強制執行
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強制執行（きょうせいしっこう）とは、債務名義にあらわされた私法上の請求権の実現に向けて国が権力（強制力）を発動し、債権者に満足を得させることを目的とした法律上の制度であり、日本においては民事執行法（以下単に「法」とする）を中心とする諸法令により規律される。
目次 |
[編集] 強制執行総論
[編集] 執行力のある債務名義の正本
[編集] 債務名義
債務名義（さいむめいぎ）とは、法22条各号に掲げられた文書をいい、私法上の給付請求権の存在及び内容を公証するとともに、その給付請求権に強制執行の手続により実現を図ることができる効力（執行力）を付与する文書である。
もし執行機関自身が各事件毎にその請求権の存否・内容を調査することとすると執行の迅速は著しく害される。そこで法は強制執行に際し他の機関によって作成された債務名義を必要とし、また債務名義のみに基づいて強制執行を行うことができるものとしたのである。
債務名義には、以下の8つの種類がある（法22条各号）。
- 確定判決（同法同条1号）
- 仮執行の宣言を付した判決（同2号）
- 抗告によらなければ不服を申し立てることが出来ない裁判（同3号）
- 仮執行の宣言を付した支払督促（同4号）
- 訴訟費用の負担等の額を定める裁判所書記官の処分（同4号の2）
- 執行証書（同5号）
- 確定した執行判決のある外国裁判所の判決（同6号）
- 確定した執行決定のある仲裁判断（同6号の2）
- 確定判決と同一の効果を有するもの（同7号）
[編集] 執行文
執行文（しっこうぶん）とは、債務名義の執行力の存在、執行当事者適格、条件付請求権についての条件成就について、裁判所書記官・公証人に審査させ、債務名義の正本の末尾に付記する公証文言である（法26条）。
この法技術は、裁判機関と執行機関とを分離した制度の下で、執行機関が実質的調査を要せず、簡易に執行に着手するためのものである。
執行文には、以下の3つの種類がある。
- 単純執行文―債務名義の執行力を単純に公証する。
- 条件成就執行文（法27条1項）―停止条件の成就・不確定期限の到来を確認する。
- 承継執行文（同2項）―債務名義に表示された者でない者を債権者または債務者とする執行を許す。
[編集] 執行機関
民事執行法上の執行機関（しっこうきかん）とは、執行手続を担当する国家機関であり、執行裁判所（法3条）と執行官（裁判所法62条）を指す。
執行機関の意義は、裁判機関からの分離にあるとされる。これによって迅速かつ効率的な権利の実現が可能となるためである。 また現行法上、執行裁判所と執行官とを置くことで執行機関を分化した意義は、法律判断を含む行為と実力行使を含む行為とをそれぞれにふさわしい者に担当させることにある。
[編集] 強制執行に対する不服申立て
執行機関の処分に対する不服申立てには以下の類型がある。
- 執行抗告
- 執行異議
執行手続の実体法的基礎に対する不服申立ては、訴訟手続により行う。これらの訴訟を一般に執行関係訴訟という。これには以下の類型がある。
- 請求異議の訴え
- 執行文付与に関する訴え
- 第三者異議の訴え
- 配当異議の訴え
執行関係訴訟を提起と同時に強制執行停止決定を得ないと強制執行は続行される。
[編集] 強制執行各論
[編集] 金銭執行
金銭執行とは金銭の支払を目的とする債権を満足させるための強制執行である。
通常は債務者の財産を差押え、その財産を金銭に換価し、配当による債権の満足という三段階を経てなされる。
差押えの対象によって不動産執行・船舶執行・動産執行・債権執行に分類され、換価の方法によって強制競売・強制管理に分類される。
[編集] 不動産執行
不動産執行における不動産は差押えが登記によってなされる都合上、民法上の不動産から登記することが出来ない土地の定着物を除いた一方、登記ができ独立の財産価値を持つ不動産に対する権利（不動産の共有持分、地上権・永小作権ならびにその共有持分）をも不動産とみなすこととしている（法43条）。
[編集] 強制競売
| 不動産競売手続の流れ（手続、主体、根拠条文） | |||
| 1 | 申立て | 担保権者・債権者 | 法2条、規則1条 |
| 2 | （担保不動産・強制）競売開始決定 | 執行裁判所 | 法45条 |
| 3 | 差押登記 | 裁判所書記官 | 法48条 |
| 4 | 配当要求終期の処分およびその公告 | 裁判所書記官 | 法49条2項 |
| - | 債権届出の催告 | 裁判所書記官 | 法49条2項 |
| - | 現況調査命令 | 執行裁判所 | 法57条1項 |
| - | 評価命令発令 | 執行裁判所 | 法58条1項 |
| 5 | 現況調査報告書提出 | 執行官 | 規則29条 |
| - | 評価書提出 | 評価人 | 規則30条 |
| 6 | 物件明細書作成 | 裁判所書記官 | 法62条1項 |
| 7 | 売却基準価格決定 | 執行裁判所 | 法60条第1項 |
| 8 | 売却実施処分（調査時は売却実施命令） | - | - |
| 9 | 売却の公告と三点セット備置き | - | - |
| 10 | 入札 | - | - |
| 11 | 開札 | - | - |
※「規則」とは、民事執行規則のことをいう。
[編集] 強制管理
[編集] 船舶執行
[編集] 動産執行
[編集] 債権執行
実務上多数を占め、債務者が債権者となっている第3債務者に有する権利に対する執行である。債務者が有する賃金報酬請求権や預金が代表例。賃金報酬については政令で定める範囲は生活費として差し押さえ禁止となり、超える部分のみが有効となる。
- 債権差押命令
まず、債権差押命令を得て、債務者が第3債務者に有する債権を凍結させる。次に、債権取り立て、転付命令、譲渡命令を得て執行完了となる。
- 取立
給与などを取り立てる場合が例。複数の債権者が差し押さえた場合、給与の支払いの第3債務者は供託をしなければならない。この場合競合する債権者は取立訴訟を提起して債権を分配することになる。債権者が競合しない場合でも第3債務者は供託することができる。
- 転付命令
銀行預金や法務局供託金に対して転付命令が確定すると（転付命令に対しては執行抗告することができる）、その券面額で債権者に移転する。
- 譲渡命令
実務上あまりなく、特許権など債務者名義のの財産権を債権者名義に譲渡させることができる。
[編集] 非金銭執行
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