MSX・FAN
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MSX・FAN（エムエスエックスファン、略称Mファン）は、徳間書店インターメディア（略称TIM 現徳間書店）発行の、MSX専門のコンピュータ雑誌。
1987年3月創刊、1995年7月休刊。 月刊誌で通常は毎月8日発売（月刊での発行は1993年2月まで。1993年3月より隔月刊誌に変更）。雑誌だが、付録ディスクがつくようになった後の発行形態はムック。
創刊前の仮称は、M-COMマガジン。 ゲーム情報と投稿プログラムがメインの雑誌で、ライバル誌はMSXマガジン。
MSX FANと書かれることが多いが、正しくはMSXとFANの間には中黒が入る。
廉価版MSX2である、松下電器の「A1」シリーズ/ソニーの「F1」シリーズの発売後に創刊。最初に特集したゲームは日本ファルコムの『ロマンシア』『ザナドゥ』など。
MSX誌としては後発で、色々な試みが行われた。
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[編集] 創刊からMSX2+の登場まで
MSX・FAN創刊直前に休刊したプログラム投稿誌プログラム・ポシェット誌からMSXの投稿プログラムが独立して、ゲーム情報を足したような雑誌で、同誌と同様にコンピュータ総合誌テクノポリスの弟分の存在だった。先発の兄弟誌としては、ゲーム専門誌のファミリーコンピュータマガジンがあった。また、弟分としてはゲーム専門誌のメガドライブFANやPCエンジンFANなどがあった。
誌面は、新作ゲームなどの攻略、MSXの新作ハードのみならず最新のハイテクやイベント情報を紹介する「FFB(ファンファンポックス)」、読者投稿プログラムを紹介する「ファンダム」、広告と開発中の新作紹介、新作カレンダー、メーカー担当者へのインタビュー、から構成されていた。特集は別冊がつくこともあった。
[編集] 「FFB」と「ゲーム十字軍」
「FFB」では、ライター バボの独特な毒舌が冴える「おはなしこんにちわっ」や「暮らしの適当手帖」、野見山つつじのイラストと投稿イラストの批評コーナーが特に好評だった。
のちに「FFB」からゲームの裏ワザやQ&Aをのせるコーナー「ゲーム十字軍」が独立し、ゲームを愛好する読者から多くの投稿が寄せられた。このコーナーでは毎回アダルトものの画面を載せたり、編集者の方針で突発的にその特集をすることがあった。後には、中野カンフーのナンセンスな4コママンガの連載も行われた。また、本誌に掲載された情報を集めた同名のムックも発売された。
ちなみに当初は、創刊時に募集したイメージギャルに毎回コスプレをさせて十字軍などのトビラを飾っていたが、2回目の募集は行われず、トビラはモデラー製作のフィギュアに変更された。
[編集] 投稿プログラムコーナー「ファンダム」
「ファンダム」では、読者や、時には編集部の作った、MSX-BASICのプログラムリストを掲載していた。「1画面プログラム」（screen0:width40の設定でプログラムリストが１画面に収まる長さのプログラム）などを特設し、短いプログラムを奨励し、プログラム解説ページ、プログラマからのコメントを設ける等の方針を通して、スマートなプログラミングを啓蒙していた（ただし、プログラムリストの行数を短くする目的のマルチステートメントが多いなどの限界はあった）。
また、チェックサムを載せたり、プログラムリストの行番号を別色にして見やすくするなどの配慮が行われたほか、採用者には特製のROMカートリッジを送ったりした。総集編「MSXプログラムコレクション50本・ファンダムライブラリー」をムックとして何冊も出し、ROMカートリッジ(のちにフロッピーディスク)に集めての販売もした。傑作選「スーパープロコレ」も販売された。
「ファンダム」はMSX・FANの記事の内でも特に人気が高かった。当時、他機種ではすたれつつあった、パソコンでプログラムを組んで遊ぶというスタイルがMSXでは特に強く残っており、投稿プログラムをカラー写真で詳細に紹介したページは魅力的で、苦労してプログラムを打ち込み、目的のゲームを遊ぶという読者が少なくなかった。打ち込みでプログラミングを覚えたあとは、「ファンダム」に投稿するという流れもできていた。
創刊からしばらくすると、「ファンダム」でも機械語によるプログラムが掲載された。機械語を直接実行するゲームは動作速度等などがすばらしかったため、多くの読者を機械語熱に走らせた。当初、「ファンダム」では機械語のみのプログラム（16進表記のダンプリスト等）は掲載しない方針だったので、投稿者はBASICで入力できる形式で投稿する必要があった。このため、一見すると無意味に思えるような文字の羅列（実際は機械語をエンコードしたもの）を入力させた後BASIC上から呼び出すことで実行させるものなど、技巧をこらした投稿プログラムが、中期以降の「ファンダム」においてよく見られるようになった。その後、本誌に付録ディスクがつくようになって直接バイナリファイルを収録できるようになったため、BASICで入力する形式という制限は取り払われ、かなりボリュームの大きなゲームも採用されるようになった。また、機械語の解説なども行われるようになった。
投稿プログラムは多くはゲームプログラムであったが、本格的なグラフィックツールなどの実用的なプログラムや、マウスで書道ができるプログラムなどアイデアが光っている作品も少なからず採用されていた。また後期になると投稿プログラムに対してクロスレビューを行い、複数の編集者の意見を直接掲載することも行われている。
ちなみに、コンパイル（ファミリーコンピュータ版は徳間書店）が市販した『ゴルビーのパイプライン大作戦』は、「ファンダム」掲載プログラムの『水道管』『水道管２』を原案としている。さらに、このゲームのアイデア（上から落ちてくる水道管を繋げる）が、人気市販ゲーム『ぷよぷよ』のシステムの元ネタになったといわれている。
[編集] その他
他には、MSX-MUSICが出た後にミュージシャン・横川理彦によるFM音源講座が掲載され、終了後は投稿コーナー「FM音楽館」となった。また、エスプリのきいたオリジナルショート投稿プログラムを紹介する「サウンドフォーラム」(後に「AVフォーラム」)も始まり、ここでは、同じ投稿者が採用されるたびに、「称号」が増えていく、という試みがされた。
後期に始まった「ほほ梅麿のCGコンテスト」は、ソフト会社ビッツーのデザイナーが記事を担当し、実際のプロの技法を紹介するとともに、コンテストの名の通り、読者からの作品投稿を受け付けていた。読者投稿CGのレベルは当時のコンピュータ雑誌の中でも高かった。
また佐藤元の描く「テクノポリス」の広告マンガは、毎月、何かのマンガ・アニメのパロディだった。
こうした読者を重視する構成により、主に読者対象とした中高生を同誌のコアなファンとして育てるのみならず、主婦や中年層まで投稿者がいるなど、MSXユーザーの中で広い支持をうけた。
[編集] MSXの衰退とムック化、休刊まで
MSX2+が発売された翌年の1989年頃から、8bitパソコンに出るゲームは少なくなってゆき、MSXもその影響をうけた。昔からのT&E SOFTや、MSXを支えてきたコナミは、1990年に発表となったMSX turboRを待たずして撤退。1991年にMSX規格の最終機「FS-A1GT」が発売された後には、『ディスクステーション』のコンパイルも撤退し、1992年に入っても新作の予定が残っていたのはマイクロキャビン、光栄、ファミリーソフトくらいであった。
このため、同じゲームの特集ばかり組まれたり、一般向けタイトルに代わって急増したアダルトものの扱いが増えるなど、毎月の誌面構成にも苦慮が見られた。また、MSXへのソフトの移植をメーカーに要望するコーナー「いしょくはまだかいな」（後の「いーしょーくー情報」）が作られたりもした。なお、そのかいもあって1991年、MSX2へ『ソーサリアン』の移植が行われた。
その後、メーカーによるゲームの新作が望めなくなってからは、「同人地下工房」などのコーナーで同人サークル制作のソフトを積極的に紹介するなどして、MSXで遊べるゲームの情報を発信し続けた。
[編集] スーパー付録ディスク
1991年10月号(9月発売)からは、スーパー付録ディスク（付録の2DDフロッピーディスク）が毎月付属するようになった。 3.5インチディスクをつける場合の当時の雑誌規定から、この号以降ムックとなり、「～月号」から「～月情報号」という名称になった。ディスク付録化以前は定価が変動していたが、このときに980円に固定化された。
「ファンダム」のゲーム、「FM音楽館」のほとんどの曲、「AVフォーラム」のプログラム、「CGコンテスト」の優秀作などが、プログラムリストの打ち込みなしで楽しめるようになった。また、この時からパソコン通信の紹介コーナー「パソ通天国」の連載が始まり、フリーソフトが毎号ディスクに収録されるようになった。
単にサンプルファイルを収録するだけにとどまらず、起動するとメニューが立ち上がって各コーナーへ順を追って移動できるようになっているほか、付録ディスクオリジナルの収録コーナーも拡充され、単体でもディスクマガジンと呼べる完成度の高いものに仕上がっている。晩年は、ディスクへの収録量を増やすため、アーカイブ化して収録され鑑賞には解凍作業を必要とするコンテンツが増えたが、その際にも解凍作業まで自動で行えるように考慮された。
メニューには、中盤から隠しメッセージのような遊び心も取り入れられている。BGMは当初は簡易なものが使用されていたが、中盤からFM音楽館の掲載作品が採用され、のちに一般公募されるようになった。
付録ディスク専用の拡張BASICが開発され、メニューやメッセージの表示はこの拡張BASICによってなされている。この仕様については、末期に誌面上で公開された。
スーパー付録ディスクオリジナルのコンテンツとして、デモなどのソフトハウス提供プログラムを収めた「すぺしゃる」、『倉庫番』『ハイドライド』『ザナック』など過去に発売された名作ゲームを収録した「Oldies」などがあった。
起動時にはグローディアの『エメラルドドラゴン』などのイラストレータ木村明広による扉CGが表示された。これには3号目からバックストーリーが付けられ、主人公の女性やペットへの名前募集や、基本システム以外全て編集部内で製作したアドベンチャーゲーム「ルーシャオの冒険」へと派生した。
付録ディスクは読者の一定の支持を得て、商業的なMSXの衰退をよそに安定した刊行を続けた。一方、「ファンダム」へのプログラムリストの掲載が縮小されたほか、雑誌全体のページ数も徐々に削減されていった。
[編集] 隔月刊化
1993年4-5月情報号より、予告なく隔月刊化された。背景には、MSXへの市販ソフトの新作リリースがほとんど無くなり、広告のページ数も激減していた現実がある。この頃から、作品の製作発表の場という従来からの編集方針に加えて、パソコン通信や国内・海外の同人活動の紹介への傾斜をさらに強めていった。
投稿コーナーの充実という従来からの施策に加えて、ディスク付録化に伴って大規模な自作ゲームの投稿を解禁したこともあり、作品の投稿がより活発となっていた。ディスク1枚では容量不足に悩まされるようになり、これを名目に1993年10-11月号から付録ディスクを2枚に増やした。同時に、定価も1,280円に値上げとなった。
1994年4-5月情報号では、読者に対して事前予告なしに1,280円から1,980円に値上げして波紋を呼んだ。これは出版取次会社が、雑誌の付録の取り扱い規定を変更したため、付録ディスクを雑誌に閉じこまなければならなくなり、それに伴い製本形態の変更を行ったのだが、それが価格に影響を及ぼした。
[編集] 休刊へのカウントダウン
こうして、他機種への移行を潔しとしない、コアなMSXユーザーを主対象とする形で、完全に新作ソフトが発売されなくなっても、ライバル誌MSXマガジンが1992年に休刊した後も、発行は続けられた。読者を確保するため、定期購読も開始した。
だが、MSXユーザーの減少には歯止めがかからず、定期購読者の人数も確保できなくなり、休刊が決定。1994年10月情報号にて、出版界では異例ともいえる、休刊の事前予告を行った。このころ、最後のMSXマシンであるFS-A1GTも生産中止、裏表紙は松下製MSXの広告というのが定番だったが、それ以降は松下製ワープロの広告に切り替わった。
休刊予告の後、パソコン通信化して存続する道を模索するためのアンケートを行ったが、結果ははかばかしくなく、事前予告どおり1995年8月号（7月発売）をもって休刊となった。最終号の公称部数は8000部である。
[編集] 発行元の解散
休刊後の2000年1月、発行元の徳間書店インターメディアも解散し、同社が所有していた諸権利は徳間書店に引き継がれた。 なお、同社解散後、同社に在籍していた一部の編集者が設立した編集プロダクションにより、一部のゲーム雑誌・書籍が毎日コミュニケーションズからの発行という形で引き継がれた。
[編集] 歴史
- 1987年3月 - MSX・FAN創刊（発行周期は月刊 製本は平とじ 編集長は山森尚）
- 1987年7月 - FAN・GAL 北田順子登場
- 1987年12月 - 2代目編集長 北根紀子就任
- 1991年9月 - 付録にフロッピーディスクがつく（挟み込み）
- 1992年12月 - 表紙を刷新 CGコンテスト常連だったホルスタイン渡辺を採用
- 1993年3月 - 隔月刊に変更
- 1993年9月 - 付録ディスクが2枚組になる 付録ディスクで「ルーシャオの冒険」連載開始 1,280円に値上げ
- 1994年3月 - 製本を無線とじに、付録を綴じ込みに変更 定期購読の呼びかけを開始 1,980円に値上げ
- 1994年9月 - 1995年8月情報号をもって休刊することを発表
- 1995年7月 - 休刊
[編集] 主なコーナー
- あしたは晴れだ！
- アル甲（ANTARES）
- いーしょーくー情報（ぱおぱお）
- FM音楽館（よっちゃん(横川理彦)）
- おはなしこんにちわっ（バボ → 編集部）
- 紙芝居＆動画教室（マイクロキャビン 中津泰彦）
- ゲーム製作講座（飯島健男）
- ゲーム十字軍
- ゲームの職人
- スーパービギナーズ講座（MORO）
- サウンドフォーラム → AVフォーラム（よっちゃん）
- GTフォーラム
- 同人地下工房
- ツール！
- 投稿ありがとう
- パソ通天国
- ファンダム
- FFB
- BASICピクニック
- ほほ梅麿のCGコンテスト（ビッツー）
- MIDI三度笠（早坂泰成）
[編集] 名物編集部員
編集部員の名前が、内輪ネタなどの文章で、しばしば表に出てくることがあった。
この傾向は前期でも多少見られたが、後期では特に盛んになった。ディスク付録化後は各編集部員のコメントを集めた編集後記「B:」が付録ディスクに収録されるようになり、ファンダムのクロスレビュー開始もあいまって、「編集部員の顔の見える」雑誌の色が醸成されていった。
（50音順）
- あじすあべば福田
- ANTARES
- Orc
- おさだ
- かき
- かずちょ
- がまこ
- コルサコフ山科
- ささや
- シゲル
- ちえ熱
- ときちゃる
- NORIKO（編集長）
- MORO
- YADAYO奥成
- 郎太
[編集] 別冊で発売されたムックなど
- MSXプログラムコレクション50本 (1)～(8)
- プログラム投稿コーナー「ファンダム」を抜粋・再構成してムック化したもの。派生コーナーである「EDファンダム」や「サウンドフォーラム」「AVフォーラム」も一部収録。
- ファンダムライブラリー (1)～(8)
- 上記を市販ソフト化し、プログラムを入力することなく遊べるようにしたもの。(1)～(3)はROMカートリッジ、(4)以降は3.5インチ2DDディスク。(8)はタケルでの発売。
- スーパープロコレ 1～5
- MSXプログラムコレクションシリーズの後継で、フロッピーディスクを付録に付けての刊行。スーパープロコレ1は本誌のディスク付録化の直前の発行であり、試金石的な意味合いをもっていた。1、3はプログラムコレクション(1)～(8)の傑作選、2、4、5は本誌の抜粋・再構成。
- ゲーム十字軍 Vol.1～3
- 市販ゲームの裏技情報コーナー「ゲーム十字軍」をまとめて単行本化。
- FM音楽館
- ほほ梅麿のCG描き方入門
