高橋康也
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
高橋 康也（たかはし やすなり、1932年2月9日 - 2002年6月24日）は、日本の英文学者。東京生まれ。
東京大学英文科大学院を修了後、中央大学専任講師を経て東京大学教養学部の専任講師、助教授、教授。英文科や比較文学の大学院でも教えた。定年後は昭和女子大学大学院教授を勤めた。日本英文学会会長、日本シェイクスピア協会会長、国際シェイクスピア学会副会長を歴任し、1993年、英国よりCBE勲章を受章した。
サミュエル・ベケット、ルイス・キャロル、シェイクスピアなどを研究対象とし、ノンセンスなどの、文学における言葉遊びに光を当てるとともに、キャロルの少女愛好についてもその全体像を紹介した。また日本演劇についての論文もあり、『橋がかり』に纏められている。晩年はシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』、『間違いの喜劇』をそれぞれ狂言「法螺侍」、「間違いの狂言」に翻案し、英国など海外でも上演され好評を博した。特に2003年に出版した「間違いの狂言」の「ややこしや、ややこしや」という台詞は、主演した野村萬斎がテレビ番組「にほんごであそぼ」で用いたことから、子供も口にする流行語となった。
家族は妻の迪（みち）、娘の河合美穂子、息子の宣也（慶応大学助教授）。妻、娘、息子それぞれと共訳で出版した書籍もある。東京大学助教授の河合祥一郎は女婿。シェイクスピア研究は河合に、ベケット研究は東京大学助教授の田尻芳樹に受け継がれた。
目次 |
[編集] 著書
[編集] 単著
- 『エクスタシーの系譜』あぽろん社, 1966（のち筑摩叢書）
- 『サミュエル・ベケット』研究社出版, 1971
- 『キャロル イン ワンダーランド』新書館, 1976
- 『道化の文学』中公新書, 1977
- 『ノンセンス大全』晶文社, 1977
- 『ウロボロス』晶文社,1980
- 『アリスの国の言葉たち 高橋康也対談集』新書館, 1981
- 『橋がかり』岩波書店, 2003.6
- 『まちがいの狂言』白水社, 2003.11
[編集] 共著・編著
- 編『アリス幻想』すばる書房, 1976.11
- 『シェイクスピア時代』中公新書, 1979 樺山紘一との対談
- 『ヴィクトリア朝のアリスたち ルイス・キャロル写真集』新書館, 1988
- 編『シェイクスピア・ハンドブック』新書館, 1994
- 編『世界文学101物語』新書館, 1996
- 編『逸脱の系譜』研究社出版、1999
[編集] 翻訳
- 『マロウンは死ぬ』ベケット 白水社, 1969
- 『ワット』ベケット 白水社, 1971
- 『詩評論小品』ベケット 白水社, 1972（のち『ジョイス論/プルースト論』と改題）
- 『アリスの絵本』ルイス･キャロル，牧神社, 1973
- 『ノンセンスの絵本』３巻、エドワード・リア 河出書房新社, 1976
- 『殻を破る 演劇的探究の40年』ピーター・ブルック 晶文社, 1993
- 『寺院の殺人』T.S.エリオット <リキエスタ>の会, 2001
[編集] 高橋迪との共訳
- 『少女への手紙』ルイス・キャロル 新書館, 1979
- 『リップ・ヴァン・ウィンクル』ワシントン・アーヴィング 新書館, 1981
- 『ワルキューレ』リヒャルト・ワーグナー 新書館, 1984
- 『ジークフリート』ワーグナー 新書館, 1984
- 『神々の黄昏』ワーグナー 新書館, 1984
- 『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル 新書館, 1985（のち河出文庫）
- 『子供部屋のアリス』ルイス・キャロル 新書館, 1987
- 『不思議の国のノアの方舟 究極のピクチャーパズル』マイク・ウィルクス 河出書房新社 1997
- 『ラインの黄金』ワーグナー 新書館, 1999 高橋宣也との共訳
- 『愛の天使』河出書房新社, 1995 河合美穂子との共訳
[編集] 共訳
- 『ベケット戯曲全集』 第1、2 白水社, 1967（のち『ベスト・オブ・ベケット』全3巻に再編成） 安堂信也との共訳
- 『なにもない空間』ピーター・ブルック 晶文社, 1971 喜志哲雄との共訳
- 『反解釈』スーザン・ソンタグ 竹内書店, 1971 訳者代表
- 『サミュエル・ベケット短編集』白水社, 1972 片山昇、安堂信也との共訳
- 『ルイス・キャロル詩集』筑摩書房, 1977（のちちくま文庫） 沢崎順之助との共訳
- 『メタシアター』ライオネル・エイベル 朝日出版社, 1980.11 (エピステーメー叢書) 大橋洋一との共訳
- 『消尽したもの』ジル・ドゥルーズ,ベケット 白水社, 1994 宇野邦一との共訳
- 『また終わるために』ベケット 書肆山田 1997 宇野邦一との共訳
- 『ベケット伝』上下 ジェイムズ・ノウルソン 白水社, 2003 訳者代表
[編集] 参考文献
『思い出は身に残り 高橋康也追想録』高橋迪編，中央公論事業出版，2004
