ダース・シディアス
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ダース・シディアス (Darth Sidious) は、映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する架空の人物。シスの暗黒卿。その正体は惑星ナブー出身の銀河共和国元老院議員にして、後の元老院最高議長、銀河帝国皇帝となるパルパティーン (Palpatine) である(初期ではパルパタインとの表記もみられた)。画像
1983年の『エピソード6 ジェダイの帰還』以来、スコットランド出身の俳優・イアン・マクダーミドが演じている。
旧三部作(エピソード4~6)では、銀河帝国の最高権力者であるにもかかわらずほとんど登場せず、ダース・ベイダーに比べると目立っていなかったが、新三部作(エピソード1~3)では、最初から重要人物として登場。彼こそがダース・ベイダーを作り出した張本人、真の悪役であることも明らかにされている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] ナブー時代
パドメ・アミダラと同じ惑星ナブー出身の人間種族であるが、出生など詳しいことは明らかではない。政治家への道に進んだものの、その道程はあまり順風満帆ではなかったようである。特に若い頃は失態続きで、とても将来元老院議員、ましては銀河の支配者になろうとは誰からも思われていなかった。この不遇な時期にシスの誘惑があったのかもしれない。彼の類まれなる忍耐力はジェダイ並みに強く、シスたるに十分だった。その忍耐心は固い権力欲に支えられていた。
彼がシス・マスターとなった経緯ははっきりとは示されていないが、エピソード3での彼自身の発言からダース・プレイガスというシス・マスターの弟子となったと考えられる。そして、両手であらゆる武器を使いこなす戦闘能力や、人の心を読む能力、また人心を巧みに操る能力などのシスの技を全て完璧に会得した直後、その師の寝込みを襲って殺害し、銀河唯一のそして銀河史上最強のシス・マスターとなったとする見方が有力である。
壮年期に差し掛かった頃、明らかに彼に吹く風は変わった。ナブーの国政で急速に頭角を現し、君主であるヴェルーナ王を凌ぐ政治の実力者にまで昇りつめた。ヴェルーナ王が失政により退位を余儀なくされた時には、既に銀河共和国元老院の有力議員となっていた彼が、実質的なナブーの支配者であることは間違いなかった。
[編集] 元老院議員時代
彼は普段は共和国元老院議員パルパティーンとして過ごし、裏ではシスの暗黒卿「ダース・シディアス」として銀河帝国の樹立とジェダイの排除を画策し、政治家として巧みにその手腕を発揮していく。
元々賄賂が横行し腐敗しきっている銀河共和国の元老院において、各議員に対しての根回しは早くから行っていたものと考えられる。そのため、水面下で議長の座の交代の機会をじっくりと計略していた。
まず分裂し弱体化しつつある銀河共和国において、分裂組織に対する脅威を唱え、それを現実の脅威として利用するため、弟子のダース・モールに通商連合を唆させて、惑星ナブーを侵略させ、この侵略に有効な対策を取れないでいるフィニーズ・ヴァローラム最高議長を失脚させ、思惑通りに元老院最高議長の座を掴んだ。
次に、彼らのドロイド兵力に対抗するためにという理由を作り上げ、秘密裏にジェダイマスターサイフォ=ディアスに要請し銀河共和国のクローン兵力の創設を実行に移しクローン大戦への布石を行った。
[編集] 元老院最高議長時代
やがて彼はドゥークー伯爵をシスの新しい弟子にとる。かつて彼は高名なジェダイ・マスター、ヨーダの弟子であったこともあり、ダース・モールによって殺されたクワイ=ガン・ジンのマスターでもあった。彼がシスの名としてダース・ティラナスの称号を与えたドゥークー伯爵に命じた任務は、彼の友人ジェダイ・マスター、サイフォ=ディアスの殺害であった。これはサイフォ=ディアスが共和国のことを案じて最高議長とカミーノ人以外には極秘で発注したクローン軍団、クローン・トルーパーを密かに乗っ取るためであり、ドゥークーがシスに対してどの程度の忠誠を尽くしているかを試す為のテストでもあった。
その後、共和国といざこざを起こしていた通商連合等の大規模な企業グループが中核を占める独立星系連合が、惑星ジオノーシスで大量のバトル・ドロイド等の兵器を生産している事が、ジェダイマスターのオビ=ワン・ケノービによって報告された。これを受けて、元老院のジャー・ジャー・ビンクス代議員(パドメの代理)は、分離主義者達との戦争はもはや避けられない状況であり、非常時には強力な権力が必要であるとして、パルパティーンに対して非常時大権を与えるという内容の動議を提出した。この動議は満場一致で受け入れられ、パルパティーンは早速手に入れた非常時大権を使いクローン・トルーパーを共和国の正規軍に編入することに成功した。創設されたての共和国軍はジオノーシスで独立星系連合軍と戦い、勝利した。この戦いを発端として、後世にまで銀河史上稀に見る壮大な戦いとして歴史家に認識されているクローン大戦が勃発した。
ダース・ティラナス率いる独立星系軍は、共和国軍と戦って銀河各地に争いの種をまき、多くの文明的な惑星を荒廃させ、銀河共和国の政治・行政指導能力を壊滅寸前にまで追い込んだ。さらに、シディアスはダース・ティラナスと図って、ダース・ティラナスとグリーヴァス将軍が率いる大艦隊に首都惑星コルサントを襲撃させ、自身(パルパティーン議長)を誘拐させた。これは、ジェダイを誘い込み殲滅するという作戦だったが、そこにはダース・ティラナスの後釜に、より強力な力を見せていたジェダイ騎士のアナキン・スカイウォーカーを据えようとしていたシディアスの二重の陰謀があった。思惑通りアナキンはダース・ティラナスを殺害、シスの暗黒面に堕ちる片鱗を見せた。謀られた救出劇でのアナキンの活躍を絶賛したパルパティーンは、ジェダイ評議会に対して彼を「最高議長の代言人」として評議員に加えるよう提案。ジェダイ評議会はこれを渋々承認するが、逆にアナキンに対してパルパティーンのことをスパイするよう命じた。評議会はパルパティーンの近くにシスがいるのではないかと疑っていたのである。
パルパティーンはアナキンを誘惑し、シスには死人を生き返らせる術(ダース・プレイガスの秘技)が存在すると吹き込んだ。そしてアナキンが分離主義者達の最後の柱であったグリーヴァス将軍と共和国軍が交戦状態に入ったと報告に現れた時、パルパティーンは自分がシスの暗黒卿「ダース・シディアス」であることを暴露する。自分の人柄に心酔し、最愛の妻であるパドメ・アミダラの死を恐れ死人を生き返らせる術を会得したがっているアナキンが既に弓を引くことができないとの確信があったからである。アナキンから報告を受け、ジェダイ・マスター、メイス・ウィンドゥは、同行を申し出たアナキンをジェダイ聖堂に留め置き、エージェン・コーラー、セイシー・ティン、キット・フィストーらジェダイの剣士と共にパルパティーンの元に乗り込んだ。メイス達と対面したパルパティーンは、メイスと短い会話をした後、長い間溜め込んでいたジェダイに対する憎悪を開放するかのごとき声を上げながら跳躍しジェダイに襲い掛かった。真紅のシスのライトセイバーを振るい瞬時にエージェン・コーラーを倒し、次いであまりに早すぎる仲間の死に一瞬あっけにとられていたセイシー・ティンを殺害し、続いてキット・フィストーも倒した。が、ジェダイの中でも屈指の実力を誇るメイスには苦戦し、ライトセイバーを蹴り落とされ危機に瀕した。その時、アナキンが現れた。アナキンはパルパティーンがメイスによって殺され、愛する妻の死を避ける唯一の方法である死人を生き返らせる秘術が永遠に失われてしまう事を恐れてやってきたのである。パルパティーンは、メイスの勝利宣言に怒りを覚えフォースの電撃を放つが、メイスのライトセイバーで自分の顔に跳ね返され、顔は醜く歪み、顔色は白くなった。メイスと、パルパティーンは互いを反逆者と呼び合いアナキンは混乱する。だが、アナキンの目にはパルパティーンはメイスに必死に抵抗する丸腰の弱々しい老人にしか見えなかった。そして必死に命乞いをするパルパティーンを殺そうとするメイスを説得しようと試みるが、それに構わずメイスはパルパティーンを殺そうとした。その時、アナキンはとっさにライトセーバーを振るいメイスの手をライトセーバーごと切り落としていた。この時を待っていたパルパティーンは全身全霊を込めたフォースの電撃を放ち、メイスはコルサントの摩天楼に向かって吹き飛ばされた。こうして許されざる行為に全てを失ってしまったアナキンをシスの暗黒面に引き入れることに成功し、シディアスはアナキンをシスの弟子としダース・ベイダーという名を与えた。
機は熟したと見たシディアスは、全銀河のクローン・トルーパーに対してオーダー66を発令した。これは銀河各地のジェダイを共和国に反旗を翻した反逆者として急襲し抹殺せよという、クローンに製造段階で密かに組み込まれたプログラムである。ダース・ベイダーことアナキンに対してはジェダイ聖堂に残る全てのジェダイを抹殺するよう命令。ベイダーはクローン・トルーパーの特殊部隊、第501大隊を率いてジェダイ聖堂を襲撃し聖堂に火をつけ子供のパダワン(弟子)までも皆殺しにした。一方パルパティーンとして銀河元老院に立った彼は、ジェダイのせいで自分の顔が醜く歪んだと断罪し、ジェダイが共和国に対して反乱を起こした事を議員達に説明して納得させ、ジェダイ抹殺を正当化した。そして平和と新しい秩序の構築のために自ら全権をもって事にあたるため、共和国の統一的支配を請け負う旨を宣誓した。この提案は銀河元老院に所属する彼の支持者の大喝采をもって承認され、解体された銀河共和国の代わりに現れた銀河帝国の皇帝として全銀河の頂点に立った。こうして彼は、歴代のシス卿達が果たせなかったジェダイの殲滅と銀河系の支配権獲得を、合法的に行うことに成功したのである。
しかし彼にはまだ障害が残っていた。オーダー66から逃れたジェダイの2人のうちの一人、ジェダイマスターヨーダだ。ヨーダは単身皇帝の元へやってきた。皇帝もこの最後の障害を消し去るべく迎え撃った。両者はフォースによる攻撃を交わすと、ライトセイバーの対決に移った。フォースの攻撃を交え、激しくライトセイバーを交錯させながら、闘いの場は議長のオフィスから大会議場へと移っていった。皇帝は余裕の表情を浮かべフォースを使って元老院の議員席を飛ばしてヨーダを攻撃した。その攻撃をヨーダはなんとか凌いでいたが、シスの暗黒卿の力はヨーダの予想以上に強力になっていた。皇帝は全身全霊を込めたフォースの電撃を至近距離でヨーダに放った。ヨーダは何とかこれを防いだが、球状になった電撃ははじけ二人は吹き飛ばされた。だが、皇帝は辛うじて近くの手すりにつかまり、ヨーダは演壇の遥か下に落ちた。ヨーダは勝ち目が無いと悟り、クローン・トルーパーの捜索の手を逃れベイル・オーガナ議員の手引きによって元老議会から脱出した。皇帝は最後の障害を取り除くのに成功したのだった。一方、弟子のダース・ヴェイダーは、もう一人のジェダイの生き残りで、かつての師オビ=ワン・ケノービと闘って敗れ、サイボーグになる事を余儀なくされた。皇帝は、かつての自分と同じように、ベイダーが自分を倒し皇帝の座と銀河の支配権を手に入れようと欲している事をフォースによって見抜いており、このとき以来、密かにサイボーグ化されていない完全でより従順な弟子を手に入れることを望み始めたのだった。
[編集] 銀河帝国皇帝時代
人間種族である彼は自分の政治や軍隊を編成するにあたり同じ人間種族を重用した。このことが、単に独裁的な帝国政治に反対する勢力だけではなく、元々多種多様なエイリアン種族で構成されていた銀河共和国の各勢力との潜在的な対立を深めた。皇帝となった彼はその絶対権力の名の下にこれらの勢力を力で弾圧し始めたため、帝国に対する反対勢力の軍事蜂起が始まるのにそう時間はかからなかった。帝国軍はどこかナチス時代のドイツ国防軍を彷彿させる風貌をしているが、この対立がある意味人種的な争いも包括していることを暗に表現している。
銀河各地で蜂起した反乱同盟軍に銀河元老院の影を見た皇帝は元老院を解散、各星系に帝国軍の総督を置き、軍事的威圧による直接支配に乗り出した。その象徴として惑星さえ破壊可能な超巨大兵器ステーション、デス・スターを建造したが、反乱同盟軍の起死回生的作戦によって破壊されてしまった。皇帝は、デス・スターを破壊した反乱軍の兵士がヴェイダー卿の息子ルーク・スカイウォーカーであることを知り、強力なフォースを見せていた彼を味方に引き入れようと考え始める。エンドアの戦いの最中、第二デス・スターにおいてルークとヴェイダー卿が対決。ヴェイダーを追い詰めたルークに、皇帝はかつてヴェイダーにティラナスを殺させて暗黒面に引き込んだ時のごとく、父であるヴェイダーを殺すように促すが、ルークは強い意志でそれを拒否した。ここに至って、皇帝はルークをシスの新しい弟子にするのはもはや不可能と判断、フォースの電撃によって殺そうとした。しかし、ここで父であるヴェイダーが息子の叫びに目覚めジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーとして復活、皇帝は彼の捨て身の行動でエネルギー炉に落とされたが皇帝は死んでは無かった。ヴェイダーも皇帝の電撃によって生命維持装置が破壊されたことによって死亡。これにより史上初めて銀河を恐怖支配することに成功したシスによる帝国は、遂に終焉を迎えたのである。
[編集] その後
『スター・ウォーズ』の拡張世界(小説、コミックなどのスピンオフ、外伝)に分類されるコミック『ダーク・エンパイア』(邦訳版は小学館より)では、パルパティーンはディープ・コアの惑星ヴィスに作っておいたクローン施設で自分のクローンを作り、自身の魂を乗り移らせて復活する。スローン大提督による攻勢で疲弊した新共和国の隙を突いて再び銀河の覇権を手に入れようとするが、ルークやレイア、ハン・ソロなどの反乱軍の英雄たちやジェダイによる反撃、また内部からの裏切りによって失敗し、その魂は永遠の苦しみを味わうこととなる。現在未邦訳である『Empire's End』が一連のシリーズの最後のエピソードとなり、この作品で皇帝の本当の最期が描かれている。
[編集] 能力
シディアス卿はエピソード6以来おなじみの必殺技ともいえる「フォース・ライトニング(いわゆる「フォースの電撃」)」のほか、エージェン・コーラーら3人のジェダイを一瞬にして倒したことでも分かるようにライトセーバーの扱いにも巧みである。この他に物体の移動(これも攻撃手段となり得る)、人の心を操る「マインドトリック」や予知能力などフォースのあらゆる力を駆使することが出来た。また、知略・謀略にも優れ、政治的手腕もかなりのものであった。また、ジェダイに匹敵するほどの忍耐力を持つと同時に、必要とあれば一気にその凶暴性を爆発させることができ、攻撃のさいには一切のためらいを持たないことも最強のシスたる所以だといえる。
[編集] 余談
- エピソード6公開当時、演者のイアン・マクダーミドはまだ39歳だった。エピソード1から若き日のパルパティーンを演じることになったが、その結果、歳を取ってから、かつて演じた役の若い頃を演じるという、普通はあまりあり得ないことになっている。マクダーミドはインタビューで「役作りに25年かかったよ」と語っている。
- エピソード5では、ホログラム映像および声のみで皇帝が登場するが、公開当初は無名の老女優が演じている映像にチンパンジーの目を合成した物が使われていた。後にDVD化される際にCGおよび吹き替えでイアン・マクダーミドに差し替えられ(この時に、彼のセリフもラストシーンの展開などを踏まえた物に変更された)、全体の整合性を図られている。
- ジョージ・ルーカスは、2005年のエピソード3公開時の来日記者会見で、記者に好きなスター・ウォーズキャラクターを聞かれた際、「特に好きなのはヨーダ、アナキン、皇帝」と答えている。
- ジョージ・ルーカスがエピソード1の撮影を始める前に英国に訪問した際、それを聞きつけたイアンは彼に会いに駆け付けた。するとジョージは「パルパティーンの役者を探してるんだ。誰か適任者に心当たりないかな」と聞く。その時イアンは「ひょっとして今目の前にいる奴がそうじゃないかい?」と答えたと言う。実際、イアンは実績ある舞台俳優らしい(2006年にはトニー賞の最優秀助演男優賞を受賞している)巧みな台詞回しや発声の変え方(パルパティーン議長の時と、ダース・シディアスとしての本性を現してからでは全く違う声を出している)で、温厚で威厳ある元老院議長と、狡猾・邪悪・凶暴なシスの暗黒卿、銀河皇帝という二面性のある役柄を見事に演じ切っている。
- 映画とは直接関係はないが、海外のインターネット文化圏ではしばしば、2005年にローマ教皇となったベネディクト16世がダース・シディアスと外見が似ていることを指摘されている。(英語版Wikiを参照)