イギリス文学
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イギリス文学 (-ぶんがく) とは、イギリスの文学、及びそれらの作品や作家を研究する学問のこと。アメリカ文学と合わせて英米文学と呼ぶこともある。英文学 English literature と言った場合、英語による各地域の文学を含むことがある。
ポストコロニアル理論の発展と共に、いわゆる英文学の領域も広がりつつあり、Englishes と複数形で語ることにより、20世紀前半までの帝国主義的な英文学の枠組みをこわそう、という動きも現在では見られている。
Eng. Lit と省略されることも多く、その際にはしばしば、大学内での科目としての英文学をさし、その研究方法や教育方法に批判的な目を向けていることが多い。
目次 |
[編集] イギリス文学史
[編集] 中世前期(古英語)
イギリス文学の範疇に含まれる文学テキストは、8世紀~9世紀頃に成立したものからしか残されておらず、従って周辺ヨーロッパ文学において古代と呼ばれる時代に該当するテクストはイギリス文学においては存在しない。中世の前半期と呼べる8~11世紀に古英語が成立し、現代英語の源流となっているが、その古英語で書かれたテキストとして、叙事詩『ベオウルフ』およびラテン語福音書の東イングランド方言による翻訳が挙げられる。また、ウェセックス王国のアルフレッド大王が文教政策を推し進め、『パリ詩篇』やボエティウスの『哲学の慰め』を自らラテン語から翻訳するなど、ウェセックス方言が古英語の標準となった。この時代は韻文が主流であり、『ベオウルフ』を含め、ゲルマン詩の特徴である頭韻が顕著である。
[編集] 中世後期(中英語)
1066年にフランスのノルマンディー公ギヨームがイングランドに攻め入り、ウィリアム1世として即位してノルマン朝が成立すると、英語は屈折語尾の消失や統語も語順への依存度を増すなど、中英語へと進化していく。中英語期のテキストの金字塔としては、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』がある。ロンドン方言で書かれているが、イタリア、フランスへ渡ったことがあるとされるチョーサーは大陸的詩作法の影響を大いに受け、ゲルマン詩の特徴であった頭韻を脱し、脚韻を用いている。同時代の詩人では、『ガウェイン卿と緑の騎士』のガウェイン詩人、『農夫ピアズの夢』のウィリアム・ラングランドが有名である。
1450年頃、ヨハン・グーテンベルクによる活版印刷技術の発明がウィリアム・キャクストンによってイギリスに持ち込まれ、印刷が急速に広まった。
[編集] ルネッサンスとエリザベス朝演劇(16世紀)
この時期になると、屈折語尾は現代英語に限りなく近い形へと消失、SVO型という語順も定着する。ただ、18世紀までは初期現代英語あるいは近世英語と呼んで区別する場合がある。エリザベス朝の頃に文学は盛んになった。サー・トーマス・ワイアット(Sir Thomas Wyatt)の叙情恋愛歌を先駆とし、エリザベス1世のためにエドマンド・スペンサーが『妖精の女王』を書くなど、宮廷の庇護を受けた感もある。
また、中世のころから教会で行われていた奇蹟劇、教訓劇はや次第に専門化され、そのためこぞって脚本が多く書かれた。ジョン・リリー(John Lyly,1554 - 1606)、ロバート・グリーン(Robert Greenr,1558 - 1592)などの優れた劇作家が輩出され、マーロウによって基礎が築かれた。さらにウィリアム・シェイクスピアは四大悲劇『ハムレット』]]』『マクベス』『オセロ』『リア王』などを書き、詩人としても多くのソネットを残した。その卓越した作品群は、イギリス文学のみならず各地域の文学、演劇などのジャンルに大きな影響を与えつづけている。
[編集] 王政復古(17世紀)
17世紀に入ると、ジョン・ダンやジョージ・ハーバートなどの形而上詩人が活躍。文学作品に多様な影響を与えた欽定訳聖書が出たのもこの時代である。演劇では、ベン・ジョンソン、ジョン・ウェブスターらが活躍。また清教徒革命を背景としてミルトンが活躍。『失楽園』は、キリスト教的世界観を壮大に描いた古典である。
[編集] 古典主義とロマン主義(18世紀)
英語による小説が盛んになったのはだいぶ遅く、1719年のデフォー作『ロビンソン・クルーソー』を待たねばならなかった。さらにスウィフトは『ガリバー旅行記』(1726年)を書き、中期にはヘンリー・フィールディングが傑作『トム・ジョーンズ』(1748年)を発表した。
18世紀はまた、演劇の再興した時代でもある。この時代の終わりごろにはゴシック小説が流行しはじめた。
[編集] ロマン主義の隆盛(19世紀前半)
イギリスのロマン主義は、ワーズワース、コールリッジの共著『抒情歌謡集』(1798年)に始まる。ワーズワース、コールリッジはフランス革命に対し憤慨した後保守派に回ったが、バイロン、シェリー、キーツはイタリアに移り、理想主義を掲げた。
19世紀には小説が飛躍的な発展を見せた。特に初期にはスコットが、歴史小説で圧倒的な人気を誇り、その死をもってロマン主義は終結する。オースティンは、風刺をこめて女性の地位や人生を描き、現在でも評価が高い。
[編集] ビクトリア朝時代(19世紀中・後半)
ビクトリア朝時代になり、国民と長らく遠ざかっていた宮廷が親密なものとなった。これに順応したのは、詩人のテニソンであった。テニソンは『アーサー王伝説』に取材した『国王牧歌』で、当時の倫理観をもとに描ききった。
だがこうした国家の自己満足に反抗したのが、ブロンテ姉妹や、カーライルらであった。ディケンズは『オリバー・ツイスト』『デービット・コパフィールド』、サッカレーは『虚栄の市』を発表、この時代の代表的作家で、後に国民作家と呼ばれるようになった。ブロンテ姉妹のうち、長女シャーロットは『ジェーン・エア』を、次女エミリーは『嵐が丘』を発表し、当時の社会を打破しようと試みた。
ことにこの時代の小説は、19世紀中盤の教育制度の発達と共に、挿絵を含むものが多くなった。前述のディケンズはもちろんのこと、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』などは、すでに挿絵が作品の一部である例といえるだろう。
19世紀的な家庭観、児童観は、さらに児童文学の発展を促した。推理小説もまた、この時期に急速に発展したジャンルである。詩ではアルフレッド・テニソンが人気を博した。
[編集] 20世紀
20世紀に入り、イギリスの社会を一変させた第一次世界大戦を経ると、近代社会の経験を反映したモダニズム運動が起こる。主な旗手として、アメリカ出身で後にイギリスに帰化した詩人のT・S・エリオット、アイルランド出身の小説家のジェイムズ・ジョイス、フェミニストとしても有名なヴァージニア・ウルフらをあげることができる。
1930年代には、共産主義に影響を受けた文学が数多く書かれる。この時代の主な作家は、W・H・オーデン、クリストファー・イシャウッドなどである。また、最近では、今まで無視されがちであった1930年代の女性作家にも再び目が向けられている。
第二次世界大戦後のイギリスは特に1960年代に大量に移民を受け入れて以来、多文化国家であり、文学にもその影響は如実に現れている。サルマン・ラシュディや、また近年ではアルンダティ・ロイやゼイディー・スミス、カズオ・イシグロのように、非白人の書いた小説が高い評価を受けている。
[編集] 作家
- ジェフリー・チョーサー (1340年? - 1400年)
- ガウェイン詩人 (本名・生没年不詳)
- ウィリアム・シェイクスピア (1564年 - 1616年)
- ジョン・ダン (1573年 - 1631年)
- ジョン・ウェブスター(1580年頃 - 1634年頃)
- ジョン・ミルトン (1608年 - 1674年)
- ダニエル・デフォー (1660年 - 1731年)
- ジョナサン・スウィフト (1667年 - 1745年)
- アレキサンダー・ポープ (1688年 - 1744年)
- サミュエル・リチャードソン (1689年 - 1761年)
- ヘンリー・フィールディング (1707年 - 1754年)
- ローレンス・スターン (1713年 - 1768年)
- ウィリアム・ワーズワース (1770年 - 1850年)
- ジェイン・オースティン (1775年 - 1817年)
- トマス・ド・クインシー (1785年-1859年)
- ジョージ・ゴードン・バイロン (1788年 - 1824年)
- メアリー・シェリー (1797年 - 1851年)
- エリザベス・ギャスケル (1810年 - 1865年)
- チャールズ・ディケンズ (1812年 - 1870年)
- シャーロット・ブロンテ (1816年 - 1855年)
- エミリー・ブロンテ (1818年 - 1848年)
- ジョージ・エリオット(1819年 - 1880年)
- ルイス・キャロル (1832年 - 1898年)
- ヘンリー・スペンサー・アッシュビー (1834年 - 1900年)
- トーマス・ハーディ(1840年 - 1928年)
- ロバート・ルイス・スティーヴンソン (1850年 - 1894年)
- オスカー・ワイルド (1854年 - 1900年)
- ジョージ・バーナード・ショウ(1856年 - 1950年)
- ジョージ・ギッシング (1857年 - 1903年)
- ジョゼフ・コンラッド(1857年 - 1924年)
- アーサー・コナン・ドイル (1859年 - 1930年)
- ケネス・グレアム (1859年 - 1932年)
- H・G・ウェルズ (1866年 - 1946年)
- ジョン・ゴールズワージー (1867年 - 1933年)
- G・K・チェスタートン(1874年 - 1936年)
- W・サマセット・モーム(1874年 - 1965年)
- E・M・フォースター(1879年 - 1970年)
- ヴァージニア・ウルフ (1882年 - 1941年)
- ジェイムズ・ジョイス(1882年 - 1941年)
- A・A・ミルン(1882年 - 1956年)
- D・H・ローレンス (1885年 - 1915年)
- T・S・エリオット(1888年 - 1965年)
- アガサ・クリスティ (1890年 - 1976年)
- J・R・R・トールキン (1892年 - 1973年)
- ジョージ・オーウェル (1903年 - 1950年)
- イーヴリン・ウォー (1903年 - 1966年)
- セシル・デイ・ルイス (1904年 - 1972年)
- イアン・フレミング (1908年 - 1964年)
- ウィリアム・ゴールディング (1911年 - 1993年)
- ディラン・トーマス (1914年 - 1953年)
- アントニー・バージェス (1917年 - 1993年)
- ミュリエル・スパーク(1918年 - )
- J・G・バラード(1930年 - )
- ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(1934年 - )
- A・S・バイヤット(1936年 - )
- フレデリック・フォーサイス (1938年 - )
- マーガレット・ドラブル(1939年 - )
- ジェフリー・アーチャー(1940年 - )
- ジュリアン・バーンズ(1946年 - )
- サルマン・ルシュディ(1947年 - )
- イアン・マキューアン (1948年 - )
- マーティン・エイミス(1949年 - )
- カズオ・イシグロ(1954年 - )
- ジャネット・ウィンターソン(1959年 - )
- J・K・ローリング(1965年 - )
- ゼイディー・スミス(1975年 - )
[編集] 文学の流れ
[編集] イギリス文学の研究者
- マシュー・アーノルド (1822年 - 1888年)
- レズリー・スティーヴン(1832年-1904年)
- アーサー・キラークーチ (1863年 - 1944年)
- 夏目漱石 (1867年 - 1916年)
- I・A・リチャーズ (1893年 - 1979年)
- J・R・R・トールキン (1892年 - 1973年)
- F・R・リーヴィス (1895年 - 1978年)
- レイモンド・ウィリアムズ (1921年 - 1988年)
- テリー・イーグルトン (1943年 - )
[編集] 関連項目
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