美術書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
美術書(びじゅつしょ)とは、書籍の中でも美術を主題とする書籍の総称。
その編集形式はさまざまであるが、写真で作品の詳細を伝えるために大版、高価になるものが多いのが、他種類の書籍と異なる点である。一般に、展覧会カタログ、写真集なども含まれる。トピック別や作者別の全集などもある。
目次 |
[編集] 歴史
[編集] 印刷
- カラー印刷では絵画の場合、原作の色彩を忠実に伝えることが重要
[編集] 流通
[編集] 出版社
美術書出版に定評のある出版社など。
[編集] 日本
- 美術出版社
- 中央公論美術出版
- 京都書院(現在、営業停止状態)
- 岩波書店(国際共同出版など、総合出版社の中でも美術書には定評がある)
[編集] アメリカ
- Abbeville(アべヴィル)
- Abrams(エイブラムス)
- Rizzoli(リゾーリ、リツォーリ)
- Phaidon(ファイドン)
- MIT Press(エム・アイ・ティー(Massachusetts Institute of Technology)・プレス)
[編集] イギリス
[編集] ドイツ
- Prestel(プレステル)
- Taschen(タッシェン)
- Du Mont(デュ・モン)
- Schirmer-Mosel(シルマー・モーゼル)
[編集] フランス
- Flammalion(フラマリオン)
- Hazan(アザン)
- Marval(マーヴァル)
- Contrejour(コントレジュール)
[編集] その他
[編集] 書店
美術書の多くは対象とする美術品(絵画、彫刻、写真、デザイン、建築など)の写真を掲載するため大版となりがちでかさばること、また品動きも鈍いことから、一般の書店ではよほどの売れ筋でない限り在庫を持たないことが多い。 店舗の中で美術書に一定以上のスペースを割く書店は多くはなく、特に美術全集を在庫として持つ書店は限られる。
美術書(和洋問わず、新本古本問わず。写真、デザイン、建築を含む)の品揃えに特色をもつ書店をあげる。
- ナディッフ(NADiff, 表参道)
- 東京池袋の西武百貨店12階の西武美術館横に店舗を構えていた芸術書中心の書店「アール・ヴィヴァン」が閉鎖されたのち、そのスタッフを中心に開店された書店。
東京を代表する繁華街の一つである表参道と、日本で最も優れた洋美術書の品揃えのあったアール・ヴィヴァンの後を継いでいることもあり、選書の質は高い。 - 表通りからかなり奥に位置した地の利の悪さに加えて店舗スペースはかなり狭い。20世紀の大家のレゾネから、最近の実験的作品集まで取り揃えている。
- 店内に美術作品の展示スペースがあり、前衛的な演出も行っている。
- NADiffホームページ
- オン・サンデーズ(外苑前)
- ワタリウム美術館の地下にある洋書店。20世紀美術に関しては、絵画・彫刻・写真・建築・デザインとも、漏れのない豊富な品揃えである。ワタリウムの企画と連動した書籍をそろえていることも多い。駅からは遠いが、東京でもここにしかない本も多くあるため、行ってみる価値がある。
- オン・サンデーズ
- 洋書ロゴス(渋谷)
- 渋谷のPARCOの地下にある割には、流行に流されることなく、地道な活動をしている。店名のとおり、洋書のみの取扱いで、ファッション、デザイン、写真を中心とするが、青山ブックセンターのように、それらのみに特化しているというわけでもない。スペースが広く、ナディッフやオン・サンデーズに比べて、ゆったりと書籍を見ることができる点が大きな強みである。
- 洋書ロゴス
- 改装に伴い、別棟のようなスペースで開店。面積が狭いため、取り扱う書籍の数が限られている。また一般美術書(和書・洋書)よりも、近日の展覧会カタログ(過去のものを含む)やミュージアムグッズの販売に力を置いている。
- 東京国立近代美術館ミュージアムショップ
- 1995年の美術館総合開館とともにその1階に開店。もともとは、美術館自体が運営していたが、現在は、ナディッフに委託されており、「ナディッフ ×10」(「×10」は、「バイテン」と読む。「売店」と「8×10フィルム」を掛けているのか?)という名称がついている。写真に関する内外書を取り扱っており、特に、展覧会企画と連動した書籍に関連しては、一見に値する。ただ、スペースが狭いこともあり、品揃えには限界がある。また、「ミュージアムショップ」であることから、ミュージアムグッズやポストカードなどに、むしろ力を入れ、スペースを充てている嫌いがある。
- NADiff ×10
- 館内にあるミュージアムショップ。施主である東京都と設計者柳澤孝彦氏ともに、ミュージアムショップの必要性を考えていなかったようで、竣工時にはスペースはなく、竣工後に通路に急遽設けられた経緯がある。
- ミュージアムグッズを取り扱うとともに書籍関連としては同美術館の展覧会カタログと内外の現代美術書を取り扱っているが前記の設営当初のまま売り場スペースが不足している。美術館に寄ったついでに立ち寄るには適している。
- 東京都現代美術館ミュージアムショップ
大規模書店:売り場面積にあわせ、美術書もそれなりにそろっている可能性が高い。ただし、郊外型の大規模書店は売れ筋以外は期待できない。
- 「洋書の丸善」であり、洋美術書に関しても、一般的には遜色はない。しかし、写真に関しては、絵画に関する洋美術書に比べると、品揃えは数段落ちるので、注意が必要である(日本橋本店の時代からそうである)。
- 丸善丸の内本店
- ジュンク堂書店 神戸本店・大阪本店・池袋本店
- 一般書店だと侮っていると、その洋美術書の品揃えに驚くことになる。写真に関しては、丸善をしのいでいるといってよい。また、写真以外の絵画等に関しても、20世紀以降に偏っていたり、他の書店で見られないような書籍を手に取れるような、明らかに他の書店との差別化を狙った品揃えとなっている。
- JUNKUDO BOOK WEB
- 書泉
- 八重洲ブックセンター(八重洲)
古書店
- 源喜堂書店(神保町)[古書]
- 神保町で美術書を探すのであれば、ここを避けて通ることはできない。内外の美術書、展覧会カタログ、雑誌などが、多数取り揃えられている。かつては、日本の写真展のカタログは一般的に弱かったが、次第に強くなってきている。
- 源喜堂書店
- 悠久堂(神田)[古本]
- 魚山堂(神田)[写真集専門の古本]
- 閑々堂(東銀座)[古本]
その他地域・通販など
- アートアンドブックス(泉岳寺)
- もともと、カタログによる通販のみを行っていたが、現在は、泉岳寺に店舗も設けている。取扱いは洋美術書のみで、そのカタログは、1988年から作成されているが、他に類似のものがないため、洋美術書探索のための、貴重な資料となっている。
- アート・アンド・ブックス
- arteria
[編集] 美術書の検索
美術書(図版を主たる内容とするもの)の検索・探索には、用途によって特異な問題がある。
- まず、図版が目的である場合、本文の言語が限定されない。極端な例では、ドイツ語が読めなくても、ドイツ語の美術書でかまわない、ということである。つまり選択の対象となる本の冊数は増大する。したがって検索に使用する書名や作者名は多種多様になり、調査が煩雑で手間がかかる。
- 次に、図版が目的に合致するかどうかは、実物を確認しないとわからないことが多い。例えば日本国内で日本の美術についての本を探し閲覧するのは容易である。しかし洋書となると所蔵や流通の少なさからそれが困難になってくる。本来その本が最も多く流通している場所に行けないならば、通信販売で購入するか、所蔵機関を見つけて問い合わせるくらいしか手段が無い。
例えば、次のような例を考えてみよう。
誰でも使えるような一般的な手段でこのような美術書の検索はほぼ不可能である。2006年12月の時点で、図版数やそれの性質に特化したデータベースは存在しない。強いて言うなら、通常の書籍の検索でキーワードを工夫する、一般書や雑誌論文の参考文献リストにあたる、などである。または形而上絵画に詳しい専門家(学芸員、学者、美術館図書室または美術系大学・学部の図書室の司書など)に質問するということもできる。いずれにせよ多少の美術に関する知識、語学の能力が前提である。