D.B.クーパー事件

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FBIが公表した被疑者の似顔絵

D.B.クーパー事件（D. B. Cooper）とは、アメリカ合衆国で発生したハイジャック事件であるが、ハイジャック事件では珍しい身代金を要求した事件である。

身代金を受け取った後、ボーイング727の後部から現金200,000ドルを持ってパラシュートで脱出したあと犯人が検挙されず、また犯人の身元も不明な未解決の事件であるが、後に身代金の一部がコロンビア川で発見され、実際には彼は死亡していたのではないかと言われるなど、謎が多いハイジャック事件である。なお「D.B.クーパー」はFBIの手配の際の手違いで広められた犯人の名前であるが、「ダン・クーパー」もまた偽名であるのは確実である。

[編集] 事件の概略

アメリカの感謝祭前日であった1971年 11月24日に、経由地のオレゴン州ポートランドからノースウエスト航空11便（ワシントンD.C.発シアトル行き）には、乗員6名と乗客36名が搭乗していたが、その一人が「ダン・クーパー」の偽名で搭乗していた男性であった。

午後4時35分（現地時間）に離陸後、彼は機内サービスの際に客室乗務員の女性に代金と一緒にメモを渡した。彼女は最初はてっきり彼が自宅の電話番号を書いてよこしたと思っていたが、彼は「爆弾を持っている」と告げたため確認すると、爆弾を所持していることと身代金200,000ドルとパラシュート4つを要求する脅迫状であった。また隣に座るように要求した。

そのため客室乗務員が操縦席に連絡したが、パイロットは疑わしいと思い彼の隣に座り本当に爆弾を持っているかを尋ねると、彼は持っているブリーフケースを開け、そこには赤い管と導火線が見えた。そのためパイロットは管制塔にハイジャックされたことを告げ、それに対し当局はハイジャック犯に従うように指示した。

午後5時45分にシアトル・タコマ国際空港に緊急着陸後、身代金とパラシュートと引き換えに犯人は乗客全員と客室乗務員2名を解放した。その後午後7時45分にシアトルを離陸したが、犯人は機長に対しネバダ州リノに向かえと強要し、高度10000フィート（約3000ｍ）に維持したうえでランディングギア（車輪）とフラップを下げさせて飛行するように指示していた。

彼は午後8時11分ごろに、ボーイング727の後部にあったリアドア（昇降用階段）を空中で開いてからパラシュートで現金と共に脱出した。その様子は追跡していた空軍のF-106戦闘機2機は視界がきかなかったため確認できなかったが、犯人はポートランドの北30マイル（約50Km）にあるアリエルの郊外に下りたと思われていた。その後当局は18日間捜索したが彼の行き先に関する手かがりを掴めなかった。そのため犯人の正体は闇の彼方に消えていった。

[編集] 犯人はどうなったか

1972年にはパラシュートによってハイジャックした旅客機から逃走しようとした事件が3件発生したが、最終的にはいずれも検挙され、「ダン・クーパー」だけが逃げ切ったと思われていた。また捜査当局が「ダニエル・B・クーパー」を被疑者として拘束したため「D.B.クーパー」が被疑者であるかの誤解をマスコミに与えるミスをしたため、世間一般に後者の名が誤って広まってしまった。

彼の運命の手掛かりはなかったが、1980年 2月13日にワシントン州バンクーバー郊外のコロンビア川のそばで、ピクニックに来ていた家族によって、身代金の一部5800ドル（20ドル紙幣の束であったという）が発見された。そのため犯人はコロンビア川に落ちて溺れたか、冬の夜の寒さに凍えて死亡したのではないかといわれるようになった。また,彼が使用したパラシュートの2つのうち1つが空中では展開しない地上訓練用であったため、パラシュートによる脱出に失敗したという説もあった。

ただし、この死亡説に対しては1972年に同様の事件を起こした元軍人の男性（無事に身代金を奪取してパラシュートで降下したが、逮捕され懲役45年を宣告された。後に脱獄したが潜伏先で捜査官に射殺された）が犯人ではないかとする本が1991年に出版されたほか、2000年にはある女性が1995年に死亡した彼女の夫が死ぬ間際に「ダン・クーパー」であったと告白したとする記事が「U.S. News and World Report」誌に掲載された。それによると夫の筆跡と犯人の筆跡がよく似ていることなどを根拠にしていた。いずれにしてもこのハイジャック事件の犯人に対するミステリーは永遠に解決しないかもしれない。