ギャン
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ギャン | |
型式番号 | YMS-15(MS-15) |
所属 | ジオン公国軍 |
建造 | ツィマッド社 |
生産形態 | 試作機 |
頭頂高 | 19.9m |
本体重量 | 52.7t |
全備重量 | 68.6t |
ジェネレーター出力 | 1,360kw |
スラスター総推力 | 56,200kg |
センサー有効半径 | 4,400m |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
主な搭乗者 | マ・クベ |
武装 | 専用ビームサーベル 専用シールド ニードル・ミサイル ハイドボンブ |
ギャン(GYAN)は、アニメ『機動戦士ガンダム』を始めとするガンダムシリーズに登場する架空の兵器(モビルスーツ・略称はMS)。(型式番号:YMS-15)
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 機体解説
ジオン公国軍の試作型MSで、ゲルググと同時期に次期主力量産機の座を争う形で開発された機体。主武装として高出力のビームサーベルを携行し、シールドに内蔵されたニードルミサイルは弾幕を張る程度の射程距離しか有さないという白兵戦に特化した開発コンセプトを持つ。また、アクチュエーターの機能を増強させる「流体パルスアクセラレーター」が試験的に導入されており、その動きは当時にしては革新的にしなやかでなめらかだったであろう事は想像に難くない。そのため、白兵戦(近距離戦闘)においてはかなり高性能であったが、ビームライフルやビームナギナタを装備し汎用性の高いゲルググに対しその運用の難しさがネックとなり(空間戦闘能力の低さも指摘される)、次期主力機トライアウトに敗れ量産化や以降のバージョン展開はされなかった。そもそもこのような特殊なシールドが作られたのは、ツィマッド社がビームライフルの開発に失敗したからだといわれている。
なお、次期主力MSは既にゲルググに内定しており、次期主力機のコンペティション自体が形式的なものに過ぎなかったともいわれている(ゲルググが実際には軍主導による各メーカーの合作であることや、25機の先行量産機が採用が決定してから生産され、真の試作機はMS-06R-3とされていることから、コンペティションの時点で実機が存在しないにも係わらず採用が決定したと思われることなども、これを裏付けている)。
主力MSの座はゲルググに譲ったが、その白兵戦能力の高さが評価され、ゲルググとの長所を合わせたガルバルディαの開発に至っている。ロールアウトした試作機3機(1機とする説もある)の内1機はマ・クベ大佐が搭乗、戦闘参加するも撃破されたが、MS戦は素人同然のマ・クベがニュータイプとして覚醒しつつあったアムロ・レイのガンダム相手に善戦できたことから、ギャンの白兵戦能力の優秀さが伺える。ただし、マ・クベはこの戦闘の際に、ギャンが自分の為に作られたMSであると発言しており、マ・クベの搭乗したギャンは試作機からかなりカスタマイズされている可能性もある。また、ギャンの開発計画にマ・クベ自身が中心人物として関与していた可能性も否定出来ない。
[編集] 武装
ビームサーベル (ビーム剣、レーザー剣、レーザーソードなどとも呼ばれる)とミサイルシールドを専用武装とする。サーベルは貫通力を重視し、同時代の連邦製のものよりも高出力のビーム刃を形成できた(俗に収束率が低いため太いといわれることがあるが、誤りである)。シールドにはハイドボンブと呼ばれる機雷を25基(12基とする資料あり)、ニードルミサイルを60基(56基とする資料あり)内蔵している。
※ミサイルシールドのハイドボンブ射出口はプラモデル旧キットでは12箇所あるが、近年のHGUCおよびMGでは10箇所となっている。 なお、劇場版にはギャンは登場しないが、テキサスコロニー内にハイドボンブのみがジオン軍の浮遊機雷として登場する。
通常の携行武器を運用できたかは不明であるが、格闘戦に特化した設計のため射撃に関する性能は抑えられており(センサー有効半径はライバル機のゲルググはおろか、同社製の暫定主力機であるリック・ドムより狭い)、装備できたとしても射撃戦による戦果は期待できないと思われる。
[編集] 設定の変遷
型式番号はYMS-15であるが、テレビアニメ放映後の第1次ガンダムブーム時に付けられた設定上の型式番号は MS-X10 であった。また、MS-15 と表記されることも多い。(少なくとも現実世界では)試作機を意味するYが付けられたまま実戦参加する事はない為、これも誤りではないとする説がある。また、テレビアニメ企画時の名称はハクジであり、ギャンはゲルググの名前だった。
番組の視聴率低迷の原因が、「毎週違う敵ロボットが出ないからだ」と言うTV局の要請に応じた、マ・クベのために作られた機体として登場。ロボットアニメに頻出する、「大幹部専用のロボット」である(前述の設定については劇中でマ・クベ自身が語っているが、その台詞に対するフォローが近年の公式設定にはない)。その後、現在の設定に落ち着いたと思われたが、「機動戦士ガンダム公式Web」においてはマ・クベ用に開発されたとされており、定説を見ない。
ギャンが他のジオン軍MSと同様、流体内パルス・システムで駆動すると明言した資料がなかったため、ファンの間でフィールドモーター駆動であるという説が生まれ、小説や模型誌などでも引用されていた。これはある程度広く受け入れられていたが、プラモデルMGギャンの解説書により流体内パルス駆動であると設定された。
[編集] 備考
近年のホビージャパンや電撃ホビーマガジンなどの模型誌では、ゲルググと比べて非常に機体が細い事から、本機はフィールドモーター駆動の試験の為に開発されたのではないか、あるいは捕獲した連邦製MSを元に開発されたのではないか、白兵戦重視のコンセプトからもジオン版ガンダムとして作成されたのではないか、果てにはコア・ブロック・システムを搭載していたのではないか‥‥など、さまざまな架空の設定に基づいた作例が製作されている。また、本来の型式番号からMS-10ペズン・ドワッジとの関係も指摘されている。 名称の由来はギャン理論で知られる伝説のトレーダー、W.D.ギャンと思われる。
[編集] 劇中での活躍・登場作品
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』では、ホワイトベースがテキサスコロニーに寄港する第37話に登場。パイロットは、これまで指揮官として登場していたマ・クベ。しかし、ニュータイプとしての能力の片鱗を見せ始めていたアムロ・レイの乗るガンダムに撃破されている。
劇場版には登場しなかったが、劇場版を元にしていると思われる漫画『C.D.A. 若き彗星の肖像』(北爪宏幸著)に登場し、ア・バオア・クー脱出時に艦載砲によって撃破されている。
『ガンダムA』誌上にて開催された「ガンダム小説大賞」受賞作品『月光の夢 宇宙の魂』(著:宮本一毅)では、ギャンとゲルググの次期主力機コンペティションの様子が語られている。ここではギャンがフィールドモーター駆動とされているほか、ドラマを成立させるため一部設定に独自の解釈が見られる。
『MJ vol.118』に掲載された『F.M.S』には、オデッサ戦の2週間後、マ・クベ師団残存勢力からMS-15と技術陣を回収するというエピソードがある。
[編集] バリエーション
ジオン公国軍製
- YMS-15(MS-15) ギャン
- MS-15B ギャン量産型
- ツクダホビーのボードゲーム『ジークジオン』サプリメントセット第2弾『トワイライト オブ ジオン』に登場。ギャンの量産タイプで、ゲルググタイプのビームライフルを装備して遠距離戦闘も行えるようになった。しかし、ゲルググの量産に伴い10機程しか作られなかった。
- カリョーヴィン
- MS-17 ガルバルディ(ガルバルディα)
- ギャンの発展機。外見はゲルググだが、中身はほとんどギャンであるという。ジオン軍の次々期主力機として小惑星ペズンで開発されていた。
アクシズ製
- MS-15PLUS(MS-15S) ギャンEX
- MS-15K ギャン改
- ゲーム『SDガンダム エモーショナルジャム』が初出。その後『SDガンダム GGENERATION』シリーズに登場した。ゲルググにおけるMS-14J リゲルグに当たる機体。実は上記のギャンEXをゲーム用にリメイクしたものである。アクシズで開発された機体で、運動性が高く、全体的な性能は同時期に開発されていたバウを上回っていたが、汎用性が低かった為に量産化は見送られた。その後、騎士用MSとして開発が続けられ、R・ジャジャとなったとされる。
- AMX-104 R・ジャジャ
- アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場。ギャンの発展機で、騎士用MS。
オールズモビル(火星独立ジオン軍)製
- OMS-15RF RFギャン
- 漫画及びプラモデル『機動戦士ガンダムF90』に登場。ギャンのリメイク機。R・ジャジャの発展機であると思われる。名称はリファイン・ギャンの意。
ギャンは正式採用されなかった機体であるが、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズでは戦争の流れにおけるif(公式の歴史の流れとは違う流れ)が楽しめるよう作られたため、「ゲルググではなくギャンが正式採用されていたら」という設定で数々のバリエーションが作られている。
- MS-15S ギャン先行量産型
- 『ジオンの系譜』が初出。YMS-14(MS-14S) ゲルググ先行量産型に当たる機体。
- MS-15S ギャン先行量産型(シャア・アズナブル専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。YMS-14(MS-14S) ゲルググ先行量産型(シャア・アズナブル専用機)に当たる機体。
- MS-15S ギャン先行量産型(アナベル・ガトー専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。MS-14A(MS-14H) ゲルググ量産型(アナベル・ガトー専用機)に当たる機体。
- MS-15S ギャン先行量産型(ランバ・ラル専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。ランバ・ラルがもし生きていたら…と言う機体。
- MS-15S ギャン先行量産型(マ・クベ専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-07B グフ(マ・クベ専用機)をイメージした機体。
- MS-15S ギャン先行量産型(ロバート・ギリアム専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-06R-2 高機動型ザクII(ロバート・ギリアム専用機)をイメージした機体。
- MS-15A ギャン量産型
- 『ギレンの野望』が初出。MS-14A ゲルググ量産型に当たる機体。同作での機体色はゴールドであったが、続編の『ジオンの系譜』『ジオン独立戦争記』ではグリーンに変更されている。『SDガンダム GGENERATION』(初作)での型式番号はMS-15であった。
- MS-15B ギャン高機動型
- 『ジオンの系譜』が初出。MS-14B ゲルググ高機動型に当たる機体。上記のギャンEXのデザインを参考にしている。ノーマルなギャンに比べシャープなデザインになっている。
- MS-15B ギャン高機動型(ジョニー・ライデン専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。MS-14B ゲルググ高機動型(ジョニー・ライデン専用機)に当たる機体。
- MS-15B ギャン高機動型(シン・マツナガ専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。MS-06R-1A 高機動型ザクII(シン・マツナガ専用機)をイメージした機体。
- MS-15B ギャン高機動型(黒い三連星専用機)
- 『ジオンの系譜』が初出。黒い三連星がもし生きていたら…と言う機体。
- MS-15B ギャン高機動型(エリオット・レム専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-06R-2P 試製高機動型ザクIIをイメージした機体。
- MS-15B ギャン高機動型(ギャビー・ハザード専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-06R-2 高機動型ザクII(ギャビー・ハザード専用機)をイメージした機体。
- MS-15B ギャン高機動型(マサヤ・ナカガワ専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-06R-2 高機動型ザクII(マサヤ・ナカガワ専用機)をイメージした機体。
- MS-15C ギャンキャノン
- 『ジオンの系譜』が初出。MS-14C ゲルググキャノンに当たる機体。ゲルググのA/B/C型はバックパックを変更するだけで簡単に仕様変更できるが、ギャンのA/B/C型は外見が完全に異なってしまっている。肩近くに実弾式の大口径短砲身キャノン砲2門を持つため、見た目はギャン+ガンキャノンである。
- MS-15C ギャンキャノン(トーマス・クルツ専用機)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-14C ゲルググキャノン(トーマス・クルツ専用機)に当たる機体。
- MS-15F ギャンM(マリーネ)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-14F ゲルググM(マリーネ)に当たる機体。ギャンの海兵隊仕様。
- MS-15Fs ギャンM(マリーネ)指揮官用
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-14Fs ゲルググM(マリーネ)指揮官用に当たる機体。
- MS-15KG ギャンK(クリーガー)
- 『ジオン独立戦争記』が初出。MS-14JG ゲルググJ(イェーガー)に当たる機体。クリーガーはドイツ語で騎士の事。
- MS-15[EXAM] ギャン(EXAM搭載型)
- PCゲーム『ガンダムネットワークオペレーション』が初出。MS-08TX[EXAM] イフリート改をイメージした機体。ニムバス・シュターゼンがクルスト博士の逮捕に成功し、ギャンの量産が決定すると生産される。