陸軍習志野学校
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陸軍習志野学校（りくぐんならしのがっこう）は、1933年～1945年（昭和8年～昭和20年）まで、現千葉県習志野市泉町にあった帝国陸軍の化学兵器に関する教育を行った軍学校の一つである。
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[編集] 設立
第一次世界大戦では、数々の新兵器が使用され、その非人間性について非難し軍縮を求める声が広がった。その一方で、列強各国はこの新兵器を開発又は防御する研究を奨励し、国家機密のベールの裏で次々に新兵器の開発を進めた。 これら新兵器の中で、最も非人間的だったものが生物兵器・化学兵器である。
陸軍省は昭和7年(1932)12月兵備改善案を発表し、この中で毒ガス防護教育の充実をうたった。翌年、化学戦学校が千葉県の習志野に設置されることが新聞で報じられ、まもなく化学戦学校は「陸軍習志野学校」と正式に命名され、8月1日に開校することとなった。学校名が地名のみなのは、その教授内容を隠したためと見られる。
学校設置の目的は「陸軍習志野学校令」によると、「軍事ニ関スル化学ノ教育並調査研究等ヲ行フ所」とあり、毒ガスの知識を普及し、その使用法や防御法を調査研究する機関であるとしている。一般的に習志野学校は「毒ガス学校」と呼ばれ、毒ガス兵器の開発や実戦を行う機関と思われているが、実際は毒ガスの防御法（後には使用法も）を訓練する学校であり、動物実験は行われていたようだが七三一部隊などのような生体実験が行われたことはないといわれている。
[編集] 組 織
学校創立当時は本部・教育部・研究部・練習部からなる簡素な組織であったが、昭和１０年（１９３５）に材料厰が設置され、１５年（１９４０）には練習隊が教導隊に翌年には教導連隊に拡充されている。その後、施設・組織の拡充は終戦まで続いた。設立当初215名ほどだった人員も、昭和20年(1945)には1357名にまで増大していた。
習志野学校の研究・教育内容も創立時は基礎的なものが中心であったが、日中戦争・太平洋戦争の拡大と共により実戦的なものに変わっていった。それに伴い防御中心であった教育内容も毒ガス戦の実施訓練が中心となり、訓練中・輸送中の事故も相次ぐようになっていった。
ともあれ、習志野学校で教育・訓練を受けた兵隊が、中国大陸に渡り毒ガスを使用し、多くの被害を与え現在でも悲劇を生んでいることは事実であり、習志野学校が日本軍の毒ガス戦の拠点であったことを忘れてはならない。
[編集] 施 設
習志野学校は第１６騎兵連隊の移転後の施設を利用した。その後実験講堂や化学兵器格納庫、ガス訓練室などがつくられていった。昭和１０年（１９３５）には北・東一帯に敷地が拡張され、後には隣接する第１５騎兵連隊後地も習志野学校の敷地となった。この広大な敷地に兵舎や倉庫がぎっしりと建ち並んでいた。
戦後これらの施設は警察署、学校、住宅、保育園などに転用されたが、特に中心施設があった旧騎兵第１６連隊の後地には千葉大学の分院・附属の腐敗研究所などが置かれた。昭和５２年（１９７７）腐敗研究所が千葉市内に移転した跡は樹木が生い茂る空き地となり、財務省(日本)の所管となっている。
最近、旧日本軍の毒ガスが社会問題となり、習志野学校跡地にも関心が集まっている。国の調査によれば、習志野学校材料厰地下には、イペリット・ルイサイト・青酸などの化学物質を埋設したという証言があり、平成１６年（２００４）～１７年（２００４）に国による調査が行われた。その結果、ガス成分・不審物などは発見されなかったが、近隣の自衛隊習志野駐屯地内の調査が引き続き行われている。
[編集] 終 焉
昭和20年、終戦を迎えたとき学校施設は空襲も受けず、ほとんど無傷のままだったが、降伏と同時に校内では文書や設備の破壊・焼却が行われた。米軍が学校施設に入った日付ははっきりしないが、兵器・資材・施設の引き渡しは整然と行われた。この直後に学校幹部は米軍から学校史の作成を命じられ、翌年残った資料とともに米軍に接収された。後に習志野学校関係者の手で『陸軍習志野学校』が編纂されたが、これは当時の関係者の記憶をたよりに編纂されたものである。
なお、当時の関係者の証言によると、学校に残っていた毒ガス兵器については、太平洋への海洋投棄と米軍の接収によってほとんどが処分されたということである。ただ、一部を学校周辺で処分したという話もある。
戦後、銚子沖で漁網にかかった毒ガス兵器により漁民が被害を受けるという事件が発生したが、この毒ガス兵器が習志野学校が海洋投棄したものではないかといわれている。
[編集] 平林巌と習志野原の開拓
平林巌は、盛岡高等農林学校（現岩手大学）を出て、終戦時に予備仕官として習志野学校にいた。平林の兄は八ヶ岳山麓を開墾し野辺山農場を経営しており、このことが平林を習志野開拓に駆りたてたと言われている。
終戦直後の昭和２０年（１９４５）８月１７日、横山教導連隊長から習志野学校の職員・生徒に対して、習志野原を開拓し新農村を建設し新生日本の復興に寄与するようにとの話があり、この話に感銘を受けた平林巌は、２１日単身新宿三越にあった農地開発営団に乗り込み、習志野原開拓に関する全権を得ることに成功する。
９月１１日には鍬入式が行われ、ここに習志野原開拓の歴史の幕が開いた。全国から入植者を募った結果、軍関係者や外地からの引揚者が多く応募した。当初、開拓団の中心は平林巌を中心とした旧習志野学校関係者で、集団農場方式の開拓を目指したが、やがて米軍による開拓地の接収や農地開発営団の解散などもあり、習志野学校関係者の影響力は失われ、農地は分割して個人所有となった。
開拓団は後に帰農組合となり、これが後に分裂し南北の習志野開拓農業組合となり、昭和４５年に南の組合が、昭和４７年には北の組合がそれぞれ解散し、ここに習志野開拓は歴史の幕を閉じた。
[編集] 参考文献
- 『陸軍習志野学校』（１９８７） 陸軍習志野学校史編纂委員会 編
- 『習志野開拓史』（１９５４） 平林巌 著
- 『習志野市史 第１巻 通史編』（１９９５） 習志野市教育委員会 編
[編集] 関連項目
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