アスキーネット
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アスキーネット(ASCIInet)はかつて株式会社アスキーが運営していた商用パソコン通信ホスト局。
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[編集] 概要
パソコン関連出版社のアスキーが1985年に実験サービスとしてパソコン通信ホストを開局した。有料化後は4種類のサービスに分かれていたが後に統合された。Windows95が発売されて以降、インターネットの利用が広まるにつれ他の商用パソコン通信と同じくインターネット接続機能も取り入れるようになったが、利用者数が伸びず1997年にサービスを停止した。
[編集] 沿革
- 1985年 3月26日 アスキーネット入会申込み受付開始
- 1985年 5月 1日 実験運用開始
- 1986年12月20日 アスキーネットMSX運用開始
- 1986年12月31日 実験運用ID発行終了
- 1987年 3月20日 アスキーネットACS運用開始
- 1987年 5月29日 アスキーネット実験運用終了
- 1987年 6月15日 アスキーネットPCS運用開始
- 1988年 6月 利用料金改定
- 1990年 7月10日 アスキーネットDPI運用開始
- 1992年 3月25日 MSX/ACS/PCS/DPI運用終了
- 1992年 3月30日 新アスキーネット運用開始
- 1994年 1月20日 PC-VAN+との相互接続開始
- 1994年 3月~ telnet/whois/ftp/NetNews等順次サービス追加
- 1994年10月31日 Internet 電子メールサービス開始
- 1995年 9月 1日 アスキーネット関西センター開設
- 1996年 1月31日 WorldTALKによるWWWサービス開始
- 1996年 5月15日 ダイヤルアップ IP 接続サービス開始
- 1997年 5月 2日 サービス停止を発表
- 1997年 8月24日 サービス停止(以降リードオンリー期間あり)
[編集] システム
ホスト側で多くの機能をもっていた。
[編集] 電子掲示板
電子掲示板はハイパーノーツ(HyperNotes)と呼ばれる形式を採用した。各掲示板(sig)には利用者が主題ごとに自由にノート(現在のインターネット掲示板で言うスレッドとほぼ同じもの)を追加可能で、他の利用者はそのノートにレスポンスを追加する事が出来た。NIFTY-ServeやPC-VANなど当時の他の商用パソコン通信では、掲示板は運営側が用意したもののみで、利用者はそこに雑多なレスポンスをごちゃ混ぜに付けていくシステムが多かったのに対し、話題ごとにノートが整理されるこのシステムは機能や使い勝手などが評価されて後にmmmやWANI-BBSなどの草の根ネット用のホストシステムで同様の機能が実装された。さらに、後のマルチスレッド掲示板システムにも影響を与えたと考えられる。
ハイパーノーツ内の各コマンドはワンキーアクションを採用し、1文字で規定されているコマンドの入力後にはエンターキーを押す必要はない。
ホスト側で利用者ごとにノート単位・レスポンス単位で既読・未読の管理を行うことも可能になっていた。上記のハイパーノーツと併せて、特殊なツールやログ管理ソフト等を使用せず、通信ソフトのみで掲示板での意見交換を楽しむことができるホストシステムとなっていた。しかし、当時のホストコンピュータの能力ではこういった多機能を実現するにはかなり負荷が高く、会員数の割には動作が重い時期もあったことも否めない。
[編集] ライブラリ
ソフトウェアやデータなどを保管するライブラリはプール(pool)と名付けられていた。手順はTransIt(ダウンロード及びアップロード)、Z-MODEM(ダウンロードのみ)が利用できた。
[編集] 電子メール
当初は利用者間のみのメールシステムであったが、後にインターネットとのメール交換も可能となっていた。メールアドレスは、IDがnet12345のユーザーの場合、net12345@asciinet.or.jpというアドレスになっていた。(現在はドメイン廃止済み)
[編集] チャット
voiceと名付けられていた。
[編集] データベース
poolと呼ばれるオンラインソフト等のアップロード・ダウンロード用データベースが設けられていた。
また、インターネットとの相互接続後は、パーソナルスペースと呼ばれる個人用データスペースが用意され、ftp等で一時的にパーソナルスペースにデータをダウンロードし、それをパソコン通信ソフトで自分のPCにダウンロードすることで、FTPクライアントソフトを使用しなくてもインターネットからデータを落とすことができるよう工夫されていた。
[編集] オートパイロット
[編集] オンラインゲーム
GFT (Galactic Free Traders) という、他の利用者と競い合い、ゲーム空間内でお金を儲けながらゴールを目指すオンラインゲームが提供されていた。
[編集] インターネット関連
インターネットへの接続機能が順次拡大された。
[編集] 電子メール
[編集] WWW
- Windows3.1以降では無手順のパソコン通信接続の形態でもWorldTALKによりWebブラウジングが可能であった。
- また、利用者へのWebページ開設サービスも存在した。HTMLファイルがパソコン通信側からもアップロード可能であった(他の商用パソコン通信ではftpによるアップロード)。
[編集] telnet
- 利用料金の差により、アスキーネットへ接続してからNIFTY-Serveへtelnetで接続した方がNIFTY-Serveの高速アクセスポイントへ普通に接続するより高速で安くなるなどという事があった。
[編集] アクセスポイント
各地にアクセスポイントが設けられていた。Tri-P,TYMPASのアクセスポイントが使用できた。また東京直通アクセスポイントが存在した。 高速規格モデムが登場する毎に素早い対応が行われた。
初期には東京のみにしかアクセスポイントがなく、また通話料割引サービスも存在しなかったため、地方からアクセスした利用者の月額電話代が10万円を超えた事もあったという。
[編集] 歴史
[編集] 実験時代
利用者IDの頭3文字がascで発行された。
[編集] 4ネット並立時
[編集] アスキーネットACS(Advanced Communication Service)
- 主にビジネスユーザーをターゲットにしたネットワーク。利用者IDの頭3文字がacsで発行された。
[編集] アスキーネットDPI(ASCII NET DELPHI)
- 米国のパソコン通信サービスDELPHIへのゲートウェイサービスを主としたネットワーク。利用者IDの頭3文字がdpiで発行された。
[編集] アスキーネットMSX(ASCII NET MSX)
[編集] アスキーネットPCS(Public Communication Service)
- ホビー向けのネットワーク。特徴的な場所として練習用掲示板(junk.test)があった。利用者IDの頭3文字がpcsで発行された。
[編集] 統合後
それまでの利用者IDであるacs,dpi,msx,pcsの4種は統合後もそのまま使用可能であった。統合後に加入した利用者のID頭3文字はnetで発行された。
[編集] パブリックステージ
- 統合前までのsigがパブリックステージとなった。
[編集] グループステージ
- パブリックステージとは別に同好者が申請し新規にsigを作成できた。投票により利用者中からsigopが選ばれた。
[編集] 特徴
運営者であるアスキーがパソコン関連出版社であり、技術系利用者の割合が比較的多かったとされる。 掲示板においては、管理者が積極的に運営を行うのではなく利用者が自治的な利用を行っていた。
利用者層によるものか操作性に由来するものか理由は定かではないが、飾り気がなく冗長性を排した書き込みが好まれた。
[編集] 練習用掲示板(junk.test)
アスキーネットの通常の掲示板では年単位でログが残されていたのと較べ、junk.test では週に一度、後には月に一度書き込みが全消去され、過去ログも残されないという運用がされ、利用者にはいわゆる「なんでもありの場所」として認識されていた。
また、ここで発祥したソフトウェアや「ネタ」が他のパソコン通信ホスト等へ広がることもあり junk.test はアスキーネットを象徴する掲示板の一つとなっていた。
[編集] 関西センター
兵庫県南部地震後、災害時のバックアップを目的に開設された。 ただし、サービス終了までに実際に稼動したのはアスキーネットに機器障害が発生した時のみである。
[編集] その他
- グループステージ「メディア国勢調査」"census.people.media"の調査によれば、サービス停止直前である 1997年8月24日の ID 数は 19,026 であった。
- サービス終了後、掲示板のログが会員の希望者先着 2,000 人にCD-ROMで配布された。