斎藤十一
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斎藤 十一（さいとう じゅういち 1914年2月11日 - 2000年12月28日）は、昭和期のカリスマ的な編集者。
新潮社の天皇とも怪物とも呼ばれ、会長佐藤亮一の参謀として同社で権力を振るった。1960年から『週刊新潮』に名物コラム「東京情報」を長期連載していた自称外人記者ヤン・デンマンは、斎藤の変名と考えられている。
北海道のガス会社に勤務するサラリーマンの息子として、北海道忍路郡（おしょろぐん）塩谷村（しおやむら=現在の小樽市）に生まれ、父の転職に伴って2～3歳から東京市大森区に育つ。1926年、旧制麻布中学校入学。在学中の成績は中位で、軽度の吃音に悩む、おとなしく目立たない生徒だった。1931年、麻布中学校卒業。海軍兵学校を受験したが体格検査ではねられる（のちに徴兵検査でも肺浸潤が発見されたため、兵役を免れた）[1]。次いで旧制第一高等学校受験に失敗したため、早稲田第一高等学院理科に進むも、一高受験失敗の衝撃から休学して家出し、南総の寺で1年間修行。のち、ひとのみち教団（現在のPL教団）信者の父によって家に連れ戻され、十一自身も同教団に入信。
同じ信仰を持つ新潮社創業者佐藤義亮の四男佐藤哲夫と親しくなったのが縁となり、義亮の孫佐藤亮一（のち新潮社会長）の家庭教師となる。
1936年、早稲田大学理工学部を中退して新潮社に入社。同年、ひとのみち教団の信者女性と結婚。翌1937年9月、ひとのみち教団教祖の御木徳一が少女への強姦猥褻事件で逮捕され、教団は解散に追い込まれた（ひとのみち教団は戦後PL教団として再興。またこの事件を冤罪と見る説もある）。この時の裏切られた思いが、斎藤の冷笑的な人間観を形成したとする説もある。
文芸誌『新潮』の編集長としては、同人誌を読んで無名の新人作家を発掘し続けた反面、坂口安吾や佐藤春夫といった大作家の原稿も気に入らなければ没にする、連載を打ち切ることで知られ、小林秀雄からは「斎藤さんは天才だ。自分の思ったことをとことん通してしまう」と賛嘆された。尻込みする太宰治に野平健一を差し向け、「如是我聞」を書かせたのも斎藤だった。1946年には、河盛好蔵の助言で坂口安吾の「堕落論」を同誌に掲載し、大きな反響を呼んだ。
1956年、『週刊新潮』誌を創刊、同誌の名目上の編集長だった佐藤亮一（後に野平健一になる）の蔭に隠れて、記事の全タイトルを自ら決定し、実質的に同誌を支配した。創刊にあたってのコンセプトを、のちに「うちの基本姿勢は俗物主義」「どのように聖人ぶっていても、一枚めくれば金、女。それが人間」「だから、そういう人間を扱った週刊誌を作ろう、ただそれだけ」（『潮』1977年5月号）と語っている。同誌は新聞社を背後に持たない出版社系の週刊誌として初の試みであり、新聞社と違って記事の題材になるべき情報源がない、社内に記事の書き手がいない、書店の他に販売ルートがない、広告収入が見込めないなど多数の不利な条件を抱え、当初は数号で廃刊に追い込まれることが必至と予想されていたが、複数証言を併記しながら事件を描く、いわゆる藪の中方式など多くの優れたノウハウを開発して商業的に成功を収め、他の週刊誌に大きな影響を与えた（このため業界では週刊誌の始祖として評価する者もいるし著名人の中にはシンパシーを感じる者がいる）。
従来純文学しか書かなかった立原正秋に初めて大衆小説を書かせて成功し、松本清張や五味康祐、柴田錬三郎、山口瞳といった大衆作家を育てた一方で、新人作家からは苛烈なしごきで恐れられた。筒井康隆も若手時代に苦汁を飲まされた一人であるという（同様の仕打ちを受けた一人に灰谷健次郎がいるが神戸連続児童殺傷事件でのやり方に抗議し絶版にして完全絶縁。結果斎藤は灰谷から積年の恨みを晴らされてしまった）。
1958年、『国民タイムス』により女性スキャンダルを報じられる。1971年、週刊新潮編集部で五味康祐を担当していた太田美和と再婚。[2]1981年には「人殺しのツラを見たくはないのか」の一言で『FOCUS』誌を創刊させ、やはり記事の全タイトルを自ら決定し、新潮社の反人権路線を加速させた。同社専務から相談役を経て、1997年暮、顧問に就任。心不全で死去する直前まで『週刊新潮』の全てを取り仕切り、雑誌作りに熱意を燃やし続け、自ら構想する新雑誌の目次を作成していたと伝えられる。
斎藤の死後、2001年、『FOCUS』誌は庇護者を失った形で休刊を迎えた。『週刊新潮』誌の取材もまた、一時期ほどの悪辣さは無いと評されるようになった。
余談だが斎藤は『朝日新聞』を糾弾する記事は書くなと終生編集部に厳命していたという（理由は本人が死んだ今となっては不明だが多分書けといえば色々な意味で自分に火の粉が振りかかる（独裁主義批判・紙面広告掲載締め出し（実際FOCUSで火の粉を被った）・自らの黒い過去が暴かれる（斎藤を批判するジャーナリストは斎藤の女性問題を掴んでいてすきあらば暴露の機会を狙っていたほど）etc…）と恐れたからだろう）。その証拠に朝日新聞での死去の記事は一段のベタ記事ではなく写真入りの3段記事でありさらに斎藤を表面上で評価する追悼記事を書いていたほどである。［要出典］
生前吃音が直らない事と赤面症であるため人前に出るのを極端に嫌いテレビ・ラジオのインタビュー取材を拒絶（実際インタビューは新聞・雑誌のみだった）していたが死去直前の2000年12月にTBSのブロードキャスターにインタビュー出演し（FOCUS20年史がテーマの取材だった）業界内で話題を呼んだ。
