もやしもん
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『もやしもん』は、2004年8月よりイブニングに連載されている石川雅之の漫画作品。菌・ウイルスと農業大学生活をテーマとしている。
英語表記では「TALES OF AGRICULTURE」(農業物語)。講談社より単行本1~3巻が発売中である(2006年5月23日3巻発売、4巻は12月22日発売予定)。1巻は他社の氏の作品集(人斬り竜馬、リイド社刊)と同日販売であった。1巻帯は古紙100%再生紙であり、インクは大豆由来のものを使用している。なおタイトルは、第1話が「農大物語」であり、第2話が「農大物語 もやしもん」、第3話は「農大物語改め もやしもん」、第4話は「新タイトル覚えてくれた? もやしもん」、今のロゴデザインになったのは、第5話「ロゴデザイン変えてみました。(農)もやしもん」からである(農は丸の中に稲穂と共に描かれている)。なお、単行本表紙のロゴデザインは統一されていない。単行本2巻第1刷には「もやしもんシール」が付録で付いてくる。2巻と3巻の装丁には、ちょっとした仕掛けが隠されている。さらに単行本の次巻予告は「※内容は予告なく全然変更になる事があります」と書きながら全くのデタラメが書かれている。余談だが、本作の知識が本格的であることから、近畿大学工学部では、著者に許可を取った上で、本作を正式に実験科目の「教科書」として利用している。
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[編集] 概要
作者の説明によると「農大で菌とウイルスとすこしばかりの人間が右往左往する物語」である。
東京にあるとされる「某農業大学」に入学した、「菌の存在」を知覚できるという不思議な能力をもつ主人公・沢木惣右衛門直保ををめぐる学園ドラマである。
なお、沢木が知覚する「菌」の存在は、かわいらしくデフォルメされたキャラクターとして描かれており、その造形で女性や若年層のファンも多く惹きつけている。
実際に、作者のHPにあるBBSには「子供も読んでいるので成人向けの描写は避けて下さい」というような内容の投稿も確認されている。
本作品では、菌たちが発する「かもす(醸す)」(繁殖する(発酵、腐敗させる)ことを意味する言葉)が作品のシンボル的フレーズとなっている。
単行本2巻の第23話に登場した「大吟醸生原酒 龍神丸 中どり無ろ過」はネット注文のみ限定10本(応募者多数と予想されたため抽選)で販売された。
※作者と同じ名字の「石川さん」が入手に成功している。 ちなみに、単行本第2巻13話に登場した「大吟醸生原酒 龍神丸」は、限定品ながら高垣酒造で一般販売しているが、2006年3月31日に発売された2006年度産は10時間ほどで完売した。
関連品として同社では,純米吟醸生酒「かもすぞ」を発売している。これには作者がデザインしたラベル(黄麹菌(A.オリゼー)と酵母菌(S.セレビエンシエ)とロゴが描かれている)を使用している。2006年度産はわずか13分で完売。
脚注を作画・作話へ有効に盛り込む手法は、同じ講談社の攻殻機動隊を彷彿とさせる。基本的には「菌」に関する記述は作者、それ以外は「担当さん(=担当編集者氏)」が担当している。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
[編集] 人間
- 沢木 惣右衛門 直保(さわき そうえもん ただやす)
- この物語の主人公。「某農大」農学部1年生。「もやし屋」こと種麹屋の息子。「惣右衛門」は実家の屋号。普段は「沢木 直保」と屋号を省略する。一見背の低い、どこにでもいる金髪の学生だが、空気中の菌が目に見えるという不思議な能力を持つ(手に取り、会話することもできる)。子供の頃気味悪がられたり嘘つき呼ばわりされ続けたため、本人はこの能力をあまり好ましく思っていない。菌が見える能力と、彼のどっちつかずな性格が原因で、様々な騒動に巻き込まれていく(または起こす)。いつも菌(黄麹菌)が頭や肩に乗っている。キャラが強烈な先輩たちにいつも振り回されている。美里や川浜といつも一緒にいるため、結城の他に友人がいないらしい。本人も気にしている様子。餓狼伝の丹波文七と並ぶ、イブニング誌上最も影の薄い主人公であり、連載一年後に初めて沢木に対するファンレターが来た。なお、作者は「髪の毛が書きにくい」とぼやく。とある事件により、一時的かその能力の消失が確認されている。能力の消失はよくある事らしい。
- 結城 蛍(ゆうき けい、現在1~15話、46話~。第34話で欄外に登場)
- 樹 慶蔵(いつき けいぞう、第1話~)
- 長谷川 遥(はせがわ はるか、第1話~)
- 「某農大」の大学院生(博士課程在学)。艶っぽい容姿、威圧的なダブルの白衣の下にボンデージ風の服を着込み、しかめっ面で暴力的、時には鞭を振り回す女王様気質の女性。川浜曰く「女の形をした爆弾」(第18話の台詞)。しかし、化粧をとった素顔は可愛い。美里・川浜の言動にイライラしている。家は資産家で、過保護気味とのこと。また、酔うと特殊な酒癖が出る。本人は「甘え癖」というが…。また、「定められた未来」(第31話参照)からか、やたら研究に没頭したりするなど、自分を追い込む傾向がある。樹の家来と思いきや実はとんでもない企てをたくらんでいた(第36話参照)。第2話で沢木によって水虫が発達している事をバラされ、それ以来長い戦いを続けていたが、第24話で完治。
- 美里 薫(みさと かおる、第2話~)
- 川浜 拓馬(かわはま たくま、第2話~)
- 及川 葉月(おいかわ はづき、第6話~)
- 沢木と同じクラスに所属する「某農大」農学部1年生。樹にナンパ?されて来たところから主人公たちと知りあう。除菌マニアで潔癖症気味であり、電車のつり革につかまるのも嫌がり、部屋は沢木曰く無菌室状態である(第42話参照、ただし沢木が菌を見ることができなかった為の可能性がある)。沢木同様、教授や先輩に振り回されている。沢木は彼女に「菌が肉眼で見える」能力を教えていない(除菌マニアの彼女に嫌われたくないためか?)ため、具体的には彼の能力を知らない。沢木は「ただのクラスメート」と言っているが、彼とよく一緒にいるため、周囲は仲良しと認識している。次期ミス農大候補と目されているらしい。講談社刊「週刊石川雅之」収録の「フランスの国鳥」に登場する「はづき」との関連は不明。
- 武藤 葵(むとう あおい、第13話~第33話、第35話、第38話~)
- 宏岡亜矢(ひろおか あや、第16話~)
- 日吉菊二(ひよしきくじ、第12話~)
- 金城優(かねしろゆう、第33話~37話)
- 沖縄にある某農大南の島実験農場の管理人。外見は色黒になった結城蛍といった感じだが、こちらは女性。何かを憂えている様子。
- UFO研の面々
[編集] 細菌・菌・ウイルス
もやしもんに登場する細菌・菌類・ウイルス達。かわいくデフォルメしたデザインで登場する。「かもすぞー」が口癖(危険な菌は「かもしてころす」と言う)。『もやしもん』以外の漫画作品にも登場したことがある(高梨みどり『銀座の番ねこ』、やぶうちゆうき『警視正 椎名啓介』、二ノ宮知子『のだめカンタービレ』、寺沢大介『喰いタン』)。担当編集者には彼らのオリジナルストラップ製作の夢がある。なお実際とは多少異なるため、詳細は文献やリンク先を参照のこと。アルファベット順に示す。また、菌類と細菌とウィルスがごっちゃになっているので注意が必要。
- A.アルテルナータ(Alternaria alternata)
- A.アワモリ(Aspergillus awamori)
- 温暖な気候に適し、名前の通り泡盛など南方の酒をかもす。
- A.オリゼー(Aspergillus oryzae)
- コウジカビの一種、黄麹菌。いつも主人公の肩や頭に乗っかっている、菌側の主役的存在。合体して巨大化することも。デンプンを糖に分解する。温暖な気候を好む。第38話ではいじめられる。
- B.シネレア(Botrytis cinerea)
- ハイイロカビ。貴腐ワインを作る。
- C.ボツリナム(Clostridium botulinum)
- C.パーフリンゲンス(Clostridium perfringens )
- C.シネンシス(Cordyceps sinensis)
- 虫草菌。コウモリガの幼虫の死骸から冬虫夏草を作る。借金返済のために美里と川浜が飼っていた物は及川の除菌攻撃の前に全滅。
- O-157(Escherichia coli O157:H7)
- 腸管出血性大腸菌。少しだけ悪そうな顔で描かれている。
- F.ロゼウム(Fusarium roseum)
- ゲオトリクム(Geotrichum spp.)
- 分節胞子を作る分生子形成菌。白っぽいコロニーを作る。酵母に近い性格。
- L.フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)
- L.ヨグルティ(Lactobacillus yogurti)
- 日本で作られるヨーグルトによく入っている。作中では日本産ヨーグルトに使われることから、ちょんまげがついたデザインで描かれ、語尾に「ござる」とつけて喋る。現在は菌の分類が変わり、学術的にはこの名前は使われていない。
- M.フルフル(Malassezia furfur)
- 癜風菌。フケの原因菌であるが、表皮常在菌の一員として皮膚に病原菌が付くのを防ぐ働きもする。
- M.ムセド(Mucor mucedo)
- ケカビの一種。大型のもの、獣糞などに出現。
- M.プシルス(Mocor Pusillus)
- ケカビの一種。好高温菌。チーズ作りに利用。
- P.クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)
- フィザルム・ポリセファルム(Physarum polycephalum)
- モジホコリ、変形菌の一種。もっともよく実験に使われる種。作品中では迷路実験をさせられている。
- ライノウイルス(Rhinovirus)
- ライノとは鼻のこと。上気道炎を起こす。潜伏期間が1-3日と短く、吸い込んだら翌朝風邪をこじらせる可能性がある。
- R.ジャパニクス(Rhizopus japanicus)
- クモノスカビの一種。中国で酒を造るのに利用
- S.セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
- S.アウレウス(Staphylococcus aureus)
- S.エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis )
- 表皮ブドウ球菌の一種。表皮常在菌の一種で、体が健康な場合は善玉菌として皮膚に雑菌が付くのを防ぐ。
- S.ラクチス(Streptococcus lactis, Lactococcus lactis)
- 乳酸菌の一種。牛乳加工に役立つ。
[編集] それ以外の生物
- デモデクス・フォリキュロラム(Demodex folliculorum)
[編集] 発酵食品
もやしもんに登場する発酵食品たち。
- 口噛みの酒
- 口嚼ノ酒。上記の通り、美里が披露した。作中ではそれに川浜が卵鞘(ゴキブリのものと思われる。第九話参照)を入れていた。
- ヨーグルト
- 乳酸菌発酵させた牛乳。沢木は菌が見えてしまうので苦手。
- カルピス
- 乳酸菌飲料。作中に登場するのは某農大オリジナルのカルピス風飲料。腹を壊した沢木に長谷川が飲んでいた物を勧めた。
- ワイン
- 葡萄酒。現在発酵蔵完成年記念ワインをかもし中。また、武藤が発酵蔵責任者にされた原因にもなった。
- 納豆
- 日本が世界に誇る発酵食品の一つ。
- シュールストレミング
- スウェーデンが誇る世界最強の発酵食品。現地では「レ」と「ロ」の間の発音をする。武藤がこれのせいで酷な目に合わされた。