ジオン公国
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ジオン公国(ジオンこうこく, Principality of Zeon)は、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズにて登場する架空の国家。『機動戦士ガンダム』では主人公アムロ・レイが所属することになる地球連邦政府に敵対する勢力として登場する。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 概要
地球周回軌道上で地球からは最も遠い月の裏側に位置するサイド3に本拠を置く、デギン・ソド・ザビを始めとするザビ家一党による独裁国家。ジオニズムを国是と称するが、ザビ派的解釈によるジオニズムは「人の革新」が単なる「選民」に堕してしまっている。形式的には最高指導者は公王のデギンで、ダルシア首相が政府の首班である。しかし、実質的には公王の子息のギレン・ザビが総帥として権力を掌握していた。一年戦争において地球連邦政府に宣戦を布告する。
「ジーク」という掛け声や、選民思想を持った指導者が国を率いることなどはナチス・ドイツをモデルとしているが、「解放」をうたう戦争の大義名分や戦争末期の悲惨な抵抗戦闘の描写、戦後の政府が連邦に協力したことなど、ジオン公国は大日本帝国とその後の日本の歩みそのものである。企画段階のメモでは「ジオン皇国」との表記も見られる。また、国号の「ジオン」のスペルは元々「ZION」であったが、読みが「シオン」となり、文字通りシオニストの国を意味してしまい不穏当なため、最近の書籍やプラモデルなどでは「Zeon」と綴られるようになった。
[編集] ジオン公国の歴史
[編集] 一年戦争開戦前
宇宙世紀0050年代、宇宙移民者(スペースノイド)たちの間に「自分たちは地球に住む者(アースノイド)たちより格が低い」という感覚が生まれはじめていた。
新たなフロンティア開拓の美名のもと、人々(=労働者)は宇宙で暮らしはじめたのであるが、“地球環境保全のため人類の生活圏を宇宙にシフトさせる”という理念は結果的に破られた。第1期移民が完了した時点で、移民はストップしてしまい、地球連邦の官僚や一部大企業経営者は、地球に居残り続けたのである。これは、先行して地球に別れを告げた移民者たち=スペースノイドにとって裏切り行為に他ならなかった。更に連邦政府は各コロニー・サイドを植民地扱いし、コロニー公社などの特殊法人を通じて、多くの搾取を行うようになった。
このような状況の中、地球を自然のままそっとしておくべきとする「地球聖地論(エレニズム)」と、宇宙生活で独特の視野を得た宇宙生活者の自治権確立をうたう「コントリズム」を融合した思想(後の「ジオニズム」)を唱えて、ジオン・ズム・ダイクンがサイド3にて政治活動を始める。やがてその運動はサイド3全てに広がり、宇宙世紀0058年に単独での自給自足が可能となった時点でジオン共和国が誕生と同時に国防軍(ジオン公国軍の前身)を設立させた。しかし、ジオン・ズム・ダイクンは連邦政府との自治権をめぐる問題は、武力による実力行使ではなく、あくまで対話で解決しようとしていたと言われる。
宇宙世紀0068年、ジオン・ズム・ダイクンが死去し、共和国は彼の側近であったデギン・ソド・ザビが引き継ぐことになった。デギンはそれまでのジオンのやり方を一変、武力闘争による独立を目指すべくジオン派を一掃し、ザビ家による独裁政治体制を敷き、自らは公王に納まった。革命運動の英雄ジオンを否定しているというマイナスイメージを避けるため、国号自体は変えずにジオン公国とした。デギンはジオン政権の対話路線から一転軍事的対決姿勢を強め、地球連邦政府に対する開戦準備を着々と進めていくこととなる(これらはかなり無理のある後付け設定である。ファーストガンダム導入部のナレーション「ジオン公国を名乗り」や、『機動戦士ガンダムIIIめぐりあい宇宙』でのシャアのセリフ「ジオンの名を使った」から考えれば、デギンによる「ジオン公国」建国以前には「ジオン」という国号は存在しなかったことになる)。
更に、デギンはジオンの正当な後継者であると周囲に印象付ける為に、彼を称え首都の名前を、ジオンのミドルネームから取ってズムシティーとした。
[編集] 一年戦争開戦 そして敗北
宇宙世紀0079年1月3日に地球連邦政府に対して、完全な独立を求めて宣戦布告。後に一年戦争と言われたこの戦いの初期、ジオン公国軍はザクIIなどのモビルスーツを中心とした戦力や「コロニー落とし」でモビルスーツを持たない連邦軍を圧倒し、宇宙においてはサイド1、サイド2、サイド4、サイド5を壊滅させ、地球においては億単位の死者をだす被害を及ぼした。核兵器の使用禁止などを盛り込んだ南極条約締結後、戦線は膠着するもすみやかに地球に侵攻、鉱物資源の確保等、長期化への備えをする。
しかし連邦軍もV作戦を発動して独自にモビルスーツを開発。同時に宇宙艦艇の再建等で戦力を増強した連邦軍に徐々に勢いを持ち返され、最終的にはジオン本土(サイド3)に対する最終防衛ラインであるソロモンとア・バオア・クーを陥落させられ、且つザビ家一統も全員(ドズルの娘ミネバ・ラオ・ザビ以外)死亡してしまう。ア・バオア・クー陥落後の宇宙世紀0080年1月1日、ジオン公国の議会によって共和国政府としての体制を整えられたジオン共和国は、地球連邦政府と終戦協定を結んだ。
[編集] 終戦後
ジオン共和国の投降勧告に従わなかったジオン公国軍残存勢力は地上においてはアフリカ、宇宙においては暗礁宙域やアクシズなどの小惑星群等へ撤退し、再起へ向けて地下勢力化していく。宇宙世紀0083年にはデラーズ・フリートが反乱を起こすが鎮圧されている。
一年戦争後からサイド3で存続していたジオン共和国は、『機動戦士Ζガンダム』の作中(グリプス戦役)においてはティターンズに協力させられていたが、『機動戦士ガンダムΖΖ』の作中(第一次ネオ・ジオン抗争)ではネオ・ジオン(アクシズ)に吸収されてしまう。そして、それまで形式的な自治を認められていたものの、宇宙世紀0093年の第二次ネオ・ジオン抗争を経て、0100年に自治権を放棄。正式に地球連邦政府の傘下となる。
[編集] 公国軍の編成
総帥ギレン・ザビが総司令官を務める。 ミノフスキー粒子によって有視界戦闘が重要になることから、多数のモビルスーツを搭載できる艦艇を中心とした部隊編成・戦略を行う。また担当分野に分けて主に3つの軍が存在する。
- 宇宙攻撃軍:ドズル・ザビが司令官を務める。公国軍の中では最大規模を誇る。主な拠点はソロモン。主な将校はランバ・ラルやコンスコンやシン・マツナガやアナベル・ガトー(初めのころにシャア・アズナブルも)。
- 突撃機動軍:キシリア・ザビが司令官を務める。宇宙では宇宙機動軍として呼ばれている。ニュータイプ研究など特殊な活動も行う。主な拠点はグラナダ、オデッサ。主な将校はマ・クベや黒い三連星やジョニー・ライデン(あとにシャア・アズナブルも)。
- 地球方面軍:突撃機動軍の一部。ガルマ・ザビが司令官を務めるが、その権限は実質上、北米地域等に限られている。
[編集] ジオン軍の派生集団
一年戦争終戦後も、ジオンの名を継ぐ反地球連邦勢力は多数登場している。
[編集] ジオン訛り
『機動戦士ガンダム』作中で「ジオン訛り」という単語が現れる。ホワイトベースに潜入したフラナガン・ブーンが、同時に潜入したキャリオカに言う台詞であり、「訛りがひどいため喋るな」と指摘された。ただ、劇中では訛りは聞き取れず、その内容の設定も特に存在していない。 しかし、この言葉遣いでジオン公国(もしくはサイド3)の出身と判明される顕著といわれている。
この設定は後に『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』においてバーニィが連邦軍基地に潜入した際にも用いられ、訛りと会話内容の間違いからジオン兵であることが判明してしまう。また、『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』においても、ガトーがジオン残党軍のユーコン級潜水艦に乗り込んだ時にジオン訛りを久々に聴いて懐かしむシーンがある。
『機動戦士ガンダム MS IGLOO』では、捕獲したザクに搭乗した連邦のフェデリコ・ツァリアーノ中佐の声にジオンの警備兵が「ひどい訛り」と指摘しているが、ジオン訛りを強調して喋っていたのか不自然な訛りだったのか、劇中では判別できない。
[編集] ジオン公国の企業
- ジオニック社
- 後にアナハイム・エレクトロニクス社に吸収合併される。
- ツィマッド社
- MIP社