張嶷
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張嶷（ちょうぎ、生年不詳 - 255年）は、中国の三国時代・蜀漢の武将。字は伯岐。巴郡南允国の人。張瑛・張護雄の父、張奕の祖父。演義では、何故か張疑（擬）（ちょうぎょく）となっている。または張儀とも記されるという。
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[編集] 略要
[編集] 叩き上げの将軍
貧家の生まれだが、若い頃から士気勇壮な人物として知られた。20歳の時に県の功曹となる。215年の夏5月に劉備が益州を平定した時、突然山賊が県を襲った。県令は家族を捨てて単独で逃亡したが、張嶷は自ら白刃をかいくぐり県令の家族を助けて、これを避難させている。このことを劉備から高く評価され、州の従事に任じられた。数年後に広漢や綿竹付近にが山賊に襲われた時は、張嶷は山賊らに対して和睦と称して言って偽りの酒宴に招き、その場で自ら側近を率いて山賊の首領筋ら50人余りを皆殺しにすることで平和を取り戻している。
[編集] 名将として
後に牙門将軍に任じられ、馬忠の副将として西南夷討伐と北伐などの遠征でチベット系羌族などの異民族を討伐したが、その勝利は彼の武勇・計略に拠るところが大きかった。丞相の諸葛亮の死後も南中に駐屯し、越嶲郡太守に任じられて、軍事・行政面において大いに功績を立てて昇進を続けた。盪寇将軍にまで昇り、最終爵位は関内侯であった。その後は異民族の統治に尽力を尽くして、彼等から敬愛されたという。
236年に、チベット系氐族の苻建（または蒲建とも。前秦の高祖･苻健とは別人で、その先祖に当たる）が蜀漢への帰順を願い出た。しかし、約束の日になっても氐族の部隊は到着せず、大将軍の蒋琬はこのことを大いに心配した。その時、張嶷は「苻建の弟･苻双は狡（ずる）賢い人物と聞いておりますし、また、苻建の手柄（帰順のこと）に同調できない親族がかなりおり、部族間で分裂が起こったのでしょう」と言った。果たして、弟の苻双は四百戸の部族を率いて司馬懿を通じて魏に降り、蜀漢に帰順したのは苻建ただ一人だったという。
張嶷は人物を見る目にも優れた。蒋琬の後任の大将軍となった尚書令の費禕は、帰順したばかりの者でも信用し、あまりに無防備だったので、張嶷は暗殺の危険性を忠告した。しかし、費禕は聴き容れず、果たして253年の正月の新年祝いの宴の最中に魏の降将である郭循によって殺害された。また、同年に呉の諸葛恪が魏に出兵しようとすると、従弟に当たる諸葛瞻に手紙を送った。ところが、諸葛瞻から相談を受けた張嶷は諸葛恪に対して、魏の出兵を中止し、数年間は国力を蓄えるように忠告した。諸葛瞻は張嶷のいう通りに従兄に返事を送った。だが、諸葛恪はこれを無視したために果たして、諸葛恪は惨敗し、呉の宗室である宰相の孫峻によって、一族皆殺しにされた。
また、252年に魏の隴西郡狄道の県長の李簡が蜀漢に帰順したい旨の書簡を送った時に劉禅を初め、費禕らは李簡の行為を疑った。だが、張嶷はこの時は病に侵されていたが敢えて「李簡は本心で、わが国に帰順したい意思を持っております。この私が保証します。彼は隴西の名族で彼の李広の後裔であり、人望があります」と進言した。張嶷の言葉に納得した費禕は衛将軍の姜維を副将に据えて、張嶷を隴西に侵攻を命じた。果たして、李簡は張嶷･姜維が隴西に来ると城門を開いて側近と共に帰順したのである。
[編集] 壮絶な最期
姜維が諸葛孔明の遺志を継いで北伐を再開した時、張嶷は重病の身を押して出陣した。演義では魏軍に追い詰められた姜維を助け出すために突撃して戦死したことになっているが、正史では255年に魏の勇将・徐質と戦って敗北したものの、自ら殿軍として魏軍に二倍の損害を与えつつ壮絶に戦死したのである。張嶷の陣没を聞いた恩顧を受けた多くの異民族は彼の死に涙を溢れ出して慟哭を繰り返し、その功績の碑文を称え偲んだという。
最後の戦役の出立に際し、張嶷は後主劉禅に別れの言葉を告げている。
「臣は陛下の恩寵を受けながら、病によっていつ死ぬかわからぬ身となり、急に世を去りでもして、ご厚恩に背きはしないかといつも恐れておりましたが、こうして願いが適い、今軍事に参加する機会を得ました。仮に涼州を平定したならば、臣は外にあって逆賊を防ぐ守将となりましょう。しかしながら、もし不運にも勝利を得られなかったならば、わが命を捧げ国家のご恩に報いる所存でありまする」と述べている。
劉禅はその言葉に感動し、彼のために涙を流したという。その死は多くの人々に惜しまれて、廟（或いは石碑）を建立し、今日まで祀られたといわれている。
[編集] 演義で脇役の張嶷
演義では南蛮遠征からの登場となっているが、南蛮征伐での功績は、殆ど諸葛亮が独り占めとなっている。また、祝融に一騎打ちで挑み返り討ちに遭って馬忠と共に捕縛されたり、北伐では王双と一騎打ちして重傷を負わせられたりと、彼は脇役の二流の将軍として描写されている。しかし、正史による記述では間違いなく一流の将軍であったのである。
