山川捨松
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山川捨松（やまかわ すてまつ）（大山捨松（おおやま すてまつ）、（安政7年2月24日（1860年3月16日） - 大正8年（1919年）2月18日）は、明治の女性。幼名は「咲子」。父は会津藩家老山川尚江、兄に山川浩、山川健次郎、姉に女子教育で活躍した山川二葉がいる。
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[編集] 略歴
会津に生まれる。戊辰戦争の時には家族と共に会津若松城に籠城し、大怪我を負うという経験をしている。
1871年（明治4年）、明治政府が派遣する岩倉使節団において、女子留学生のひとりとして渡米、この時母・唐衣（からころも）によって「捨松」と改名する。「国のため捨てたつもりで帰国を待つ」という意味があるとされる。その後ヴァッサー・カレッジ（ヴァッサー大学）を卒業。アメリカの大学を卒業した初の日本人女性となった。大学卒業後、さらにコネティカット看護婦養成学校で甲種看護婦の免許を取得。
明治14年に帰国後、戊辰戦争で薩軍砲隊長だった陸軍卿大山巖と結婚。結婚後は得意の英語や堪能であったフランス語・ドイツ語を生かし、当時の外交の舞台だった鹿鳴館の華とうたわれ、慈善バザーなどを開いた。その収益で日本初の看護学校を設立している。その後、伊藤博文の要請により下田歌子とともに華族女学校の創立に貢献した。が、旧態依然とした公家や大名出身者の多い華族には女子教育の重要性を理解してもらうことができず、その不満が後に津田梅子を支援することにつながったといわれる。
その後、戦時下においては寄付集めや婦人会の活動をしていた。このときには看護婦の資格を生かして、実際に病院で看護婦もしていた。日露戦争ではアメリカのマスコミは日本に対して好意的な記事が多かったが、その裏には捨松の投稿など影の支援があったと言われる。アメリカからの寄付を戦没者未亡人の支援に振り分けたのも捨松の功績とされる。
また岩倉使節団で共に留学した津田梅子の女子英学塾（後の津田塾大学）を、同じ元留学生の瓜生繁子（旧姓：永井）と共に金銭面・人事面で支援した。
夫・大山巌の死後は表だった活動を控えていたが、大正8年（1919年）、津田梅子が病で倒れた後混乱する女子英学塾の運営を取り仕切った。しかし、津田梅子の後継学長を決めた後、疲労から当時流行していたスペイン風邪（インフルエンザ）に倒れ急逝した。
「賊軍の娘」から「陸軍元帥夫人」にまで上り詰めた彼女は、その日本人離れした容貌もあって世間の羨望と嫉妬の的になりやすかったらしく、先述の鹿鳴館での仮装パーティ後に事実無根の離婚説を新聞に書かれたり、後述する『不如帰』でのモデル事件など、次々とゴシップに巻き込まれている。また晩年には長男・高が若くして事故死するなど心労の多い人生でもあった。
[編集] 『不如帰』と山川捨松の実像
ところで夫・大山は再婚で、先妻との娘を3人連れていた。しかしそのうちの長女・信子は後に結核のため早世、彼女をモデルとして徳富蘆花が書いた小説が「不如帰」である。ただし、この小説の中で捨松は「冷たい継母」として脚色されていた。もちろん事実とは異なっていたが、この小説が売れたために世間では捨松を冷たい目で見る空気があり、彼女は晩年までその風評にかなり悩んでいたという。しかし徳富蘆花から公式に謝罪があったのは捨松の亡くなった年であった。
ちなみに実際の捨松は大山巌との間に2男1女を儲け、大山の連れ子からも慕われており、絵に描いたような「良妻賢母」であった。
[編集] エピソード
[編集] ステーキ
捨松と大山巌の間には18歳もの年の差があり、歴史的な経緯からも難色を示す山川家を口説き落として捨松は大山に向かえられた。それほどに捨松は夫に溺愛されていた妻であった。
ある時、とある新聞記者が捨松に
「閣下（＝大山巌）はやはり奥様の事を一番お好きでいらっしゃるのでしょうね」
と聞くと、捨松は
「違いますよ。一番好きなのは児玉さん、二番目が私で三番目がビーフステーキ、ステーキには勝てますけど児玉さんには勝てませんのよ」
と言って煙に巻いたという。ちなみに「児玉さん」とは児玉源太郎のことである。
[編集] 日本語
アメリカ留学中も時々兄の健次郎と会っていたこともあり、帰国後も日本語の会話には困らなかった。が、作文は晩年まで不得手であり、子供へのことづても英語で書いていたという。時には夫とはフランス語で会話していたこともあった。日本語で文章を書けなかったことは彼女が留学後公職に就けなかった原因にもなっており、晩年までコンプレックスとなっていた。
[編集] 関連項目
- 捨松アメリカ留学時に寄宿していたベーコン家の末娘。後に女子英学塾（後の津田塾大学）に招聘されるなど日本の女子教育に貢献。
[編集] 参考書籍
- 久野明子『鹿鳴館の貴婦人 大山捨松』中央公論社 ISBN 4122019990
- 大山柏『金星の追憶』「母の生涯と我が思い出」鳳書房
