を「活性中心」と呼ぶ。また、活性中心以外にも、補助的な役割(補酵素など補因子)を担う基質分子を結合させる部位も存在する。こうした活性中心や補因子結合部位にはよく似た構造の分子が入ることとなるが、こうした分子は得てして反応が起きず、阻害剤として働く場合が多い。

[編集] 補因子

酵素の立体構造はタンパク質が形作っているが、その反応に補因子(共同因子)というタンパク質成分以外の分子を要求することが多い。それらは以下の分子に分けられる。

配合団は酵素にかなりしっかりと結合した共同因子であり、この因子を外すには立体構造を解くなどの操作が必要である。生体内でもタンパク質からはなかなか離れず、遊離しない。

補酵素は逆に単独で存在し、反応が起きるときのみ酵素と複合体を作る。生体内を常に遊離しており、所在は多様である場合が多い。生体内での電子伝達を担うことが多い。

金属は、極めて固く結合しているものもあれば、透析などで取れてしまう場合もある。配合団の中に金属が配位されている事もある(ヘムには鉄、クロロフィルにはマグネシウム)。タンパク質内での電子伝達や活性中心、核酸への結合(ジンクフィンガー)といった役割を担う。

[編集] 酵素触媒機構モデル

上に酵素の触媒としての特性を挙げたが、無機触媒や塩基触媒などと比べても非常に優れた特性を持つといえる。活性化エネルギーをいかにして下げるのか、基質特性はなぜ発揮されるのか、そうした酵素の基本的な特性について統一的な解答が得られたとはいえないが、今日では構造生物学の発展や組み換えタンパク質作成による変異導入などのテクニックを用いて、その片鱗が見えてきた。

[編集] 鍵と鍵穴説

1894年ドイツエミール・フィッシャーによって酵素の基質特異性を説明する「鍵と鍵穴説」が提唱された。これは基質の形状と酵素のある部分の形状が鍵と鍵穴の関係にあり、形の似ていない物質は触媒されないと言うことを概念的に現したものであり、現在でも十分に通用する酵素の反応素過程のモデルである。しかしながらフィッシャーはこのモデルについてなんら科学的な実証を行なわなかった。

[編集] 基質の結合

酵素には活性中心という触媒反応に中心的な役割を果たす部分が存在するが、その近傍に基質を結合して触媒のために安定化させる「基質結合部位」を持っている。活性中心や基質結合部位にはアミノ酸の側鎖が適当に配置されている。乳酸デヒドロゲナーゼではN末端から数えて250番目のリシンが NAD+ の結合に関係している。また、セリンプロテアーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素の一群は基質の結合部位にセリンが存在する。

また基質結合部位に基質が結合するにあたっては、基質は誘導的に酵素に結合すると考えられている。つまり酵素と基質が結合した状態が基質にとってはエントロピー的に減少するということである。この考え方を「エントロピー・トラップ」という。このエントロピー・トラップにより基質は誘導的に基質結合部位に結合していく。結果、活性中心付近における基質の濃度が上昇すると考えられている。基質濃度を上昇させることも化学反応を起こすための1つの条件である。酵素が低濃度基質条件下でも効率よく触媒するシステムにはこのエントロピー・トラップが関係していると考えられている。

[編集] 誘導適合

基質の結合した酵素は、それの結合していない酵素よりもエントロピーが減少していると考えられており、事実、基質を結合させた酵素はあらゆるストレス(熱や pH の変化など)に対して安定である。これは酵素のコンフォメーション変化が起きていると考えられており、基質が結合すると触媒反応に適した状態の形状になると考えられている。酵素の立体構造変化に従い、基質の立体構造も変化し遷移状態へと向かう。反応の遷移状態に向かう過程がエントロピーの減少とともに行なわれることによって活性化エネルギーを低下させていると考えられている。これらの誘導的な化学反応を生じる考え方を「誘導適合」という。

[編集] 酵素の内の酸塩基触媒

化学反応を起こさせるには酸塩基触媒、いわゆる pH が極端な状態に基質を置くのが有効な場合があり、酵素内でも同様の変化が起きていると考えられている。加水分解や脱水素反応は特にこのプロセスが重要であり、キモトリプシンなどでは以下のプロトンの伝達のモデルが考えられている。

  1. His57プロトンを負に荷電した Asp102 に譲渡する
  2. His57 が塩基となり、活性中心の Ser195 からプロトンを奪う
  3. Ser195 が活性化されて(負に荷電して)基質を攻撃する
  4. His57 がプロトンを基質に譲渡する
  5. Asp102 から His57 がプロトンを奪い 1. の状態に戻る

ここで His などはタンパク質を構成するアミノ酸残基の3文字略号を示し、右肩の数字は N 末端からの番号を表す。酵素の中で、酸塩基触媒として最も作用するのはヒスチジンである。ヒスチジンは等電点が pH 6 であり、生理的な条件に極めて近い。ヒスチジンはプロテアーゼ以外にも脱水素酵素の活性中心を担当している場合が多い。

以上、4項目の酵素反応過程について述べてきたが、これらの酵素に対する寄与は酵素ごとに異なっていると考えられている。これらの共同的な働きが酵素の基質特異性および活性化エネルギーの低下を起こしていると考えられている。この酵素の反応素過程を理解することは、

  • 酵素基質特異性の人為的変化
  • 触媒活性の上昇
  • 異なる環境における能力の向上(高低温、高低 pH、高低圧など)
  • 人工酵素の開発

など様々な酵素の実用的な技術に寄与すると考えられているが、その端緒についているとは考えがたい。事実、人間の設計した酵素では基質特性は低く、触媒活性も思うように上がらない。これらは酵素の反応素過程への理解が深まっていないことによると考えられている。今後、コンピュータや構造生物学の発展とともに人間の求める「スーパー酵素の開発」の挑戦は進行して行くと考えられている。一方で完全なる人工酵素では自然に追いつくのは不可能であり、自然に学ぶと言う考え方から、生物由来の酵素に人為的改変を加えていく方法も存在する。現在ではこうしたシミュレーションおよびネイティブの両方向から攻めていく傾向にある。

[編集] 酵素反応の調節機構

極めて精度良く調節された代謝系では、必ず個々の反応の調節が行なわれている。酵素の反応速度を上げるには至適温度に近づける、pH を至適に設定する、基質濃度をあげるなど様々な方法が考えられる。しかし生体内においては、他の酵素にも影響を与えない方法で個々の酵素の調節が行なわれる。その方法とは

の2つである。真核生物においては遺伝子発現量変化については転写で調節していること以外には具体的なことはわかっていない。ここでは、原核生物、真核生物問わず酵素そのものの活性の変化であるアロステリック効果について解説する。

[編集] アロステリック効果

アロステリック酵素は活性中心近傍の基質結合部位とは異なる場所に低分子物質を結合させ、その活性を変化させる。そうしたアロステリック効果を誘導する低分子物質を「アロステリックイフェクター」と呼ぶ。アスパラギン酸からリジンを合成する反応系では、最終産物のリジンがアロステリックイフェクターとなる。

アスパラギン酸→→→β-アスパルチルリン酸→→→→・・・→→リジン
↑
アスパラギン酸キナーゼ

リジンが少量であるときは、アスパラギン酸キナーゼはさかんに触媒作用を発揮するが、リジン過剰になるとアスパラギン酸キナーゼのリジン結合部位にリシンが結合し、アスパラギン酸キナーゼの活性が低下する。

アスパラギン酸→→→β-アスパルチルリン酸→→→→・・・→→リジン
× ↓
↑ ↓
アスパラギン酸キナーゼ-リジン複合体←---------

このほかに、アロステリックイフェクターが正の方向に作用するケースもあるが、反応最終生産物の関与するアロステリック効果は得てして活性を低下させる。このように、アロステリック効果は、生体内におけるフィードバック制御の一例である。詳しくはアロステリック効果を参照。

[編集] 酵素の実生活への応用

  • 食品

一般に流通している加工食品の多くは製造工程中に酵素反応を利用している。味噌醤油などの発酵食品はもちろん、でん粉を原料とした各種糖類の製造に用いられている。また果汁の清澄化や苦味除去、肉の軟化といった品質改良用途やリゾチームによる日持ち向上用途などが挙げられる。

これらは食品添加物として扱われ、以下に挙げるような酵素が使われている。ほとんどの場合、製造工程中に失活または除去されるので、加工助剤として原材料表示は省略されていることが多い。

[編集] 酵素の分類法

酵素は触媒する反応によって分類されており、異なる生物でも反応が同じであれば同じ分類がなされる。酵素の分類はEC番号という数字によってなされている。EC番号は "EC X.X.X.X" (Xは数字)という表記がなされるが、左から右にかけて分類が細かくなっていく。一番左の数字と酵素の分類については以下の通りである。

  • EC 1.X.X.X — オキシドレダクターゼ酸化還元酵素)、酸化還元反応を触媒
  • EC 2.X.X.X — トランスフェラーゼ(転移酵素)、原子団官能基など)をある分子から別の分子へ転移する
  • EC 3.X.X.X — ヒドロラーゼ(加水分解酵素)、加水分解反応を触媒
  • EC 4.X.X.X — リアーゼ(脱離酵素)、原子団を二重結合あるいは、結合の解離の触媒
  • EC 5.X.X.X — イソメラーゼ(異性化酵素)、分子の異性体を作る
  • EC 6.X.X.X — リガーゼ(合成酵素)、ATPの加水分解エネルギーを利用して、2つの分子を結合させる

酵素の全てについてこの番号が割り振られており、現在約 3,000 種類ほどの反応が見つかっている。またある活性を担う酵素が他の活性を有することも多く、ATPアーゼなどはATP加水分解反応のほかにタンパク質の加水分解反応を持っている。

[編集] 酵素の命名法

酵素の名前は国際生化学連合の酵素委員会によって命名され同時にEC番号も与えられる。酵素の名称には「常用名」と「系統名」が与えられる。常用名と系統名の違いについて例をあげながら説明する。

これらの酵素は全く同じ酵素であり、EC番号は EC 1.1.1.1 である。系統名は一般的に

  • 基質分子の名称
  • 共同的な反応であれば2つめの基質分子の名称
  • 反応の名称

この中で、反応の名称は系統名の場合は規制されており、原則として

  • 分類主群(EC 1–6 の名称):オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ
  • エピ化反応:エピメラーゼ
  • 分子内転移:ムターゼ
  • ラセミ化反応:ラセマーゼ

のいずれかが反応の名称となる。

また常用名は一般的に

  • 基質分子の名称 — 補酵素は除いて基質のみ
  • 詳細な反応の名称 — 基質分子に与えられる反応

ただし、基質が2種類存在するトランスケトラーゼなどでは、2つめの基質の名称を入れる場合が多い。反応の名称については、系統名に使用されるものよりも実際の反応に近い名称が与えられる。例えば酸化還元酵素ではオキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼなど。ただし、これらの規則に従わない特殊な酵素は多く、DNAポリメラーゼなどはその一つである。

1つのタンパク質中に2種類以上の活性を有する場合(可逆反応を触媒する酵素)は、必要に応じて文中では使い分ける。例えば呼吸鎖複合体IIのコハク酸デヒドロゲナーゼの場合は、

となる。補酵素は上記のように常用名には含まれない。

古くに発見され研究された酵素については、そのままの名称が使用されている。

などは命名規則に従わない例外である。

[編集] 生命の起源と触媒作用

[編集] 酵素の歴史

酵素の発見は化学反応の触媒作用という概念を生み出した。生物学のみならず化学的にも重要な酵素の歴史は以下の通りである。

[編集] 19世紀

  • 1833年 フランスのアンセルム・ペイアンとジーン・フランソア・ペルソは麦芽の抽出液より、デンプンを分解して単糖グルコース)にする物質を分離した。彼らはこの物質を「ジアスターゼ」(現在、フランス語で「酵素」を意味する)と名づけた。
  • 1836年 ドイツのセオドア・シュワンは胃液が動物の肉を溶かす作用があることを発見し、胃液から原因物質を分離した。この物質は「ペプシン」と名づけられた。これは植物のみならず動物にも同様の活性が存在することを証明したものである。
  • 1857年 フランスのルイ・パスツールがアルコール発酵過程が微生物(当時は酵母の研究)活動に基づくものであると発表した。ただし、これは酵素という無生物が起こすものとはパスツールは証明しなかった。しかしながら、ドイツのユストゥス・フォン・リービッヒは微生物ではなく、細胞外の無生物因子(当時は「発酵素 (fermente)」という用語を用いた)が発酵に関与しているとして、この説を否定した。
  • 1873年 スウェーデンイェンス・ベルセリウスが「化学反応触媒作用によって進行する」と言う概念を提唱した(この概念は酵素の概念が認められたがゆえである)。
  • 1878年 ドイツのウィルヘルム・キューネが酵母(ギリシャ語で "zyme")の内部(ギリシャ語で "en")で発酵が起きることを受けて「酵素 (en-zyme)」という概念を提唱。
  • 1894年 ドイツのエミール・フィッシャーが酵素の基質特異性を証明するために、酵素と基質の「鍵と鍵穴説」を発表した。
  • 1897年 ドイツのエドゥアルト・ブフナーが、酵母抽出液からアルコール発酵が起きることを証明した。

[編集] 20世紀

酵素の研究のさきがけとなった酵素(ペプシン、トリプシンなど)は酵素の規定の命名法に従わず、慣習的に現在でも当時の名称が使用されている。

[編集] 代表的な酵素

[編集] 工業用酵素

[編集] 関連項目

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