田中吉政
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田中 吉政（たなか よしまさ、天文17年（1548年） - 慶長14年2月18日（1609年3月23日））は、戦国時代・安土桃山時代の武将、江戸時代の大名。諱の吉政の「吉」は壮年期に豊臣秀吉から一字賜ったもので、それまでは長政。通称は久兵衛。官位官職は従四位下、筑後守、兵部大輔、侍従。転封の過程で居城とした近江国・八幡（近江八幡市）、三河国・岡崎（岡崎市）、筑後国・柳川（柳川市）などの現在につながる都市の設計を行い、その評価は現代でも高い。
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[編集] 出自
田中氏は代々近江国・高島郡田中村（現在の滋賀県高島市安曇川町田中）の農家であったといわれる。ただし吉政の出生地については浅井郡の宮部村か三川村（現在の東浅井郡虎姫町内）であると考えられる。これは、三川村に田中吉政の出生伝承が残っていること、彼自身がはじめ宮部村の国人領主である宮部継潤に仕えていること、また吉政の母が宮部村と三川村にほど近い坂田郡国友村（当時有数の鉄砲の生産地。現在の長浜市国友町）の出身であることなどによる。
[編集] 略歴
その後は宮部継潤家中から、目をかけられて羽柴秀吉配下に登用され（天正7年（1579年）ころと推定される）、さらに羽柴秀次（のちの豊臣秀次）の部下につけられた。その後天正13年（1585年）、秀次が秀吉の養子扱いされることになり、近江に40万石を与えられると吉政はその家老となった。このとき同じく秀次付き家老となった中村一氏・堀尾吉晴・山内一豊・一柳直末らはそれぞれ何万石かの禄を与えられて居城を持ったが、吉政は秀次の居城・八幡城にあって筆頭家老格として政務を取り仕切った。吉政によるこの時期の行政に関わる発給文書は非常に多く残っており、その内容から権限の大きさも想像できる。また、信長が築いた安土城下の町を八幡城下に移し、優れた町割を行った。この業績は江戸時代中ごろまでは近江八幡の町の一画に久兵衛町（久兵衛は吉政の通称）と名づけられたことなどによって残っていた。
さらに、天正18年（1590年）には小田原の陣の山中城攻めで功績を挙げ、秀次の配下という身分でありつつ三河・岡崎に7万石の領地を与えられた。吉政は岡崎城の改修を行って、石垣や城壁などを用いた近世城郭にふさわしいものに整備した（天守もこの時期に上げられてたという主張もあるが、異説もある）。また、城下町の整備も積極的に行い、町割を整備して7つの町を堀で囲む田中掘を築造した。また、西側の低湿地の埋め立てを行いった。さらに、本来岡崎の郊外を通っていた東海道を岡崎城下町の中心を通るように変更し、「岡崎の27曲がり」といわれるクランク状の道に整備した。
文禄4年（1595年）、秀次事件によって主君豊臣秀次が自害、多くの家臣も連座したものの、吉政は叱責を受けず、むしろ3万石を加増された。秀吉の死後は徳川家康に接近、慶長5年（1600年）9月の関ケ原の戦いでは東軍に属し、出身地が関が原の戦場に諸将の中で最も近いこともあり先鋒を志願、最前線で西軍の石田三成相手に奮闘した、東軍勝利後も三成の居城佐和山城を搦手から突入して落城させ、伊吹山中で逃亡中の三成本人を捕縛するという大功を挙げた。ただし出身地が近いこともあって吉政と三成は旧知の仲で、護送されていく三成と吉政とが親しく言葉を交わし、吉政は三成のためにニラ粥を与えたという。（三成も捕縛される時、「他の者よりはお前に捕らえられた方がいい」という旨の発言をしたという。）戦後これらの勲功が認められて、筑後柳川に32万石を与えられた。
ただ吉政の出世は三成の口添えやバックアップの部分も大きく、秀次事件で咎めが無かったのも一説、三成の口添えによるものといわれる。さらに関が原戦後の佐和山城攻めで三成の兄と父が切腹する条件で開城して城の者の命を助けるという内容で講和がまとまりかけていたのに、強引に佐和山城に突入し多くの無益な死者を出した一件もあり、三成に対する対応は少々、疑問が残る。
蒲池氏が領主だった頃から柳川は「水都」といわれたが、吉政は柳川に交通のための水路や稲作のための用水路を整備し近代的な街作りを得意とした。水路以外にも柳川と久留米を結ぶ田中街道や柳川と八女を結ぶ街道など陸路の整備にも力をいれた。また、収入の増加を目指して有明海の干拓にも熱心に取り組んだ。
また、吉政は岡崎城主のころからキリスト教に対して寛容で、宣教師たちから西洋の知識を積極的に学んだ。領内のキリスト教信者を保護し、みずからも帰依したと言う。洗礼名はパルトロメヨ。
しかし、慶長14年（1609年）に吉政が没し、後嗣となった田中忠政が男子を残さぬまま死去したために、元和6年（1620年）に改易されてしまった。ただし傍系の親族は他家の家臣となることなどで家系を存続させている。
[編集] 一族
[編集] 親
- 田中重政とされる。
[編集] 兄弟
- 田中清政：左馬允。
- 田中氏次：兵庫助。
[編集] 子
[編集] 参考文献
- 『秀吉を支えた武将田中吉政 近畿・東海と九州をつなぐ戦国史』（市立長浜城歴史博物館、2005年） ISBN 4883252841
- 2005年に市立長浜城歴史博物館・岡崎市美術博物館・柳川古文書館で共同開催された企画展「田中吉政とその時代」の図録として編集されたもの。
