宇都宮線
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宇都宮線(うつのみやせん)は東日本旅客鉄道(JR東日本)東北本線のうち、東京都台東区の上野駅から栃木県那須塩原市の黒磯駅間の愛称である。
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[編集] 概要
宇都宮線は上野駅(東京都台東区)をターミナルとし、首都東京と北関東(埼玉県北東部、茨城県古河周辺、栃木県小山・宇都宮・那須周辺)を縦貫する首都圏地域間輸送の動脈として、また各地域内沿線住民の生活路線として機能している(経由地の詳細は停車駅表の所在地欄を参照)。途中、湘南新宿ラインが分岐し、池袋・新宿・渋谷・横浜・鎌倉の周辺各地とも結ばれている。
東北各地・北海道地方への長距離列車(旅客・貨物)も運行されている。
「宇都宮線」と呼ばれる区間は、東北本線の直流電化区間と一致する。また、東京近郊区間内でもある。
埼玉県さいたま市以南で国道17号、さいたま市~埼玉県栗橋町間で埼玉県道3号さいたま栗橋線、栗橋町以北で国道4号の主要な各道路とが並走し、東京都内、埼玉県南部の一部区間を除き各道路と同じ自治体を経由している。特に栃木県内では国道4号と至近距離で並走する区間も存在する。
[編集] 愛称命名の経緯
宇都宮線の名称は、当線沿線自治体の一つである栃木県の県庁所在地・宇都宮市に由来する。
なお、宇都宮の名称は式内社名神大社に列せられた二荒山神社の別称とされ、その歴史は1600年余と謂われる。
1988年、本来の東北本線の機能が東北新幹線に移され、上野駅~黒磯駅区間が首都東京~埼玉県北東部~栃木県間の輸送に特化されつつある状況を鑑み、当時の渡辺文雄栃木県知事が同県の県庁所在地である宇都宮市のアピールも絡めて、上野駅~黒磯駅間の名称を「宇都宮線」とすることをJRに提案、沿線自治体である東京都・埼玉県・茨城県の各知事の了承のもと実現され、1990年3月10日から公式の愛称となった。
これに福島県は「東北蔑視に取れる」と撤回をJRに申し込み、地元マスコミも大々的に反対キャンペーンをしたが残念ながら取り下げられることは無かった。
[編集] 「宇都宮線」と「東北線」の呼称
経緯にもある通り、地元自治体が働きかけて「宇都宮線」の呼び名が決まったため、関東地方では「宇都宮線」の呼称が使用され、「東北線」(「東北本線」)の呼び名は黒磯以北に直通する列車に使用されることが多い。
関東地方のJRや私鉄では、日常的に「宇都宮線」の呼称を用いている。JR東日本の運行情報案内でも、この区間については「宇都宮線」(正式路線愛称名)を用いており、黒磯以北区間については「東北本線」(正式路線名)を用いている。駅構内の時刻表やのりば案内の一部で「宇都宮線(東北線)」と括弧書きで二重表示しているほか、東北地方(新潟県を含む)を走る新幹線の車内放送では「東北線」と案内することがある。また、市販されている雑誌型の時刻表では「東北本線(宇都宮線)」などと表記されている。なお、宇都宮線の呼称制定前の国鉄時代に登場した211系電車の正面方向幕は通常は「普通」を使用するが、稀に「東北線」を表示させることがある(写真参照)。一方、JR化後に登場したE231系電車の行先表示器は「宇都宮線」である(211系の場合でも湘南新宿ライン運用時の表示には「宇都宮線直通」で設定されていた)。
日常的なJR東日本(東京地域)利用者の間では、各鉄道事業者等が車内放送や駅構内案内等で「宇都宮線(あるいはJR宇都宮線)」を日常的、恒常的に用いるため、「宇都宮線」の呼称が定着している。
[編集] 沿革
現在でこそ宇都宮線区間を通過する優等列車は少なくなり、特に長距離列車は夜行寝台特急「北斗星」や「カシオペア」が残る程度であるが、元来当路線は東北本線の一部として東北地方各地~栃木県各地~首都を結ぶ広域都市間輸送機能を主体としており、最盛期では毎時2~3本の特急列車と急行列車が往来し、長編成の貨物列車も定期運行されていたが、1982年の東北新幹線開業にともなってその数(規模)を減らし、東北新幹線の上野・東京乗り入れや山形新幹線の開業に至っては、わずかに残っていた山形・秋田方面を結ぶ定期昼行特急「つばさ」などが廃止され、その後の1993年12月ダイヤ改正で廃止された「あいづ」を最後に黒磯以北へ直通する定期昼行特急は全て姿を消した。黒磯以南区間では近距離(上野~宇都宮・黒磯間)を結ぶ「新特急なすの」が存在したが、その後近距離新幹線(当時の「あおば」、現在の「なすの」)への格上げと在来線快速列車への格下げによって大幅に減便され、運行体系も新宿発着の通勤用特急「ホームタウンとちぎ」・「おはようとちぎ」(毎日上り2本、下り1本)に変更された。現在はこれらの定期特急に加え、2006年3月18日から運転開始した東武鉄道直通特急「きぬがわ」・「日光」・「スペーシアきぬがわ」(毎日4往復)が運行されるのみとなっている。
こうして広域輸送を目的とする東北本線の機能は完全に東北新幹線へと委ねられ、優等列車がなくなった運行枠には代わりに大規模需要が見込まれていた中距離電車(中電)の設定が可能となったため、当時東北本線黒磯以南の中電の主力であった115系が全国から集められ、上野駅~黒磯駅間の普通・快速列車が増発・長編成化され、結果的に上野駅~黒磯駅間の東北本線区間の機能はほぼ完全に首都圏内輸送に特化された。これを象徴するように、上野~黒磯間には全国的にも類を見ない115系普通車のみによる15両長編成・最大輸送力を持たせた普通列車が数多く往来するようになった。東海道線にも15両編成が存在しているが、こちらはグリーン車2両を挟んでおり、編成あたり輸送力は宇都宮線(高崎線・常磐線も同様)が上回っていた。宇都宮-黒磯間の運行本数はそれまでの1時間当たり1~2本から3本に増え、1時間当たり4~5本の運行がある宇都宮以南同様、時刻表を気にせず列車を利用できるように改善された。
かくして1990年、当区間の新たな役割(首都圏内輸送)を象徴すべく、公式に宇都宮線の愛称で呼ばれるようになった。
中距離輸送力増強の流れと並行して運行合理化が進み、複数行先列車(上野発黒磯・日光行きなど)と上野~日光線直通列車(165系急行「日光」の廃止など)の廃止、上野口出発ダイヤと宇都宮~黒磯間ダイヤのパターン化とそれに伴う烏山線宇都宮駅~宝積寺駅間の乗り入れ削減、池袋駅・新宿駅発着列車の新設と増発、池袋駅・新宿駅発着宇都宮線行き列車と同東海道線・横須賀線行き列車の相互乗り入れ化(湘南新宿ライン)などを経て、2004年10月16日に現在の運行形態(上野駅~宇都宮駅と宇都宮駅~黒磯駅の運転系統分離、湘南新宿ラインの増発・パターンダイヤ化、普通列車へのグリーン車連結、小金井における増・解結のパターン化など)に至っている。2006年7月8日のダイヤ改正では、15両編成普通列車の大増発および宇都宮までの運行区間延長(従前は小金井まで)が実施された他、上野~黒磯間を直通するE231系基本編成(グリーン車連結編成)の増発が実施された。
なお、運輸省(現国土交通省)が2000年に実施した都道府県間鉄道流動統計データによると、東京都から鉄道で栃木県に移動した年間旅客数は静岡県、大阪府、愛知県への旅客数に次いで多く307.5万人であった。これに神奈川県、埼玉県、千葉県からの年間旅客数を合わせた数字は481.8万人であり、茨城県の277.6万人や群馬県の287.5万人を遥かに上回る鉄道需要があることを示しており、宇都宮線は東京圏内あるいは栃木県内の一通勤路線・一生活路線という範囲を超え、東北新幹線とともに将に東京圏と栃木県間の鉄道旅客需要に応える大動脈であることが窺える。
東京圏と北関東各県間の鉄道旅客流動状況(2000年)は以下のとおり。
-
- 各都県間鉄道旅客流動状況(2000年)
出発地\目的地 | 栃木県 | 群馬県 | 茨城県 | 合計 | - |
埼玉県 | 642 | 471 | 187 | 1,300 | - |
東京都 | 3,075 | 1,869 | 1,903 | 6,847 | - |
神奈川県 | 765 | 243 | 468 | 1,476 | - |
千葉県 | 336 | 292 | 218 | 846 | - |
合計 | 4,818 | 2,875 | 2,776 | - | - |
出発地\目的地 | 埼玉県 | 東京都 | 神奈川県 | 千葉県 | 合計 |
栃木県 | 1,252 | 2,963 | 939 | 595 | 5,749 |
群馬県 | 935 | 2,027 | 415 | 485 | 3,862 |
茨城県 | 172 | 1,695 | 477 | 255 | 2,599 |
合計 | 2,359 | 6,685 | 1,831 | 1,335 | - |
- (単位:千人/年)
[編集] 将来の計画
東北新幹線の東京乗り入れに伴い秋葉原駅~東京駅間で東北本線の列車線が事実上分断した形になっていたが、このほど2011年度(当初2009年末としていたが遅れる見込み)までを目標に、秋葉原駅~東京駅間が再度線路で結ばれる事となり、東北本線系の列車と東海道本線系の列車とが相互乗り入れする見通しである事が報道されている(東北縦貫線計画)。
[編集] 沿線風景
上野駅は東北方面のターミナル駅として賑わったが、近年では東北新幹線のターミナルが東京駅となり、また宇都宮線・高崎線の始発終着列車の1/3が湘南新宿ラインに振り分けられるなど、利用客数が減少傾向にあるが、駅周辺には上野動物園や国立科学博物館、国立西洋美術館、東京文化会館などの大規模文化施設が集まり、休日になると家族連れで相変わらずの賑わいを見せている。
宇都宮線列車は上野駅を出て暫くの間、ポイント上を通過するなど徐行運転を続ける。低いホームと高いホームからの線路が同じ高さに集まり鶯谷駅、日暮里駅を通過する辺りからスピードを上げ、西日暮里駅を通過する付近で並走していた山手線・京浜東北線および東北新幹線と分かれ、山手貨物線を跨いで新幹線操車場の東側を進み尾久駅に停まる。尾久駅は1面2線の東京都区内にあっては小さな駅であるが、西側は尾久車両センターとなっており、日中は寝台特急「北斗星」などの編成が留置される。尾久駅を出ると京浜東北線の線路をくぐってその西側を併走し始め、王子駅を通過する。王子駅西側の飛鳥山公園は春の桜が美しい名所となっている。東十条駅を通過すると京浜東北線以外の線路が高架に上がり、西から埼京線が寄り添うと同時に京浜東北線も高架に上がって間もなく赤羽駅に到着。赤羽駅は宇都宮線としては東京最北端の駅であり、埼京線、湘南新宿ラインなど都区内から埼玉県に伸びるJR在来線の結集地点になっている。駅の東側には繁華街が形成され、地下鉄南北線・埼玉高速鉄道線の赤羽岩淵駅も徒歩圏である。
赤羽を過ぎて間もなく新河岸川、荒川の橋梁を3複線で渡って埼玉県に入る。赤羽駅から大宮駅にかけては、東側から電車線(京浜東北線)、列車線(上野発着の宇都宮線・高崎線)と並走し、その西側を東北貨物線(湘南新宿ライン)が走る。埼玉県に入るとまず川口駅を通過する。川口は、江戸期に隆盛化した舟運を利用し、鋳物を産して江戸に供給し発展を遂げた。近年はベッドタウンとして高層マンションが数多く建てられ街並みもより近代化している。埼玉県南部の住宅地を走り抜け西川口駅、蕨駅と京浜東北線の駅を通過する。線路東側に浦和電車区を眺めると間もなく武蔵野線の高架をくぐり南浦和駅を通過する。西側を走る東北貨物線が高架に上がり再開発で建てられた高層マンションが見えてくると間もなく埼玉県庁・さいたま市役所の最寄り駅である浦和駅に着く。浦和駅西口には伊勢丹浦和店・コルソ・ユザワヤ浦和店などの店舗を中心とした繁華街が形成されその更に西側に県庁や裁判所、さいたま市役所が立地する。東口は現在再開発中で、パルコを中核店舗とする商業施設が建設中である。浦和駅を出ると左手から旧浦和市役所庁舎跡地に建てられた浦和センチュリーシティが見下ろす。東北貨物線が再び地上に戻り、北浦和駅を通過する。北浦和駅の駅西口には埼玉大学の旧キャンパス跡地を利用した北浦和公園があり、噴水広場が市民の憩いの場になっている。与野駅を通過した辺りからさいたま新都心の高層ビル群が左手に見えてくる。次のさいたま新都心駅はさいたまスーパーアリーナやさいたま合同庁舎の最寄り駅であるが貨物線を走る湘南新宿ラインはホームが無いため通過する。貨物の留置線が広がり西から東北新幹線・埼京線が接近すると間もなく大宮駅に到着する。大宮は式内社名神大社に列せられた氷川神社の門前町であり、近代以降は宇都宮線・高崎線・京浜東北線・川越線・東武野田線・新幹線・埼京線など鉄道の結節点として発展を続けてきた埼玉県随一のターミナル駅である。駅の東側には旧中山道や氷川神社方面に繁華街が形成され大宮高島屋などの店舗が出店している他、西口も新幹線開業に合わせて再開発が行われ、大宮ソニックシティや大宮そごうなどが見える。
大宮駅を出ると、高崎線の線路を跨いで東にカーブし北に進路をとる。線路の東側には暫く東武野田線が並走する。土呂駅、東大宮駅まではさいたま市の市域であり、住宅地の中を疾走する。東大宮駅を出た辺りから、住宅地の合間に続く田畑と用水路、冬は防風林ともなる雑木林、といった関東近郊の沿線風景となり、これが宇都宮駅付近まで続く。東大宮駅北方には東大宮操車場があり、回送線がここまで伸びている。蓮田駅を出ると間もなく元荒川の橋梁を渡る。江戸時代以前は元荒川が荒川であったが、利根川東遷事業と呼ばれる河川工事の結果、荒川は入間川に合流して隅田川(住田川)となる現在の流れに瀬替えされ、この川は元荒川となった。白岡駅を出て東北自動車道の高架をくぐり、新白岡駅を過ぎると西から東北新幹線の高架、東から東武伊勢崎線の線路が近づいて久喜駅に着く。久喜付近からは車窓東側に筑波山が見えてくる。久喜を出て間もなく東武伊勢崎線が宇都宮線を跨ぎ西に分かれる。間もなく古利根川を渡って東鷲宮駅に着く。この駅は下り線は地上ホーム、上り線は高架ホームとなっており、駅東側には新幹線保線機材等を積み込む操車場の向こうに駅前集合住宅街が広がる。東鷲宮駅を出て中川を渡り、築堤上に敷かれた東武日光線の線路が宇都宮線を跨ぐと程なく栗橋駅に着く。東武日光線直通特急はここからポイント分離して東武日光線に入る。栗橋駅を過ぎると関東最大級の大河で坂東太郎の異名を冠す利根川を渡って茨城県に入る。利根川は江戸時代中期以降、この地を経て鬼怒川と合流し銚子にて太平洋に注ぐ川となったが、それ以前は古利根川を経て東京湾に注いでいた。利根川の橋梁から続く築堤から高架を走り古河市大堤(元総和町)の距離の長い林を通り古河駅に着く。林の途中には車窓から地元では誰もが知るトモエ乳業が見える。古河は宇都宮線沿線では唯一の茨城県内の駅であり、古くから渡良瀬川の渡し場があった場所で当時の交通の要衝であった。また室町時代には古河公方が座した土地としても知られ、その遺構は古河総合公園として整備されている。古河駅を出て市街地が終わるところで栃木県に入る。野木駅から間々田駅にかけては栃木県南部の田園地帯を疾走する。この付近は延々と直線区間が続き、宇都宮線列車が最も加速する区間となっている。この区間はまた濃霧が発生しやすい区間でもある。水戸線が右から合流してくると小山駅に着く。小山市は栃木県第2の都市であり、古くは俵藤太の別称で名高い藤原北家魚名流藤原秀郷の後裔である小山氏の居城・祇園城の元で栄え、江戸期には日光街道の宿場町として賑わった。
小山を出ると両毛線を西に分岐し間もなく小金井駅に着く。小金井駅の北方、宇都宮線線路の東側には小山車両センターが立地するが、上り線路築堤が目隠しとなるため下り列車からは望むことが出来ない。自治医大駅の東側には自治医科大学の白亜の建物と広大なキャンパスが広がり、さらにその奥には下毛野氏の氏寺で奈良時代には奈良の東大寺や筑紫の観世音寺と並んで三戒壇に指定され当時の関東の文化的中心地であった下野薬師寺跡が立地する。石橋駅を出て暫く走ると下り線と上り線が分かれ、その間に広大な宇都宮貨物ターミナル駅構内の線路群を見ながら進む。雀宮駅を過ぎて日光線が左から合流し田川橋梁を渡ると、北関東屈指の商工業都市で栃木県の県都でもあり、平安時代以来の歴史を有す宇都宮市の中心駅・宇都宮駅に到着する。この手前付近では西側車窓に宇都宮の中心街ビル群とその遠方に男体山、女峰山、日光白根山を望むことが出来る。宇都宮駅は東北新幹線の停車駅でもあり、また県内各地(日光・鹿沼・河内郡・芳賀・茂木・真岡・益子方面)に向かう路線バスが発着することから、ターミナル駅的要素を有する駅である。宇都宮の繁華街は宇都宮駅の西側約1~2km、宇都宮二荒山神社を中心として広がり、繁華街を挟むように北側に栃木県庁、南側に宇都宮市役所が立地し、市役所の東側は宇都宮城址となっている。宇都宮城は二荒山神社の神官としてこの地に赴任し、平安時代後期から22代500年に亘って鬼怒川流域一帯を統治した藤原北家道兼流宇都宮氏の居館であった。
列車は宇都宮駅を出発すると宇都宮運転所を東側に見ながら構内を抜け、北東に進路を取ると住宅地の中を通過し、宇都宮工業団地(平出工業団地)の北部を翳めて岡本駅に着く。岡本を出て河岸台地を下ると栃木県の水源である鬼怒川を渡る。宇都宮線橋梁の直ぐ下流側の橋梁は国道4号の鬼怒川橋(下り線)・新鬼怒川橋(上り線)である。鬼怒川東岸に到達して直ぐ左に大きくカーブを切ると間もなく烏山線の分岐駅であり、高根沢工業団地の最寄り駅でもある宝積寺駅に着く。宝積寺駅を出て烏山線を東に分けると暫くは鬼怒川東岸の河岸台地上の田園地帯を走り、間もなくさくら市の中心地で喜連川温泉の入口でもある氏家駅に着く。氏家駅を出ると直ぐに国道4号が宇都宮線を跨ぎ、蒲須坂駅を過ぎた付近で荒川を渡り関東平野と那須野が原を分ける塩那丘陵の起伏地に入り、片岡駅を経て矢板駅に着く。この付近は長閑な田園の中に時折りんご等の果樹園畑を望める。矢板駅を出ると直ぐに上野以北の宇都宮線では初めてとなるトンネルを抜け、箒川(ほうきがわ)を渡り国道4号が宇都宮線を跨ぐと間もなく野崎駅で、この付近から那須野が原の田園風景が広がる。那須野が原は高原山火山などの火砕流などで基礎が形成され、その後の河川などの砂礫の堆積により形成された箒川と那珂川に挟まれた木の葉状に広がる広さ4万haに及ぶ日本最大級の複合扇状地である[1]。那須野が原の地質は水を通しやすく、両河川の間を流れる熊川と蛇尾川(さびがわ)は水無川で伏流水となっているため、熊川・蛇尾川の両橋梁からは多雨期を除き河原しか見ることが出来ない。開墾に当たっては那須野が原北端の那珂川より取水して灌漑用水を地表に引き客土することでようやく農地とし、現在では栃木県一の米及び生乳の生産地となっている。現在でも開拓・開墾の歴史を那須疏水の清流に偲ぶことができる。また、関東の名族は戦国時代~江戸時代初め頃までに歴史の表舞台から姿を消すが、この那須地方は中央政権による改革を間逃れ、室町時代には関東八屋形の一角をなした那須氏一門が江戸時代以降も脈々とその歴史を刻み続けており、その影響で当時からの歴史的建造物も比較的良好に現存し(黒羽の雲巌寺など)、松尾芭蕉の奥の細道紀行にも登場する。西那須野駅、那須塩原駅、黒磯駅にかけては、那須の茶臼岳、朝日岳、三本槍岳を望みながら走る。西那須野駅と那須塩原駅は栃木県内有数の温泉郷である塩原温泉郷、那須温泉郷の、そして宇都宮線列車の終点・黒磯駅は、関東地方の一大避暑地である那須高原の玄関駅である。那須高原は北に勇壮な那須連山、南に広大な関東平野の絶景を楽しめる絶好のビュースポットでもあり、休日は春の新緑シーズンから秋の紅葉シーズンまで行楽客で賑わう。黒磯駅は宇都宮線の終着駅であるが、東北本線普通列車の始発駅でもある。黒磯駅で直流電化から交流電化に切り替わるため、両区間を直通する普通列車設定が無い当駅では白河、郡山方面の接続列車に急ぐ乗り継ぎ客がホームを走る。夏休みなどの期間は郡山方面から乗り継ぎで帰省する学生の姿も多く目にすることができる。(黒磯駅以北の東北本線の沿線風景はこちらを参照)
[編集] 運行形態
上野発着の宇都宮線普通列車と、池袋駅・新宿駅を経由して東海道本線の横浜駅・大船駅及び横須賀線の鎌倉駅・逗子駅まで直通する湘南新宿ライン普通・快速を中心としたダイヤ編成である。日中は上野発着が毎時4往復、湘南新宿ラインが毎時2往復(うち1往復は快速)設定されている。朝夕には上野発着の快速ラビット・通勤快速や池袋・新宿発着の近距離特急「おはようとちぎ」・「ホームタウンとちぎ」が、また日中には池袋・新宿発着で栗橋から栃木・東武日光・鬼怒川温泉方面などの東武日光線に直通する特急「日光」・「きぬがわ」・「スペーシアきぬがわ」が設定されている。これらの列車の合間に、北海道方面への長距離寝台特急「カシオペア」や「北斗星」が毎日2~3往復設定されている(何れも首都圏から北海道に向けての観光客輸送に重点を置いており、旧来の東北本線長距離特急とは意味合いを異にし、むしろ「北海道観光列車」的な意味合いの列車である)。小山駅~黒磯駅間には両毛線、小金井駅~宇都宮駅間に日光線、宇都宮駅~宝積寺駅間には烏山線への直通列車の設定もある。
なお、過去の最速列車は上野~宇都宮間を1時間10分で結んでいたが、2006年現在の宇都宮線最速列車は快速ラビットの1時間26分であり、これは115系で運行されていた時と全く変わらない時間となっている。今後、E231系中心の車両運用や東北縦貫線計画による東海道線との相互乗り入れを受け、ダイヤの総見直しが行われると見られている。
現時点での宇都宮線の需要は、埼玉県東北部及び栃木県中南部沿線から東京都内や埼玉県南部への通勤・通学・その他ビジネス輸送等と、埼玉県中北部及び栃木県内沿線から宇都宮への通勤・通学・その他ビジネス輸送等が主体となっており、運転系統は小山及び宇都宮を節とした運行体系となっている。2006年7月のダイヤ改正では、近年削減傾向にあった上野~黒磯間の直通列車が増回され、また小金井~黒磯間区間列車が新設(宇都宮乗換え→小金井乗り換え)された。
首都圏では、年末年始終夜運転を実施しているが、宇都宮線では『終夜臨時列車』という扱いで、湘南新宿ライン(宇都宮~逗子間)が、毎時上下各1本運転されている。以前は、上野発着であったが、湘南新宿ラインの利用者増に伴い、2005年~2006年の年越しより、湘南新宿ライン列車に変更、上野発着は高崎線のみとなっている(高崎線では、終夜列車に湘南新宿ラインは設定していない)。
[編集] 列車種別
- 上野~宇都宮
- 各駅停車(下記参照)。小山車両センターのE231系基本編成(10両)のみ、あるいは基本編成に付属編成(5両)を連結した15両編成で運行。但し、平日8.5往復、土休日9往復のみ高崎車両センターの211系を使用する。うち平日の3往復と土休日の2往復は小金井~宇都宮駅間は付属編成(5両)のみで運行。運転本数は日中毎時4往復で、うち1~2往復は小金井駅で折り返す。所要時間は上野~宇都宮が1時間45~2時間5分前後。なお、小山~宇都宮間は両毛線・日光線直通列車(107系・115系の4~6両編成)による補完運行がある。また2006年7月からは、上野~宇都宮便2往復が上野~小金井間のみの運転に短縮され、これに小金井で接続する小金井~黒磯便5両編成2往復が宇都宮~黒磯便から運転区間延長(宇都宮~黒磯間→小金井~黒磯間)された。
- 湘南新宿ライン普通
- 停車駅は下記参照。逗子・大船~小金井・宇都宮間を運行。小山車両センターのE231系基本編成+付属編成15両(一部基本編成のみ10両)で運行。朝夕は毎時2~3本、日中は毎時1本の運行。所要時間は新宿~宇都宮が1時間50分前後、池袋~宇都宮が1時間45分前後。
- 宇都宮~黒磯
- 日光線直通
- 早朝の小金井始発日光行きのみ。各駅停車。小山車両センターの107系0番台2両編成3連(6両)で運行。
- 両毛線直通
- 高崎駅から上越・両毛線経由で黒磯駅まで乗り入れる。各駅停車。高崎車両センターの107系100番台(2両編成×2連の4両編成)及び115系(4両編成)で運行。1日2往復(うち1往復は宇都宮折り返し)。
- 烏山線直通
- 湘南新宿ライン快速
- 停車駅は下記参照。大宮以南は普通列車。小山車両センターのE231系基本編成+付属編成15両(一部基本編成のみ10両)で運行。日中のみ毎時1本の運行。所要時間は新宿~宇都宮が1時間40分前後、池袋~宇都宮が1時間35分前後。ほぼ全列車が逗子~宇都宮の設定(下りは大船始発便が平日3本、土休日2本あり)。
- 快速ラビット
- 停車駅は下記参照。E231系(土休日夜間の下り1本のみ211系)で運行。基本編成10両のみ、あるいは基本編成に付属編成(5両)を連結した15両編成で運行。平日は上野発下り朝8時台と9時台の2本のみの運行。土曜・休日はこれに加え通勤快速に代わって夕方以降の上下線で運行される。JR化後の1988年より運行を開始。「新特急なすの」の需要を「近距離新幹線なすの(当初はあおば)」と分ける形で増発され、最盛期は全日に亘り毎時1~2往復で運行された。1995年12月のダイヤ改正までは下記停車駅のうち小金井駅・自治医大駅・雀宮駅には停車せず、最速列車の上野~宇都宮の所要時間は1時間23分、平均的に1時間25分前後であった。現行の上野~宇都宮の所要時間は1時間26~41分と列車によって15分もの幅がある。
- 通勤快速
- 停車駅は下記参照。E231系(下り1本のみ211系)で運行。平日の夕方以降に毎時1本運行される。JR化後の1988年より1991年まで「スイフト」の愛称を与えられた。上野~宇都宮の所要時間は最速列車が1時間31分、その他は約1時間40分。
- おはようとちぎ・ホームタウンとちぎ
- 日光・きぬがわ・スペーシアきぬがわ
- 毎日、「日光」(新宿~東武日光)と「きぬがわ」(新宿~鬼怒川温泉)がそれぞれ1往復、「スペーシアきぬがわ」が2往復(新宿~鬼怒川温泉)運行されている。「日光」と「きぬがわ」はJR東日本の485系6両編成(小山車両センター)、「スペーシアきぬがわ」は東武鉄道の100系「スペーシア」で運行。東武は予備車を含め100系スペーシアを3編成準備しており、JRは大宮車輌センター(宮オオ)の189系旧彩野(6両編成)を予備車とする。
- ホームライナー古河
-
- 下りのみ。停車駅は下記参照。
[編集] 使用車両
- E231系(4ドア車)
- 211系(3ドア車)
- 高崎車両センターの所属で、基本編成(10両)と付属編成(5両)があり、基本編成はC編成で、E231系同様、4・5号車にグリーン車を組み込んでいるが、4号車は全編成で2階建て車両であるが、5号車には平屋構造の車両が組み込まれている編成が多い。付属編成は、全車ロングシート車のA編成、全車セミクロスシート車のB編成がある。湘南色。2006年7月8日のダイヤ改正で上野~宇都宮間の運用(基本編成・付属編成)が減り、宇都宮~黒磯間の運用(付属編成)が増えた。
- 115系(3ドア車)
- 高崎車両センターの所属で、1編成4両。全車セミクロスシート車。小山~宇都宮間で運用されている。湘南色。両毛線直通。(代走は211系)
- 107系(3ドア車)
- 185系(2ドア車)
- 田町車両センターの所属で、1編成7両で4号車がグリーン車。新宿発着の特急「おはようとちぎ」と「ホームタウンとちぎ」で運用されている。田町色(クリーム色の車体の中ほどに緑色とオレンジ色の縦帯状アクセントが入れられている)。
- 485系(1ドア車)
- 小山車両センターの所属で、新宿発着東武日光線・鬼怒川線経由で東武日光や鬼怒川温泉駅とを結ぶ特急「日光」・「きぬがわ」で運用されている。1編成6両で全車普通車。5号車以外は禁煙車で、3号車には授乳・休憩のためのベビーベッド付き多目的室を、4号車には車いす対応席1席を備える。トイレは偶数号車の東武日光・鬼怒川温泉方にある。東武カラー(白色に朱色と茶色の帯状塗装)。なお検査時には189系(大宮総合車両センター所属)が代走する。
- 東武100系(1ドア車)
- 東武鉄道の車両で、1編成6両で6号車(新宿寄り)が個室グリーン車。5・6号車以外は禁煙車で、3号車には販売カウンターと自動販売機を備える。トイレは1号車の新宿方と4・6号車の鬼怒川温泉方にある。特急「スペーシアきぬがわ」(485系の検査時には「スペーシア日光」も)で運用されている。
- キハ40系(2ドア車)
※黒磯以北へ直通する列車の説明は、この記事ではなく東北本線などを参照。
[編集] 駅一覧
駅名 | 営業 キロ |
湘南新宿 ライン |
快速ラビット | 通勤快速 | ホーム ライナー 古河 |
接続路線 | 所在地 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
普通 | 快速 | ||||||||
上野駅 | 0.0 | 池袋・ 新宿・ 横浜 方面 |
● | ● | ▲ | 東日本旅客鉄道:東北新幹線・山手線・京浜東北線・常磐線・高崎線 東京地下鉄:銀座線・日比谷線 京成電鉄:本線(京成上野駅) |
東京都 | 台東区 | |
尾久駅 | 4.8 | | | ● | | | 北区 | ||||
赤羽駅 | 9.8 | ● | ● | ● | ● | | | 東日本旅客鉄道:京浜東北線・埼京線・湘南新宿ライン | ||
浦和駅 | 20.8 | | | | | ● | ● | ▲ | 東日本旅客鉄道:京浜東北線 | 埼玉県 | さいたま市浦和区 |
さいたま新都心駅 | 25.3 | | | | | | | | | | | 東日本旅客鉄道:京浜東北線 | さいたま市大宮区 | |
大宮駅 | 26.9 | ● | ● | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:東北新幹線・上越新幹線・京浜東北線・埼京線・川越線・高崎線 東武鉄道:野田線 埼玉新都市交通:伊奈線 |
||
土呂駅 | 29.9 | ● | | | | | | | | | さいたま市北区 | ||
東大宮駅 | 32.0 | ● | | | | | | | ● | さいたま市見沼区 | ||
蓮田駅 | 35.8 | ● | ● | ● | | | ● | 蓮田市 | ||
白岡駅 | 40.1 | ● | | | | | | | | | 南埼玉郡白岡町 | ||
新白岡駅 | 42.5 | ● | | | | | | | | | |||
久喜駅 | 45.5 | ● | ● | ● | ● | ● | 東武鉄道:伊勢崎線 | 久喜市 | |
東鷲宮駅 | 48.2 | ● | | | | | | | | | 北葛飾郡鷲宮町 | ||
栗橋駅 | 53.8 | ● | | | | | | | | | 東武鉄道:日光線 | 北葛飾郡栗橋町 | |
古河駅 | 61.3 | ● | ● | ● | ● | ● | 茨城県古河市 | ||
野木駅 | 66.0 | ● | | | | | | | 新宿駅始発は池袋駅停車 | 栃木県 | 下都賀郡野木町 | |
間々田駅 | 69.9 | ● | | | | | | | 小山市 | |||
小山駅 | 77.2 | ● | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:東北新幹線・両毛線・水戸線 | |||
小金井駅 | 84.7 | ● | ● | ● | ● | 下野市 | |||
自治医大駅 | 87.3 | ● | ● | ● | ● | ||||
石橋駅 | 92.0 | ● | ● | ● | ● | ||||
宇都宮貨物ターミナル駅 | 93.2 | | | | | | | | | 河内郡上三川町 | |||
雀宮駅 | 98.4 | ● | ● | ● | ● | 宇都宮市 | |||
宇都宮駅 | 106.1 | ● | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:東北新幹線・日光線・烏山線 | |||
岡本駅 | 112.3 | ● | ● | 河内郡河内町 | |||||
宝積寺駅 | 117.8 | ● | ● | 東日本旅客鉄道:烏山線 | 塩谷郡高根沢町 | ||||
氏家駅 | 123.7 | ● | ● | さくら市 | |||||
蒲須坂駅 | 128.2 | ● | ● | ||||||
片岡駅 | 132.1 | ● | ● | 矢板市 | |||||
矢板駅 | 138.4 | ● | ● | ||||||
野崎駅 | 143.2 | ● | ● | 大田原市 | |||||
西那須野駅 | 148.4 | ● | ● | 那須塩原市 | |||||
那須塩原駅 | 154.4 | ● | ● | 東日本旅客鉄道:東北新幹線 | |||||
黒磯駅 | 159.9 | ● | ● | 東日本旅客鉄道:東北本線(郡山駅・福島駅方面) |
●:全ての列車が停車 ▲:「ホームライナー古河」の新宿駅発は通過、上野駅発は停車 |:通過
- 普通列車は各駅に停車するため省略(宇都宮貨物ターミナル駅は除く)。
- 営業キロは尾久駅経由。日暮里駅(宇都宮線は通過するが分岐駅である)以遠(上野駅・常磐線北千住駅方面)と赤羽駅以遠(大宮駅方面)の区間を乗車する場合は、(京浜東北線)王子駅経由の営業キロで計算し、表記の営業キロから0.2キロを差し引く。
[編集] 過去の接続路線
いずれも、「宇都宮線」愛称設定以前に廃止。東京都内(都電など)については省略