パプテマス・シロッコ
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パプテマス・シロッコ,(Paptimus Scirocco,U.C.?~0088年2月22日)は、アニメ『機動戦士Ζガンダム』に登場する架空の人物。地球連邦政府の木星資源採掘船ジュピトリスの責任者。階級は大尉、劇場版では大佐。(声:島田敏)
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 経歴及び劇中での活躍
木星船団を統率する指揮官であり、所謂「木星帰りの男」。自らを「時代の立会人」であるとして傍観者的立場を決め込むものの、長年に渡る木星圏での生活は彼にある種の悟りを開かせるものでもあり、ニュータイプとしても極めて優れた資質を備える。事態の行く末を常に予見するかの様な洞察力や、独自開発による数々の優秀なモビルスーツを世に送り出す技術的素養、そして、己にとって有益と思われる人材を次々と虜にしていく天性のカリスマ的才能を備えた、まさしく天才肌の軍人である。
シロッコは宇宙世紀0087年4月末に地球圏へと帰還した際、ティターンズ首領ジャミトフ・ハイマンに対し「血の誓約書」といった古風な忠誠をたて、表向き恭順を示すとともにグリプス戦役に参画する。しかし、彼は組織内において瞬く間に頭角を現し、同時にジャミトフの手に余る存在となっていく。ティターンズ旗艦ドゴス・ギア艦長を任され、アポロ作戦時における月面都市フォン・ブラウン市制圧など、優れた戦績を上げる一方で、同時期地球圏に帰還した旧ジオン公国軍残党アクシズのミネバ・ラオ・ザビに対しても忠誠を誓うなど、その巨大な力をも手中に納めんとして策略を巡らせていく。
戦争終盤、アクシズ旗艦グワダン内において指導者ハマーン・カーンとジャミトフが同席する会談が行われる。これを好機と見たシロッコは、謀略によって同艦をモビルスーツ隊に奇襲させる。その混乱に乗じて彼はジャミトフを暗殺、それをハマーンの陰謀によるものとし、弔い合戦と称して全軍に呼びかけ、ティターンズの実権を掌握する。シロッコはグワダンを沈め、自ら開発したモビルスーツジ・O駆り、ハマーンのキュベレイと対峙、ニュータイプ同士の熾烈な戦闘を展開する。
その後エゥーゴは「メールシュトローム作戦」を発動。グリプス2を改装したコロニー・レーザーを巡って三つ巴の戦闘に突入する。各勢力から突出したフラッグ・シップ機はコロニー・レーザー内において死闘を繰り広げ、シロッコはハマーンと共に、エゥーゴのZガンダム、及び「赤い彗星のシャア」ことクワトロ・バジーナ操る百式を追い詰める。しかし、結果的にコロニー・レーザーは発射され、ティターンズは主力艦隊を喪失、シロッコは撤退を余儀なくされる。その後、彼はジュピトリスを目前としてZガンダムと遭遇、これを蹴散らさんと襲い掛かる。しかし、死者の意思を吸収したカミーユ・ビダンの搭乗するZガンダムの不可思議な力の前に、乗機ジ・Oの制御を封じられてしまう。シロッコの肉体は機体と共に爆散し、その野望は宇宙の闇に潰える事となる。
尚、小説版においては物語の結末が若干異なり、ジ・OはZガンダムとの決戦においてΖガンダムから放たれたオーラによって機体制御を失い、シロッコと共にコロニー・レーザーの閃光に焼き尽くされ、消滅する。
シロッコは生前、ニュータイプとして極めて優れた才能を示し、権力を手中に納めている。しかし、実際には彼は地球圏の掌握には然程興味を持っていなかったとされている。その証拠に、シロッコの理念はどれも曖昧模糊としたモノローグにて語られており、ハマーンやジャミトフの様な、統治後の具体的な指針を明示してはいない。シロッコは「力」(男性的権力、或いは個人的才能と置き換えても良いだろう)のみで世を治める事は出来ないとして、己の人間としての限界を自覚しており、その事が彼に「女性による世界統治」を提唱させたのであろう。事実、彼はサラ・ザビアロフやレコア・ロンドといった聡明な女性を配下に置いており、自らの感性をも研ぎ澄ませていたという。彼女らがシロッコの野望を達する為に、その尖兵としての役割を担っていたことは確かであるが、決してシロッコは彼女らを単なる手駒と捉えていた訳ではない。シロッコは彼女らの中に、己の持ち得ぬ女性としての資質を見出し、一個の人間としてそれなりの誠実さを持って接していたのである。だからこそ、サラが戦闘中に自らを庇って戦死した折、シロッコは激怒し、彼女を撃墜した名も無き一兵卒に過ぎないカツ・コバヤシへと銃口を向けたのであろう。
しかし、また一方でシロッコは、自らの優れた技術的・政治的才能をその心中に燻らせていた事も確かである。彼が戦乱に身を投じた真の理由は、純粋に己が能力を戦争という舞台を借りて発揮せん事を求めていた為に過ぎないとする見方もある。シロッコと対峙したシャア・アズナブルは、彼をして「役者」と表現しており、その意味でシロッコとシャアは、その本質を同じくする存在であったとも言われている。だが、優れた才能とは同時に周囲との軋轢、他者への圧迫を生むものでもある。シロッコは、本質的には「悪人」ではなかったのかも知れないが、結果として彼の才能は、更なる災いの種を呼び込む事に繋がり、他者を自分の野心のために道具にする傲慢さ故に「究極的なニュータイプ」と称されるカミーユ・ビダンの怒り、また死んでいった者達の「念」よって、その野望に終止符を打たれてしまう。シロッコの死は、まさに訪れるべくして訪れたものと解釈する事も出来るが、己が才能を誇示せんと欲する事は、人間が本来的に抱える業でもある。もしも、彼がグリプス戦役終結後も存命であったならば、ティターンズ崩壊後は再びネオジオン、或いはエゥーゴと手を結び、その才能を歴史に刻み続けていたのかも知れない。
純粋なモビルスーツ・パイロットとしての技量は、エゥーゴきってのエースであるクワトロ・バジーナを凌駕するものを備えており、自ら開発したニュータイプ専用機ジ・Oの性能を存分に奮い、並みいる強敵を相手にこれを圧倒した。特に、彼と並ぶ稀代のニュータイプ・パイロット、ハマーン・カーンとの交戦時にはファンネルによるオールレンジ攻撃を完全に封じ(かつてのアムロ・レイと同じように、動くファンネルにあわせて移動する位置を読みきり、銃口を微調整した上でビームライフルを撃ち、撃破している)、プレッシャーの掛け合いにおいて一歩も引かず、これと対峙している。
[編集] 開発、及び搭乗機体
- PMX-000 メッサーラ
- PMX-001 パラス・アテネ
- PMX-002 ボリノーク・サマーン
- PMX-003 ジ・O
- PMX-004 タイタニア