サイドカー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サイドカー
- 側車付きのオートバイ。本稿で詳説。
- カクテルの一種→サイドカー (カクテル)
サイドカー(Sidecar)とは、オートバイや自転車などの二輪車の横にもう一輪の車輪を取り付けた、変則的な三輪車、あるいはその横に取り付ける部分のことを言う。側車とも呼ぶ。
目次 |
[編集] 歴史
四輪の自動車がまだ一般化する前、オートバイや自転車は今よりももっと実用的で手軽な足として使われていたが、それらは大きな荷物を運ぶには適さず、また安全に複数名が搭乗することも困難だった。そこで、倒れることなく走れる乗り物として、オートバイや自転車の横にもう一輪の車輪を取り付けたサイドカーが考案された。オートバイのことを「単車」と呼ぶ風習は現在も生き残っているが、それは黎明期にはサイドカーは今よりももっと一般的であり、「サイドカーがついていないオートバイ」のことを区別して単車と呼んだことの名残である。
サイドカーは、荷物や人の輸送用・軍用などとして広く使われていた。しかしその後、軍用としてはジープ(アメリカ軍)・キューベルワーゲンやシュビムワーゲン(ドイツ軍)などの本格的四輪軍用車が登場したことによって、輸送用としてはオート三輪を経て四輪のトラックや乗用車が広まったことによって、実用性を失っていった。
独特の操縦性やオープンエア感覚などもあり、実用性を失ったあとも根強いファンがいる。ただし、希少性が増すにつれて、非常に高価な乗り物となってしまい、趣味性の強化とあいまった悪循環におちいっている。
[編集] 形態および技術
一般に、オートバイの左右どちらかの横にもう一輪の車輪を置き、オートバイとその追加された車輪との間をフレームで結び、オートバイとその車輪との間のスペースに乗車用スペースあるいは荷物用スペースを設置するという形態をとる。乗車用スペースが置かれる場合、その乗車用設備の外装のことを、「舟」あるいは「カー」と呼び、対してオートバイを「本車」と呼ぶ。オートバイの右側に舟があるものを「右カー」と呼び、左側にあるものを「左カー」と呼ぶ。また、サイドカーが付いていない状態のオートバイを「ソロ」または「単車」と呼ぶこともある。
舟を取り付ける側は、一般に右側通行の国ではバイクの右、左側通行の国ではバイクの左である(四輪車の運転席と同じ側にオートバイが来るようにする)。パレードなどに使われる儀杖用のものの場合、左右のものを組み合わせてシンメトリーに並走することもある。
現在では、「オートバイの車体+サイドカーのフレーム」という構成にはせず、全体をサイドカー専用設計としたものもある。また、そういった設計のものの場合には、オートバイ本体とサイドカー側の舟は独立しておらず、一体のデザイン(クラウザー・ドマーニ等)とされる。
技術的には、サイドカーをつけている場合にはオートバイ単体のように、降りて引っ張って人力で後退させるということが困難であるため、バックギアあるいはバック走行用のモーターを持つものが多いという特徴を持つ。また、まれにサイドカー側の車輪をも駆動して走行性能の向上を目指したものがある(「陸王97式陸軍サイドカー」、ロシア製ウラル、ドニエプルなど)ウラル社のUralサイドカーは日本代理店もあり2輪駆動モデルが現在も新車が販売されている。
[編集] 特徴
サイドカーは、極端に左右が非対称の乗り物であるという特徴があり、そのため操縦性も他の乗り物と比べて非常に特殊なものとなっている。
一般に、乗り物は左右のどちらにコーナリングするにしてもおおむね似たような挙動をとるものが多い。しかしサイドカーの場合、左右の挙動が全く異なる。また、加速・減速の際にも、片側に大きな質量を抱えているため、まっすぐには走らない。具体的には、加速する際にはサイドカーをつけている側にハンドルを取られ、減速する際にはサイドカーをつけていない側にハンドルを取られる(これらは、調整などによって多少は軽減できるが、全くそういう傾向をなくすことは困難である)。ロシア製ウラル・サイドカーのようにサイドカーの車輪も駆動する2WDモデルでは上記のような車体の挙動変化が穏やかになる傾向がある。
そういう意味でも、実用性という点ではいまひとつであり、趣味性がクローズアップされる乗り物となっている。
なお、「オートバイ+α」と受け止められているため小さなものというイメージがあるが、実際には普通の乗用車などより幅が大きいことが多い、かなり大柄な乗り物である。
[編集] スポーツ
サイドカーは、オートバイの一種であり、当然のようにモータースポーツにも使われる。
ロードレースに該当するものとしては、ニーラーと呼ばれる非常に車高が低い特殊なサイドカーを使ったものがある。ニーラーは、オートバイとサイドカーが、フレームやカウリング(風除け)なども含めて一体でデザインされたものとなっている。通常のオートバイとは異なり、ドライバー(操縦者)およびパッセンジャー(同乗者)のいずれもがひざで体重を支えるような乗車姿勢を取る(ゆえに、ニー-膝-から、ニーラーと呼ばれる)。
- 注釈
- 一般にオートバイの操縦者は「ライダー」と呼ばれるが、サイドカーに関しては「ドライバー」と呼ばれることが多い。サイドカーが、オートバイと四輪車の中間に位置するものであり、操縦テクニックはどちらかというならば、やや四輪車に近いためであろう。
モトクロスに該当するものとしてサイドカーモトクロス、トライアルに該当するものとしてサイドカートライアルというものもある。これらは、ニーラーに比べるとだいぶオートバイの原型を残している。
これらのサイドカースポーツに共通しているのは、「ドライバーがひとりで操縦するものではない」ということである。コーナリングなどの際には、パッセンジャーの体重移動なども大きく影響するため、ドライバーとパッセンジャーのそれぞれが高い技術を持っていることだけでは足らず、ふたりの息がどのくらい合っているかによっても成績が左右される。これは、ラリーやパワーボートレースなどとも共通する要素であり、モータースポーツとしては独特の分野を築いている。
[編集] 日本における法律的要件
- 自動二輪車のサイドカー
- 自動二輪車にサイドカーを付けた場合には、道路交通法上は自動二輪車に準ずるものとして扱われ、運転免許には排気量相当の自動二輪車免許が必要となる。種々の二人乗り規制は全て適用除外となる。
- ただしサイドカーと車体を分離したとき、オートバイとして単独で運転できない車両については、トライク同様の扱いとなり普通自動車免許が必要となる(ウラル型2WDサイドカーはこれに該当。別名サイドトライクなどとも呼ばれる)
- 道路運送車両法上においては、側車付二輪自動車(側車付の二輪の自動車)として扱われ、排気量250ccを超える車両は二輪の小型自動車、50ccを超える場合は二輪の軽自動車としての扱いとなる。50cc超~250cc以下についても原付二種扱いとはならないため、高速道路の通行が一定の条件下で二人乗りも含めて可能となる。ただし、通常の原付二種バイクに単にサイドカーを付けただけでは、灯火や制動性能その他について、二輪の軽自動車としての道路運送車両の保安基準の要件を満たさない可能性が高い。
- その他のサイドカー
- 50cc以下の二輪の原動機付自転車にサイドカーを付けた場合には、道路交通法上は、直ちに原動機付自転車に準ずるものとして扱われる訳ではない。よって、三輪の車両として扱われるが、平成2年12月6日総理府告示第48号により、通常は輪距が〇・五〇メートルを超えるために、サイドカーを付けた場合には20cc以下でないと道路交通法上は原動機付自転車とは扱われない。
- すなわち20cc超~50cc以下の二輪の原動機付自転車にサイドカーを付けた場合には、三輪のミニカーとして扱われる。ミニカーの乗車定員は通常1人であるため、サイドカー側に乗車することは出来ない。普通免許(ミニカー限定を含め)も必要となる。また、通常の原付一種バイクに単にサイドカーを付けただけでは、灯火や制動性能その他について、ミニカーとしての道路運送車両の保安基準の要件を満たさない可能性が高い。
- 20cc以下の二輪の原動機付自転車にサイドカーを付けた場合には、一応、三輪の原動機付自転車扱いになるが、いずれにせよ原動機付自転車の乗車定員が1人と定められているため、やはりサイドカー側に乗車することは出来ない。原付免許で運転可能。
- いずれの場合も、サイドカーに貨物積載は、積載物重量制限の範囲内で可能である。
- さらに自転車にサイドカーを付けた場合も、法令の規制により乗車定員が1人と定められているため、原動機付自転車等の場合と同様になる。
- 50cc以下の二輪の原動機付自転車にサイドカーを付けた場合には、道路交通法上は、直ちに原動機付自転車に準ずるものとして扱われる訳ではない。よって、三輪の車両として扱われるが、平成2年12月6日総理府告示第48号により、通常は輪距が〇・五〇メートルを超えるために、サイドカーを付けた場合には20cc以下でないと道路交通法上は原動機付自転車とは扱われない。
[編集] サイドカー・メーカー
[編集] 新車で入手可能なメーカー
- MZ(ドイツ) [1]
- ハーレーダビッドソン(米国)
- Watsonian-Squire(英国) 創業1912年 [2]
- IMZ-Ural(ロシア) BMWレプリカ
- Izhmash(ロシア) BMWレプリカ
- Dnepr(ウクライナ) BMWレプリカ
- 長江 (サイドカー)(Chang Jiang Motorworks)(中国) BMWレプリカ
[編集] 歴史的なメーカー
[編集] サイドカーが登場する作品
上記にもあるように趣味性の高さ故に、軍事用・民生用を問わず映画やアニメ作品などに登場することがある。
- 人造人間キカイダー、* キカイダー01
- 秘密戦隊ゴレンジャー
- 北斗の拳 他にも多数のバイクが登場
- ああっ女神さまっ
- 仮面ライダー555
- メタルギアソリッド3
- 勇者指令ダグオン
[編集] 文献
- Janusz Piekaliewicz(第二次世界大戦のBMW R12とR75) : Die BMW Kräder R12/R75 im Zweiten Weltkrieg, Motorbuch Verlag, 1977, ISBN 3-87943-446-8