高松琴平電気鉄道600形電車

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高松琴平電気鉄道600形電車（たかまつことひらでんきてつどう600がたでんしゃ）は、高松琴平電気鉄道が保有する通勤形電車である。

もと名古屋市交通局の東山線250形、東山線700形中間車及び名城線1000系列中間車で、1998年～2002年に入線した。

当初、制御電動客車の601～614、621～630による2連12本24両が在籍したが、2006年に607～610を制御客車の801～804に改造した。現在は600番台の2連5本10両が長尾線に、620番台の2連5本10両と800番台の4両が志度線に在籍する。両路線の主力車両である。

600形 614（長尾線用もと名古屋市1000系列中間車） 2005年5月西前田

600形 601（入線時の塗装もと名古屋市250形 1999年6月西前田

志度線用の600形電車（瓦町駅 2006年1月）

[編集] 車両概要

車体は全長15mの全鋼製。窓配置はdD3D3D1で、ドアは両開き、窓は3個連続の2段式である。前面は運転席側を広く取り、非常口扉が車体中心より正面向かって左にオフセットされている。その非常口の上に方向幕がとりつけられている。

屋根は張上げ屋根であるが、冷房の風洞が出っ張っており、一見ダブルルーフに見えるのが特徴である。パンタグラフは奇数車の連結面寄りに1機が取り付けられている。

台車はKH46CSまたはFS354A、主電動機はHS-830Krb、HS-830Grb、MB-3092Eのいずれかを1両に4台搭載している。制御機は日立MMC-LTB10（日立製多段式電動カム軸自動加速制御器）である。モーター出力は55kwと琴電の自動加速制御車の中で最も低い。

奇数車-偶数車で2輛編成を組む。601～614が長尾線、621～630が志度線に投入された。後者が20番台に区分されているのは所属路線の明確化の為である。なお、両線の線路は繋がっていない。

また、志度・長尾線初の方向幕、両開き扉、平行カルダン駆動、発電制動、冷房装置付車両である。

同時期に購入された名古屋市交通局東山線300形、および名城線1200形もほぼ同じ改造を受けた。こちらは製造当初より先頭車で前面形状が異なることから、別形式の700形とされた。

[編集] 車両来歴

長尾線・志度線用の冷房車を探していた高松琴平電気鉄道に対し、車両保守会社である京王重機整備が改造プランを提示して実現した。当時、両線は地上施設や線形の都合上、大手私鉄で使われている全長18m以上の車輛が入線できなかったため、全長15mのこの車両が選ばれた。入線に際して同社北野事業所で以下の改造が行なわれた。

接客設備では、内装の全面的な改装が行われた。壁面の化粧板、床材、シートモケット等は全て交換された他、名古屋市交時代にはなかった網棚が取りつけられた。また冷暖房装置が新たに取りつけられた。このうち冷房は、屋上の通風装置を撤去し、新たに風洞と冷房装置を取り付けた。特にもと東山線車輌の場合、屋根そのものを一部撤去する形となっている。外観上、風洞部分が屋根より一段高くなっているのが特徴である。暖房装置は、座席下に電熱式のヒーターが新設された。冷房機はCU193（10500Kcal/h 小田急 3100形 NSE車の廃車発生品）を2機（車体両端）とRPU-2203（8000Kcal/h 京王電鉄の廃車発生品）を1機（車体中央）搭載している。また、603、627以降はCU191P（泉北高速鉄道100系の廃車発生品）とRPU-2203の組み合わせに変更されている。このように異なる冷房装置の混載となったのは、冷房出力の関係である。なお、これに伴い、補助電源は新品の静止形インバータ（SIV）に変更した。

また、元250形を除き種車が中間車であるため、運転台の新設が行なわれた。250形に準じたものが作られたが、窓の取り付け方法、乗務員扉等に形状の差が認められる。なお、1999年入線の603-604、625-626の方向幕は、京王 3000系廃車発生品の側面用方向幕を流用した関係で他車より小さかったが、2000年7月に他車と同じ大きさに改造された。

機器面では集電装置が変更されている。もとは第三軌条方式であったが、架線集電方式（パンタグラフ使用）に改造された。新設されたパンタグラフはPT-4201Sで、京王電鉄の廃車発生品である。もとが標準軌の路線で使用されていたので台車はそのまま流用されたが、取りつけられていた集電靴は不要になったため撤去されている。

電装品は電圧が異なる（名古屋市：600V、琴電：1500V）ため、その対応改造が行なわれた。また、琴電在来車との併結を考慮して主幹制御器（マスコン）を7段式（直列4段、並列3段）のHL用に交換、ブレーキはHSC-D（発電制動併用電磁直通制動）から電磁SME-D（発電制動併用非常管付非セルフラップ式電磁給排弁付三管式直通空気制動）に変更されている。ただし、600形自体は自動加速制御のままであり、従来車と併結する際も自動加速制御で走行する。

このほか、車高を上げるために台車の心皿部分に補助枠を挿入、自然通風式抵抗器の増設、自動放送の撤去、空気圧縮機を琴電標準のC-1000形に、ブレーキシューをレジン製から鋳鉄製に交換。ATS等の保安機器類を琴電対応のものに交換し、方向幕を小型のものへの交換するといったことが実施された。

塗装は613-614を除いて当初は白地に青緑と黒・灰色を組み合わせたいわゆる「そごう色」を採用した。

1998年7月、長尾線、志度線に各々1編成ずつが配置され、両路線初の冷房車として就行した。その後、毎年両線に1～3編成ずつが増備され、2000年度までに600形・700形あわせて2連13本が投入された。この時点で、もう2両の種車が確保してあり、京王重機で改造後、2001年度に志度線に入線することが決まっていた。しかし、琴電が経営危機に陥ったためこの計画は白紙になった。

その後、民事再生法に基づく再生計画がはじまった。この時、昼間の運用を冷房車で賄える志度線より、長尾線の非冷房車淘汰が急務と判断された。そこで京王重機で保留状態にあった2両を完成させ、長尾線に投入することになった。この2両は2002年12月、613-614として入線した。この車輌から、ことでんのラインカラー制が導入され、長尾線標準色の上半分アイボリーに、下半分が青緑となった。この塗色は、順次入線済みの車輌に対しても実施され、2006年12月までに全車輌塗装変更は完了している。なお、志度線車輌の場合は下半分が赤色となる。また、各線に1編成ずつ、ことでんマスコットキャラクターの「ことちゃん」が描いた車輌を走らせることになった。長尾線では613-614が「ことちゃん遍路号」、志度線では625-626が「ことちゃん源平号」となった。

翌年には各路線に全面広告電車も登場した。長尾線では605-606が伊藤園（おーいお茶）、志度線では629-630がサンクスアンドアソシエイツ東四国（サンクス）の全面広告電車となっている。両線のラインカラーを考慮して広告主が選ばれたとの事である。（なお、サンクスアンドアソシエイツ東四国は、ことでん現社長真鍋康彦の出身母体である香川日産自動車のグループ会社でもある）。広告電車はさらに増え、2006年7月には長尾線の601-602がチョウ、志度線の621-622がクワガタを描いたせとうち夢虫館の全面広告電車、2006年12月には志度線の623-624が同じせとうち夢虫館系列の新屋島水族館の全面広告電車となった。

2003年、完全冷房化を目指し、長尾線を大型車の入線が可能なように路線改良に行うことが決定した。これに伴い、各駅のプラットホームが改造された。完工した2006年には、ホームと車体の隙間が大きくなるためドアステップが取り付けられた。そして7月、18m級車輛の1200形（50番台）が投入された。これにより余剰となった長尾線所属車のうち4両が制御車に改造、800番台に改番の上で志度線に転属した。

[編集] 800番台車

志度線の増結用に、600形の電装を解除し片運転台の制御車に改造した車輛。2006年度に、長尾線の607～610が801～804に改造された。志度線での運用開始は801・802が同年9月、803・804が10月である。

車内には車椅子スペースが新設された。これによりことでん全路線に車椅子スペース付車両が走行することになる。貫通路は塞がれ、その跡には固定窓が取り付けられている。制動方式は電磁SME-Dから電磁SCE（非常管併設付随車用電磁弁付三管式直通空気制動）に変更された。

車両の向きは、全て志度線瓦町側に運転台をもつように統一された。このため、元偶数車は方向転換とジャンパ栓の改造を受けた。また、単独での冷房使用と可能とするためパンタグラフが新設された。

[編集] 車歴

（琴電移籍後の車両番号）←（名古屋市営地下鉄時代の番号、所属路線、入線年と特記事項）

長尾線

601←東山線251←743 1998年入線
602←東山線252←746 1998年入線
603←名城線1615 1999年入線
604←名城線1901 1999年入線
605←名城線1902 1999年入線
606←名城線1617 1999年入線
801←607←東山線752 2000年入線 2006年制御車化の上で志度線に転属
802←608←東山線753 2000年入線 2006年制御車化の上で志度線に転属
803←609←東山線725 2000年入線 2006年制御車化の上で志度線に転属
804←610←東山線726 2000年入線 2006年制御車化の上で志度線に転属
611←名城線1809 2000年入線
612←名城線1810 2000年入線
613←名城線1702 2002年入線
614←名城線1905 2002年入線

志度線

621←東山線261←733 1998年入線
622←東山線262←762 1998年入線
623←東山線265←727 1998年入線
624←東山線266←760 1998年入線
625←名城線1801 1999年入線
626←名城線1802 1999年入線
627←名城線1803 1999年入線
628←名城線1804 1999年入線
629←東山線255←751 2000年入線
630←東山線256←754 2000年入線

なお、本形式の車両番号のうち、610は2代目である。1953年～1983年に6000形610が存在したためである。

[編集] 参考資料

岸由一郎「京王重機整備とその仕事」、鉄道ピクトリアル678号、　電気車研究会、 1999年12月
徳田耕一「遠くへ嫁いだ元"マルハチ電車"」、鉄道ピクトリアル673号、電気車研究会、1999年8月
鶴通考、沖勝則「地方で対面車両譲渡の舞台裏」、鉄道ジャーナル409号、鉄道ジャーナル社、2000年11月

高松琴平電気鉄道の電車
現用車両
営業用（カルダン駆動・冷房車）：600形・700形・1070形・1080形・1100形・1200形営業用（釣掛駆動・非冷房車）：20形III・30形III・60形・1000形・3000形・5000形事業用：デカ1形・13000形
過去の車両
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