喰いしん坊!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキポータル |
日本の漫画作品 |
日本の漫画家 |
漫画原作者 |
漫画雑誌 |
カテゴリ |
漫画作品 |
漫画 - 漫画家 |
プロジェクト |
漫画作品 - 漫画家 |
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 概要
2004年10月、漫画ゴラクにて連載開始。作者によって同じ雑誌で連載された「喧嘩ラーメン」、「食キング」に続く料理漫画。
これまでの料理漫画において、主人公(プロ、アマの料理人など)vsライバル間における勝負の機会が発生した場合、何かしらの料理を作り、どちらがより美味しいかを第三者が判定し勝敗を決する、というスタイルが一般的であった。
が、本作では料理人が主人公ではなく、また勝負の要素として料理を作るのではなく大食いで食べまくることに主題を置き、大食いで勝負するさまをメインテーマとして描く、料理漫画としては他に類をみない意欲作である。
前二作よりさらにスケールアップした、けれんみあふれる演出が非常に魅力的である。
[編集] あらすじ
主人公・大原満太郎はグルメな会社員。ある日、カウボーイのような格好をした男と出会い、その男のアドバイスで巨漢との大食いバトルに勝利。その男は、プロフードファイター・ハンター錠二と名乗る。
錠二は財界の大物、丹下御前が大食いのプロ競技化のため立ち上げた競技団体・TFF(丹下フードファイター)に協力し、ナンバー1の実力を誇っていた。そして満太郎は関西の大食い団体・OKFFからTFFへの妨害に対する義憤からTFF代表のような形で仙台の大食いイベントに出場。しかし満太郎もOKFFの卑怯な妨害にあって敗れてしまう。満太郎は自らの甘さを認め、退路を断つために会社を辞め、錠二やTFFとの関係も断ち、独り大食い修行の旅に出る。
[編集] 登場人物
※注:漫画ゴラク本誌や単行本では固有名詞にもルビが振られていないのが多いため、読み方が一致していない可能性もある。
- 大原満太郎(おおはら まんたろう)
- 本作品の主人公。大食い修行の旅に出てからは冷静沈着になり、実力も向上したが、まだまだハンター錠二には及ばない。彼が大食いに挑む姿や理念は非常に美しく、見る者を魅了する。また、食べ方も変幻自在。メニューによっては周囲の客のよだれを誘う。
[編集] 丹下フードファイター(TFF)
- 丹下御前/丹下考之助(たんげごぜん/たんげ こうのすけ)
- ホテル、デパートなどの大企業を統括する大商社「帝王」の創業者。元産業連合会長。ニチブン商事・吉本商事両社の社員を使った大食いを座興の肴にしたことを激しく叱咤したこともある点から、大食いの興行化には断固反対の姿勢を見せている。現在は隠居して、大食いのスポーツ化のためTFFを設立し、奔走中。
- 犬丸研(いぬまる けん)
- TFFのトレーナー。食闘士ではないが、独自の大喰い理論を駆使して仲間にアドバイスを送る。
- 常にノートパソコンを所持、科学的な分析もこなす解説役。
- ハンター錠二/獅子戸錠二( - じょうじ/ししど じょうじ)
- 大食いの実力はTFF内でナンバー1。ウエスタンスタイルにサングラスといういでたちで、本人曰くサングラスをかける時は勝負の時と不味いものを食い続ける時。 丹下御前の大食いのスポーツ化という理想に賛同し、協力している。一度だけ鳥飼に敗れたことがあるらしい。漫画ゴラクネクスターでは彼が主役の外伝も存在する。喰いワングランプリでは唯一の招待選手として出場する。
- 鳥飼飛男(とりがい とびお)
- 熊田剛/熊田軍兵衛(くまだ つよし/くまだ ぐんべえ)
- TFFに所属するフードファイター。外見はドラえもんの剛田武(ジャイアン)がモデルと思われる。大喰いの実力は非常に高いものを持っているが、お人好しなためしばしばOKFFの罠にかかる。一回目は仙台で行われるイベントの前の調整中にOKFFと野試合を行い出場できなくなる。そのため自分を鍛えなおすべく熊田軍兵衛と改名、修行の旅に出る。2回目は喰いワングランプリの予選でマジック坂多のトリックにだまされてしまうが…。喰いワングランプリではマスクで素顔を隠し「ミスターマスクマン」と名乗って出場する。
[編集] 大阪食い倒れフードファイター(OKFF)
- 遠山金次郎(とおやま きんじろう)
- 丹下孝之助の友人で、浪速鉄道グループの社長。丹下の提唱する大食いのスポーツ化に賛同し、OKFFを設立する。OKFFの設立後に急死し、以後未亡人の響子が継承することになる。
- 遠山響子(とおやま きょうこ)
- 遠山金次郎の未亡人。夫・金次郎の死後、浪速鉄道グループのすべてを継承し、OKFFのトップに君臨する。夫は丹下御前の口車に乗せられて早死にしたと思い、丹下御前およびTFFを恨んでいる。夫の死を機に「喰いワングランプリ」の興業を考え、邪道喰いに固執する(邪道喰いが興行的な効果があるのか、という疑問が多い)。
- 淀川渡(よどがわ わたる)
- OKFFのスカウト部長。外見は笑福亭鶴瓶がモデルと思われる。得意技は私文書偽造。好きなことは、食闘士の特異な食い方に、思いつきで土地の名物(建物・祭り)などから○○喰いなどと名づけること。登場当初は単なる悪徳スカウトマンだったが、だんだんと満太郎のことを一目置くように。かつては大食いが自慢だったせいか、年を重ねるごとに食える量が減っていく自分を自嘲する一面も。
- 横川安男(よこかわ やすお)
- OKFFに所属するフードファイター。通称ドンブリ喰いのヤス。外見や名前は横山やすしがモデルと思われる。タイプとしては早食い。満太郎を油断させて罠に嵌めるため、一時OKFFを脱会したかのように見せかけて、完平太と組んでグルになる。
- 桂参四郎(かつら さんしろう)
- 間完平太(はざま かんぺいた)
- 尾暮太郎(おくれ たろう)
- 坂多利彦(さかた としひこ)
- 通称マジック坂多。外見や名前は坂田利夫(アホの坂田)がモデルと思われる。大喰いの実力はさしたるものは無いが、手品を応用した卑怯な手を使って熊田の心を折った。しかし、満太郎に敗れ、さらに手品の師匠と自分の妻に叱咤されたことで目が覚め、OKFFを脱退する。
- 高丘桃子(たかおか ももこ)
- 西山清志(にしやま きよし)
[編集] その他の人物
- ニチブン商事の社長
- 吉本商事の社長
- ニチブン商事の社長と幼なじみ。同じく肉まんの大食い勝負に参戦させるべく、大阪支店で勤務の横川を代表として招致する。「吉本」の名は吉本興業に由来すると思われる。
- 田中五郎(たなか ごろう)
- 青葉菊子(あおば きくこ)
- 猪瀬黒兵衛(いのせ くろべえ)
- 満太郎が舞阪の賭け大食い勝負が行われている食堂で対決した相手。鯨食いという得意技を持つ。一時はOKFFにスカウトされるも、邪道喰いを示唆された際、激昂してOKFFへの参加を拒否した(邪道喰いが彼の信念に反するため)。喰いワングランプリ本選出場→海鮮丼部門優勝。2日目の巨大ピザ対決は惜しくも勝ち抜けず、補欠に回った。
- 湖池(こいけ)
- いこい食堂の大将
- 悪食三兄弟(あくじきさんきょうだい)
- 尾平走一・走二・走三の三兄弟。一部の同業者の間で悪名高いトラッカーだった。同兄弟の悪食により一時期閑古鳥が鳴いた食堂もあった。錠二に負かされたのと兄弟の悪食を習慣づける原因となった父親の説得により現在は改心して、走一・走二は全国を走り美味いもの巡りをしつつ、いこい食堂への仕入れもし、走三は同食堂で修行中。走一・走二は喰いワングランプリ本選出場→走二がパスタ部門優勝。2日目の巨大ピザ対決で、錠二の異変に気づき、錠二のピザをわざと食べてしまい、不正とみなされ失格となる。結果、走二のピザを食べることとなった錠二はどうにか決勝進出を果たすことに。
- モーニング娘/後藤亜紀子( - /ごとう あきこ)
- 名古屋市に住む巨漢な中年女性。名前の由来は元モーニング娘。の後藤真希。髪形や衣装はモーニング娘。が出演した飲茶楼のCMを参考にしている。「モーニング娘」という通称の由来は名古屋名物のモーニングサービス(特に食べ放題を実施している店)にやってきて大量に食べていくため。以前は昼夜問わず大食いをしていたが、ダイエットのためモーニングサービス以外では食べ物を口にしなくなった(それでも相変わらず太っている)。そのせいかモーニングサービスが終わる11時30分になるとピタッと食が進まなくなり、カレーうどん対決も途中でリタイヤした。喰いワングランプリ本選出場→食パン部門優勝。2日目の巨大ピザ対決では、体内時計を調整した甲斐なく、眠気に襲われリタイヤした。
- 南京善次(なんきん ぜんじ)
- 坂多利彦に手品を教えた師匠。坂田を叱咤し、OKFFを脱退させる。外見や名前はマジシャンのゼンジー北京がモデルと思われる。
- 空念(くうねん)
- 片岡鶴吉(かたおか つるきち)
- 喰いワングランプリ本選1回戦で満太郎や完平太とおでんに挑んだフードファイター。外見や名前は片岡鶴太郎(おでんを食べさせられて熱がっていた若い頃)がモデルと思われる。
- ミスターマスクマン
- 喰いワングランプリ本選に現れた謎の食闘士。実力はかなりのレベルのマスクマンである。2日目の巨大ピザ対決をクリアし決勝進出。顔面にマスクをしているため正体・本名は不明のままであったが、決勝ラウンドで意識が朦朧とした状態でマスクを脱いだことで素顔を露呈し、正体がTFFのフードファイター、熊田剛と判明する。
[編集] 作品中で使われる用語、テクニック
- 悪食
- 大阪食い倒れフードファイター(ページによっては「大阪食い倒れフードファイターズ」と表記している箇所もある)
- 略称:OKFF(Osaka Kuidaore Food Fighter)。設立者は丹下御前の友人、遠山金次郎。本部は大阪市内にある浪速鉄道本社ビル。本来はTFF同様「大食いはスポーツ」という理念の下設立された。ところが、金次郎が急死し、未亡人の響子が後継者となるが、「勝てば官軍」という思想の持ち主であったため、大食いに勝つためには「何でもアリ」の集団へと成り下がり、邪道喰いや妨害などを部下に指示している。一方、スカウトや事務方などの部下は、邪道喰いを常人が真似できない超人的な技としての価値を見出したり、喰いワングランプリの本選推薦出場者へ、本部の指示に従うこと、などとする念書を(偽造して)とったりするなど、方向性としてはWWEを目指していると思われる。ちなみに所属するスカウトや食闘士の多くが吉本興業や松竹芸能など関西方面の芸人を外見や名前のモデルとしている(横山やすし→横川安男、坂田利夫→坂多利彦など)。
- 喰いワングランプリ
- OKFFが主催する大食い大会。ミナミを中心に30店ある予選参加店で参加料(3,000~5,000円)を払い、時間内に規定の量を食べきれば、スタンプを1つ入手する。スタンプを5つ集めることで本選への出場権が与えられる。OKFF所属の食闘士などは推薦で本選出場が決まっていると思われる。本選は料理ごとの32部門で部門賞(賞金100万円)が争われ、さらにその部門賞の勝者がグランドチャンピオンを争う。
- 主な予選 - 以下の予選の他にもいくつかあり、全部で30種類ある。
- 本選の概要
- 賞金総額5,000万円(優勝賞金1,000万円、準優勝500万円、3位300万円、部門賞100万円×32名)
- 日程
- 1日目は以下の32部門の料理を、制限時間40分間にどれだけ食べるかで部門賞を争う。※( )内は各部門の勝者
- 2日目は直径3メートル強もある巨大なピザ2枚を、制限時間40分間に1日目の勝者32名(2枚×16名)で食べた量を競い、上位8名が3日目の決勝ラウンドへ進出する。OKFFは満太郎と錠二を脱落させようとすべく、具の中にピーマンに見せかけた激辛の唐辛子を混入し、食べさせる妨害工作を施す。大原満太郎・獅子戸錠二・ミスターマスクマン・鳥飼飛男・横川安男・冨津政・高丘桃子・西山清志の8名が決勝ラウンドへ進出し、猪瀬黒兵衛・桂参四郎の2名が補欠へと回る。
- 3日目に決勝ラウンドが開催され、グランドチャンピオンを争う。決勝トーナメント方式による勝負となり、準々決勝8名→準決勝4名→決勝2名で優勝を争う。
- 鯨食い(くじらぐい)
- どんぶり飯数杯をさらに大きな容器に移し、一気に食べる、黒兵衛の得意技。とはいえ、一杯ずつ食べてもそれほどスピードは変わらないようなので、大食い・早食いのテクニックというより、スパートをかけて相手の気勢を削ぐ駆け引き上の大技といえよう。
- 私文書偽造
- 邪道喰い(じゃどうぐい)
- 大食い、早食いに勝利するためだけに本来の食べ方を無視し、あるいは料理の味を著しく損ねるなどで、あまりにも非常識な食べ方をする、OKFFの得意技。料理を作った側や傍目で見る客にしてみれば、実に迷惑かつ不愉快そのものとしかいえない。なお、普通に(といっても料理を細かく切り分けたりするテクニックを用いて)食べても、それほどスピードは変わらないか、逆に不利だと思われる邪道喰いもあるが、邪道喰いはむしろ、非常識な食べ方を見せつけることで相手の心を折るか、圧倒して戦意を喪失させるなどの心理的な効果のほうが大きいのではないかという指摘もある。
- 劇中に登場した邪道喰いの例
- うどん…熱々のうどんに氷水を入れ、ぬるくなったところを完食する(間完平太が実践。鳥飼も実践し、これを機にOKFFへ転属してしまう)。
- おでん…熱々のおでん(こんにゃく、つみれ、ちくわ)を串付きのまま氷水に入れ、冷やしてから完食する(喰いワングランプリ1日目で間完平太が実践)。
- うな重…うな重に茶をかけて一気に流し込んで完食する(桂参四郎が実践)。食べ方が名古屋名物ひつまぶしに近いため、邪道喰いというにはいささか微妙な気もするが、あくまで「うな重」として食べていることと、早食いに勝利するために味わうことを無視しているとみられる点から本来の食べ方ではないらしい。
- ショートケーキ…まず苺をまとめてミキサーに入れ、ジュースにしてから飲み込む。次に残ったケーキの部分を数個まとめてラップに包み、少量の水をかけ、おにぎりのようにギュウギュウに丸める。最後にこの丸められたケーキを完食する(高丘桃子が実践)。
- ステーキ…付け合わせのサラダとライスを一緒にミキサーに入れ、さらに水を入れてかき混ぜてから飲み込む(尾暮太郎が実践)。ステーキは細かく切って食べるが、それさえも一緒にミキサーに入れることがある。なお、サラダのみでミキサーするのは邪道喰いにならないと思われる(サラダのみでは野菜ジュースになるだけなので、他の客も不快感を抱いていない(ライスを投入した時点で不快感を表す))。
- たこ焼き…たこ焼きを丼にまとめて入れ、湯でふやかして流し込んで完食する(横川安男が実践)。
- どら焼き…まずどら焼きを皮と餡に分け、皮を細かくしてまとめて丼に入れる(餡はまとめて別の皿に盛りつける)。次に皮を湯でふやかして流し込む。最後に、残った餡を一気にかき込んで完食する(高丘桃子が実践)。
- 肉まん…肉まんを皮と餡に分け、皮を丼にまとめて入れる。あとはどら焼きと同様の方法で完食する(横川安男が実践)。この方法は余分な水分を大量に摂り、胃を圧迫してしまうため、(少量を短時間で完食する早食いに向いてはいるが)大食いには決定的に向いていない。
- ハンバーガー…ハンバーガー4個を縦に積み、一気に押し潰して食べる(冨津政が実践)。
- ピザ…ピザを3cm四方くらいに刻んでミキサーに入れ、水を入れてかき混ぜて飲み込む(喰いワングランプリ2日目で尾暮太郎が実践)ものの、失敗し戻してしまったことで観客から大ブーイングを浴び、OKFFの醜態を露呈してしまう。
- 正道喰い(せいどうぐい)
- 邪道喰いとは対照的に、料理本来の食べ方を守り、あるいは料理の味を損ねないようにする食べ方で、TFFの基本理念となっており、満太郎も同意している。
- 大根おろし
- 非常にさっぱりしていてボリューム感もそれほどないために、合間の口直しや付け合せに使うのに最適として満太郎がよく使っている。(薄切りした)ステーキにそのままぶっかけたり、どら焼きを食べる際の口直しとして食べたりしているが、店側の了承が無いと、もしくはあっても不正か邪道喰いでは、と指摘するファンがいる。しかしステーキの味を壊していた訳ではなく、常識でも理解できる食べ方であり、他の客たちが不快感を抱かなかったため、ラーメン二刀流同様「美味しさを損なわずに早く食べるためのテクニック」と考えた方がいいかもしれない。
- 丹下フードファイター
- 略称:TFF(Tange Food Fighter)。設立者は丹下孝之助。本部は鎌倉市。大食いのプロスポーツ化の構想を持つ丹下考之助のプロ野球の創世期は「男子一生の仕事ではないといわれたが、今ではプロスポーツのトップ」という話の流れから、遠山の提案で2リーグ制(東のTFF、西のOKFFの誕生)ということになる。「大食いはスポーツ」という理念から養成所を持ち、犬丸のようなトレーナーも所属し育成に力を入れているが、促成、温室栽培的で錠二のような天性の食闘士以外はプレッシャーや逆境に弱い。所属する食闘士は獅子戸、鳥飼、熊田など動物の名前をネーミングのモチーフにしている。
- 野試合
- 食闘士同士がイベントではなく、当人同士の了解のうえで一対一で勝負すること。もちろん金銭やなんらかのものが賭けられる。
- 食闘士(フードファイター)
- TFFやOKFFに所属して契約金や給与を得ている者や、30分以内完食無料や賞金贈呈の食堂に出入りしてそれで(文字通り)メシを食っている者、大食いイベント等の競技に参加する者も含まれる。「食闘士」と書いて読み方は「フードファイター」。食闘士と書いたほうが短くてゴロもよいためそうしていると思われる。