航空券
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航空券(こうくうけん)とは、旅客機に搭乗する際に必要な乗車券の一種で、航空会社の運送約款に基づき乗客に対して発行される有価証券である。航空券には搭乗する者の氏名、搭乗する区間、便名、座席等級、適用する運賃金額、有効期間等が記載されている。
航空券は、航空機に搭乗する際はチェックインという手続により搭乗券といわれる証票に換える必要がある。搭乗券には航空券に記載されている事項のほか座席番号や搭乗ゲート番号等が記載される。国内線の航空券は航空券と搭乗券が一体になったものが使用されている。
航空券と搭乗券は言葉が似ており最近は一体型のものもあるためよく混同されるが、航空券は英語でAir Ticket(Airline Ticket、Passenger Ticketともいう)というようにチケットすなわち切符である。これに対して搭乗券はBoarding Passといい、パスすなわち通行証である。
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[編集] 航空券の特徴
陸上交通機関の乗車券と違い記名式であることが特徴で、券面に記載された者以外は使用することができない。名義を変更することもできない。また記載された区間以外には使用することができない。一つの旅程で航空券が複数枚ある場合は順序どおり使用しなくてはならない。逆行使用(たとえば「東京――>大阪」の航空券を「大阪――>東京」の便に使用すること)も出来ない。逆行も含め搭乗区間を変更したい場合は手数料や差額運賃を支払っての再発行手続が必要になるが、適用されている運賃によっては払い戻しも含めて一切変更が出来ない場合もある。
便名は、適用される運賃により、航空券発券時に必ず指定して記載しなくてはならない場合と指定しなくてもよい場合があり、また便名を記載した場合でも、便名を変更できないもの、自社便に限り変更できるもの、他社便を含めて変更できるものと様々な種類がある。
一般に普通運賃を適用した航空券は変更に関して自由度が高いが、割引運賃を適用した航空券は割引の度合いに反比例して自由度が低下する。
[編集] 航空券の発券
航空券は航空会社のほか旅行会社でも発券される。どこで発行されたかは航空券の券面に記載されている。旅行会社での発券は、国内線の場合は航空会社と代理店契約を締結した旅行会社でおこなわれる。国際線の場合は航空会社と旅行会社の数が膨大なので、各国ごとに国際航空運送協会(IATA)によるBSP(Bank Settlement Plan)とよばれる銀行集中決済方式を取っている。日本でいえば、BSP JAPANに加盟した航空会社の航空券をBSP JAPANが公認した旅行会社で発券し、決済はみずほ銀行を通じて行なわれる。この旅行会社のことをIATA公認代理店という。また一部の外国の航空会社では、BSP JAPANを通さずに直接日本の旅行会社と契約して発券を委託している場合もある。国内線も国際線も店舗を指定しての契約・公認なので同じ旅行会社でも航空券が発行できる店舗とできない店舗がある。
[編集] 航空券の種類
手書き券と自動化券がある。自動化券は航空会社の予約コンピュータシステム(CRS)と連動しており、CRSに組み込まれた発券機により発券される。現在では海外のごく一部を除き大半が自動化券である。自動化券には下記のような種類がある。
[編集] TAT券
Transitional Automated Ticket。裏が赤いカーボン紙になっている2枚つづりや4枚つづりの航空券。以前は国際航空券の主流であった。日本でも航空会社各支店での発券に一部利用されている。
[編集] ATB券
Automated Ticket & Boarding Pass。航空券と搭乗券が一体になったもの。裏面に黒い磁気ストライプが入っている。現在の日本では国内線・国際線ともこれが主流である。
- 国内線
航空会社によりサイズに若干の違いがある。空港でチェックインすると右側の半券が搭乗券になり、搭乗ゲートの自動改札機により左側の航空券は回収される。
- 国際線
国内線に比べて横長で、縦8.3センチ×横20センチがIATAの標準規格となっているため世界共通のサイズである。左側が航空券、右側が搭乗券であるのは国内線と同様だが、国際線では搭乗券は各社とも独自規格のものを使用しているケースが多く、この券を搭乗券として使用している航空会社は少ない。
[編集] 電子航空券(Eチケット)
Electronic Ticket。航空券に必要なデータは航空会社のコンピュータに電子的に記録しておき上記のような紙の航空券は発行しない。必要なデータは航空券の代わりに「旅程表」「確認書」「お客様控え」などとよばれる(各社により呼び名が違う)用紙に印字して顧客に渡される。中には用紙を使用せずPDFにして電子メールの添付ファイルとして送付することができる航空会社もある。空港では顧客はこの用紙を航空会社に提示して搭乗券を受け取る。航空券の購入のために航空会社、旅行会社に出向く必要がない上、紛失や盗難の心配がないので顧客にとってもメリットが大きいが、それ以上に、航空会社にとって航空券用の紙が不要になるため莫大な経費の節減になるというメリットがある。旅行会社にとっても(有価証券である)航空券の保管・管理という業務から解放されるメリットは大きい。IATAでは国際線の航空券を2007年中に完全に電子航空券化するという方針を発表している。
なお、割引航空券、あるいは格安航空券、等という呼び名があるが、適用されている運賃の種類に違いがあるだけで、航空券そのものの種類(外観)に違いがあるわけではなく、上記のいずれかの航空券が使用されている。
[編集] 航空券の概要
普通航空券の場合、発券されただけであると発券日の翌日より90日間が有効期限となっている。しかし、航空運賃の自由化に伴い「早割」「特定便」等の割引運賃が適用される場合には、その便・座席のみが有効とされる。
国内線飛行機を利用する場合、従来は旅行代理店や航空会社の営業所などで空席状況を確認して航空券を購入することがほとんどであったが、日本の航空会社では2002年頃から、航空会社のウェブサイトでのインターネット予約・決済が拡充され始めており、この場合では航空券が発券されない「チケットレスサービス」の利用が可能。
- ※この場合の支払手段は、前述の一部高速バス同様に、予約後にコンビニエンスストアで運賃を支払い、レジから印字される控え証を航空券の代用とするか、クレジットカード払いを選択した場合は、搭乗当日などに空港のカウンターやチェックイン機などで予約番号を入力、あるいは予約・購入時に利用したクレジットカードをチェックイン機に挿入するなどして航空券兼搭乗券を受け取る形を取る場合が多い。念のために予約画面の印刷を行うと良い。
国際線航空券についても、従来は旅行代理店や航空会社の営業所などで購入するケースが主流だったが、最近では外資系も含めた航空会社がインターネット予約のチケットレスサービス販売に力を入れており、またそちらの方が若干安くなるように料金を設定している。 なお、いわゆる「格安航空券」と呼ばれるものには、航空会社が正式に発行するもの(PEX)と、団体用航空券を解体して販売するものとがある。また、普通運賃では購入時に利用便を予約する必要がない(OPEN)が、大半の格安航空券では購入時に利用便を予約しなければならない(FIX)ほか変更や途中降機(ストップオーバーとも言う。24時間以上目的地以外の都市に滞在すること。)、オープンジョー(往路の到着地と復路の出発地が異なること。あるいは往路の出発地と復路の到着地が違う場合なども含む。)などに制限がある。
[編集] 航空運賃・座席等級との関係
国内線と国際線で運賃形態が異なる。
日本の国内線の場合は、鉄道と同様に、エコノミークラス(普通席)を利用するための運賃となっている。便によってはさらにデラックスな座席(ANA:スーパーシート、JAL:クラスJ)を設置している場合があり、追加料金を支払って利用する形になる。ただしANAは2004年12月よりスーパーシートの運賃を普通席とは別体系のものに変更し、2クラス制を採用している。
国際線(あるいは外国での国内線)の場合は、長距離フェリーなどと同様に等級が設定されることが多い。
- ファーストクラス(F)- 日本-ヨーロッパ間で通常運賃で往復100万円以上する。また、近年ビジネスクラスのサービスが向上していることなどもあり、あまり利用されない場合が多く、近年では廃止する航空会社も少なくない。
- ビジネスクラス(C) - 企業の管理職クラス以上の出張などに用いられる。日本の鉄道車両のグリーン車より座席幅やシートピッチが大きく設定されている。日本-ヨーロッパ間で通常運賃で往復50万円以上だが、近年では割引運賃も設定されつつあり、一般旅行者にも比較的利用できるようになってきた。
- エコノミークラス(Y)- ツーリストクラスとも呼ばれる。鉄道でいう普通席で、一般旅行ツアーなどにはこれを利用。座席のシートピッチは日本の特急普通席よりも狭い(日本の鉄道車両では910~1040mm前後、エコノミークラスは800~850mm前後)。後述する格安割引運賃が多く設定されているが時期による変動が激しく、安い時期では成田-ヨーロッパ間で往復数万円程度と国内線並みの運賃になるが、ピーク時期には通常運賃に近い金額になる。
航空会社・路線によってはファーストクラスがなく、ビジネスクラス・エコノミークラスの2クラスや、エコノミークラスだけの場合も多い。2クラス以上の等級分けがされた場合、航空運賃(および座席スペースや機内食などの付帯サービス)に格差が設定されている。
いずれもキャンセルを見越して予約を多めに受けることが多く、予約した便の席がない場合がたまにある(オーバーブッキング)。この場合、運がよければ上級席へ回されることがあるが、後続の便に回されるか、ひどい場合は翌日の便に回されることがある(この場合、航空会社でホテルの手配と宿泊費の負担を行う)。
航空券については、日本では1990年代以後の国内外航空運賃の自由化で、運賃体系がかなり複雑になっている。
[編集] 搭乗券
航空機の場合、安全上乗客の管理のため、乗客が便名・座席を指定しなくてはならない。その際、航空券を示すないしは購入するという条件において乗客が便名・座席を予約し、飛行機に乗る際に空港にある航空会社の窓口・カウンター(近年ではリムジンバスのターミナル、空港連絡鉄道の駅などに自動チェックイン機が設置されている。)で航空券と引き換えに発行されるものを搭乗券(とうじょうけん)という。搭乗券自体が航空券とつながって一体化しており、航空券と同一と見なせる場合も多い。