エリオット・ネス
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エリオット・ネス（Eliot Ness, 1903年4月19日 - 1957年5月16日）は、アメリカ合衆国財務省の執行官。両親はノルウェー移民のピーターとエマ。ネス家はパン屋を経営しており、暮らしは裕福ではなかったが、貧しくもなかった。シカゴ大学で法律・商業を学んで会社の信用調査をしていたが大学に戻って犯罪学の修士をとり成績優秀で卒業。
1927年に財務省に勤務し、1930年に連邦検事局で昇進を果たし、ハーバート・フーヴァー大統領政権下のアンドリュー・メロンの元でアル・カポネ摘発の責任者になった。ネスの率いたチームは厳選された人員で構成されており、脅迫に屈せず、また買収に応じないことから「The Untouchables」（手出し出来ない奴ら）と称された。当時26歳のネスには身が重い任務だったが、経験不足を若者らしい熱意と純粋さで補った。ネスは注目を浴びるのが好きで、手入れの予定をマスコミに知らせ報道させた。1931年に手入れで押収したトラックで、アル・カポネが住んでいるレキシントン・ホテルの前をパレードし、カポネに見せつけた。この頃、ネスの車に爆弾が仕掛けられるという事件があった。爆弾処理係が「もしエンジンをかけていたら、あの世行きだったでしょうね」と言われ、このときは肝をつぶし震えていたという。
ネスと捜査チームは密造酒工場を摘発して、カポネを財政的に苦しめたが、カポネはそれに耐えるだけの財産を持っていた。結局自らの手でカポネを投獄することは出来なかった。現実には、カポネ逮捕における彼の役割はあまり大きくなかったと言うのが定説である。カポネを逮捕し、刑務所に入れたのはフランク・ウィルスンやエルマ・アイリーで、ネスはあくまで脇役に過ぎない。カポネが裁判を行なっていた頃、カポネ一味の闇酒事業を管理する男たちを次々と逮捕していった。ネスが捕まえた闇酒事業者は69人に上った。
カポネ逮捕後は、さまざまな捜査機関を流れ、FBIの採用を待ったが、ネスの夢はジョン・エドガー・フーヴァー長官に阻まれる。元上司でシカゴ連邦検事のジョージ・E・Q・ジョンソンに推薦状を書いてもらうが、ネスもジョンソンもフーヴァーに嫌われていた。その理由は、フーヴァーはFBIが捕まえられなかったカポネを捕まえたネスたちに嫉妬していたとも言われている。
その後はオハイオやシカゴの主要な捜査官をつとめ、1935年12月12日にクリーブランド地方政府の公共治安本部長に就任した。クリーヴランド市はアル・カポネを任した立役者と自己宣伝し、新聞の見出しにもなる。当時のクリーヴランドはギャングスター天国だった。ナイトクラブや賭博場の手入れを演出し、再び人気者になり、警察や消防の活性化に尽力したが、当時発生していた「キングズベリー・ランの屠殺者」とよばれる悪名高き連続猟奇殺人事件を解決できず、記者からもそのことになると質問をはぐらかした。 1938年には妻のエドナと離婚し、彼の評価は下落した。1938年後半、エヴァリン・マカンドールズとケンタッキー州のグリーナップで極秘に結婚式を挙げた。
1942年3月4日の夜、ネスは梅毒に関する論文が「政治社会学米国学士院年鑑」に、掲載された記念に妻ともう一組の夫婦と遅くまで飲んでいた。明け方に帰り、バルクリー・ヴルヴァード（現在のウェスト・メモリアル・ショアウェイ）を車で飛ばしていたとき、ネスは疲労と酔いからハンドルをとられ、横滑りして他の車と衝突し、その車を運転していた21歳のロバート・シムズに怪我を負わせた。ネスはシムズが生きているのを確認すると、名前も告げずに事故現場を去ったが、シムズはネスの車のナンバーを覚えていた。警察はすぐにネスを追跡した。公共治安本部長が飲酒運転中に事故を起こし逃げたというスキャンダルは市の各紙にとり上げられた。ネスは逃げる気はなかったと、見えすぎた言い訳をして、かえって恥をかいた。辞任を求める声が上がり、起訴は免れたが、面目丸つぶれで辞任した。
1946年1月31日、エリザベス＜ベティ＞アンダースンと結婚する。ネスは3回目の結婚。2人の養子を迎えた。この頃は、輸入会社の役員。
ワシントンD.C.へ移って連邦政府で働いたのち、1947年にクリーブランド市長に立候補し出馬する。民主党候補の現職のトーマス・A・バークの3倍の選挙資金を集めながら、バークがネスの2倍近い票を集めるというバークの圧勝だった。ネスにとっては恥ずかしい結果だった。
その後は、職を転々とする。シカゴの過ぎ去った禁酒法時代の思い出にひたって、話を粉飾し、しまいには自分ひとりでカポネ帝国を打倒したような話をしていた。
1956年に、当時UPI通信のスポーツライターだったオスカー・フレイリーとカポネを追いつめた話を本にしようとする。題名は「The Untouchables」（ザ・アンタッチャブル）に決まる。1957年に心臓発作でなくなる前に出版されたネスの活躍を描いた「The Untouchables」は、その後、派手に脚色されて、1960年代初頭にTVドラマ化され人気を博し、ネスはアメリカのヒーローへと祭り上げられたが、その内容は実際に起こった事件などをドラマシリーズ用に創作し直したものである。映画やテレビ･シリーズとは違い、エリオットは酒飲みで、女好きな人物で「The Untouchables」の役柄とは、ほとんど似ていなかった。買収に屈しなかったことになっているが、アンタッチャブル･メンバーやエリオット自身も買収されたことがある。また、実際には銃の発砲は1度もなかった。
