L関数
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L関数(エルかんすう)とは、もとはディリクレが導入した関数で、ゼータ関数を一般化したものである。算術級数中の素数の分布の研究に基本的な関数である。実際ディリクレは、初項と公差が互いに素であるような等差数列には無限に素数が含まれることを証明するために、この関数を導入した。
任意の整数aに対し複素数を対応させる写像で、任意の自然数Nに関して以下を満たすχをディリクレ指標と呼ぶ。
- ならばχ(a) = χ(b)
- χ(ab) = χ(a)χ(b)
- aとNが互いに素でなければχ(a) = 0
このディリクレ指標について、
とL関数を定義する。このL関数はオイラー積
をもつ。 L関数もゼータ関数と同様、全複素数平面上に解析接続され、関数等式をもつ。また、非自明な零点の虚部はすべて1/2であるという、リーマン予想と同様な予想が考えられておりこれを一般化されたリーマン予想(Generalised Riemann Hypothesis;GRHと略される)と呼ぶ。
その他にも、L関数にはジーゲルの零点の存在の問題がある。これは実軸上に正の零点が存在するかもしれないという問題で、存在しても高々一つであることが知られているがいまだに解決されていない。この例外的な実零点は、この問題に大きな結果を残したジーゲルにちなんでジーゲルの零点と呼ばれている。この問題のために、リーマンの素数公式の類似である算術級数中の素数分布の有効な公式を得ることができていない。
数論の発展に伴って、他にもL関数の名を持つより高度な数論的関数がたくさん存在する。