阿部和重
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阿部 和重（あべ かずしげ、1968年9月23日 - ）は、山形県東根市神町出身の小説家、編集者。
目次 |
[編集] 来歴
幼少期より映画が好きだった。高校を2年生で中退して、映画監督を目指し上京。日本映画学校を卒業。演出助手、フリーターを経て、1994年に『アメリカの夜』（原題『生ける屍の夜』）で群像新人文学賞を受賞。オープニングで柄谷行人の評論『探究Ⅰ』のパロディーを行う(本著は、同一人物である小説の語り手と主人公が分裂しているという設定の作品）。蓮實重彦、柄谷などに認められる。同作は同年の第111回芥川賞、1995年の第8回三島由紀夫賞の候補になるが、受賞には至らず。
以後、文芸評論を意識した作品で名をなす。出身の山形県を地盤にした作品も多い。40歳未満の若手の中では最も注目されている小説家。デビュー以降、柄谷や蓮実等の巨匠から、福田和也、加藤典洋、中条省平や渡部直己等の中堅、東浩紀や斎藤環等の新鋭に至るまで、ほぼ全方位の批評家から非常に高く評価される。文壇の評価に比して文学賞の受賞はほとんどなく、「無冠の帝王」とも呼ばれた。
1997年、スパイ養成所出身者の日記という設定の『インディヴィジュアル・プロジェクション』を発表。同作により阿部の名前は一般に広く知れ渡る。キャミソールとパンティーのみを装着した美人の風俗嬢をモデルに使用した、エロティックで斬新な常盤響の装丁も注目される。同年の第10回三島賞候補になるが、受賞には至らなかった。後に同作の装丁は、『PRIVATES GIRLS』というアダルトビデオの装丁でパロディーにされた。しかし、阿部も常盤も「作品を汚された」「侮辱された」等と怒るのではなく、「引用されるとは痛快だ」と、逆に楽しんでいたという。
2001年、少年がトキ保護センターのトキの殺害を計画するという中篇『ニッポニアニッポン』を発表。同年の第125回芥川賞、2002年の第15回三島賞の候補になるが、受賞には至らなかった。
2003年11月に、雑誌連載を1999年11月に開始してから4年掛かりで完成させた、大作『シンセミア』を発表。東根市神町を舞台に、壮大なスケールの物語を展開させ、高い評価と注目を浴びた。大江健三郎の『万延元年のフットポール』、中上健次の『枯木灘』などの大作と比べられて言及されやすい。2004年に、伊藤整文学賞と毎日出版文化賞をＷ受賞。
2005年1月、『群像』2004年12月号掲載の『グランド・フィナーレ』で、候補4度目にして満を持して芥川賞を受賞。娘のヌード写真を撮った事がばれて、妻から離婚されて失職したロリコン男性が、東根市神町で2人の少女と出会うという物語である。
『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン』の編集委員を務めた事もある。関連する言葉は山形県、渋谷、右翼、暴力などである。好きな女優はキャメロン・ディアス。好きなアイドルは後藤真希であるが、芥川賞授賞式では道重さゆみ（モーニング娘。）が得意とする“うさちゃんピース”のポーズを決め、「モーヲタ」たちの話題となった。
[編集] 学歴
- 山形県立楯岡高等学校中退。
- 1990年 - 日本映画学校卒業。
[編集] 受賞歴
- 1994年 - 『アメリカの夜』で第34回群像新人文学賞小説部門。
- 1999年 - 『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞。
- 2004年 - 『シンセミア』で第58回毎日出版文化賞第1部門、第15回伊藤整文学賞小説部門。
- 2005年 - 『グランド・フィナーレ』で第132回芥川龍之介賞。
[編集] 著書
[編集] 小説
- 『アメリカの夜』講談社、1994年7月。講談社［講談社文庫］、2001年1月、ISBN 406273057X。
- 第1短編集『ABC戦争』講談社、1995年8月。新潮社［新潮文庫］、2002年6月、解説は蓮実重彦、ISBN 4101377227。
- 『インディヴィジュアル・プロジェクション』新潮社、1997年5月。新潮文庫、2000年7月、解説は東浩紀、ISBN 4101377219。
- 第2短編集『公爵婦人邸の午後のパーティー』講談社、1997年7月、ISBN 4062087758。
- 第3短編集『無情の世界』講談社、1999年1月。新潮文庫、2003年3月、解説は加藤典洋、ISBN 4101377235。
- 『ニッポニアニッポン』新潮社、2001年8月。新潮文庫、2004年8月、解説は斎藤環、ISBN 4101377243。
- 『シンセミア』朝日新聞社、2003年10月、（上）ISBN 402257870X、（下）ISBN 4022578718。
- 第4短編集『グランド・フィナーレ』講談社、2005年2月、ISBN 4062127938。
- 『プラスティック・ソウル』講談社、2006年3月、ISBN 4062102609。
[編集] 随想、批評
- 『アブストラクトなゆーわく』マガジンハウス、2000年4月、ISBN 4838711670。
- 『映画覚書vol.1』株式会社文藝春秋、2004年5月、ISBN 416365920X。
[編集] 対談集
- 『阿部和重対談集』講談社、2005年8月、ISBN 4062111853。
[編集] 共著
- 青山真治、中原昌也『青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン!』リトル・モア、2004年7月、ISBN 4898151329。
[編集] 編著
- 『ケータイ・プチポエム』集英社［コバルト文庫］、2005年1月、ISBN 4086004992。
[編集] 外部リンク
- sin-semillas.com『シンセミア』
