VX
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VX（O-エチル-S-（2-ジイソプロピルアミノエチル）メチルホスホノチオラート）とは、猛毒の化学物質で神経剤（V型）の一種である。コリンエステラーゼ阻害剤として作用する。人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質の1つともいわれる。
- 化学式は CH3P(O)(OCH2CH3)SCH2CH2N(CH(CH3)2)2
- 比重 1.008
- 致死量
- 大気中濃度 0.1 mg・min/m3。
- LD50 15μg/Kg(ラット、呼気)
琥珀色をした油状の液体で、揮発性は低く、無味無臭である。また、濃度にもよるが、粘着性を持つとされる。霧状のものは、毒ガス（神経ガス）としても知られる。1950年代初期にイギリスで合成された。揮発性が低いため残留性が高い。サリンなどと異なり化学的な安定性も高いため、温帯の一般的な気候の場合では散布から一週間程度は効果が残留するとされる。また、分解生成物は比較的毒性の高い有機シアン化合物である。
呼吸器からだけでなく皮膚に付着しただけでも毒性を発揮するため、散布された場合にはガスマスクだけでは防ぐことが出来ない。また親油性が高く水で洗浄しただけでは取り除くことが出来ない。安全な状態にするためには化学洗浄が必要である。木材や皮、布などに付着した場合には長期間毒性を維持したまま留まるためＶＸガスに汚染された物に触れただけでも危険である。自衛隊を始め各国の軍隊ではこのような化学洗浄を行う専用機材を保有している。
[編集] 歴史
- 1952年にラナジットゴーシュ(Ranajit Ghosh )によってポートダウン(Porton Down)にある政府研究設立で発明されました。
- 1956年にイギリスは化学・生物兵器を廃棄したためVXもこの時に廃棄されました。
- 1958年にイギリス政府は核兵器に関する情報と引きかえにアメリカ合衆国へVXの研究資料を渡しました。
- 1961年からアメリカはVXの大量生産に入りました。
- 1967年にアメリカでも化学兵器の廃棄が行われ7,380発のVX弾頭が貨物船に詰まれたままニュージャージー沖に沈められました。
ニコラス・ケイジ、ショーン・コネリー主演映画『ザ・ロック』にも反乱軍の切り札としてこの液体の入ったミサイルが登場した。この映画の中では「このガスを少しでも吸い込んだり、皮膚に付着すると、すぐさま全身を激しい痙攣が襲い、内臓を吐き出す」「スプーン一杯で半径500メートル以内にいる人間を殺す事が出来る」など、誇張・演出的な表現ながら、その兇悪な殺傷能力が紹介されていた。
日本でもオウム真理教が合成し、教団と対立する人物の暗殺に使用した。
治療にはサリンや有機リン系の農薬などと同様にPAM剤などが有効である。
[編集] 治療薬
- プラリドキシムヨウ化メチル (PAM)
- アトロピン
