レースシミュレーション
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レースシミュレーション(レースシム)はレースドライビングを正確にシミュレートしたコンピュータレースゲームであり、ニード・フォー・スピードシリーズのような「アーケード」レースゲームと志向を異にするものである。一般的に、EA SportsのF1 Challenge '99-'02やPapyrusのNASCAR Racing 2003 Seasonのようなレースシミュレーションはアーケード調のレースゲームより人気が無い。その理由は主に、マスターする為により多くの技術や練習が必要とされるからである。しかし、シムレーサーは実際にF1に乗って全速力でモナコの市街地コースを駆け巡ったり、NASCARでデイトナの急なバンクに挑むような緊張感を味わえる。
オンラインレース用技術の開発が進み、コンピュータAIでなく実際の人間を相手にして運転する事が出来るようになった。これは多くの人々が経験する実際のサーキットで実際の車を運転することに最も近いものである。それどころか現在、実際にレースを行う多くの人々がトレーニングや単に楽しむ為にレースシミュレーションを使用する。さらなる物理学の開発や、ハードウェアが提供するフィードバックの改善により、シミュレーションはより現実に近付き、世界中から集まった人々とレースをするスリルを得るようになっている。
レースシミュレーションは、パーソナルコンピュータ向けが主流となっているが、ごく稀にゲームセンター向け筐体も開発され、家庭用ゲーム機においてもレースシミュレーション志向のドライビングシミュレータが開発されるようになってきている。
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[編集] PC向けレースシミュレーションの歴史
[編集] 黎明期
レースシミュレーションはPapyrusのIndianapolis 500: The Simulation(Indy 500)の発売により1990年から始まったと概して認められている。これ以前のレースゲームは、よりアーケード的な性質を備えていた。しかし、Indy 500では完全な500マイル(約805km)レースを行なえ、もし450マイルでエンジンブローすると、そこでプレイヤーのレースが終わってしまうようなものであった。これらの初期のシムはコンピュータとのみ対戦が行なえた。
次の主要な出来事はGeoff Crammondによって作られたMicroProseのFormula One Grand Prix(F1GP)(いくつかの市場でのタイトルはWorld Circuit)であった。これはこのジャンルを意味ありげに前進させた。F1GPは、プレイヤーを交替させることでマルチプレイの形態を可能としたのである。ドライバーが操縦していない方の車はコンピュータが運転したのであるが。
レーサーはヌルモデムケーブルを経由して、本当のオンラインレースを行なう為に、彼らのマシンを接続する事が出来た(2人のみのレースしか行なえなかったが)。オフラインリーグが現れ、ドライバーは他のドライバーと比較する為に自分達のオフラインレースの記録を提出し合った。
PapyrusはIndy 500の後釜にIndyCar Racingを1993年に発売した。F1GPは全ての面で追い越されてしまった。Papyrusは後に、さらにサーキットをリリースし、最後のアドオンにはインディ500トラックとペイントキットが含まれた。そして、ドライバーは容易に車をカスタマイズできるようになった。
PapyrusのNASCAR Racingシリーズの最初のバージョンは1994年に始まった。壮麗なSVGA(640x480)では、PCは当時の限界の処理能力を求められた。しかし、320x200は貧弱な選択に見えた。Nascarは適切なPCを持った人なら誰もが選択できるレースシムであった。そのうえ、Nascar 1が「ハワイ」ダイアルインサーバーを使うことによって最初の本物のオンラインレースが始まった。オンラインレースと、多くの「本物の」シミュレーションを用いたレースが始まったのである。
1995年、IndyCar Racing IIが新しいNascarグラフィックエンジンで1作目をアップデートして登場した。しかし、F1GPの後継者として素晴らしく成長したGrand Prix 2(GP2)がMicroProseによってリリースされた。GP2は詳細で完全なF1の1994年シーズンのシミュレーションとしてだけでなく、驚くほどのカスタマイズ能力で成功を収めた。プレイヤーはこのゲームの何もかもを変える事が出来た。ドライバー、チーム、サーキット、グラフィック、物理学、車の形、その他の物を。オフラインリーグは1998年までにGP2によって頂点に達した。
その年の遅くに、NASCAR Racing 2がリリースされた。オリジナルをさらに改良し、シムレーサーの数は爆発した。マルチプレイヤーホスティングサービスのTENが紹介され、オンラインレースシミュレーションコミュニティーが発展した。
[編集] グラフィックアクセラレータ時代
性能を増したグラフィックカードは非常に大きな違いを生じさせた。1997年にUbisoftから登場したF1 Racing Simulation(F1RS)がこの新しいテクノロジーを引き出した最初のものの一つである。これらはより良いテクスチャマッピング(特にアンチエイリアス)、粒子効果(つまり霧、雨、雪)やフィルターを供給した。
レースシミュレーションの第二のまさしく重要な出来事が1998年にやって来た。Papyrusからの1967年のF1シーズンに基づいたGrand Prix Legends(GPL)のリリースによって。これは全てにおいて傑出した存在であり、特に物理学とマルチプレイ能力が優れていた。多くの人々にとって最初の本当のオンラインレーシングとなったのはGPL、またはGPLエンジンをベースとして用いた後のNascarシリーズにおいてであった。サードパーティのGPL用アドオンであるVROC (Virtual Racers Online Connection)の出現は、プレイヤーが互いにインターネットで結ばれ、レースに参加することを可能にした。
GPLはその頃のハードウェアに過酷な労働を強いた。その為NASCAR Racing 3はその新しいエンジンを採用せず、それに含まれる40箇所以上のサーキットは現実的な可能性を発揮できなかった。GPLベースの物理学エンジンに再会する為には、ファンはNASCAR Racing 4や後のNASCAR Racing 2002 SeasonやNASCAR Racing 2003 Season(NR2003)を待たねばならなかった。
ついに、数年間の開発の後に、 Grand Prix 3(GP3)がリリースされた。それはグラフィックスおよびビデオエンジンがよりモダンになり、GP2と同じカスタマイズ可能な構造を特色とした。 しかし、GP3は最終的にはやや期待外れであった。長らく改良が加えられてきたGP2がまだ力を保っていたからである。それでもなお、その類似性はあちこちのトラックの容易なコンバージョンを許可した。
その年齢にもかかわらず、GPLはトップクラスのシムとして2005年においても生き残った。強力なコミュニティが現在のCPUやグラフィックスの性能を活用するようなグラフィックをアップデートしている事や、たくさんの高品質なアドオンサーキットのおかげで。mod製作チームが新しい物理学モデルを作り出し、オリジナルの改良点を多く含んだ1965年バージョンが今、利用可能である。また、今日においてもGPLのオンラインリーグでレースが行なわれている。
GPLの後、ISIはSports Car GTを1999年に生み出し、F1シリーズを2000年から生み出し始めた。これらは全てEAから販売された。Papyrusのシムとは違い、この物理学モデルは簡単に修正を行なえ、その結果、大きなコミュニティはISIのシムのmodを発展させた。そのようなmod製作チームの一つであるSimbinは彼ら自身の会社を作り、FIA GTチャンピオンシップシリーズに基づいた完全なシムであるGTRをリリースした。これは恐らく、今直ちに買える最高のシムである(2005年11月現在)。しかし、オンラインレースに改善の余地が残るが。
NASCARファン以外にとってのモダンなオンラインロードレーシングは、恐らくまだGPLかNR2003のmod(GTP modが最も著名)である。
[編集] 第3世代および将来
ラリーファン向けのハードコアレースシミュレーションとしてリチャード・バーンズ・ラリーが、GTや耐久レースファン向けにGTR - FIA GT Racing Gameが加わった。
ある小さなチームがLive for Speedを開発している。これは全部で4つの開発段階がある中で、現在、2段階の製品がリリースされている。
ISIは新しいエンジンを保持しており、rFactorを開発した。これは再び高度にモディファイ可能なシムとなっている。
[編集] ハードウェア
シムレーサーはPCに一連のハンドル、シフター、ペダルを接続して、適切に欲求を満たされる。そのうちいくらかはフォースフィードバックを利用し、ある者は、非常に高い技術力(そして高価)で実物のような感覚を得られるブレーキペダル等を使用する。いくつかのレースフレームも利用可能であり、シムレーサー経験を、コンピューターチェアーでなく、よりレーシングカーに座っている状態に近付ける事が出来る。現実にレースを行なっているような感覚を提供するいくつかの素晴らしい油圧ユニットの開発も行なわれている。
エンスージアスティックなシムレーサーは、より現実的な環境を作り出そうと、プロジェクタースクリーンや複数の画面を備えた驚くほどのコックピットを構築している。
ブロードバンドの利用機会の増加は、一般的な接続を改善し、オンラインレースを概して高品質にし、貧弱なコネクションによって引き起こされた問題もほとんどなくなっている。
[編集] コミュニティ
多くのシミュレーションレースリーグが存在し、これはホイール・トゥ・ホイールのオンラインレースの機会を得る素晴らしい方法である。インターネット上にRace Sim Central(英語)やUseNetのrec.autos.simulatersを含むいくつかのフォーラムがあり、コミュニティにシムの議論を行なう場を提供している。
LANレースが、組織化されたイベントとして行なわれており、シムレーサーが実際に集まりショルダー・トゥ・ショルダーのレースを行なったり、レースと同様に懇親会を楽しめる場となっている。
[編集] レースシム開催地
ちょうど過去2、3年で、技術は成熟に達しつつあり、それは専用のレース開催地を設立するように開拓者を誘惑している。イギリスのSim Racing Ltdは、ドライバーやシムドライバー向けに専用のレース開催地のコンセプトを開発している。彼らの最初の提供は一連のDrivers Challenge(英語)活動の形でやって来る。Hyperstimはさらに世界中に多くのRace Centre(英語)を開いている。今日、これらの活動は比較的目立たないが、もし適切に開発されれば、さらに多くの人々が参加活動としてのモータースポーツを楽しむ大きな可能性を持つ事になる。
[編集] 要約
オンラインレースは世界各地からの人々と知り合う優れた方法である。ドライバーはいかなる場所からも参加でき、成功することが出来る。大抵のリーグで使われる言語は必然的に英語であるが、ドライバーは、多くの異なる文化やバックグラウンドを持つ人々と簡単に出会うことが出来る。十分奇妙なことに、イングランド人のシムレーサーは居ない(?)。最終的には誰もが、レース、競争、コミュニティ、エキサイティングな事を愛する事を動機として集まっている。もしかすると、レースシミュレーションは、伝統的にこのスポーツに付きまとう気違いじみたコストを掛ける事無く、人々がモーターレーシングに毎日触れ合う素晴らしい方法かもしれない。これは、それ以上の成長や人気への傑出した可能性を持っている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- AutoSimSport(英語) - 無料の月刊誌
- FILSCA(英語) - レーシングリーグ世界協会
- Race Sim Central(英語) - レースシミュレーションフォーラム群
- Sim Racing World(英語) - レースシミュレーションコミュニティ
- Blackhole Motorsports(英語) - レースシミュレーションウェブサイト
- The Pits(英語) - 1995年からのレースゲームmod
- NCRacer's NR2003 Garage(英語) - PapyrusのNASCAR Racing 2003 Season向けのリンクリソース
- WOW(英語) - Western Open Wheel レースリーグ
- Race Sim Japan(日本の代表的なレースシミュレーション関連のフォーラムとしてYellowGarageが存在したが、その閉鎖により、現在におけるその役割は主にRace Sim Japanが(暫定的に?)担っている。)