EOS
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EOS(イオス)とはYAMAHAのシンセサイザーの型番、製品名。
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[編集] 概要
Entertainment Operating Systemの頭文字をとって命名されたと言われる。
1988年から初心者向けのシンセサイザーとして、開発されている。イメージキャラクターは最新機種BX(ビーテン)を除いて小室哲哉が担当した。またBXのイメージキャラクターと初代YS200からB500とBXの音色作成を浅倉大介が担当している。製品のコンセプトとしては「女の子も使えるシンセサイザー」だったと言われ、マニア向けでなく、小室哲哉や浅倉大介を起用することで女性にも門戸を広げるねらいがあったという。
初代YS200からB2000までの音色はTM NETWORK、TMN、そして小室プロデュースのアーティストで使われている音色をシミュレートしたものを内蔵している。しかし、94年以降、小室自身がヤマハ製よりRoland製のシンセサイザーを多用するようになったことによる、メーカー間の音色の違いや、同じヤマハ製のシンセサイザーであっても、初心者向けに価格を抑えるためにダウンサイジングされたことによる音色の違いがあり、100%すべての小室サウンドを出せる訳ではない。またBXも、浅倉が他メーカーのシンセサイザーを利用することなどから、100%すべての浅倉サウンドを出せる訳ではない。
[編集] 歴史
YS200やB200発売当時のFM音源のシンセサイザーは、音色の明るさを調整するだけで一苦労だったのだが、同じFM音源のシンセサイザーでもYS200やB200は、それを簡単に調整できるというのが売りだった。しかし、B900以降PCM音源に音源部が一本化されると、フィルターを使うことでPCM音源はFM音源に比べて簡単に音色の明るさを調整できるため、EOSならではというアドバンテージは少なくなってしまった。
88年から91年にかけてリリースされたTM NETWORK、TMN、小室ソロのバンドスコアにはEOSの音色番号が丁寧にも記載されており、TMN等のコピーバンドが簡単にできる配慮がなされていた。しかし92、93年頃となるとPCM音源が全盛期を迎え、ローランドのGS音源を始めとするDTMの普及が始まり、それらのDTM音源を使うことでTMN等のコピーバンドができるようになった。それに平行するようにEOSはヤマハが推奨する音源規格XGにB900以降の機種は対応したため、EOSはDTMに接近し始めた。そして最新機種のBXにおいてはシーケンサーは内蔵でなくパソコンで行い、鍵盤演奏と音源をBX本体が行うというDTMそのものになってしまった。
[編集] 今後の展望
EOSのコンテストが開催されていたことや小室が所属していたTMNの人気という面からB500の発売当時や直後がEOSの全盛期と考えられる。DTMそのものとなってしまったBXが発売され、今後はヤマハのDTMパッケージHELLO!MUSIC!との差別化をどう図るかが期待される。
2005年に最新機種であったBXが生産完了となり、B2000はカタログに記載はあるものの、BXの発売以降は中古MIDI機器を取り扱うショップしか店頭では見かけない状態となっている(インターネット上での新品は購入可能な様子)。B2000直系の後継機種が出るのを望む声がある一方で、EOSシリーズはBXと筐体やスペックがほぼ同一のS03SLに取って代わられ、また初心者向けのワークステーションとして、MO6 / MO8が発売され、BXの系統はSシリーズに、B2000の系統はMOTIFシリーズに収束されていったとも考えられる。しかし、EOSはシンセサイザーの垣根を広げた機種であり、内蔵シーケンサーの使い勝手の良さは定評があるため、今後も継続販売が望まれる機種の一つであろう。
[編集] シリーズのモデル
- YS200
- 1988年発売。EOSシリーズの第1弾。FM音源オンリーの機種。4オペレータ8アルゴリズム、最大同時発音数8音。FMシンセサイザーとしては、珍しくエフェクターとシーケンサーを搭載したミュージック・ワークステーション。定価129,000円。YS200からキーボードを外したシーケンサー内蔵音源モジュールとしてTQ5が発売されていた。
- YS100
- 1988年発売。YS200の廉価版として発売された機種。YS200との違いはシーケンサーの有無である。
- B200
- 1988年発売。音源部はYS200と同等だが、スピーカーを内蔵した機種。ボディやピッチベンド、モジュレーションホイールが丸みを帯びたデザインに変更されている。定価148,000円。
- DS55
- シーケンサー無しの4オペレータ8アルゴリズム、最大同時発音数8音のFMシンセサイザー。オートパフォーマンス機能と呼ばれるアルペジエイターを搭載している。プリセット200音色、ユーザ100音色を持ち、デジタルディレイを搭載している。この機種はスピーカーは内蔵していない。乾電池駆動も可能である。
- B500
- 1990年発売。B200の後継機種。FM音源にPCMのAWM音源を追加したハイブリッドシンセ。TMNのアルバム『RHYTHM RED』で使われた音色をそのままサンプリングしたものを内蔵している。別売り音色カードが豊富に発売された。定価168,000円。
- B700
- 1993年発売。B500のマイナーチェンジ機種。発売された時期が小室がtrfのプロデュースを始めた頃と重なり、音色がレイブやテクノなどを意識したものに差し替えられ、ボディーカラーを白に変更されている。定価170,000円。
- B900
- 1995年発売。FM音源部を廃し、PCM系のAWM2音源オンリーになる。QY300上位互換のシーケンサーと、SFXバンクを除いてXGに対応したMU50相当の音源部を持つ。最大同時発音数32。QS300にスピーカーを取り付けた機種とも考えられる。ボディーカラーはB500に近いシルバーを採用。定価189,000円。
- B900EX
- 1996年発売。B900のマイナーチェンジ機種。B900のボディーカラーをブルーに変更し、デモソングの差し替えを行っている。パソコンとの連携を考慮し、接続ケーブルを同梱している。定価189,000円。
- B2000
- 1998年3月発売。SU10相当のサンプリング機能や、鍵盤を押すと分散和音を自動演奏するアルペジエイター、音色を変化させられるノブを搭載し、最大同時発音数を64にしたEOSの最高峰とも言える機種。ディスプレイのサイズはヤマハシンセサイザー中、最大のものを装備し、シーケンサーはQY700直系のものを搭載しており、1台で作曲・編曲やオケ作りがしやすくできている。ローランド社のシンセサイザー、JD-800のピアノの音をサンプリングし、『TK PIANO』として内蔵している。定価が248,000円とプロ用のシンセサイザーと変わらない価格設定のため、イージーさが損なわれているとも考えられる。XG対応。MIDIサンプル・ダンプ・スタンダートを受信できてSU10との連携した使用方法も考えられる。ボディカラーは灰色。2005年現在、現行機種。
- B2000W
- 1998年12月発売。B2000のボディーカラーを灰色から白に変更し、デモソングを差し替えた機種。限定発売。
- BX
- 2001年9月発売。DTM用シンセサイザーS03の筐体を流用し、音源部はキーボードにシーケンサーはPCにと役割分担をさせた機種。スピーカー、そしてB2000 / B2000Wにあったサンプリング機能は内蔵していない。この機種からプロデューサーが小室から浅倉に代わった。同梱のシーケンサーソフトはXGWorksをBX用にカスタマイズしたDAWorks。110,000円とB2000 / B2000Wに比べて低価格に抑えられているが、定価69,800円のS03にUSB端子、デジタルアウト、スマートメディアスロット、ロータリーエンコーダ、プレイバックシーケンサーを取り付けてこの値段のため、決して安いとは言い難い。ボディーカラーは白、そして文字の部分がオレンジ。2005年に前機種のB2000が現行機種扱いにも関わらず、ディスコンとなった。
- 発売から3年後の2004年に浅倉自身がキーボードマガジンに寄せたレビューで、現在「初心者向け」と勧められるシンセサイザーがないと述べ、スピーカー内蔵でタイムラグなしで、音楽を始められる現在版EOS B500が出れば楽しいと述べていることから、BXでシーケンサー、スピーカーを外したことは失敗であったと考えられる。