89式5.56mm小銃
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 89式5.56mm小銃（2005年9月撮影） |
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| 89式5.56mm小銃 | |
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| 種類 | 軍用ライフル |
| 製造国 | 日本 |
| 設計・製造 | 豊和工業 |
| 口径 | 5.56mm |
| 銃身長 | 420mm |
| ライフリング | 6条右回り |
| 使用弾薬 | 5.56mm×45 |
| 装弾数 | 30・20発 |
| 作動方式 | ガス直圧作動、ターンロックボルト |
| 全長 | 約920mm（固定銃床型）
約670mm（折り曲げ銃床型） |
| 重量 | 3,500g |
| 発射速度 | 最大約850発/分 |
| 銃口初速 | 920m/s |
| 有効射程 | 500m |
89式5.56mm小銃（はちきゅうしきごうてんごうろくみりしょうじゅう）は、64式7.62mm小銃の後継として豊和工業が開発した自動小銃である。NATO仕様準拠5.56mm口径アサルトライフル。自衛隊で1989年から配備・使用されている。また、海上保安庁や警察の特殊急襲部隊でも配備・使用されている。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 開発
1970年代後半より、有効射程が短くなるものの携行弾数を増加できるという利点を重視し、歩兵用小銃はアメリカ軍のM16など小口径高速弾を使用するものが主流となった。日本でもこの流に追随する形で、64式小銃の7.62mm×51準拠の減薬弾よりも小口径で、NATOの新標準弾薬である5.56mm×45（SS109）とその弾倉（マガジン）を使用する事が可能な、次世代自動小銃の開発を開始した。
開発はM16の姉妹銃とも言えるAR18アサルトライフルやその民間版のAR-180のライセンス生産を行った実績のある豊和工業が担当した。開発と並行して自衛隊にはAR-18が試験配備されデータが収集された。同社によるHR-10、HR-11、HR-13の試作ライフル開発を経て、最終型であるHR-15試作ライフルは試験配備後にHR-16（HR1604）の正式名称が与えられ1989年に89式小銃として制式採用された。
[編集] 特徴
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- 64式小銃は部品点数の多さと複雑な構造が作動不良の原因となっていたが、89式小銃は機関部の構成を簡略化することで作動不良の発生頻度を低減し、生産コスト削減を実現した。防衛予算から逆算した89式小銃の防衛庁納入単価は約34万円（平成17年度）だが、これは1989年の物価水準換算で約87万円（1964年当時約14万円）と世界で最も高価な小銃であった64式小銃と比較すると、約1/2にコストダウンしたことになる。しかしながら日本政府の武器禁輸政策（法的根拠は無い）により、需要は自衛隊や海上保安庁、そしてごく少数が警察で使用されているのみで、ハンドメイドに近い少量生産であるため、数100～1,000ドルが一般的である小銃としては依然高額な部類となっている。また、調達方式も単年度会計であるために量産化によりコスト削減が難しい状況である。
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- 89式弾薬（5.56mm×45）は、アメリカ軍などが使用するM16用のM855やNATO標準のSS109との互換性を持つ。これにより在日米軍とは7.62mm×51に引き続き使用弾薬互換が可能になった。弾倉はM16やNATO標準のものに準じるが、専用のマガジンフォローワ（送り板）形状により最終弾発射後のエンプティ時にボルトがホールドオープン（開放）するようになっている。つまり、M16用弾倉を使用した際にはホールドオープンしない。弾倉には30発用と20発用があり残弾確認孔が開けられているが、匍匐時などに砂が混入し作動不良を誘発する原因になるとの問題も指摘されている。薬莢には自衛隊の桜のマークがついている。
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- 89式小銃はM16と同じ弾倉を使用可能だが、銃本体の弾倉挿入部が弾倉の幅とほぼ同じ大きさでM16等のように末広がりになっておらず、弾倉が挿入しにくいと言う不満が、とくに市街地戦闘訓練を重視している部隊の隊員から出されている。通常の使用時にはそれほど問題にはならないが、近接戦闘時の弾倉交換では心理的影響もあり、手間取る隊員もでてくる。
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- 通常、切替レバー（セレクターレバー）は右に取り付けられ、切り替えの順番は「ア→レ→3→タ」になっているが、縁起をかけて「アタレ3」と呼ぶことが多い。
- ア：安全装置 レ：連射（フルオート） 3：3点制限点射（スリー・ショット・バースト） タ：単射（セミオート）
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- 銃剣と鞘を連結させる事でワイヤーカッターとして使用できる。また、鞘の末端は栓抜きになる。
[編集] 追加仕様
89式小銃は対テロや海外派遣など、近年の戦略の変化に伴い、使用する現場の要求と状況に合わせ部分的改変が施されている。
[編集] 切替レバー（セレクターレバー）
89式小銃は自衛隊式の匍匐時の上面となる右側面にセレクターレバーを設けているが、イラク復興支援特措法に基づきイラクのサマーワに派遣（自衛隊イラク派遣）されていた部隊では、操作性を考慮して右手親指でもアからレの間でしか操作できないため、通称アレセレクターと呼ばれる左側のセレクターレバーを取り付け、左右両側からの操作が行えるようになっていたが、この改変は一時的なものであり、改造指示書によると任務終了時には原状復帰されている様である。
[編集] 光学照準器（ダットサイト）
自衛隊でも近接戦闘などを想定し、左右どちらの構えでも射撃する事が要求されるようになった。瞬時に照準を合わせられるため、ダットサイトを装着したものもある。ただ、これは隊員が自費で購入するか、部隊単位で購入すると言った試用という段階で本格的な支給はされていない。タスコ・ジャパンのMD33やAimpointのComp M2（ML2）などが使用される事が多いようだ。昨年度より、部隊単位での供給が開始されている。
[編集] 前方握把（フォアグリップ）
近接戦闘などを想定し、西部方面普通科連隊などでは一部にフォアグリップが支給されている。これもダットサイトと同じで、試用の段階である。被筒（ハンドガード）部の樹脂部分の破損事故が多発してからは使用禁止の通達がでているが、部隊では使用希望を出しているところもあり、一部の部隊では独自に改良をして使用している部隊もある。
[編集] 負い紐（スリング）
一部の部隊では3点スリングと呼ばれるものが使用されている。3点スリングは、フィット感がよく一般的な2点スリングに比べ、移動時・射撃時の状況に応じた理想的なホールド性を得られる優れたアイテムで、世界の軍・警察などで使用されている。
[編集] 運用現場での改良
ダットサイト、フォアグリップ、3点スリング（負い紐）などの改良は、特定の部隊を除いては隊員から徴収した中隊費で独自に実施している。
[編集] 進まない配備
正式化された1989年からすで長い時間が経過しているが、生産は継続中であり、年間生産数は5,000挺ほどである。普通科などの近接戦闘部隊の64式小銃の更新はかなり進んでいるものの、後方支援部隊や、航空自衛隊・海上自衛隊では未だに64式小銃が主力である。自衛隊以外では海上保安庁の特殊警備隊（SST）などに折曲銃床式の89式小銃が配備されているが、警察では特殊急襲部隊（SAT）にしか配備されていない。
ただ、この点を防衛庁も重要視している様で、今まで年間およそ3,000挺（平成16年度は3,254挺）だったのに対し、平成17年度には7,084挺が調達されており、平成18年度は6,064挺の調達が予定されている。
いずれにしろ、全ての自衛隊員（陸･海･空）に完全配備されるまでには20年を超える事は確実で、自衛隊員の総数から見れば明らかに時間がかかり過ぎており、また、近接戦闘部隊である普通科ですら全ての部隊に配備されていないというのは問題であると言われている。完全配備完了後も暫くの間、5.56mm弾は主力として米国や欧州でもまだ現役だと考えられるので、64式小銃の時とは異なり配備完了時には既に世界の主流から取り残されているという事態は辛うじて防げると思われる。新型弾薬に関しては、世界中で試作している段階で時間的猶予はあるが、次に新型小銃が採用された時には、完成度を高めると同時により速やかな生産・配備が望まれている。
[編集] 切替レバーの順番
AK-47などの例外はあるものの、M16など世界中のほとんどのアサルトライフルではセレクターレバーの切り替わる順番が「安全装置」の次は「セミオート」となっているのが一般的だが、89式小銃の場合は最初に「フルオート」に切り替わり、続いて「バースト」→「セミオート」の順番で切り替わるが、一部でこの順番を問題視する声も聞かれている。
フルオート射撃は、ほとんどの場合弾の無駄遣いにすぎず、限定された状況でしか使用しない。近年、陸上自衛隊が力を入れている閉所戦闘（CQB）ではセミオート射撃がもっとも使用類度が高く、安全装置を解除して最初に切り替わるのはセミオートであるべきではないかと言う意見が多い。 しかし、フルオートであっても上手く指切りさえできれば、バーストやセミオートと同様の射撃を自在にこなす事ができるので、フルオートがセレクターの最初にあってもかまわないと言う意見も一部にあるが、どんなに速やかに指切りをしても、確実に一発だけを発射することは不可能なので、正確さ・精密さを必要とするCQBにおいて、フルオート射撃でセミオート射撃の代用をする事は困難であると言わざる得ない。
尚、一部で89式小銃のセレクターレバーが360度回転するものと勘違いされている事があるが、89式小銃のセレクターレバーは360度回転はしない。したがって、「ア」→「タ」の逆方向へは動かない。
[編集] 閉所戦闘訓練用教材
近年、陸上自衛隊はゲリラ・特殊部隊（ゲリラ・コマンド ＝ ゲリコマ）が市街地へ侵入するといった事態に対処するため、市街地や閉所（屋内）などでの戦闘を想定した訓練を実施しており、更なる市街地戦闘能力の向上を図る為、各方面隊への市街地戦闘訓練場の整備や、至近距離での戦闘評価機能を追加した交戦訓練用装置（バトラー）の配備を行っている。
しかしながら、弾を撃ち合っての、よりリアルな市街地戦闘訓練が出来ない事や、隊員が自主的な練習で銃を持ち出すことが出来ない（自衛隊では銃器等の管理が大変厳しい為）といった問題点があった。この様な事を踏まえ、防衛庁はエアガンメーカー最大手の東京マルイが89式小銃型の電動エアガンを開発中との情報を得て、これを閉所戦闘訓練用に導入する事とし、実銃の89式小銃のデータ等を提出、より実銃に近い89式小銃型の電動エアガンが開発される事になった。
これは「閉所戦闘訓練用教材」として2005年（平成17年）度に調達が行われ、2006年2月末までにオプションアクセサリーを含む600セットが納入された。名称は「89式小銃型訓練用電動エアガン」で、弾は6ミリBB弾を使用、1セット当たり約8万円であり、2006年（平成18年）度も調達が行われる。
この訓練教材が採用される以前に、一部の部隊ではM16やM4カービンなどの電動エアガンを部隊費などで購入し、それらを使用して訓練を行っていたが、閉所戦闘訓練用教材は2006年2月末に600丁が納入されたばかりで、閉所戦闘訓練で必要とする部隊の隅々までは行き届いていない。この為、一部の部隊などでは民間仕様の89式小銃型の電動エアガンを購入して訓練している部隊もある。
防衛庁への納入から暫く経った2006年7月半ばには、初速と色が自衛隊の物と若干異なる民間向けの販売が開始された。
自衛隊用と民間用の外観上の相違点は、
- 銃床、銃把の色が自衛隊用はオリーブドラブになっている。
- 自衛隊用は弾倉底部、消炎制退器が赤い。
- 刻印の違い
の3点である。また、薬莢受け取りつけ部は実物と異なる形状になっている。
[編集] 次期小銃
89式小銃後継の次期小銃を防衛庁にて選定中との情報がある。64式小銃、89式小銃に引き続き国産開発をするのか、海外調達、もしくはライセンス生産するかは不明。89式小銃との弾薬互換の必要性から、5.56mm口径で弾倉が共有できる事が最低条件であると見られる。ベルギーのFN社からF2000の導入を打診されているとの情報もある。
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
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