地名研究家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

地名研究家（ちめいけんきゅうか）とは、地名を主に研究する人をいう。地名のあるところならどこにでも地名研究家がいるといってもよいが、以下本項目では日本の地名研究家について述べる。

[編集] 概要

地名研究は地理学の1分野とも言えるが、地名研究を専攻とする地理学者は「地名研究家」とはあまり呼ばれず、在野のアマチュア研究家として地名研究をやっているフリーライターなどを「地名研究家」と呼ぶことが多い。

[編集] 地名研究家の類型

伝統的な地名の付け方を絶対的に尊重し、市町村合併や住所変更などで創作される新地名（合成地名、ひらがな・カタカナ地名、広域地名、方角地名、瑞祥地名など）について否定的・批判的な意見をもつ地名研究家が多い。ただし、従来からある合成地名や方角地名など（蒲郡市や東京など）に対しては容認するか、批判的ではあっても改称を働きかけることまではしない。

上記のような考えを持つため、自由な地名の付け方を好む人たちとの間ではしばしば対立する。たとえば、地名研究家は自己の領域よりも広域の地名を用いることを「広域地名の僭称」と呼び、その地名を「僭称地名」といって批判の対象とするが、それに対して「僭称」という言葉の用法が誤っているうえ（詳しくは僭称を参照）、「僭称」という言葉が含んでいる「本来名乗るべきでない地名を名乗っている」という価値観自体が誤りで、もっと地名は自由につけてもいいはずだという批判もある。

新地名から伝統的な地名への改称を働きかける（あるいは、合併成立前に新地名を取り下げさせる）ことを目的とした著書を表す地名研究家もいる。そのような著書を読んだ、合併当事者である地域住民や、新聞等のマスコミも地名研究家とほぼ同様の主張を持ち、新聞記事や投書欄などで新地名に不満を示したり批判したりする場合も多い。このような人たちは「ミニ地名研究家」と考えられる。

一方で、新興住宅地などで地域住民の不満がほとんどないような地名でも、地名研究家が歴史や伝統の破壊につながると判断することがある。この場合は、地域住民と地名研究家の間で意見が食い違うことになる。