天ぷら
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天ぷら(てんぷら)
- (天麩羅、天婦羅とも表記)
- 日本のゲームクリエイター。天ぷら (ゲームクリエイター)参照。
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[編集] 概要
日本人にとっては、立ち食い蕎麦から高級料亭までと食べる機会の多い、非常に馴染み深い料理であり、また海外においては寿司、蕎麦と並び、代表的な日本料理とされる。サクっとした衣の食感と、旬の食材を楽しむ料理である。
タネと呼ばれる食材に小麦粉と卵で作った衣をつけ、油で揚げた料理。本来は魚介類をタネとした物のみを天麩羅と呼び、野菜をタネとした物は精進揚げ(しょうじんあげ)と呼び区別されるが、現在では精進揚げも含めた総称として天麩羅が使われる事が多い。タネの種類に応じて「海老天」「ナス天」等と呼ばれる。代表的なタネとして海老、キス等が挙げることは出来るが、特に種類は限定されず、季節折々の食材を楽しむのが最大の醍醐味と言える。ただし、肉類をタネとする事は少なく、鳥天等は地方独自の郷土料理として扱われている。
[編集] 調理法
薄力粉、鶏卵、冷水を軽く混ぜ合わせて衣を作り、食材をくぐらせ160〜180℃の油で揚げる。
一見単純な調理法ではあるが、サクッとした食感に揚げるにはコツを要し、天麩羅を上手に揚げられる事は一つのステイタスとも言える。不慣れな人間が作ると衣がもったりとなり、油が切れず、非常に食感が悪い物が出来上がる事となる。また衣に「華を咲かせる」と呼ばれ、衣を大きく見せ、よりサクッとした食感にさせる技法がある。美しく見栄えのする華を咲かせるには、熟練した技が必要になる。 天麩羅を作るときのコツとして
- よく冷し
- 混ぜすぎない
という事が有名であるが、これはさくっとした食感には邪魔な小麦粉のグルテン生成を押さえる為の方法である。
近年ではカラッと揚がるように、発泡性の重曹やベーキングパウダーなどが加えられた「天ぷら粉」が市販されており、一般家庭で天麩羅を作る際に利用されている。
揚げ油は天麩羅の香りを決定付ける重要な要素であり、専門店等ではごま油、綿実油等を独自にブレンドして使っている。高級店や産地では椿油を用いる場合もある。家庭ではサラダ油が用いられる事が多いが、少量のごま油を足すだけで仕上がりは大きく異なる。
タネに決まりがあるわけではないが、高温の調理で硬くなる物(ハマグリなど)は避けられる。山菜や野草の場合、他の調理法ではアク抜きなどの下処理が必要となるが、天ぷらにおいてはほとんど必要がなく、摘み草などで山野草を手早く味わいたい場合に多く用いられる。
油で揚げている最中にはタネの温度が急上昇するため、衣に閉じ込められた空気が破裂することがあるので注意が必要だ。特に尾のついた海老を調理する際は、下処理として尾の先端に含まれる空気を抜くことが重要である。また仕上りを美しくするためにはタネに隠し包丁を入れておいたり、筋切りをしておくと良い。
[編集] 食べ方
単品として食べる場合、天つゆか塩を付けるのが一般的であり、食材によっては柑橘類の絞り汁だけをかけて食べる事もある。 天つゆは出汁と醤油が基本となるつけ汁で、大根おろし、紅葉おろし、おろし生姜等が薬味として用いられる。 塩は単なる粗塩の他、抹茶、カレー粉、柚子皮、山椒等が混ぜられる事もある。 ただし地方によっては醤油やウスターソースをつけて食べる所もある。
白飯にのせ、タレをかけた「天丼」、蕎麦・饂飩にのせた「天麩羅蕎麦」・「天麩羅饂飩」も非常に一般的な食べ方であり、多くの蕎麦屋ではご飯類、麺類それぞれの最高級メニューとして花形を飾っている。
この他、白飯に掻き揚げをのせてワサビを添え、出汁や緑茶をかけた「天茶」(天ぷら茶漬け)という食べ方もある。
[編集] 歴史
戦国時代の16世紀頃に、キリスト教の宣教師達によって伝来された。宣教師達は、水で溶いた小麦粉の衣で魚をまとい、熱い油で揚げて食べたとされる。当時は「南蛮焼き」と呼ばれていたと伝えられる。 ただし、当初伝えられたレシピは、現代のフリッターの原型とも考えられる。フリッターはふんわりした衣であるのに対して、サクサクとした衣を作る技法に発展して行ったのが、日本料理としての「天ぷら」だと考えられる。
江戸時代には、天ぷらは屋台などで売られた庶民の手軽な食事だった。それが江戸前は炒り胡麻油で、京都などは綿実油を使用し、料理店でだされるようになり、後には高級料理にもなった。
[編集] 語源
天ぷらの語源については、諸説あり、
- ポルトガル語のtemporas(斎時の意)
- ポルトガル語のtempero(調味料の意)
- ポルトガル語のtemperar(動詞:[調味料を加える]、又は[油を使用して硬くする]の意)[動詞を変化すると、第三者でTEMPERAとなる(例、食べ物に調味料を加える、又は食べ物を油で硬くするにする)]
- スペイン語のtemplo(寺院の意)
- スペイン語およびイタリア語のtempora(四季の斎日の意)
などから転じたという説がある。
「天麩羅」は後世の当て字で、江戸時代に山東京伝が考え出したという説が有力。
[編集] 名称
「天ぷら」とは当初、海外から九州・沖縄方面に入ってきた油料理の総称であったとされ、後には薩摩揚げ等の、以前より日本にあった油料理も含めた名称となった。しかし時代が下り、江戸時代に入ると魚介類を原材料とした物のみを「天麩羅」と呼ぶ様になり、野菜類を揚げたものを精進揚げ(しょうじんあげ)として区別する様になる。
また、衣に卵黄を多く使ったものを金ぷら、卵白を使ったものを銀ぷらと呼び分けられていた。現在はすべて天ぷらという名称に変えられており、一部の者のみが正しい名称を使用している。
野菜類や魚介類を切って混ぜ合わせて揚げたものを掻き揚げという。また、衣に青海苔を混ぜたものを使ったものは磯辺揚げ(いそべあげ)と呼ばれる。
中華料理でも水で溶いた小麦粉を付けて揚げる料理はあり、素材の前に「軟炸」の字が冠せられる。例えば、豚天(とんぷら)は、「軟炸肉片」、エビ天は「軟炸蝦仁」という。
[編集] 天ぷらの変り種
- アイスクリームの天ぷら
- 冷たいアイスクリームを熱い油で揚げるが溶けていないということで話題となった。アイスクリームをカステラなど空気を多く含む素材で包み素早く揚げると、空気により内部への熱伝導が妨げられるためアイスクリームは溶けない。台湾の屋台には、冷凍したアイスクリームの球に直に衣を付けて揚げるものさえあり、熟練が要求される。
- 饅頭の天ぷら
- 主として酒饅頭に衣を付けて揚げたもので、一部は揚げ饅頭として商品化されている(饅頭参照)。この他に黒糖饅頭や中華菓子の桃饅頭が揚げられる事もある。アイスクリーム同様、デザートや箸休めとして用いられる。
- 油滋(ユジ)
- 中国風精進料理の普茶料理で出される精進揚げの一種。普通の精進揚げと異なって、衣に味付けがなされており、何も付けずに食べる。寺院によっては、釈迦の故事(スジャータ参照)に因んで豚肉を揚げる場合もある。
- ウニの天ぷら
- 溶けやすいウニを海苔で巻いて揚げる。
- 紅ショウガの天ぷら
- 関西ではポピュラーで、市場でも売られている。
- 寿司の天婦羅
- 巻き寿司のものが多いが、にぎり寿司のものさえ出す店がある。
- いかだ牛蒡
- 厚く切った牛蒡を包丁で叩いて柔らかくした後、薄い味付けで煮て、これをいかだ状にまとめて衣を付けて揚げたもの。
- 花の天ぷら
- 衣を一面のみにうすく付けて揚げる。食用菊や食用花が用いられる。
- モミジの天ぷら
- モミジの葉に甘く味付けされた衣を付けて揚げたもの。大阪府箕面市や愛知県香嵐渓の名物として土産物店で売られている。名称は天ぷらだが、実際はお菓子のような衣でカラッとしており、食感も含めてかりんとうに近い。
以下は一部地域で食されている。
- 長崎天ぷら
- フリッターによく似た製法だが牛乳は用いず、小麦粉・卵・日本酒で衣を作る。水を用いないため、うまく揚げるには技量が必要といわれる。材料は普通の天ぷらと同じであるが、鶏肉など肉類も用いられる。冷めても美味しく食べられるため、卓袱料理の献立の一つとされる事が多い。衣に味付けされているため、何も付けずに食べる。
- ゴウレン
- 長崎天ぷらとは逆に、具に味付けをして揚げたもの。肉類が用いられる事が多い。から揚げの原型ともいわれる。
[編集] 派生義ほか
- 上記に関連して、江戸時代には江戸城内において天ぷらを揚げる事が禁止されていた。家康の死因となったのが、天ぷらが忌避された原因と言われる。しかし本当は、奥女中のひとりが天ぷらを揚げていた時の失敗で火事を出しかけた事件があったのが、天ぷら禁止の真相である。
- 路盤を整備せずに表面だけを舗装することを、「天ぷら舗装」という。
- 衣(学校としての知名度や制服)だけで中身の伴わない学生を、「天ぷら学生」という。
- 主に新聞業界等での架空の契約の事を「テンプラ」という。
- 正規に登録された乗用車の車台番号のものと異なる偽造ナンバープレートを取り付けたものを「天ぷらナンバー」という。