コンラート・ツーゼ
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コンラート・ツーゼ（Konrad Zuse、1910年6月22日 - 1995年12月18日）は、ドイツの技術者であり、コンピュータの先駆者である。彼の最も重要な業績は、1941年に世界初の完全動作するプログラム制御式コンピュータ Zuse Z3 を完成させたことである（プログラムはテープに格納）。1998年、Z3 はチューリング完全であることが証明された。
何が世界初のコンピュータかという問題はコンピュータの定義に依存するが、Z3 は後のマシンと比較したときに汎用性に問題がある。ツーゼは高級プログラミング言語 Plankalkül を1945年に設計したが、これは理論的な部分での業績であり、彼の生きている間には実装されることもなく後のプログラミング言語にも直接的な影響を与えることはなかった。
技術的な業績だけでなく、ツーゼは1946年に世界初のコンピュータ企業を設立した。この会社は世界初の商用コンピュータZ4を開発し、1950年にチューリッヒ工科大学にリースしている。第二次世界大戦の影響で、ツーゼの業績の大部分はイギリスやアメリカ合衆国では気づかれなかった。アメリカの企業で彼の影響が見られたのは 1946年にIBMがツーゼに特許使用許諾を得たのが最初である。1960年代後半になると、ツーゼは計算する宇宙（計算によって成り立つ宇宙）の概念を提唱した。
ベルリンの Deutsches Technikmuseum Berlin はコンラート・ツーゼおよび彼の作品に関する特別展示をしている。再現されたZ1を含む12台の彼のマシン、オリジナルの文書、いくつかのツーゼの描いた絵などが展示されている。
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[編集] 第二次世界大戦前の仕事と Z1
ドイツのベルリンで生まれたツーゼは Technische Hochschule Berlin-Charlottenburg （現在のベルリン工科大学）で土木工学を学び、1935年に卒業。彼は学生時代にいやになるほど手で計算を行った。その経験によって彼は機械による計算を夢想するようになった。
彼はデッサウにある Henschel aircraft factory に就職したが、わずか一年後にはプログラム可能な機械を作るために退職。両親の家で1938年、ツーゼは Z1 と呼ばれる機械を制作した。これは電気駆動式の機械式計算機（二進数で動作）で、若干のプログラムが可能であり、命令をさん孔テープから読み取るものであった。Z1 は部品の精度不足のため完全動作には至らなかった。Z1 とそのオリジナルの青写真は第二次世界大戦の中で破壊された。
[編集] 第二次世界大戦 – Z2、Z3、Z4
第二次世界大戦により、ツーゼや当時のドイツのコンピュータ科学者はイギリスやアメリカの同様な科学者と連絡を取ることもできない状態となった。1939年、ツーゼは兵役のために招集されたが、軍は彼がコンピュータを製作する方が国益にかなうと判断して彼を家に返した。1940年、ツーゼの成果を滑空爆弾の製造に使いたいと考えた Aerodynamische Versuchsanstalt（AVA、航空力学研究所）の援助を得て、ツーゼは Z2 を製作した。Z2 はリレーを使ったマシンである。同年、ツーゼはマシンの製造を行う会社 Zuse Apparatebau（ツーゼ装置エンジニアリング）を設立した。
Z2の基本機能に満足したツーゼは 1941年に Zuse Z3を完成させた。Z3 は二進法による計算機であり、ループが使用可能なプログラムを組むことができた（ただし条件分岐はできない）。メモリと計算装置は電話機用のリレーを使っている。条件分岐は命令として用意されていないが、Z3はチューリング完全なコンピュータである（記憶装置のサイズが制限されていることを無視した場合）。しかし、ツーゼ自身はZ3がチューリング完全であると考えたわけではなく（彼は実用化に重きを置いていた）、1998年に証明されたのである。
ツーゼはアラン・チューリングなどの連合国側のコンピュータ関係者が得た公的な支援を受けることはなかった。彼がマシンの製作に使ったリレーは在庫処分品から収集したものがほとんどである。
ツーゼの会社とZ3は1945年の連合国の攻撃によって破壊された。幸運にも、製作中だった Z4 は事前に安全な場所に移されていたため難を逃れた。ツーゼは 1941年から1945年にかけて高級プログラミング言語 Plankalkülを設計したが、1972年まで公表しなかった。Plankalkül の処理系はツーゼの死後5年たった2000年、ベルリン自由大学のチームが初めて実装した。
[編集] 起業家としてのツーゼ
1946年、ツーゼは世界初のコンピュータ企業 Zuse-Ingenieurbüro Hopferau を設立した。資本はチューリッヒ工科大学からとIBMに与えたツーゼの特許の使用許諾を担保として集めた。
1949年、ツーゼは別の会社 Zuse KG を設立。1950年9月 Z4 が完成すると、マシンはスイスのチューリッヒ工科大学に納入された。当時、これがヨーロッパ大陸で動作している唯一のコンピュータであったし、世界で初めて販売されたコンピュータでもある。フェランティ Mark Iより5ヶ月早く、UNIVAC Iより10ヶ月早かった。その後のマシンも Z のあとに番号を付けた名前で呼ばれることになる。Z11 は光学企業と大学に販売された。Z22 は磁気記憶装置を使用した最初のコンピュータである(1955年)。
1967年までに Zuse KG は251台のコンピュータを販売したが、財政問題によってシーメンス社に身売りすることとなった。
[編集] 計算する宇宙 – Z1再生
1967年、ツーゼは宇宙自体がコンピュータグリッド上で実行されていると言い出した（デジタル物理学）。1969年、彼は著書 Rechnender Raum を出版（1970年にMITで Calculating Space（計算する宇宙）と題して英語に翻訳されている）。スティーブン・ウルフラムの著書 A New Kind of Science（2002年）で取り上げられると、ツーゼの理論は多くの注意を引き付けた。というのも、今のところツーゼの理論に反する物理現象が見つかっていないからである。ウォルフラムに対しては、彼の著書の基本的考え方が全てツーゼのものであると批評されている。
1987年から1989年にかけて、ツーゼは心臓発作なども経験しながら Z1 を再生した。最終的には3万個の部品を使い、80万ドイツマルクを費やした。組み立て作業は4人がかりであった。このプロジェクトはシーメンスと5社の企業が委員会を結成して出資されたものである。
ツーゼはその業績に対していくつかの賞を受賞している。引退後、彼は趣味の絵画に没頭した。1995年12月18日、ドイツのフルダ近郊の Hünfeld で死去。
[編集] 関連項目
- Zuse Z3
- デジタル哲学
[編集] 外部リンク
いずれも英文
