バオー来訪者

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日本の漫画作品

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『バオー来訪者』（バオーらいほうしゃ）は、荒木飛呂彦の少年向け漫画作品。集英社の少年向け漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」（集英社）に1984年45号から1985年11号まで9話が連載された。単行本は全2巻。

[編集] 概要・あらすじ

主人公は、生物兵器「バオー」へと改造された青年「橋沢育朗」と予知能力を持つ少女「スミレ」の二人。バオーの超人的能力を狙う、政府系の秘密組織「ドレス(DRESS=Duel Resarch Especial Secret Society『戦闘研究特別秘密結社』の意)」からの逃避行を中心に語られる、二人の成長と相思をつづった物語。短期打ち切り作品としては非常にストーリーがまとまっており、伝説的で高い評価を得ている作品でもある。この作品をきっかけにジョジョの奇妙な冒険へとつながり、荒木飛呂彦は人気作家として駆け上がっていく。

ホラーSF『ファイアスターター』（邦題『炎の少女チャーリー』で映画化）と類似点の多く見られるストーリーである。

[編集] バオー

「バオー(BAOH)」とは、実際には40mmほどの「寄生虫」のことで、Biological Armament On Help（生物による武装援助）の略。宿主である生体の脳（動脈の中）に寄生している。寄生した日数にしたがってパワーは強くなる。百数十日で成虫になり、宿主に卵を産む。孵った幼虫は宿主の身体をつき破り、新たな宿主へと伝染する（この設定はOVA版では排除されている）。また水中では完全に仮死状態となり、その間、宿主はまったく老化しない。

宿主が生命の危機に瀕すると、体内に分泌されたアドレナリンをバオーが感知し、宿主の精神を麻酔してその支配下におく（ただし、劇中では次第に育朗が戦っている自分を知覚していくようになる描写がある）。その後、血管を使って宿主の全身に分泌液をめぐらせ、宿主の骨・筋肉・腱を何倍にも強化する。「ドレス」では、この変身を「バオー武装現象（アームド・フェノメノン）」と称している。

武装現象中のバオーは、頭部にある「触覚」により、視覚・聴覚・嗅覚をまかなう。「バオー」は対象をすべて「におい」でとらえ、攻撃すべきか否かを区別している。

変身後のバオーは「バル」（もしくは「バルバルバルバル」）、「ウォォォーーム」といった鳴き声を発し人語は解さない。しかし、育朗がバオーの能力を自らの意思で制御できるようになった終盤では、言葉を発していると思える描写がある。

劇中のこの寄生虫の描写は、単行本のあとがきの批評にて、そのデザインの独自性が高く評価されているが、実は実在の寄生虫である日本住血吸虫の雌雄が抱接した姿に酷似しており、寄生部位が血管内であるという点も含め、様々な点が住血吸虫の形態や生態に類似する。寄生虫の寄生によって宿主の寿命が延びるなど個体の生存に有利なように生理が変化する現象も、寄生昆虫であるネジレバネ類などで知られている現象である。

[編集] バオー武装現象一覧

バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン: 体外に出ると強力な酸に変わる体液で溶解する

バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン: 前腕側部を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする

バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン: 毛髪を硬質化して射出する。的にあたると発火する

バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン: 体細胞から発生される電気を直列にして放出する

※武装現象の表記は劇中でも一定しない。各現象の名前は、格調が高い割に長く覚えづらいことも人気に水を差した。なお、これらの特殊能力や武器は、「ジョジョの奇妙な冒険」に再登場するものが多い。

[編集] 登場人物

橋沢育朗: 寄生虫バオーを宿し、無敵の力を発揮する少年。「ドレス」の追っ手と戦い、スミレを守る。

スミレ: 育朗に同行する少女。予知能力を持つ。

ウォーケン: 分子を振動させ超高温にする能力を持つアメリカインディアンの末裔。戦士としてバオーと戦う。

霞の目博士: 「ドレス｣において寄生虫バオーを生み出した。野望の障害となる育朗を抹殺しようとする。

ドルド中佐: 「ドレス」の幹部軍人。爆弾で重傷を負い、体の半分以上がサイボーグ化されている。

[編集] 余談

本作品はラポート株式会社発行の月刊ファンロード1988年5月号にて特集が組まれた。普段はメジャーなアニメ作品に対して特集が組まれているので破格の扱いと言えよう。また表紙（普段は特集作品のイラストをファンが描く）や中折ポスターも荒木本人の描き下ろしの上、写真入りでファンとの対談記事も組まれている。なお、この特集が縁で「ジョジョの奇妙な冒険」単行本第１巻末に月刊ファンロード編集長浜松克樹が推薦文を寄稿している。