李広

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李広（りこう、？ - 紀元前119年）は、中国前漢時代の将軍。文帝、景帝、武帝に仕えた。秦の名将の李信の曾孫に当たる。彼は隴西郡成紀県（現/甘粛省天水市秦安県）の人だが、その先祖の李信は長安市内にある槐里県（現/陝西省の西安近郊にある茂陵の別名、或いは廃丘、犬丘ともいい、かつてはチベット系ともテュルク系ともいわれた遊牧民族の犬戎の拠点だったという）の人だったという。従弟に丞相の李蔡がいる。

[編集] 概要

[編集] 飛将軍

紀元前166年、匈奴征伐に功があり、その時に文帝から「君らが高祖の時代に生まれていれば1万戸の侯にもなれたであろうなあ…」と言わしめた。景帝の時代には呉楚七国の乱の際、驍騎都尉に任ぜられて、155年に周亜夫の下で呉楚七国の乱を鎮圧する功績を立てた。後に上郡の太守となり、その時に10倍の匈奴軍に囲まれたことがあったが、わざとゆっくり後退し、伏兵があるように見せかけたため匈奴軍は追わずに引き揚げた。この頃には匈奴から飛将軍と怖れられた。

[編集] 悲運の名将

武帝の時代の紀元前129年、匈奴との戦いに敗れて捕虜となった。その後、脱出して長安に戻ったが、武帝の逆鱗に触れて罪を問われ平民に落とされた。数年後に将軍として復帰して再び匈奴と戦うがいい戦果を得られず、紀元前119年の匈奴攻略の時には李広は高齢を理由に外されそうになった。李広はこれに猛抗議してようやく参戦が許された。しかし、前将軍であったのが、武帝の密命を受けた大将軍衛青によって搦手の軍に回された。李広は不服であったがそれに従い別方面から進軍したが、たまたま道案内がいなかったため、道に迷って匈奴との戦いに遅れてしまった。衛青がそのことに対しての報告書を出そうと李広の部下を詰問したところで李広は思わず、
「わしは成人してからこのかた匈奴と大小七十数回戦った。今回幸運にも衛青大将軍に従って単于の兵と戦える機会に恵まれながら、大将軍の衛青がわしを後方の部隊に回したため道に迷って遠回りをする羽目になった。これが天命でなくてなんであろうか！」
と叫んで、彼はそのまま自刎した。
これを聞いた李広の配下の将校はもちろん、民衆も李広の死を聞いて老若男女の区別なく涙を流したという。

[編集] 石に立つ矢

李広は弓の名手であり、ある日狩りに出かけて虎をめがけて矢を放った。しかしそれは虎ではなく大きな石であり、李広の矢はその石に刺さっていた。その後李広は何度となくその大石に矢を放ったが一度も刺さることがなかった。

[編集] 桃李言わざれども下自ずから蹊を成す

李広は清廉な人物であり、泉を発見すれば部下を先に飲ませ、食事も下士官と共にし、全員が食事を始めるまで自分の分には手をつけなかったという。後に司馬遷はこの人柄について触れ、「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」（桃や李の木は何も言わないが、その下には自然と人が集まって道ができる）と評した。
なお、日本の大学である成蹊大学や大阪成蹊大学などの名前はこれを出典とする。

[編集] 李広の息子

李広の末子の李敢は父の死のことで衛青を恨み、酒宴の席で衛青を殴打した。だが、このことを知った衛青の甥の霍去病が激怒して「わが衛一族を侮辱した行為は死をもって酬いてもらうぞ」と叫んで、李敢を狩猟場で射殺したのである。長男に李当戸という人物がいた。彼は父譲りの武人だったが、武帝の側近の韓嫣という戦国時代の韓の末裔が武帝の寵臣ということで皇族さえを見下すなど、跋扈な行為をしていた。若い将校はこの韓嫣に対して大変不快感を持ったが武帝の寵臣のために手を出せなかった。そこで李当戸が立ち上がって「よし、俺が韓嫣を殴ってやる！」と言い出して韓嫣の館に乗り込んで、本当に殴ったのである。その時の李当戸は不敵な面構えで「韓嫣が陛下に無礼を働いたので、懲らしめました。」と言って武帝に報告した。武帝も李当戸に対して自分の寵臣が殴られるなど、不快感を感じながらも「当戸のその勇気を褒めて仕わす。」と罪を不問としたのである。その李当戸は早世し、その遺児が李陵である。また李敢には李椒という次兄がいたがこれも長兄同様に早世した。さらに李敢は二人の子がいた。男子は李禹と言い、李陵の従弟に当たるが彼は李陵と違い、吝嗇で金銭の執着が強かった。女子はまた李禹の姉で、皇太子の劉拠の側室となったので、李禹は戻太子（劉拠）に信頼されてその近侍となった。だが、この二人は従兄の李陵が匈奴に帰順すると、そのことに激怒した武帝によって李陵の妻子とその祖母・生母・兄と兄一家と共にまとめて処刑されたという。これ以来、唯一生き残った李椒の子孫は李陵の件を恥じて、隴西李氏の末裔であることをひたすらに隠したと言う。