ムハンマド・サイード・アル＝サハフ

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ムハンマド・サイード・アッ＝サッハーフ(Muhammed Said al-Sahhaf/محمد سعيد الصحاف )はイラクの政治家、官僚。1940年生まれ。元イラク共和国情報大臣。バアス党員である。イラク戦争時、情報大臣として海外のメディアに対して記者会見を開き、イラク共和国の発表の公式情報を提供し、その荒唐無稽な内容から「コミカル･アル」などと呼ばれる。

[編集] 経歴

カルバラー生まれ。1963年にバアス党に入党。スウェーデン、ビルマ、アメリカ合衆国、イタリアなどの各国大使を歴任し、92年まで外務大臣。しかし突如2001年より情報省に異動した。この突然の異動にはサッダーム・フセイン大統領の息子であるウダイ・サッダーム・フセインの意向があったといわれる。

[編集] イラク戦争時における発言

彼の発言はイラク戦争時に海外のプレスに対してバグダードのパレスチナ・ホテル前で記者会見を連日行った際の発言が最も有名であり、世界的に注目を集めた。
圧倒的に米軍優勢の中、米軍を残らず撃退し、バグダッド周辺には米兵は一人もいないと強弁し、その荒唐無稽な内容から「コミカル･アリ」と呼ばれるに至った。これは化学兵器を製造していたとされる元国防大臣アリー・ハサン・アル＝マジードのニックネーム「ケミカル･アリー」をもじったものである。

2003年4月8日、ついに米軍がバグダッド市内に入城。米軍の戦車が市内をパトロールする中、彼の最後の会見が行われた。もはやごまかすとのできない敗北を迎えつつある中でも彼の強弁は止まず「アメリカ人の戦車は一つ残らず自爆し、敗北するであろう。負けるのは奴らだ。負けるのは奴らなのだ!」と述べた。

わたしの気持ちは……いつも変わらない。われわれは連中を皆殺しにしてやる!
われわれの当初の推定によれば、連中は全員、殺されるはずだ。
神は、地獄でイラク人民に、やつらの胃袋を焼き尽くさせるだろう。
わたしは三重に保証する!バグダッドには米軍兵士は一人も存在しない!
イギリスなど、古い靴ほどの値打ちもない。
わたしは自分の行ったことには責任を持つ。連中はバグダードの城壁の下で自殺を始めるのだ。もっと、もっと自殺するがいい!
米軍を大歓迎するぞ。やつらを精肉におろしてやる!
わたしはあの悪党のブッシュよりも上品な英語を話すと思うね。(確かに彼の英語には定評があった)

イラク軍は開戦直後に指令系統や主な軍事施設を喪失しており、敗戦は決定的であった。そのため正確な情報の把握は困難であったと予想され、戦闘終盤には恐らくサッダーム・フセイン大統領とも連絡が取れていなかったとも言われ、終盤の会見のほとんど彼の独自の判断によるものであろう。情報大臣である彼にすら情報が全く入らず「もう何も言うことが無い。昨日と同じ事を話すしかない」と毎日悩んでいたといわれ、その困難な任務の重圧の大きさがうかがい知れる。

[編集] 終戦後

2003年 7月25日、彼がバグダッド市内において逮捕されたとイギリスのデイリー・ミラー紙が伝えた。その後、ドバイの放送局アル＝アラビーアがインタビューに成功。豊かな黒髪がわずか数ヶ月で全て白髪に変わり、やつれ果てて、かつての強弁も聞こえなくなった衝撃的な映像を配信した。そこで彼はついに我軍の敗北を認め、イラク戦争の是非、新イラク政府については「歴史が語る」とし、明言を避けた。

その後すぐに釈放された。彼はイラク戦争のシンボル的存在であったが、決して国内指導において重要な存在ではなかったようだ。
現在はアラブ首長国連邦で家族と共に余生を送っている。