アントニー・バークリー

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アントニー・バークリー (本名Anthony Berkeley Cox、1893年 7月5日 - 1971年 3月9日) は英国の推理小説及び犯罪小説の作家である。アントニイ・バークリー、アントニィ・バークリーと表記されることもある。

「アントニー・バークリー」の他、A・B・コックス、フランシス・アイルズ(Francis Iles)、モンマス・プラッツ(Monmouth Platts)、「?」といった名義も用いた。「?」名義で出版された『レイトン・コートの謎』を皮切りに、『偶然の審判』『第二の銃声』などロジャー・シェリンガムを探偵としたシリーズ、『ピカデリーの殺人』などアンブローズ・チタウィックを探偵としたシリーズで、推理小説黄金期に広く読まれたが、晩年は不遇であった。日本では近年主要作品の邦訳が次々現れ、再評価が進んでいる。A・B・コックス名義で新聞に連載され、モンマス・プラッツ名義で刊行されて以来ほとんど知られることのなかったCicely Disappears(1927)まで邦訳された（『シシリーは消えた』）。

アイルズ名義の犯罪心理小説『殺意』、バークリー名義の実験的な複数探偵もの『毒入りチョコレート事件』はいずれも推理小説に新しい地平をもたらした里程標の一つである。また、どんでん返しを偏愛する作風は、同期の英国推理作家セイヤーズのウィムジィものの中で「ロジャー・シェリンガム式」としてとりあげられている。

また推理小説界の興隆にも熱心で1928年頃にセイヤーズやF・W・クロフツらと共に設立した推理作家の親睦団体ディテクションクラブではその名誉首席会員として遇された。

シャーロック・ホームズ流名探偵を嫌い、無礼でお喋りで社交的な探偵ロジャー・シェリンガムを登場させた。仲間であり好敵手でもあったスコットランド・ヤードのモレスビー警部（後、首席警部）もそれまでの典型的警察像と離れ、シェリンガムと対等に捜査合戦を繰り広げ、時には勝利する。

名前の頭文字をとるとABCになる。イニシャルをとったA・B・コックス(Cox)はもちろんだが、『毒入りチョコレート事件』、『試行錯誤』の探偵アンブローズ・バターフィールド・チタウィックも同様なのが面白い。このチタウィックもホームズとはかけ離れたタイプの探偵である。

[編集] 主要作品

()内は米国での題名ないし別題。『』内は邦訳書の題名

シェリンガムもの長編
1. The Layton Court Mystery, 1925　『レイトン・コートの謎』。当初「?」名義。
2. The Wychford Poisoning Case : An Essay in Criminology, 1926　『ウィッチフォード毒殺事件』
3. Roger Sheringham and the Vane Mystery (The Mystery at Lovers' Cave, The Vane Mystery), 1927　『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』
4. The Silk Stocking Murders, 1928　『絹靴下殺人事件』
5. The Second Shot, 1930　『第二の銃声』
6. The Storey Murder (Top Story Murder), 1931　『最上階の殺人』
7. Murder in the Basement, 1932　『地下室の殺人』
8. Jumping Jenny (Dead Mrs. Stratton), 1933　『ジャンピング・ジェニィ』
9. Panic Party (Mr. Pidgeon's Island), 1934

チタウィックもの長編
1. The Piccadilly Murder, 1929　『ピカデリーの殺人』
2. Trial and Error, 1937　『トライアル・アンド・エラー』『試行錯誤』（邦訳書が改題した）

シェリンガム、チタウィック両探偵が登場する長編
1. The Poisoned Chocolate Case, 1929　『毒入りチョコレート事件』

長編犯罪心理小説（F. アイルズ名義）
1. Malice Aforethought : A Story of a Commonplace Crime, 1931　『殺意』
2. Before the Fact : A Murder Story for Ladies, 1932　『レディに捧げる殺人物語』
3. As for the Woman : A Love Story, 1939　『被告人の女性に関しては』

バークリー名義短編
1. The Avenging Chance　「偶然の審判」（『毒チョコ』の素材、シェリンガムもの）
2. Mr. Simpson Goes to the Dogs　「帽子の女」
3. Right to Kill　「殺しの権利」
4. The Sweets of Triumph　「成功の菓子」