12弦ギター

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12弦ギター（じゅうにげんぎたー）とは、複弦ギターの一種。通常のギターが6弦なのに対し、その倍ある弦の本数から命名された。通常のエレキギター(ソリッドギター)、セミアコースティックギター、エレクトリックアコースティックギター、アコースティックギター全てに存在する。

通常のギターのチューニングは、上の低音弦から(6弦から1弦に向かって)、「E-A-D-G-B-E」となっているが、一般的な12弦ギターには、「E-A-D-G-」(6弦～3弦)には1オクターブ高音の弦が、「-B-E」(2弦と1弦)には同じ弦が、それぞれ付加されている。

その音色は2本のギターで同じ演奏をしているような効果が得られるが、オクターブまたはユニゾンにチューニングされた近接弦同士はほんのわずかな発音のズレを生じるために、通常の6弦ギターよりも豊かな響きが得られる。

奏法としては、その構造上アルペジオよりは、ピック奏法、フィンガー・ピッキング共にストロークに向いている。

リッケンバッカー社製のビートルズが使用した360-12や、ギブソン社のSGタイプのダブルネックのものが有名。

[編集] 歴史、起源、代表的な演奏家

　現在、私たちが12弦ギターと呼ぶものはスチール弦のもの。実はこのようなギターがどのように誕生してきたかは、はっきりと分かっていない。

　しかし、12弦ギターが登場してきたのは、20世紀がはじまろうとする時期であったようである。どのようにして、だれが12弦ギターを作り出したかは詳しくはわかっていないとのこと。

　一説には、シカゴやニューヨークなどのギターメーカーで働くイタリア系の人々が作り出したとも言われる。また、別の説としてはメキシコ系の楽器が起源という説もある。これは多分、メキシコ系の楽器（チャランゴなど）に複弦のものがあったからであろう。ただ、ギターの先祖、リュート属の楽器もさまざまあり、スペインでは16世紀までは貴族がビウェーラという6コース、複弦の楽器を使っていた。そのころ、庶民が6弦のギターを使っていたとのこと。なので単に複弦であるから、12弦ギターの起源と判断するのは早計かもしれない。

　1904年にはグリューネヴァルトというニューオーリンズの会社が12弦ギター（ハープギターと記している）をカタログに載せている。

　ギブソン社やマーチン社は12弦に関しては手を染めることはしばらくなかったようである。12弦の購買層は安価な楽器を求める層がほとんどであったからのようだ。確かに、12弦ギターを目にするようになったのは、ブライド・ウィリー・マクテル（Blind Willie McTell）のような古いブルースシンガーたちが使っている姿で使用しているのはステラ（Stella)の12弦が多い。本当に安価な楽器だったようである。ブライド　ウィリー　マクテル（Blind Willie McTell）は実際、初期において12弦ギターの演奏において効果的なものを多く生み出した。低音のオクターブをうまく利用したベースランニング、高音のユニゾンの泣き声のような音づくりなど。

　ブルース、黒人系とは別の系統ではテキサスなどでメキシコ系の人々により12弦ギターは演奏されていた。20世紀前半に活躍したリュディア・メンドサが有名。

　そして、レッドベリー（Leadbelly）。彼は1917年に刑務所に入っているが、古い音楽を蒐集していたローマクスの働きにより、出所し、活躍した音楽家。黒人ではあるが、ブルースというより、フォークという感じが強い。彼はキング・オブ・12ストリングの名で呼ばれているが、繊細な演奏というよりは、ダイナミックなストロークが中心。彼もステラの12弦を使用していた。

　50年代、60年代になるとピート・シーガーをはじめ多くの白人のフォークシンガーたちが12弦ギターを使いはじめる。この時期になりギブソン社、マーチン社などは12弦の生産をはじめる。そして、60年代にはエレクトリックの12弦が多く見られるようになり、ロジャー・マッグィン（Roger　McGuinn）がエレクトリック12弦ギターの普及に貢献した。

　60年代には偉大な12弦ギターの奏者レオ・コッケ（Leo　Kottke) が登場する。彼はその独特の奏法と音作りで12弦ギターを完璧にソロ楽器に地位を向上させた。彼は、はじめBozoを中心に様々なブランドを使用した。腱鞘炎治療後、現在はテイラー (Taylor) を使用している。若いころはサムピックを使ってたが、今は使用していない。

　12弦ギターを使用していることで有名な楽曲としては、ザ・ビートルズの「涙の乗車券(Ticket To Ride)」、ザ・バーズの「ミスター・タンブリン・マン(Mr. Tumbourine Man)」、ポール・リヴィア＆ザ・レイダースの「キックス(Kicks)」などがある。

　Paul Geremiaというステラを使用したノスタルジックな音作りをする12弦奏者もいるが、日本ではほとんど知られていない。Jason Kesslerというクラシック系の12弦奏者もいる。12弦ギターは楽器として主流ではないことは確か。多くの場合、バンド演奏の中で味付け的にその音が聴かれる場合がほとんど。ただ、今後も、嘗てのブルース奏者やコッケのような12弦ギターの独特の音色を生かしたソロ演奏が多く生み出されることが期待される。