スペイン海軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

スペイン海軍(-かいぐん)はスペインが保有する海軍。

[編集] 歴史

スペイン海軍の始まりは、スペインの元となった2つの国、アラゴン王国とカスティリャ王国の海軍に遡る。両国は地中海をめぐる海上交易で栄えており、それを保護するための海軍を供えていた。しかしながら両国はレコンキスタの最中で大きな海軍を運用・展開することはできない状態であった。1492年にレコンキスタが完了すると、スペイン海軍は輝かしい大航海時代に入ることとなった。その最初の例はクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸の発見である。このカラベル船とキャラック船による3隻の船団が、強大な無敵艦隊の魁となった。アメリカ大陸の発見後、エルナン・コルテスやフランシスコ・ピサロがコンキスタドールとして新大陸を征服し、多大な富をスペインにもたらした。その富は海軍を増強するためにも用いられるようになる。

1571年、アルバロ・デ・バサン率いるスペイン海軍はレパントの海戦を戦った。ヴェネツィア海軍や教皇軍とともに、強大なオスマン帝国海軍と対峙した。この戦いで大砲を積んだガレアス船を用いた連合軍が勝利し、地中海における安全を確保した。しかし、この戦いで海上の覇権を握るには至らなかった。この後、新大陸からの富を得たスペイン海軍は無敵艦隊と恐れられるようになる。1588年、スペイン海軍はイギリス海軍とのアルマダの海戦で壊滅的打撃を被った。スペイン海軍は鈍重なガリオン船と巨砲を有する無敵艦隊で挑んだが、海賊の率いるイギリス海軍の軽快な艦隊に敗れたのである。この構図は黄海海戦でもみられる。スペインの国力そのものがこの海戦によって失われたわけではないが、やがて凋落をたどることになるスペイン海軍にとっては一大転機であるといえるであろう。

17世紀に80年戦争でスペイン海軍は支配下にあったオランダ海軍とも1607年にジブラルタルの海戦、1639年にダウンズの海戦を戦い敗北。さらにカリブ諸島の一部の支配権をイギリスに奪われた。1714年、海軍省が設置され、ジェンキンスの耳の戦争をイギリス海軍と戦う。海軍力は往時に比べると非常に劣っていたが、それでも、イギリス海軍、フランス海軍に次ぐ第三の勢力であった。19世紀にはナポレオンによってスペインが征服され、その傀儡となった。スペイン海軍はフランスの主要な海戦、トラファルガーの海戦に参加した。結果は敗北であった。また、米西戦争でもアメリカ海軍とフィリピンやキューバで戦い、またしても壊滅的状態に陥った。

20世紀にはスペインは内戦の禍を被り、戦争に参加することはほとんどなかった。世界的にも孤立していたため、海軍装備は最新のものとはいえなかった。現在ではイージス艦や空母を運用するなど、非常に現代的で汎用性のある海軍を有している。