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潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

潜水艦 USS Grayling(1909年進水)
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潜水艦 USS Grayling(1909年進水)

潜水艦(せんすいかん、Submarine)とは、水上のみならず、水中も航行することのできる軍事作戦用の船舶を指す。第二次世界大戦においてはサイズに応じて潜水艦、潜水艇特殊潜航艇と様々に呼ばれた。民間で使用される海底探査や水中遊覧用の船舶は「潜水艇」や「潜水船」と呼ばれる。

軍備は、その大小を問わず安全保障上の問題から性能や仕様などには不明な点が多いが、その中でも隠密行動を身上とする潜水艦は機密事項が多い。最大潜航深度は最たる軍事機密事項である。

目次

[編集] 機能と任務

巡航ミサイルを発射する改オハイオ級巡航ミサイル原子力潜水艦
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巡航ミサイルを発射する改オハイオ級巡航ミサイル原子力潜水艦

潜水艦は最大で水深300~800m程度に潜航し、好きな時に好きなところから攻撃できる隠密兵器である。潜航した状態で巡航する場合は、水上船舶との衝突を防ぐため水深約100m付近を航行している。この隠密性を利用して下記内容の任務が与えられる。

  • 敵に気付かれずに監視網を突破できる。第一次・第二次大戦ではドイツの潜水艦が、水上兵力では圧倒的に優勢であったイギリス海軍の警戒線を突破して大西洋や地中海へ進出した。第二次大戦中にドイツへ往復した日本潜水艦もある。
  • 敵対国の港湾に接近・侵入し、偵察・情報収集を行う。
  • 敵の予想進路上に潜み、待ち伏せ攻撃を行う。
  • 戦略ミサイル搭載原子力潜水艦による核抑止力。原子力潜水艦は浮上することなく行動しつづけることができ、その行動の隠密性は非常に高い。この原子力潜水艦に長距離核ミサイル (SLBM) を搭載すれば、万一核戦争が勃発し地上基地が敵の先制攻撃で壊滅した場合でも、無傷で強力な反撃力を温存できる。自国がこのような反撃力を保有すれば敵は先制攻撃を決断できず、核戦争は起こらないというのが核抑止力の理論。
  • 隠密性の高い潜水艦を探知し攻撃するのは、やはり潜水艦が有利であると言われている。そこで敵の戦略ミサイル潜水艦を攻撃する任務や、自国の艦隊を敵の攻撃型潜水艦から護衛する任務を与えられている。アメリカ合衆国の空母機動部隊には必ず攻撃型原子力潜水艦が1または2隻随伴していると言われている。
  • 特に小型の潜水艇は、外洋航行力には欠けるものの、沿岸など地形の複雑な場所に隠れると極めて探知されにくい。このため、敵の支配水域に侵入して情報収集に当ったり、スパイを送り込んだり、捕えた敵を海岸付近で収容して誘拐したりすることに用いられる場合もある。

[編集] 構造

[編集] 船体構造

潜水艦の船体は、水上航行に適した船型の外見をしたものと、水中航行に適した涙滴型・葉巻型・鯨型の外形をしたものに分けられる。第二次大戦頃までは、潜水艦の水中行動力が低く、したがってそのほとんどが水上を航行していたためにUボートなどに代表される船型の船体を持つものが多かった。しかし第二次大戦以降は、モーター・バッテリー等の大幅な性能向上や原子力機関の登場により潜水艦の水中行動力が画期的に上昇したため、水中航行に適した船体形状のものが建造されるようになった。世界で初めて涙滴型船体になったものは、1953年にアメリカが建造した水中高速試作実験艦アルバコア型で、その効果が確認されて以後、バーベル級から採用されていった。

潜水艦は海中深くを潜行するため、深海で船体にかかる強大な水圧に耐えられる頑丈な構造でなければならない。外部からの圧力に強く、実用性も考えた結果、円筒型が用いられている。

潜水艦の船体構造は、大きく単殻式と複殻式に分けられる。単殻式は、船体そのものを耐圧構造としたもの。複殻式は、乗員が乗り込み、兵装や機関などの主要部品を搭載する部分(内殻)の外部を外殻で覆って、魔法瓶のように二重構造としたもの。内殻と外殻の間を海水や燃料などの液体で満たしておけば、水圧は内殻にそのまま伝わり、外殻には伝わらない。したがって、内殻のみを耐圧構造とすればよい。単殻式船体と比べ、複殻式の特徴は、

  • 外殻と内殻の間を燃料や海水を入れるスペースにできるので、航続力や予備浮力を大きくすることができる。
  • 外殻と内殻が離れているため、被弾時に外殻が破壊されても主要部品がある内殻は無事に済む可能性もあり、したがって艦の防御力が上がる。
  • 単殻式より船体が大型化、複雑な構造になりやすい。
  • 船体側面部にソナーを取り付けることができない。

などである。他に、単殻式船体の側面に非耐圧構造の張り出しを設けて、そこを海水や燃料を入れるタンクとした半複殻式(部分複殻式)と呼ばれる、両者の中間を取ったものも造られ、特に第二次大戦時の潜水艦に多く見られる。特殊な船体形状として、外殻の内部に2つの内殻を連結したような形状の、伊四〇〇型潜水艦タイフーン級戦略ミサイル原潜などがある。

艦体構造材(船殻材)には深深度への潜航を可能とするため主に高張力鋼が用いられ、材質自体も絶えず改良が加えられている。一方ロシア(旧ソ連)で1970年代から1980年代にかけて建造されたアルファ級原子力潜水艦をはじめとするいくつかの艦級で、潜航深度の一層の増大と磁性を持たないという特徴を生かしてチタニウム合金が使用された。しかし加工が困難であることや音波の反射性が高いこと、そして高張力鋼を使用した場合に比べて格段にコストが高いことなどから一般化していない。

[編集] 潜行・浮上機構

潜水艦は、浮上している時は浮力が船体重量(重力)を上回っている状態で、潜行したい時は船体のタンクに海水を注入することで船体重量を増加させ、浮力と船体重量を等しくさせることで沈降する。

海水を入れるタンクにはメイン・バラスト・タンク(メインタンク、バラストタンクなどと略される)、ネガティブ・タンク、トリム・タンクがある。メインタンクは、海水や空気を注排出することで艦の浮力を調整するタンクで、ネガティブタンクは潜行時の補助に使う耐圧構造のタンクである。トリムタンクは前後に二箇所あって、前部タンクと後部タンクの水量を変えることで艦前後の重量バランスを変化させ、艦の前後の傾き(トリム)を調整する。

潜行時はまず、メインタンクの上部にあるベント弁(タンク内の空気を排出する弁)を開く。すると、メインタンク下部にあるフラッドホールと呼ばれる穴から海水がタンク内へ流入し、メインタンク内が海水で満たされ、潜水艦は浮力と重力が釣り合った状態になり海面下に沈下する。その後、トリムタンクや舵を操作して艦首を下げ、目標深度まで前進する。

目標深度到達後は、水中で艦を水平状態に保つ(トリムをとる)必要がある。つまり、潜舵・横舵を水平に保った状態で、艦体の水平がとれるようにする。具体的には、トリム・タンク内の海水の注出入して艦のトリムをとることになる。同じ潜水艦でも、個々の場合で積載状態が異なり重量バランスが変わるため、こうした操作が必要になる。

なお、潜水艦の潜航深度能力は最重要機密であり、一般に公開するときは深度計が見えないように目張りをしてしまうほどである。一般に発表される潜航深度は参考程度の価値しかないが、それらのデータによれば、攻撃型潜水艦の潜航深度は300~600m程度、戦略ミサイル原潜が100~500m程度である。武装した潜水艦の潜航深度記録は、1985年にチタン合金船殻の旧ソ連原潜K-278が記録した1027mで、K-278はこの深度で魚雷発射が可能であったと言われている。当時このような深度に潜む潜水艦を探知し攻撃する能力はアメリカも有していなかった。

軍事以外の潜水艇の深度世界記録は、1960年にアメリカのトリエステ2号が出した深度10,916mである。トリエステは深海での調査研究を目的としており、防御面やソナー対策など様々な性能が外殻に求められる軍事用の潜水艦に、当然ながらこれほどの潜航深度能力をもつものはない。

[編集] 動力装置

[編集] 舵・スクリュー

潜水艦は海中で三次元の運動を行う必要があるため、水上艦と違って縦舵の他に横舵と潜舵を付けている。第二次大戦時頃までの潜水艦は、水上航行している時間が長かったことから水上航行に適した配置であった。また、水中での最高速度が低かったため、大型の舵を付けていた。

その後、潜水艦は殆ど水中航行するようになり、水中での最高速度も大幅に向上したため、縦舵や横舵は水中航行に適した十字型やX字型の配置になった。また、潜舵は従来艦首部に配置されていたが、ソナーなどの音響装置のスペースとして使われてしまったため、艦橋側面にセイル・プレーンとして付けられるようになった。

潜水艦のスクリュー・プロペラは、水上航行を中心とした時代は小口径のプロペラを複数付ける形式がとられていた。効率を考えると、小口径プロペラを高速回転させるより大口径プロペラを低速回転させる方が、同じエネルギーでも推進効率が高い。しかし、大口径プロペラでは水上航行時に空回りしてしまうので、小口径プロペラを使わざるを得なかった。後、潜水艦が水中航行を中心とするようになってからは涙滴型船体を採用したため、大口径プロペラを装備するようになった。

潜水艦の推進器に関する問題で最も厄介なものが、キャビテーションと呼ばれる現象(プロペラ、特に周速が速い先端部付近の海水の圧力が低下することで海水が気化し、水蒸気の気泡が発生する現象)である。キャビテーションが起こると、プロペラ付近で水蒸気の気泡が破裂し、その音を敵に探知されてしまうからである。この現象を抑えるために、ハイスキュー・プロペラと呼ばれる特殊なプロペラ(羽の先端部が付け根より後部にある)や、ポンプジェット式推進装置を採用している。

[編集] 東芝機械ココム違反事件

プロペラの加工には高度な工作機械が必要とされるが、冷戦時代、東芝グループ企業である東芝機械がソ連に輸出した工作機械が、ソ連原潜用プロペラの加工に使われ、それによってソ連原潜の静粛性が向上したのではないか、との疑惑が持ち上がった(東芝機械ココム違反事件)。このため東芝がアメリカで糾弾の対象となり、東芝製ラジカセをハンマーで叩き壊すデモが行なわれたり、同社製品の不買運動が行われた。

だが、1990年代初めのソ連崩壊以降の情報公開により、これは「濡れ衣」であったことが明らかにされた。旧ソ連の潜水艦のプロペラ音の静穏化は、アメリカの潜水艦探知能力をソ連海軍が過小評価していたことを、ソ連の情報機関が確認したので改善された、という実に単純な理由からであった。工作機械の納入先も明らかになっており、プロペラとは無関係な部署であることもはっきりしている(にも関わらず、未だに、この「静粛化神話」を信じている者は多い)。一部では、これは当時日本が開発中であったFSXの設計に横槍を入れるためにアメリカが仕組んだ陰謀であると囁かれている[要出典]

[編集] 水中音響戦

通常の艦艇と異なり、潜水艦は海中で行動する。このため、他の艦艇と戦闘システムは大きく異なっている。空気中と違って、水中では電磁波の減衰が著しいため、電波を用いるレーダーや可視光域・不可視光域での光学的捜索といった手段は使えない。その代わり、主となるのが、海洋中における音波の性質を利用した捜索・攻撃である。その主たる手段がソナーであり、ソナーによる探知と回避をめぐる技術的な蓄積と、それらを用いた対峙を総称して水中音響戦(hydroacoustic war/battle)と称する。

この点について前提となる音波の性質や海中における音波伝播について説明する。

[編集] 音波の性質

ソナーで使われる音波(超音波)は、低周波のものと高周波のものとに大分される。

  • 低周波の音波は、水中で減衰しにくいので遠くまで伝わる。しかし、海中を進む内に四散しやすく、また波長が長いため分解能が低く、その結果目標の探知精度が低くなる。
  • 高周波の音波は、水中で減衰しやすいために近距離の目標しか探知できない。しかし、波長が短いため分解能にすぐれ、直進性・指向性が高く、そのため高い精度での測定が可能になる。

以上の理由により、両者の長短をそれぞれ補うように、高周波ソナーと低周波ソナーを両方装備するのが一般的である。

[編集] 海中での音波伝播

海の中は、大きく混合層水温躍層深海等温層の三つに分けられる(実際はもっと複雑であるが)。混合層は海面~深度50, 60m程度の地点にある層で、この層は風の力や太陽の熱による対流などによって常に混ぜ合わされているため、温度が一定である。水温躍層は混合層下~深度1000mまでの層で、この層は深度が深くなるほど温度は下がる。深海等温層は、水温躍層以下深度1000m以上にある層で、この層は地球の極部で冷却された冷たい海水が沈んでいて、温度が一定である。

なお以下に挙げる以外にも、実際の海では季節・地形・海底地質・海流など様々な条件によって音波の伝わり方が大きく変化する。そのため、平時から海洋観測などでその海域の性質を調べ音波の伝わり方を調査しておくことが、ソナーの利用においては重要となる。

[編集] 混合層

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混合層にある潜水艦から出された音(音波)の一部は、混合層と水温躍層との境目(レイヤー)で上向きに反射される。反射されて上向きに進んだ音波は、今度は海面で反射される。これにより、混合層の内部を海面とレイヤーで反射を繰り返しながら進んでいく。この伝わり方を表面伝播と呼ぶ。ただ、この伝わり方は音波の反射による損失が大きいので、あまり遠くまで探知できない。

[編集] 水温躍層

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水温躍層では、下へ行くほど水温が下がるので、音波が下向きに曲がって進んでいく。このため、例えば海の天辺付近の地点から真っ直ぐ水平方向に音波を出しても、音波が下向きに曲がってしまい遠くまで到達しないうちに海底に衝突して反射してしまう。海底で反射された音波は今度は上向きに進んで、その後海面で再び反射され、また下向きへ進んでゆく。したがって、水温躍層では、音波は山と谷を交互に繰り返すような形を描いて伝播していく(海底反射)。

そのため、アクティブ・ソナーを使用する場合に、目標が音波伝播の谷の部分に存在する場合には探知することができない。この、目標を探知することができない領域をシャドー・ゾーン(不感帯)という。シャドー・ゾーンに潜む目標を探知するには、発射角度を変えながら探知音を打ち、山と谷の位相を少しずつずらしてやる必要があるが、それには指向性(特定方向に音波を集中させる能力)の高いソナーが必要である。このため、第二次大戦当時ソナーの性能では、シャドー・ゾーンに隠れた目標を探知することができなかった。また、違う層に存在する艦船同士(例えば混合層の上にいる駆逐艦と水温躍層にいる潜水艦)では、互いに探知できる可能性が非常に低い。しかし、曳航ソナーなどを使ってソナーの深度を変えてやれば探知も可能である。

[編集] 深海等温層

深度1000m以上の海の場合、深海等温層が存在する。水温躍層では深度が上がる(=水温が下がる)につれて音波が下向きに曲がっていったが、深海等温層では温度が一定になるため、音波は下向きに曲がらなくなる。しかし、この層では極めて高い水圧がかかるので、水圧の力で音波は今度は上向きに曲げられる。

深海等温層に入った音波は、最初下向きに進むが、深海等温層を進んでいく内に上向きに曲がるため再び水温躍層まで進入する。するとまた下向きに曲がるため、再び深海等温層に入る。その後は同様の繰り返しになり、水温躍層と深海等温層との間を行ったり来たりしながら波型に進んでいくことになる。この、特定の入射角で入った音波が波型に進んでいく領域をサウンド・チャンネルと呼ぶ。

サウンド・チャンネルを進む音波は海面や海底には到達しないので、反射による減衰が起こらない。このため、非常に遠くまで(何千海里も)音が伝わっていく。つまり、このサウンド・チャンネルまで潜ることができれば非常な遠距離から目標を探知することができる。現在のところサウンド・チャンネルまで潜行可能な潜水艦は存在しないが、曳航式のソナーを潜らせることでサウンド・チャンネルを利用することが可能である。

[編集] 音響収束帯

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深度3000~5000m以上の深海では、深海等温層を通る音波は上向きに曲げられて、海底まで到達せずに海面方向へ上がっていく。そして、レンズで光を集めるように、ある特定の海面に音波が集まるといった、音波収斂現象が起こる。音波が収束された海面(コンバージェンス・ゾーン)では、短時間、目標の音を探知することができる。つまり、かなり遠くにある音源を探知できるということである。

海面まで進んだ音波は反射されてまた深海まで進み、同様のことを繰り返す。繰り返しの結果コンバージェンス・ゾーンは太平洋や大西洋などでは約55~65km毎に現れる(水温や海水の成分などによって変化する。北極海では数km間隔でコンバージェンス・ゾーンが出現する事もある。)ので、これを利用すれば、100km、150km... 先にある目標をも探知できる可能性がある。

[編集] ソナー

詳細についてはソナーを参照

[編集] 探知モード

ソナーでの探知には、アクティブ式とパッシブ式がある。

アクティブ式は、ソナーから探知音を出して、その音が目標に命中して反射して、跳ね返ってきた音を受信する方式である。しかしこの方式では、探知音を出すことでかなりの電力が消費されるだけでなく、発した音波によって探知が可能な距離よりも遠くまで届いた音波を逆探知され、自らの所在を暴露してしまう危険が伴う。初期(第一次大戦時)のアクティブ・ソナーは、直進性の低い可聴音波を使用していたため精度が低かったが、やがて直進性の高い超音波が使用されるようになり、精度が向上した。

パッシブ式は、目標が発した騒音をそのまま受信する方式である。ただし、この方式による目標の正確な位置の測定精度はアクティブ式に劣る。また、目標が停止している場合や騒音が非常に小さい場合には探知することができない。

つまり、これら2つの方式には一長一短があり、それぞれの特性を補い合わせるように利用する必要がある。通常は、パッシブソナーで目標の大まかな位置を把握しておいて、魚雷発射管制時など目標の正確な測定が必要な時に最小限の回数だけアクティブ・ソナーを使う。

[編集] ソナーの種類

潜水艦に装備されている主なソナーには、次のようなものがある。

  • 艦首ソナー・アレイ

潜水艦艦首に装備されるソナーで、パッシブ式・アクティブ式の両方に利用できる。巨大な球の表面に多数のハイドロフォン(水中捕音器)を貼り付けた球形ソナー・アレイと、円筒の表面にハイドロフォンを貼り付けた円筒形ソナー・アレイがある。

原理的な観点からすると、前者は遠距離探知能力に優れ、広大かつ大深度の外洋で行動する潜水艦に適するが、設置のために大きな容積が必要であり、艦内配置に制約をもたらす。後者は、遠距離探知能力では劣る。しかし、相対的に狭く浅い海洋での運用であれば問題はなく、また艦内配置の自由度は大きくなる。

ただし、これらは原理上の問題であり、技術の向上や実装によってはこの限りではない。また一意な優劣が存在するわけではなく、運用構想との関連での適否の方が重要な問題である。

例えばヨーロッパ諸国の潜水艦は、水深が浅くて狭い北海などでの運用が前提になるため、遠距離での探知は困難と考えれている。言い換えれば、近距離での格闘戦が起こる確率が高い。こうした環境下では即応性がより重要になるため、魚雷発射管の配置の自由度が重視され、円筒形ソナー・アレイがもっぱら採用されている。

  • コンフォーマル・ソナー(フランク・アレイ・ソナー)

船体側面にハイドロフォンを並べて付けたもので、音波の位相(到達時間差)から三角測量を行うことで、目標の方位を探知することができるパッシブ式専用のソナー。測的時間の短縮が期待できる。潜水艦の静粛化が年々進むなかで、センサーの開口径を増大させるために装備される例が増えてきている。

  • 曳航アレイ・ソナー(TASS)

曳航ソナーは、ハイドロフォンを船体から分離した独立ユニットに取り付けて、それを曳航索で牽引するもの。もっぱら低周波帯域のパッシブ探知に用いられる。船体のソナーと合わせると大きな基線長を得られるので、三角測量の精度の向上が期待できる。また、サウンド・チャンネルなどの船体が潜れない深海部まで吊り下げてそこで使用することもできる。船体の雑音から隔離できるので捜索距離が伸びる。しかし、方位特定をするのに複数の計測が必要である。

[編集] 水中音響戦における防御

ソナーによる探知に対しては、静粛化対策が施される。戦後の潜水艦の活動においては、以前とは比較にならないほど潜航時間の比率が増した結果、静粛化がいっそう重視されるようになった。これは、一方では敵のASW活動から逃れるため、他方では自身のソナーによる探知(特に受聴)を妨げないためであり、攻防のいずれにおいても重要である。そこで、防振ラフト機構の搭載や船殻外表への無反響タイルの設置などの騒音源を隔離するための高度な技術的改良から、艦内床面へのゴムシート敷設や乗員のゴム底靴使用などのような単純な工夫まで、ありとあらゆる対策を実施している。

[編集] 防振ラフト機構

この節は執筆の途中です この節は、書きかけです。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。

静粛化の代表的な対策には、ラフト構造の採用がある。ラフト構造は、エンジンなどの騒音元となる機器を、船殻に直接設置するのではなく、緩衝サスペンションを置き、その上に載せる構造である。

[編集] 無反響タイル

アクティブ・ソナーによる探知への対策として採用される。硬質ゴム製のタイルを船体外面に貼り付け、探信音の反響を軽減させることと、船体内部からの騒音の遮蔽が期待できる。今日では一般化した無反響タイルだが、その先駆者が旧ソ連であって、少なくとも1960年代後半には実現させていたことは意外に知られていない。

本質的には、大きな騒音源を抱える原子力潜水艦(冷却水循環ポンプ、タービンの減速ギア)のために考案された対策であるが、今日では通常動力潜水艦にまで広く普及してきている。被探知からの回避という点に関しては、通常動力でも核動力でも変わりはなく、むしろ航続性能の点からすれば通常動力潜水艦の方が深刻である。

[編集] スクリュー

潜水艦の二大騒音源は機関関係の音とスクリューキャビテーション・ノイズであるが、後者の改善のために、ハイスキュード・スクリューやポンプジェット式推進装置が採用される。

しかし、静粛化はひとつやふたつの装備の交換で容易に向上するようなものではない。また、船体構造や機関との適合性の検討なしに、この種のスクリューを装備しても、静粛性の向上に寄与するかどうかは不明である。

[編集] 対抗/妨害手段

潜水艦の防御手段は機動性とジャマー・デコイなどを最大限に活用する。

  • 潜水艦の攻撃回避策
    • LD(レイヤーデプス)温度境界層(数10mから最大200m程度)下への潜航
    • 深深度潜航
    • ナックル(急回頭によって強烈な水流を作り擬似目標とする方法。この水流はソーナーの探信音も反射する)
    • スパイラルターン 急旋回と急速潜航を同時に行い、擬似目標と気泡の放出して敵のアクティブソーナーや追尾魚雷を欺瞞する。
    • ホバリング(水中停止による魚群、水塊の擬似、海流に乗って海峡を突破するなど)
    • 東西方向への逃走(磁力線に触れることを避け磁気探知からの回避)
    • 擬似目標の放出(気泡缶、雑音発生器の放出)
    • 高圧空気、気泡(バブル)の放出
    • 対抗魚雷(敵のホーミング魚雷に対して魚雷を発射する)
  • バラージジャマーに相当するノイズメーカーもあるが、持続が難しいとの事である。チャフに相当する昔からの手段は発泡缶で、泡が作る虚像にアクテイブホーミングさせるものだが、新しい魚雷は反射波のドプラーシフトを分析して航行していた潜水艦が動かない泡になったことで欺瞞を見破って索敵モードに戻ってしまう。それに対してデイセプションジャマーに相当する多機能デコイもあって、魚雷のアクテイブシーカーにドプラーシフトを模擬した偽反射音を遅延して返し、走る虚像を見せるらしい。ところが更に新しいスマート魚雷では長さで潜水艦とデコイを見破るものも出現するに及んで、発音アレーを曳航して潜水艦を模擬するデコイが出たという。最近キロ級にTV併用有線魚雷が搭載されていると聞き(TVは近寄らねば有効ではないが、TVを欺瞞できる音響デコイはない)行き着くところまで行った観がある。
  • このような技術開発競争では米露以外の国は完全に置いてきぼりを食っていると思われるが、キロを導入している国はロシアの進んだ魚雷/機雷とデコイを使えるであろう。また中国がフランクアレー無響タイル装備の建造を中断しを作ったのもAIPの問題だけでなくロシア製魚雷/機雷、デコイとのインテグレーションが全国産を目指したでは駄目だったからかもしれない。日本のカウンターメジャーについてははるしおまで無響タイルもフランクアレーもなかったところから、実際の所、発泡缶と航走音模擬デコイ世代と観る者もいる。

[編集] 兵装

潜水艦の兵装は、対潜 / 対艦戦闘用の魚雷対艦ミサイル対潜ミサイル機雷、地上攻撃用の巡航ミサイル、また戦略ミサイル原潜 (SSBN) は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載している。

なお、航空機に対しては下手に戦うより潜航して身を隠したほうが安全なため、普通は対空攻撃用の兵装は装備していないことが多い。ただし一部には対潜哨戒機ヘリコプターなど低速の航空機に対処するためにハンディタイプの対空ミサイルを搭載した潜水艦も存在する。


[編集] 機雷偵察

  • 機雷偵察UUVというと未来兵器のようだが実は1990年代からNMRS UUVは米原潜の標準装備になっており、さらにLMRSへの換装が進んでおり、今後の浅海での必須装備といえよう。
  • なぜなら機雷は潜水艦と違って音を出さない。そして始終アクテイブを打ちながら航行する潜水艦はいない。たまたまアクテイブを打ったうえ、係維機雷という幸運に恵まれてさえ(沈底機雷は見つからない)小さいので発見は容易ではない。こうして少し考えれば機雷偵察手段のない潜水艦は浅海では目を瞑って地雷原に突っ込むも同然なのがわかる。
  • それに船首ソナーは低周波ソナーで遠方に届くが、分解能が悪く近くのものはぼやける
  • 機雷を見つけたければ、潜水艦に先行して高周波アクテイブをカンカン打って偵察するUUVはどうしても要る。高周波は距離がとどかないとはいえ潜水艦自身がアクテイブをカンカン打つわけには行かないし、船首ソナーだけだと機雷を見つけた時には衝突目前である。

[編集] 射撃指揮装置

  • 敵艦を探知すればすぐ撃てるわけではなく照準をしないと(特に単純音響魚雷)は当たらない。敵艦は動くし、魚雷はミサイルより遅いので(特に遠距離だったり目標が早い場合)照準不備だと魚雷の音響シーカーの探知範囲外に逃げられてしまう。方位だけでなく距離と深度と目標の進行方向と進行速度の評定は重要。撃てば敵も気づくので初弾必中を目指さねばならない。
  • また音響魚雷は相互干渉するので無誘導魚雷のように円錐型に6本同時に撃てば、魚雷Aのアクテイブ探信音に隣の魚雷Bのパッシブが吸い寄せられて衝突しなくてもコースは曲がってしまい当たらない。
  • 敵艦より先に照準して撃つためにはパッシブソナーの方位、仰角の計測精度も重要だが、最近は複数のソナーのデーターを総合して三角法も活用して測定精度をあげるのが普通なので、複雑な計算を必要とする。そのため複数の高性能ソナーを使いこなすには高度な電算射撃指揮システムとデーターベースを必要とする。射撃指揮装置のソフトは実戦データーが有用なので米露両国が優れていると言われている。ロシアは自国のディーゼル潜の射撃指揮システムを割りと鷹揚に共産圏諸国に輸出しているが、米国はディーゼル潜を作っていないので西側諸国は射撃指揮システムを自製している。

[編集] 音響魚雷

  • 魚雷にアクテイブ・パッシブソナーを積んで終末誘導を行う。無誘導魚雷のように扇状、円錐状に多数撃つと、魚雷Aのアクテイブ探信音に隣の魚雷Bのパッシブが吸い寄せられてしまうので、2-5分毎、2本づつしか撃てない。アスロックの短魚雷などは直径1kmのらせん状に沈降捜索し、潜水艦発射は2-4kmの蛇行捜索をするという。捜索は低速静音で、ロックすると高速に加速する二速魚雷もある。
  • 終末誘導だけで中間指令誘導がないのと、高速水中物体のシーカーは視野が狭くなるので、ノイズメーカーやデコイと急速潜航等回避機動を併用されると失探しやすいし、発射後のコース変更がきかないので発射照準が完璧でなければ当たらず、撃つまで時間がかかる。マイコン搭載のスマート魚雷と旧世代の魚雷では耐欺瞞能力に雲泥の差があると言われる。(詳細デコイ参照)

[編集] 有線魚雷

  • 有線魚雷とは、音響終末誘導魚雷に有線中間指令誘導を追加した魚雷である。
  • 魚雷シーカーは高速航走のために視野が狭くなるので、デコイを出されて、潜水艦に急角度で方向転換されると失探しやすいが、沈底なりホバリングしている母船潜水艦のソナーは速度視野狭窄に陥っては居ないし、むしろ回避機動中の標的潜の航走音を捉えているので失探/欺瞞しにくい。また、航走途中でコースや(速度)を変更できるので、照準も回頭もすまないうちに即発射して敵潜の方向に魚雷を指向して中速静音航走開始させたあと、(フランクアレーがあれば)敵潜への距離、深度、ベクトルなど計測してコースを発射後に修正しできる。(増速できる場合もある)特に水中高速である原潜相手の場合、魚雷着弾時の目標位置は魚雷発射時の位置と大きくずれるので、着弾予定地点を変更できる有線中間指令誘導式の効用は大きい。なお、有線魚雷は撃ったあとで魚雷だけ回頭できるので母船自体は回頭なしで後ろにも横にも撃てる。
  • また、有線魚雷で撃たれた場合、撃って来た方向へ高速魚雷を発射して、先制攻撃してきた相手を誘導線切断・回避機動に追い込むのはよく行われるという。有線中間指令誘導を失った音響魚雷のほうが欺瞞しやすいからである。

[編集] 対潜水艦戦

潜水艦は神出鬼没の行動を行う隠密兵器であるため、対潜水艦 (ASW) 作戦には優秀な機器と膨大なデータが必要となる。アメリカ海軍は、全世界・全海洋の磁気、海流、海水温を調査しつづけている(なお、アメリカ海軍が調査した大洋底の地磁気のデータからプレートテクトニクスの証拠が得られた)。潜水艦を探知する手段として、以下のようなものがある。

レーダー
水上航行している時間がほとんどだった第2次大戦中の潜水艦にとって、レーダーは大きな脅威であり、その普及は大西洋におけるUボートの活動を大きく制約したことが知られている。水中航行が原則となった戦後は、レーダーは、潜望鏡や通常型潜水艦のシュノーケルを探知するために用いられる。通常動力潜水艦は、その特性上、シュノーケル航走中の被探知回避が課題となる。
磁気探知装置 (Magnetic Anomaly Detector, MAD)
潜水艦は大きな金属の塊であり、海中に潜水艦が存在すると地球の磁力線が潜水艦を中心に集束するため、磁力線の乱れが生じる。そのため、特定海域の通常の地磁気の状態を把握しておき、異常が見られればそこに潜水艦が存在する可能性が疑われる。航空機からの磁気探知はディーゼル潜水艦で水深500mまで、原子力潜水艦で水深800mが限界であるといわれている。
赤外線探査
潜水艦は熱源を持っており、上空からの熱源探査により、局部的な赤外線異常が見つかればそこに潜水艦が存在する可能性が疑われる。一般に、大型の潜水艦の方が探知される可能性が高いとされる。ただし、実際には潜水艦を熱源探知する場合、潜水艦本体の熱源ではなく、潜水艦が浅深度航走をする際に海面に生じる航跡を熱源探知している。また、原子力潜水艦は原子炉の二次冷却水を排出するため、通常動力潜水艦と比べて、特に赤外線探査に脆弱であるとされている。

[編集] 歴史

[編集] 黎明期

乗り物や器に入って潜水することも潜水船のひとつと含めるならば、潜水船の歴史はかなり古い(伝説としても、透明な部屋でのアレキサンダーの海底訪問など有名なものがある)。だが、自己の能力で移動や潜水操作ができることを条件とするなら、一般に存在が確認されていて一番古いものとされているものは、1620年イギリスで作られた12人乗りで手漕ぎ式の木製潜水艦である(コルネリウス・ドレベルの項も参照)。

[編集] 最初の戦果

アメリカ南北戦争中、南部のアラバマ州モービルで建造された9人乗りの人力推進潜水艇ハンリー (H.L.Hunley) は、1864年サウスカロライナ州チャールストン港外で同港を封鎖中の北軍木造蒸気帆船フーサトニックを外装水雷によって攻撃、撃沈した。これが戦争中に潜水艦(潜水艇)が敵船を沈めた最初の例である。ハンリーは攻撃から帰還せず、1995年に港外の海底に発見され、2000年に引き揚げられて保存・展示されている。艦名は建造出資者の一人ハンリー (H.L.Hunley) にちなんで命名されたが、当人は艇長として訓練中に本艦2度目の沈没事故で死亡した。上記攻撃は引き上げ修理後に実施された。

なお、当時は潜水艇やデイヴィッド型半潜水艇は敵味方双方からアンフェアで悪魔的 (infernal) な兵器と見なされており、チャールストンを封鎖中の北軍装甲艦ニューアイアンサイズの艦長は、同艦を暗夜襲撃して損傷させ、捕虜になったデイヴィッドの艇長を「文明国で認められていない兵器を用いた罪で」ニューヨークで裁判にかけて絞首刑にすると脅した。

[編集] 近代潜水艦第1号ホランド

実用的な潜水艦の第1号は、1900年にアメリカで完成したホランドHolland SS-1(水中排水量74t)であると言われている。この艦はガソリンエンジンと直流モーターを同一軸でつなぎ、水上ではガソリンエンジンで走りながら同時にモーターを発電機としてバッテリーの充電を行い、潜航時はバッテリーでモーターを駆動させるという方式を確立した。ホランド型は1904年から1905年日露戦争中に日本、ロシア両国にも輸出されたが、偶然両者ともキングストン弁が間違って納入されるというアクシデントにより戦争中には戦力化ができなかった。

[編集] 潜水艦の活躍:第一次世界大戦

潜水艦が主に活躍するようになったのは第一次世界大戦からである。大戦開始時の潜水艦は水中排水量100tから600tで主機はガソリンエンジンからディーゼルエンジンに変わりつつあった。開戦直後の1914年9月にドイツの潜水艦がイギリス巡洋艦4隻を撃沈し、その威力を示した。戦艦を始めとする水上戦力でイギリスに劣るドイツは、潜水艦による通商破壊を決意し大型の航洋潜水艦を大量に建造した。42隻完成したU81級は水中排水量約1000t、大戦末期に4隻が完成したU139級では水中排水量約2500tの大きさに達した。

これらの潜水艦を整備したドイツは、1917年2月、無制限潜水艦作戦によるイギリス封鎖を開始した。これはドイツの指定する航路以外を通った船舶を無制限に撃沈するというものであった。この作戦は有効であり、イギリスの帆船がこの作戦により絶滅したとの説もある。しかしこの無制限作戦は中立国の船舶も攻撃対象とした国際法違反であり、1915年のUボートによる英国船ルシタニア号撃沈事件で自国民多数を殺されて反独感情の高まっていたアメリカの参戦を招く(1917年4月)結果となった。

Uボートに対し、連合国は以下のような手段で対抗した。

Qシップの投入
第一次世界大戦当時はUボートが搭載している魚雷は数が少なく、また非常に高価な貴重品だったため、客船など強力な戦闘艦以外の船を狙う場合は、Uボートは浮上して艦砲で攻撃していた。そこで、商船に大砲を隠して、囮船となり、Uボートが客船だと思って浮上した瞬間に砲撃した。
Uボートの拠点となる基地への機雷の敷設
護送船団(コンボイ)方式の採用
輸送船を単独で航行させずに一度に数十隻もの大船団で行動させることにより、単独行動時比べた一隻当りの発見率の低下を期待するというもの。
ASDIC(ソナー)の開発
ただし、当時のソナーの性能は低く、あまり大きな効果は得られなかった。

結局、第一次大戦によって連合国は1600万トンあまりの船舶を失い、全世界、とりわけ衰弱寸前まで追い込まれたイギリスは「灰色狼」と呼ばれたUボートの威力を知ることとなった。なおこの当時の潜水艦は、水上速力15~20ノット、水中速力8ノット、潜航深度100m程度であった。

[編集] 大戦間の状況

米国をはじめとする戦勝国はドイツのUボートを戦利艦として入手し、その技術を自国の潜水艦建造に取り入れた。各国はドイツの技術を基本に、自国の戦略に応じた潜水艦の建造を進めていった。

日本は広大な太平洋での長距離作戦を考慮し、水上排水量2000tを超える大型の潜水艦の建造に注力し、その中には偵察用水上機を搭載する潜水戦隊旗艦用の甲型(2434t:水上 / 4150t:水中)もあった。フランスは重巡洋艦級の20.3cm連装砲を装備し当時世界最大といわれた巡洋潜水艦スルクフ(水上2880t)を建造した。1935年に再軍備を宣言したドイツは、水中排水量800t程度の中型艦を多数建造する方針をとった。

いずれも水上速力15~25ノット、水中速力は相変わらず8ノット、深度は100m以下と言われている。

[編集] 第二次世界大戦

帰港するU-47と背景の戦艦シャルンホルスト(1939年10月)
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帰港するU-47と背景の戦艦シャルンホルスト(1939年10月)

第二次世界大戦開始時ドイツ海軍は再建途上にあり、完成まで何年もかかる大型の水上戦闘艦艇の建造を後回しにして、多数の中型潜水艦による通商破壊作戦に注力した。開戦直後イギリス海軍の本拠地スカパ・フローに潜入したUボート(U-47 艦長:ギュンター・プリーン)は、停泊していた戦艦ロイヤル・オークを撃沈し、イギリス海軍を慌てさせた。

第一次世界大戦で護送船団方式に破れたドイツ海軍は、数十隻の潜水艦が協力・連動して船団を襲う群狼作戦を用いてイギリスに挑んだ。当初イギリスは膨大な損害を受けたが、レーダーや対潜兵器の開発で対抗し、更にアメリカが参戦し大西洋に多数の護衛空母を送り込んで航空機による対潜作戦を大規模に行うようになると、形勢は完全に逆転した。機関用シュノーケルの実用化や、ヴァルター機関の開発なども行われたが、大勢を覆すまでにはいたらなかった。

伊四〇〇型潜水艦
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伊四〇〇型潜水艦

太平洋では日本がアメリカ艦隊攻撃用に準備した大型潜水艦は殆ど活躍できず、戦略物資の輸送などに用いられ、効果的な戦術を発揮する機会はなかった。逆にアメリカ潜水艦の活躍により日本の輸送船団は壊滅した。通商路を寸断された日本は深刻な物資(特に石油)不足に陥り継戦能力を失った。日本がアメリカ本土攻撃用に建造した伊四〇〇型潜水艦3隻(水上攻撃機3機搭載:水上排水量3530t)も華々しい活躍の場は無かった。

  • 第二次世界大戦で実施された対潜水艦攻撃方法
    • 爆雷攻撃
    • 敵潜水艦基地の爆撃、コマンド攻撃(米英軍)
    • 対潜臼砲、陸軍船舶砲兵による迫撃砲攻撃(日本軍)
    • ヘッジホッグ(米軍)
    • ホーミング魚雷(ドイツ軍)
    • 対潜哨戒機(東海搭載のKMX)の磁気探知(日本軍)
    • 対潜機雷投射器ボフォース(スウェーデン)

なお、第二次世界大戦期における主な技術的進歩としては水中速力や潜航深度の増大、水中聴音機などの電子装備の発展、そして航空機を搭載するなどの遠隔攻撃力の付加等が挙げられるが、これらは各国の潜水艦が戦後、飛躍的な技術的進歩を遂げる基礎となるものであった。

[編集] 戦後の発展

水上航走中のロサンゼルス級ノーフォーク (SSN-714 Norfolk)
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水上航走中のロサンゼルス級ノーフォーク (SSN-714 Norfolk)

これまでの潜水艦は基本的に大気に依存した推進機関を用いていたため長時間連続した水中行動は不可能で、実際には可潜艦と呼ばれるような状態であった。完全に大気から独立して運行できるようになったのは、1955年アメリカで完成した原子力潜水艦ノーチラス号(水上排水量3180t)が最初。この艦は潜航したまま20ノットで走り続けることができた。また氷結した海を浮上することなく航海し北極点にも到達したが、これは当時のソ連にとって裏庭に無断で侵入されることに相当した。

こうした、無制限の潜航時間が得られ、また発見されにくいという原子力潜水艦の特性は、冷戦下で核抑止力の重要な一環に連なることとなった。1959年、アメリカは潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM) ポラリス16基を搭載したジョージ・ワシントン(5959t:水上 / 6709t:水中)を建造。この艦は『陸上の基地が敵の先制攻撃を受けて壊滅した後でも、海中にひそんだ潜水艦搭載核ミサイルによる充分な反撃が可能であるから、敵は先制攻撃できない』とする核抑止の切り札となり、その後、旧ソ連・イギリス・フランスが同様の原子力潜水艦を建造している。これは紛れもなく冷戦の産物であるが、冷戦終結後でも存続している。しかし、その優先順位は大きく後退し、各国の戦略ミサイル搭載原子力潜水艦とも改良は続けられているが、ロシアのボレイ級のような例外を除けば新規開発は途絶えている。

なお、原子力潜水艦が大型の水上艦艇を撃沈した例としては、 フォークランド戦争1982年)において、イギリスの攻撃型原子力潜水艦コンカラーがアルゼンチンの巡洋艦ヘネラル・ベルグラーノ(旧アメリカ軽巡洋艦フェニックス、排水量10,000t)を魚雷により撃沈した件がある。これが原潜による海戦の嚆矢である。コンカラーはヘネラル・ベルグラーノを24時間以上追跡したが全く察知されなかった。この戦いによってそれまで水上艦に対し圧倒的に不利と思われていた原潜の有効性が証明された。

また、原子力ではない通常型潜水艦は、原潜に比べて安価であり静粛性に優れるため、現在でも多く使われている。通常型潜水艦は水上ではディーゼルエンジンで航走しつつ蓄電池を充電し、水中においては蓄電池でモーターを動かして行動する。しかし、かつてほどではないが制約は依然として大きく、完全な潜航時間が短いという問題がある。すなわち、定期的にディーゼル航走の可能な浅深度にとどまって、蓄電池を充電しなければならず、これは脆弱さを抱え込むことに等しい。

そのため、現在では潜航時間を延ばすためにスターリングエンジンや閉サイクルディーゼル、そして自動車用としても有名になりつつある燃料電池などのAIP機関を搭載する潜水艦も研究され、すでに(一部は第二次世界大戦時の段階で)実用化されているものもある。AIP機関は潜航時間を伸ばすことができる点で有用だが、まだまだ非力であるためもっぱら低速航走に充てられており、蓄電池とは使い分けがなされている。

一時期弾道ミサイルを搭載した通常動力の潜水艦も存在したが、戦略的意味合いは低く、現在、新規の開発はおこなわれていない。ただし魚雷発射管からの発射が可能な巡航ミサイル対艦ミサイル(この中には核兵器も含まれる)を搭載した通常動力艦は全世界的に増加傾向にあり、その保有国も近年は増加の一途をたどっている。


[編集] 変り種潜水艦

[編集] 潜水艦を扱った作品

[編集] 文献

第二次世界大戦
第二次世界大戦後
潜水艦事故
  • アレクザンダー・フラートン(著)、佐波誠(訳)、英海軍潜水艦シーティスの事故を題材した小説、『潜水艦いまだ帰投せず』、早川書房、1996年、ISBN 4-15-040821-1
  • Edwyn Gray(著)、1939年6月1日の英海軍潜水艦シーティスの事故を題材したノンフィクション、巻末に1774年-1985年の潜水艦事故の一覧表がある、Few Survived ; A History of Submarine Disasters, ロンドン Leo Cooper, 1996, ISBN 0-85052-499-7
  • ピーター・マース(著)、江畑謙介(訳)、1939年5月23日の米海軍潜水艦スコーラスの事故を題材したノンフィクション、『海底からの生還;史上最大の潜水艦救出作戦』、光文社、2001年、ISBN 4-334-96112-6
  • 西村拓也(著)、『ドキュメント「原潜爆沈」;「クルスク」の10日間』、小学館、2000年、ISBN 4-09-404612-7

[編集] 漫画

[編集] 映画

第二次世界大戦中の潜水艦を題材とした作品
  • 眼下の敵(1957年、監督:ディック・パウエル)
  • 潜水艦イ-57降伏せず(1959年、監督:松林宗恵)
  • Uボート(1981年、監督:ウォルフガング・ペーターゼン
  • ザ・ラストUボート(1993年、監督:フランク・バイヤー )敗戦直前ドイツを出航して日本にウラニウムとジェット・エンジン技術者を送り届ける使命を持った独潜水艦の運命
  • U-571(2000年、監督:ジョナサン・モストウ)
  • ビロウ(原題:BELOW/2002年 監督:デヴィッド・トゥーヒー) ……潜水艦映画にオカルト的要素を加味した作品。
  • ローレライ(2005年、監督:樋口真嗣
  • 出口のない海(2006年、監督:佐々部清
第二次世界大戦後の潜水艦を題材とした作品

[編集] 架空の潜水艦(潜水艇)

[編集] 関連項目

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