青磁
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青磁(せいじ)は、青磁釉を施した磁器(Porcelain)または炻器(Stoneware)。
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[編集] 青磁釉
1200度以上で焼成される高火度釉で、植物灰を主成分とし、酸化第二鉄(「弁柄(ベンガラ)」とも呼ばれる)を含有する。ボディ(胎)から釉に拡散する鉄の寄与がある場合もある。焼成によって原料の酸化第二鉄を還元することで酸化第一鉄ができ、青~緑を発色した透明ガラスになる。還元の完全さによって、黄色がかった緑から、空色まで発色が大きく変化する。 現在では石灰バリウム釉を基礎釉とし、珪酸鉄を着色剤として使用することで澄んだ青色を得ることができるが、本来の青磁は厚がけした灰釉である。
[編集] 焼成技術上の問題
発色の不安定さから、同時に焼成した器のなかで、欠陥品が多くなりやすい(歩留まりが悪い)ので、「青磁は身代を潰す」とも言われる。 焼く前にかける釉薬の厚さを厚くしないと(2~3ミリ程度)青が発色しないため、釉薬がはがれないように施す工夫や、厚い釉のため器が重くならないように、素地を極端に薄く成形することもある。釉薬の厚みから時間をかけて美しい貫入が多く入る。
[編集] 広義の青磁
「青磁」用語の例外的使用として、クロム青磁と米色青磁がある。米色青磁は、製作法は青磁とほぼ同じだが、酸化炎を使用し、ウイスキー色の透明釉を生成する。 クロム青磁は鉄ではなく、酸化クロムによって青緑から草色に発色させる。クロム青磁は、大量生産の安価な器物やタイルなどに明治以降使用された。
[編集] 類似用語
青磁ではない青~緑色の陶磁器には、次のものがある。
- 緑釉
- 鉛釉をベースにして、銅イオンによって発色する。800度程度で発色する低火度釉。
- 天青
- 微量のコバルト(「呉須(ごす)」とも呼ばれる)を釉にいれて、空色に発色させたもの。
- 蘋果緑
- 高温で焼成し、銅イオンで発色する緑色釉。アップルグリーン。
- 青釉
- アルカリ釉をベースにして、銅イオンで発色させた不透明低火度釉。明るい青に発色する。西アジア、エジプトなどで生産された。中国の出版物で青磁釉を「青釉」と呼ぶこともある。
[編集] 歴史
中国で発達した陶磁器であり、朝鮮半島、日本、東南アジアにも伝播した。殷の時代に遡る灰釉から発展した。青磁と呼ぶことのできる釉が現れるのは、後漢~西晋時代の江南地方であり、越州窯(浙江省)の青磁が有名である。それ以前の灰釉と青磁釉の中間的な釉をもつ陶磁器を「原始青磁」「初期青磁」と呼ぶこともある。
北宋時代後半から南宋時代が最盛期で、耀州窯(陜西省)、龍泉窯(浙江省)、南宋官窯(浙江省)や汝窯(河南省)などが名窯として知られている。龍泉窯は明中期まで生産を続けているが、元以降は輸出用の大型製品が多くなり、良質の原料が枯渇し、明後半には衰退を始める。一方、清朝時代の景徳鎮では、磁器胎の青磁が生産されている。
高麗では、十~十二世紀に、宋の影響下で朝鮮南部で青磁が制作された。象嵌技法に特色がある。灰色を帯びた釉色が多い。
タイでは、十四~十五世紀にスワンカーロク窯を中心に青磁が制作された。日本の青磁は、十七世紀以降である。有田を中心とする磁器胎のもので色絵などと併用したものも多い。