東京都庁
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東京都庁(とうきょうとちょう、Tokyo Metropolitan Government)は、地方公共団体である東京都の執行機関としての事務を行う役所である。一般の職員が所属する知事部局のほか、行政委員会・公営企業・消防吏員・警察官・学校教職員までを含めると総計約17万人もの職員を抱える巨大な組織である。都の政策はしばしば国を動かすとも言われ、その権力は強大である。
建物としての東京都庁については、東京都庁舎の項を参照。
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[編集] 業務
道府県と同様の市町村を包括する広域の地方公共団体としての事務を処理するほか、特別区に関する連絡調整事務、そして本来市町村が処理する事務のうち、東京23区内の大都市地域における行政の一体性と統一性の確保の観点から当該区域を通じて一体的に処理することが必要である事務(消防・水道・下水道・都市計画など)を行っている。ただ、過去の幾度の地方自治法の改正により、数多くの権限が特別区に委譲され、特別区の自治権は拡充される方向にある。
[編集] 財政
都の収入のうち都税収入は例年7割近くを占め、他の道府県と比べ自主財源の割合が高い。財政は98年度決算で1068億円の赤字を出し、財政再建団体への転落が懸念されたため、99年度に財政再建推進プランを策定。職員定数の削減などを進めてきた結果、最悪の状況からは脱したものの、隠れ借金の解消など解決すべき問題は残されている。
また、都の業務の性格から、本来市税であるもののうち一部は都が徴収する。都区財政調整制度により、固定資産税・市町村民税の法人分・特別土地保有税の収入額の52%を財源として、基準財政需要額が基準財政収入額を超える区にはその差額が財政調整交付金として各特別区に配分される。さらに、調整制度とは別に、都市計画税も特別区でなく都が徴収し、それを財源として、特別区の行う都市計画を円滑に進めるための交付金である都市計画交付金もある。
99年度予算で4216億円に上った財源不足が2005年度以降は解消され、財政状況が改善されたとして97年度から原則停止してきた都庁舎や保有施設の改築や修繕について、2007年度予算から解禁を決定した。
[編集] 採用システム
主として人事委員会の採用試験によるものと局独自の採用試験によるものに大別されるが、採用数は前者の方が圧倒的に多い。 人事委員会による採用は一般行政系職員の募集であり、種別としてI類(大学卒業程度)、II類(短大卒業程度)、III類(高校卒業程度または障害者)、経験者(一般または主任)に分かれている。II類に関して言えば、短大卒業程度とされているものの、そのほとんどを大卒が占めている。これらの大きな違いは経験者(主任)を除き、主任級職選考資格を得るまでの必要経験年数の違いだけである。主な職種として事務、四大技術(土木、建築、機械、電気)、産業技術(化学、林業、水質検査)、福祉、栄養士、食品衛生監視員、看護師、薬剤師、獣医師等に大別されるが、事務・土木・食品衛生監視員は公権力を有する職種として人気があり、競争倍率も高い。2007年の採用試験からは事務・四大技術ではII類は廃止され、I類は新たにI類A(大学院修士課程修了程度)・I類B(従来のI類とほぼ同じ)に変更される。また経験者(一般・主任)は、専門人材採用試験(主任)となる。
人事委員会採用以外では局独自の採用があり、総務局で海技職、福祉保健局や病院経営本部で主に医療職・福祉職・心理職を、産業労働局では職業訓練指導員、中央卸売市場で技能職(食肉処理等)、水道局で技能職、教育庁で教職員を募集する事がある。交通局ではかつて鉄道営業や自動車運転士といった現業職を採用していたが、局財政の悪化や合理化による人員過剰を理由に採用を中止している。不足する人員は臨時職員の採用または東京都交通局協力会といった外郭団体からの人材派遣で対応している。局独自に採用された職員は次の場合を除いて同一職種が存在する局以外に局間異動する事はない。僅かに能力認定試験で他職種を受験して合格するか職種の新設・統廃合による転職だけである。
[編集] 異動システム
職員は概ね3年を目安にしており、大島支庁・三宅支庁・八丈支庁・小笠原支庁など島嶼の事業所を含めて局内異動若しくは局間異動が行われる。局間異動は監督職以上だけでなく2級職(旧3級職)昇任時の前期または後期、主任級職昇任時、庁内公募制人事に採用された場合に行われる。異動希望は原則として自己申告制度により行う。
[編集] 昇任システム
人事委員会による一般行政系職員の採用はI類(大学卒業程度)、II類(短大卒業程度)、III類(高校卒業程度または障害者)、経験者(一般または主任)に分かれているが、採用及び昇任については類に関係なく競争試験によって行われるという独特なシステムをとっている。学歴に関係なく平等に昇任の機会が与えられている。高校卒業で入都し、水道局の現業職である検針員から副知事まで上り詰めたケースは特に有名である。しかし近年は主任級職選考及び管理職選考の受験者の減少が続いている。
[編集] 沿革
- 1943年 - 東京都制施行により東京府と東京市が統合し東京都が発足。
- 1947年 - 地方自治法施行、区部は23区に再編され特別区となる。
- 1952年 - 特別区長が、公選制から都知事の同意を得て区議会が選任する方式となる。
- 1957年 - 先代の都庁舎が千代田区丸の内三丁目に完成(現在の東京国際フォーラムの場所である)。
- 1964年 - 福祉事務所を特別区に移管。
- 1975年 - 特別区長が再び公選制となる。保健所など多くの事務を特別区に移管。
- 1990年 - 現都庁舎が新宿区西新宿二丁目に完成。
- 2000年 - 清掃事業などが特別区に移管
- 2005年 - 農業試験場、畜産試験場など多くの試験研究機関の統廃合並びに財団法人化を開始。
- 2006年 - 動物園をはじめとした都立公園の多くに指定管理者制度を導入。試験研究機関の財団法人化と同様に、事実上の民営化となる。
[編集] 組織
- 知事
- 副知事
- 知事部局
- 知事本局 - 秘書部、政策部、企画調整部
- 青少年・治安対策本部 - 総合対策部
- 東京オリンピック招致本部 - 企画部、招致推進部
- 総務局 - 総務部、行政改革推進室、IT推進室、首都大学支援部、人事部、行政監察室、行政部、総合防災部、勤労部、法務部、統計部、人権部
- 財務局 - 経理部、主計部、財産運用部、建築保全部
- 主税局 - 総務部、税制部、課税部、資産税部、徴税部
- 生活文化局 - 総務部、広報広聴部、都民生活部、消費生活部、私学部、文化振興部
- 都市整備局 - 総務部、都市づくり政策部、住宅政策推進部、都市基盤部、市街地整備部、市街地建築部、都営住宅経営部
- 環境局 - 総務部、都市地球環境部、環境改善部、自動車公害対策部、自然環境部、廃棄物対策部
- 福祉保健局 - 総務部、指導監査室、医療政策部、保健政策部、生活福祉部、高齢社会対策部、少子社会対策部、障害者施策推進部、健康安全室
- 病院経営本部 - 経営企画部、サービス推進部
- 産業労働局 - 総務部、商工部、金融部、観光部、農林水産部、雇用就業部
- 中央卸売市場 - 管理部、事業部
- 建設局 - 総務部、用地部、道路管理部、道路建設部、公園緑地部、河川部
- 港湾局 - 総務部、港湾経営部、臨海開発部、港湾整備部、離島港湾部
- 知事本局 - 秘書部、政策部、企画調整部
- 東京消防庁 - 総務部、人事部、警防部、防災部、救急部、予防部、指導広報部、装備部
- 地方公営企業
- 知事部局
- 出納長 - 出納長室
- 副知事
- 教育委員会 - 教育庁 - 総務部、学務部、人事部、福利厚生部、指導部、生涯学習スポーツ部
- 選挙管理委員会 - 事務局
- 人事委員会 - 事務局 - 任用公平部、試験室
- 監査委員 - 事務局
- 公安委員会 - 警視庁 - 総務部、警務部、交通部、警備部、地域部、公安部、刑事部、生活安全部、組織犯罪対策部
- 労働委員会 - 事務局
- 収用委員会 - 事務局
- 海区漁業調整委員会 - 事務局
- 内水面漁場管理委員会 - 事務局
- 地方独立行政法人
- 東京都立産業技術研究センター[1]
[編集] 著名な職員
- 五百籏頭薫 - 首都大学東京都市教養学部准教授 - 防衛大学校校長五百旗頭真の息子
- 池波正太郎 - 作家
- 石川栄耀(元建設局長) - 都市計画家、元早稲田大学教授、故人
- 磯村英一(元民生局長) - 元東洋大学学長、都市社会学
- 岩成政和(水道局副参事、元交通局電車部勤務) - 鉄道研究家
- 加藤芳郎 - 漫画家、故人
- 金子雅臣(元労働経済局課長補佐) - 労働ジャーナリスト
- 桐山襲(元教育庁職員) - 小説家
- 黒田慶樹(都市整備局次席) - 黒田清子の配偶者
- 郷仙太郎(元副知事、本名・青山佾) - 明治大学大学院教授、作家
- 佐々木信夫 - 中央大学教授
- 竹花豊(元副知事、治安対策担当) - 元広島県警察本部長・現警察庁生活安全局長、警察官僚
- 続訓弘(元副知事) - 参議院議員
- 童門冬二(元政策室長) - 小説家
- 西野保行(元交通局工務部勤務) - 鉄道研究家
- 鈴木俊一 - 知事、東都政時代の副知事
- 浜渦武生 - (元副知事)石原慎太郎の秘書