エスタド・ノヴォ
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エスタド・ノヴォ（Estado Novo、ポルトガル語で「新国家」の意）とは1933年から1974年にかけてポルトガルに存在した保守権威主義的な長期独裁政権の名称である。第二共和制とも言われる。1932年から1968年にかけ君臨したアントニオ・サラザール首相によって発展した。
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[編集] 概要
エスタド・ノヴォはファシズム指向を持った父権的干渉主義政権だった。つまり、暴力を前面に押し出して支配を行うファシストのフランコのスペインやムッソリーニのイタリアのような政権より、緩やかな支配を目標とした。またポルトガルは19世紀に、死刑を廃止した最初の国ではあるが、政権の柱としてPIDE（Polícia Internacional e de Defesa do Estado）と呼ばれる秘密警察を保持した。 サラザール政権による新国家体制は、ポルトガルの人々にナショナリズムとカトリックの価値観を強要した。サラザールは熱心なカトリック教徒だったので、敬虔な信者である国民とポルトガルの国土を守るために経済の先進化が必要であると考えていた。全ての教育システムはポルトガル民族と海外植民地の高揚へと向けられた。政権の標語は「神、祖国、そして家族」だった。
[編集] 政策
サラザールは、1910年に君主制が倒れてから、1926年まで続いた無秩序な第一共和制の後に、どうにか経済を再建した。交通網は整備され、新たなインフラが国土に建設された。また教育プログラムによりポルトガルの農村部の人々にも初等教育を行う事が出来た。しかしながら中等教育は独裁的な管理下に置かれ、わずかなエリート以外は喜べるようなものでは無かった。サラザールは教育が人々の潜在的な保守と宗教的な価値観を破壊すると考え、ごく少数の政権関係者のみに高等教育を奨励した。
エスタド・ノヴォはイタリア型の統制経済を取った。これは、国家の父権的管理の下でエリート層の育成を阻み、独裁者の財産を守るものであった。サラザールは1938年に反コミンテルン協定に署名することを拒絶したが、ポルトガル共産党は弾圧され、唯一合法とされた政党は君主主義、ファシズム、ナショナリズムや極端な資本主義を超えた、広範囲の右派思想を含んだ政党であるUnido Nacional（国家連合）のみであった。 更にファシズム思想の普及を図るために、イタリアの黒シャツ隊を模倣した市民軍であるLegião Nacionalと、既存のボーイスカウトに代わりヒトラー・ユーゲントを模倣した組織であるMocidade Portuguesaなどの組織を設立した。これらの2つの組織は、国家の支援の元で、軍隊式の生活を課した。 ポルトガルはこのような独裁政権であったが、特に1940年代～1950年代に、第二次世界大戦から復興しようとするヨーロッパ諸国に資材を売りつける事で高度経済成長を遂げた。
1960年代にはヨーロッパの復興も一段落し、特需の終わったポルトガルは深刻な経済の遅れを耐える必要に迫られた。与党の中では自由主義経済に移行すべきだと主張する人々も表れた。彼らはスペインが経済の自由化によって同様な状況から脱出し得たと主張した。スペイン首脳部は、農業国の工業化が共産主義者に活気を与え、世論が左翼化し、政権やイデオロギーを不安定にすると言う事態への恐れを振り払って工業化を推し進めたので、スペインは経済復興を成し遂げる事ができた。
[編集] 終焉
エスタド・ノヴォの終わりは1960年代の植民地暴動から始まった。そしてアンゴラ、モザンビーク、ギニアビサウなどの植民地の独立を、それぞれの陣営の勢力範囲を拡張しようとする東西両陣営が支持した。1961年以降激化した植民地戦争は、ベトナム戦争でのアメリカと同じように、何千もの人々を殺し、国家の評価を台無しにさせるものだった。 ポルトガル側は植民地での優勢を維持することはできたものの、ソ連やキューバに支援されたゲリラに苦戦し、国軍の損害は増すばかりだった。その間に莫大な軍事費はポルトガル経済を圧迫し、ヨーロッパ最貧国と呼ばれるまでに転落した。 サラザールの死去と共に後継のマルセロ・カエターノ首相は漸進的に民主化を進めようとしたが、1974年にエスタド・ノヴォを打倒する為にソ連の支援を受けた左派将校によるクーデター（カーネーション革命）によりエスタド・ノヴォは崩壊した。
