阪神西大阪線
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西大阪線(にしおおさかせん)は兵庫県尼崎市の尼崎駅から大阪府大阪市此花区の西九条駅までを結ぶ阪神電気鉄道の鉄道路線。
阪神本線沿線から大阪市西部へのバイパス路線でもある。尼崎~大物間は阪神本線と並行している。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):阪神電気鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):尼崎~西九条間 6.3km
- 軌間:1435mm
- 駅数:7駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線(尼崎~大物間は工事のため単線運転中)
- 電化区間:全線電化(直流1500V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
[編集] 延伸区間(建設中)
- 管轄(事業種別):阪神電気鉄道(第二種鉄道事業者)、西大阪高速鉄道(第三種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):西九条~近鉄難波間 3.8km(建設キロは3.4km)
- ※営業キロとの差分0.4kmは近鉄難波駅構内の引上線として完成済みの分
- 軌間:1435mm
- 駅数:4駅(西九条駅を除き、近鉄難波駅を含む。新設は3駅)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線電化(直流1500V)
[編集] 運行形態
かつては本線に直通する西大阪特急が運転されていたことがあったが、現在は本線に直通する列車はなく、線内折り返しの普通列車のみが運転されている。しかし、後述の延伸工事の完成後は、再び本線への直通運転が復活し、近鉄奈良線へも直通運転が実施されることになっている。
福~伝法間の新淀川橋梁は高さが低く、両岸の堤防を切り欠いて線路が敷かれている。このため、堤防部分には水防鉄扉が設置されており[1]、新淀川の増水時や、台風接近による高潮の恐れがある場合には、この鉄扉が閉鎖されて線路をふさぎ、全線が不通となる。これは近鉄との相互乗り入れが実現すると運行上の大きなネックとなりかねないため、橋梁自体の杠上工事が検討されている。但し、新淀川河口近くの橋梁(新淀川を跨ぐ鉄道用の橋梁としては最も下流部に位置する)は長大であり、工事費用が高額となるため、具体的な計画策定には至っていない。
以前は神崎川や左門殿川の橋梁にも同様の水防鉄扉があったが、これらは既に杠上工事および前後区間の高架化が完了して新たな橋梁に架け替えられており、増水などによる不通の原因とはなっていない。
[編集] 西大阪特急
前述の通り、1965年9月から1974年11月まで西九条~元町間(神戸高速鉄道開業の1968年以降は三宮間)に西大阪線・本線直通で運行されていたのが「西大阪特急」(「N特」とも呼ばれた)である。
大阪市西南部から神戸への短絡ルートを作る目的で設定されたが、西九条駅が都心でない不便な位置にあったことなどから利用が低迷し、2・3両編成の電車がガラ空きで走っているのも珍しくない状態が続き、設定からわずか9年で廃止された。本線では、梅田~元町間を走る特急に上りは後追い、下りは先行するダイヤとなっていた。
- 運行時間帯・間隔
- 9時半から16時まで12分間隔で西九条・元町(後に三宮)両駅を発車した。
- 所要時間
- 西九条~三宮間を25分で結んでいた。
この西大阪特急には、列車選別装置導入時に“N”の種別記号が付与された。これは、西大阪特急廃止後は長らく使われなかったが、時を経て快速急行が登場した際にこの種別の記号として復活した。
[編集] 歴史
西大阪線は当初、伝法線と呼ばれ阪神間の高速新線(第二阪神線)の一部として計画された。尼崎駅から伝法駅を経て阪神本線の野田駅を結び、阪神本線のバイパスとする計画だった。その後西九条駅までの計画に変更され、1964年に西大阪線として開業している。
- 1924年(大正3年)1月20日 伝法線として大物~伝法間が開業。
- 1924年(大正3年)8月1日 伝法~千鳥橋間が開業。
- 1928年(昭和3年)12月28日 尼崎~大物間が開業。
- 1964年(昭和39年)5月20日 西大阪線に改称。
- この年の3月22日に大阪環状線の全線複線化が完成し環状運転が開始されている。
- 1964年(昭和39年)5月21日 千鳥橋~西九条間が開業。
- 1965年(昭和40年)9月 西大阪特急を運転開始。
- 1967年(昭和42年)11月12日 架線電圧を600Vから1500Vに昇圧。
- 1974年(昭和49年)12月1日 西大阪特急を廃止。
- 1978年(昭和53年)12月27日 全線を軌道法に基づく軌道から地方鉄道法に基づく鉄道に変更。
- 1994年(平成6年)2月 大物~福間が高架化工事のため単線化。
- 1995年(平成7年)1月17日 阪神・淡路大震災で不通に。翌日運行再開。
- 1998年(平成10年)9月26日 高架化工事完成により大物~福間が複線に復帰。
- 2003年(平成15年)7月26日 尼崎駅改良工事に伴い尼崎~大物間が単線となる。
[編集] 西大阪延伸線計画
西九条駅から先、近鉄難波駅までの延伸が計画され、現在建設中である。西九条駅から高架で大阪環状線と安治川を乗り越し、九条付近から近鉄難波駅までが地下線となる。
[編集] 建設の経緯
太平洋戦争後、阪神本線の野田駅から難波を経て近鉄の鶴橋駅を結ぶ路線が近鉄と共同で計画されたが、市内交通の公営運営主義(市営モンロー主義)を採る大阪市が反対し、大阪市は対抗して同ルートを採る地下鉄5号線(千日前線)の建設計画を立てた。そこで阪神電鉄と近鉄は、阪神電鉄が持つ伝法線西九条延伸計画を近鉄が建設する難波線の近鉄難波駅まで延伸する計画に変更した上で、1948年9月に特許申請した。1959年2月に軌道法による特許を取得。1964年5月には西大阪線として西九条駅まで開業し、1970年3月には近鉄難波線も開業した。
1967年8月から西九条~近鉄難波間も用地買収に取り掛かったが、九条商店街などが西大阪線の延伸によって町が分断されることや、神戸・難波方面に買い物客が逃げることを懸念して反対し、計画は頓挫してしまった。その後、阪神電鉄は本線の需要伸び悩みや建設コストの高騰で、自社単独での建設には消極的になっていく。付近では「もぐれ阪神」という看板を見掛けるが、これは重層高架の西九条駅から高架橋が伸びるのに伴う騒音を憂慮し、九条手前からの地下化を要求する運動である。しかし、現実問題として、安治川を越した西大阪線が九条駅手前で地下へ向かおうとすれば、安治川から九条駅まで700mしかないために相当な急勾配を強いられ(地下鉄九条駅は高架線)、急勾配対応のブレーキを備えた近鉄奈良線車両はともかく、阪神車両の走行に問題が生じるので、実現は困難である。
ところが、21世紀に入ってから工事に反対していた商店街は衰退傾向を打破するために延伸を期待するようになり(これには近隣に大阪ドームが開業したことが影響している)、さらに大阪市西部地域の活性化策が検討されるようになったことなどで、再度脚光を浴び始めた。このため施設の建設・保有と運営を別会社が行う上下分離方式で事業が進められることになり、建設主体として西大阪高速鉄道が設立された。なお、同社には大阪市も出資しているが、かつて同計画に強硬に対抗していた大阪市が一転して阪神電鉄に協力した背景には、大阪市が出資するものの経営が芳しくない大阪ドームでの阪神タイガースの試合数を増やしてもらおうとの思惑もあるといわれる。2003年1月23日には工事施行認可が下り、同年10月7日から着工された。
[編集] 開業後の予定など
この延伸線は大阪ドームが開業したこともあり、最初期の計画ルートと比べ大阪ドーム寄りに変更されたため、当初計画より500m程延び、大阪ドーム近くにも駅を設けることになった。工事は鋭意進められており、2009年春の完成を目指している。完成後は阪神尼崎駅・近鉄難波駅を介する形で、阪神本線~阪神西大阪線~近鉄難波線~近鉄奈良線の相互直通運転が予定されている。これにより阪神地域から大阪ミナミの繁華街である難波・道頓堀、さらに奈良県方面へのアクセスが大幅に改善されることが期待されている。
新設される各駅はいずれも地下駅で、プラットホームは島式となる予定である。このうち汐見橋駅には近鉄方面からの列車の引き上げ線が設けられる。ちなみに、延伸区間は全列車が各駅停車となる。
また、西大阪延伸線の開業に併せて阪神電鉄では1000系を新造し2006年度から順次導入する予定である。使用車両は阪神・近鉄ともオールロングシート車の予定で、近鉄のL/Cカーはロングシートにして運用する。
西大阪延伸線が開業すれば近鉄名古屋駅から山陽姫路駅まで私鉄だけで線路が1本に繋がることになる。
[編集] 駅一覧
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
尼崎駅 | 0.0 | 阪神電気鉄道:本線 | 兵庫県 | 尼崎市 |
大物駅 | 0.9 | 阪神電気鉄道:本線 | ||
出来島駅 | 2.3 | 大阪府 | 大阪市西淀川区 | |
福駅 | 3.3 | |||
伝法駅 | 4.8 | 大阪市此花区 | ||
千鳥橋駅 | 5.5 | |||
西九条駅 | 6.3 | 西日本旅客鉄道:大阪環状線・桜島線(JRゆめ咲線) | ||
延伸区間(建設中) | ||||
九条駅(仮称) | - | 大阪市営地下鉄:中央線(九条駅) | 大阪府 | 大阪市西区 |
岩崎橋駅(仮称) | - | 大阪市営地下鉄:長堀鶴見緑地線(大阪ドーム前千代崎駅) | ||
汐見橋駅(仮称) | - | 南海電気鉄道:高野線(汐見橋線)(汐見橋駅) 大阪市営地下鉄:千日前線(桜川駅) |
大阪市浪速区 | |
近鉄難波駅 | 10.1 | 近畿日本鉄道:難波線(直通予定) 大阪市営地下鉄:御堂筋線・四つ橋線・千日前線(難波駅) 南海電気鉄道:南海本線・高野線(難波駅) 西日本旅客鉄道:関西本線(大和路線)(JR難波駅) |
大阪市中央区 |
- 延伸区間の接続路線などは予定のもの。
[編集] 参考文献
- 佐藤信之「鉄道・軌道プロジェクトの事例研究 23 西大阪高速鉄道と阪神西大阪延伸線関連工事」
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2003年10月号 No.444 p125~p127
- 久保田晃司「2008年度完成予定 西大阪延伸線の概要」
- 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2004年3月号 No.743 p98~p102