物理吸着
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
分子(吸着質)がファンデルワールス力によって、固体表面に濃縮される現象を物理吸着（ぶつりきゅうちゃく）と呼ぶ。一般に、ファンデルワールス力は、イオン結合や共有結合等の相互作用と比較して 格段に弱い相互作用であるため、物理吸着した分子は加熱・減圧等の操作によって容易に脱着する。
固体がナノレベルの細孔を持つ場合、細孔壁が及ぼす相互作用ポテンシャルが重なり合い、深いポテンシャル場を形成する。この場合は物理吸着であっても、表面に吸着した分子は著しく安定化される。たとえば、0.5nm程度離れた2枚のグラファイト平面にはさまれた二次元ナノ細孔は、窒素分子に対して弱い水素結合程度の安定化エネルギーをもたらす。この強い安定化効果のために、分子がナノ細孔中へと凝集・充填されることになる。 このようなナノサイズの細孔(空間)への吸着は、表面に吸着すると考えるよりも、空間に充填されるという描象の方が適切である。したがって、ナノ細孔への吸着はミクロ孔充填(マイクロポアフィリング)と呼ばれている。これは、吸着科学の主要な研究テーマとなっており、近年、天然ガスおよび水素の大量貯蔵の目的へ向けた多孔体へのマイクロポアフィリングの応用研究が盛んに行われている。
