ジャパンレールパス
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ジャパンレールパス(Japan Rail Pass) は、JRの施策で、主に日本を訪れる外国人観光客などを対象に販売、発行される、JRグループ各社が運営する旅客鉄道、バス路線の乗り放題切符である。
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[編集] 販売・購入方法
基本的に、日本国外のJR指定販売店および代理店(旅行会社、航空会社等)でのみ販売されており、日本国内では購入できない。(例外として、2002年サッカーワールドカップが開催された際、日本国内でも販売された例はある)
ただし、国外では引換証のみが渡され、日本到着後、ジャパンレールパス引換箇所(大半は駅の旅行センター等が兼務)で、パスポートを提示し、引換証と交換でパスが入手できる。
[編集] 利用資格
下記の条件のいずれかにあてはまる者だけに、購入および利用資格がある。
- 外国から「短期滞在」の入国資格により観光目的で日本を訪れる外国人旅行者。
- 日本の入国管理法が定める「短期滞在」の在留資格により、観光等の目的で15日間もしくは90日間の滞在が許可された者だけ購入および利用可。「研修」「興行」「再入国」等の資格で入国した場合は不可。
- 日本国籍をもって外国に居住している人で、以下のいずれかを満たす場合。
- その国に永住権を有している。
- 日本国外に居住する外国人と結婚している。
[編集] 種別と価格
ジャパンレールパスにはグリーン車用と普通車用(指定席)の2種類があり、さらにそれらが7日、14日、21日間用パスに分かれている。全て使用開始日からの連続した日数が有効期限となる。料金は日本円建てで設定されており、引換証発行時の為替レートで購入地の現地通貨での価格に換算、販売される。なお引換券は購入から3ヶ月以内に日本国内でパスの交付を受けるか、販売箇所で手数料を払って払い戻さないと無効になる。利用開始日は、パスの交付時に、その日から1ヶ月以内の好きな日に設定可能だが、一旦設定した利用開始日はいかなる理由があろうと変更不可。また、交付されたパスは利用開始日前までは払い戻し可(手数料10%)だが、開始日以降はたとえ未使用でも払い戻し不可。また紛失した場合(盗難も含む)、再発行は不可。
種類 | 区分 | 7日間 | 14日間 | 21日間 |
---|---|---|---|---|
グリーン車 | 大人 | 37,800円 | 61,200円 | 79,600円 |
子供 | 18,900円 | 30,600円 | 39,800円 | |
普通車 | 大人 | 28,300円 | 45,100円 | 57,700円 |
子供 | 14,150円 | 22,550円 | 28,850円 |
[編集] 適用範囲
- 鉄道
- JRグループ全線
- 東海道新幹線・山陽新幹線「のぞみ号(自由席を含む)」を除く、特急列車、急行列車、快速列車、普通列車。(但し、一部利用できない列車あり)。なお、寝台車や座席車の個室を使用する場合、追加料金が必要となる
- バス
- JRバス会社: JR北海道バス、JRバス東北、JRバス関東、JR東海バス、西日本JRバス、中国JRバス、JR四国バス、JR九州バスの運行する路線。
- JRハイウェイバス: 札幌-小樽/盛岡-弘前;東京-名古屋/京都/大阪/つくばセンター;名古屋-京都/大阪;大阪-津山/加西フラワーセンター
- 航路
- 内国航路の宮島航路(宮島口駅~宮島駅間)のみ。
- 海外航路となるJR博多港~釜山(韓国)間高速船ビートルは利用不可。
[編集] 地域限定レールパス
JR北海道、JR東日本、JR西日本、JR九州が販売する、自社路線内のみ有効のレールパスもあり、特定のエリアのみを訪問する外国人に利用されている。
ジャパンレールパスと同様の海外代理店での販売のほか、日本国内でも管轄各社の一部の駅で販売している。規定や有効期限は各社により異なる(下記各項目参照)。ただし、購入は短期滞在の外国人のみに限定されており、日本国籍のパスポートを有する場合は購入出来ない。
[編集] Hokkaido Rail Pass
JR北海道管内の鉄道路線全線と、JR北海道バスのうち、札幌~旭川、紋別、帯広、キロロ各区間と一部不定期路線を除く全路線に乗車可能。寝台車の利用については、ジャパンレールパス同様、寝台料金と特急料金を払えば可能。
種類 | 区分 | 3日間 | 5日間 |
---|---|---|---|
グリーン車 | 大人 | 20,000円 | 25,000円 |
子供 | 10,000円 | 12,500円 | |
普通車 | 大人 | 14,000円 | 18,000円 |
子供 | 7,000円 | 9,000円 |
[編集] JR East Rail Pass
ジャパンレールパスにも設定のない、普通車用Youth Fare(12歳~25歳)を設定、また、グリーン、普通車用ともに、利用開始から1ヶ月以内の4日間のみ利用可能な"Flexible 4-day Pass"も設定している。新幹線全路線含むJR東日本管轄の全鉄道路線が対象だが、在来線ホームライナー利用の際は整理券を別払いする必要がある。寝台車およびグリーン個室も追加料金で利用可能。
また、2006年3月18日から、パス利用者向けに、自社の特急列車を直通運転している北越急行、伊豆急行、東武鉄道の割引切符を販売している。
種類 | 区分 | 5日間 | 10日間 | Flexible 4-day |
---|---|---|---|---|
グリーン車 | 大人 | 28,000円 | 44,800円 | 28,000円 |
子供 | 14,000円 | 22,400円 | 14,000円 | |
普通車 | 大人 | 20,000円 | 32,000円 | 20,000円 |
Youth | 16,000円 | 25,000円 | 16,000円 | |
子供 | 10,000円 | 16,000円 | 10,000円 |
[編集] JR West Rail Pass
他3社のパスが管轄全鉄道路線を対象にしているのと異なり、ともに自社エリア内でも利用可能な地域、路線の限定された「山陽エリアパス」と「関西(京阪神)エリアパス」の2種類を発行。関西(京阪神)エリアパスは普通列車と「はるか」の自由席のみに限定されており、新幹線は利用出来ない。一方、「山陽エリアパス」の場合、山陽新幹線区間(新大阪~博多)に限り、ジャパンレールパスでは利用できない「のぞみ」も利用可能。ともにグリーン車用の設定はない。(利用可能な路線および区間の詳細については上記リンクを参照)
種類 | 区分 | 1日間 | 2日間 | 3日間 | 4日間 | 8日間 |
---|---|---|---|---|---|---|
関西エリア | 大人 | 2,000円 | 4,000円 | 5,000円 | 6,000円 | - |
子供 | 1,000円 | 2,000円 | 2,500円 | 3,000円 | - | |
山陽エリア | 大人 | - | - | - | 20,000円 | 30,000円 |
子供 | - | - | - | 10,000円 | - |
[編集] Kyushu Rail Pass
九州新幹線含むJR九州管轄の全鉄道路線が対象だが、普通車のみの設定で、寝台車、およびJR西日本管轄の山陽新幹線、博多南線の各列車には乗車できない。またJR九州バスは適用対象外。
種類 | 区分 | 5日間 |
---|---|---|
普通車 | 大人 | 16,000円 |
子供 | 8,000円 |
[編集] 問題点
「適用範囲」にあるとおり、東海道・山陽新幹線では自由席も含め「のぞみ」に乗ることが出来ない。いまや東海道・山陽新幹線のダイヤはそのほとんどが「のぞみ」になり、「のぞみ」が1時間当たり最大8本程度はあるのに対し、このパスで乗車できる速達列車である「ひかり」は多くとも1時間にわずか2本しかなく、そのうえ途中駅で確実に「のぞみ」に抜かれるため、パス利用者は事実上東海道新幹線から締め出される格好となり、極めて不便を強いられている。
基本的に「のぞみ」と「ひかり」「こだま」のあいだには特に列車としての性質の違いも無く、「のぞみ」が登場時のように格別特別な列車でも無くなった(指定席料金がやや高額であるが)こと、また「のぞみ」登場当時は全席指定だったためという除外理由もあったが、その後自由席が導入されても除外は解除されず、一方でその後登場した東北新幹線「はやて」・「こまち」が一部の列車を除き全席指定にもかかわらず利用可能となっている事から、尚更この除外規定は不合理なものとなった。
JR東海では、「「ひかり」も走っているのだから問題ない」としているが、前述のように東海道新幹線区間では「ひかり」が1時間当たり2本しかなく、また山陽新幹線区間を走る「ひかりレールスター」(1時間1~2本)との新大阪駅での乗り継ぎ間隔が20分以上開き接続が極端に悪いなど、利用者が多い路線に関する規制だけに実際に問題は多い。最近では、むしろこの規定が外国人を不当に差別するものである、と指摘する識者の声も多く、また不便を強いられている利用者側からも、寝台列車などのように料金の差額を払えば「のぞみ」にも乗車できるようにして欲しい、あるいはチケットそのものの料金を多少値上げされても「のぞみ」を使えるようにして欲しい、という声は多い。
しかしその一方で、日本人は高額な新幹線料金の支払いを強いられており,さらに「ジパング倶楽部」ものぞみを利用できないこともあり、レールパスののぞみ利用不可はやむを得ないとみる見解もある。