渋滞
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渋滞(じゅうたい)は、何らかの理由である地点の道路の容量が低下し、その地点より後に自動車の待ち行列が形成され成長している部分を指す(ボトルネック型)。交通工学による、本来の渋滞の定義はボトルネック型のみである。 広義には、自動車のみならず、人の流れ、飛行場の管制待ちの飛行機、インターネットの情報の流れなども含める。
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[編集] 概説
上記の定義によれば、赤信号で発生する車の待ち行列が、どんなに待たされかつ速度が低下していても、次の青で完全に捌ける場合は渋滞とは言わない。しかし、計測の問題と、人間の感覚では待たされイライラした状態が渋滞であると感じるため、自動車交通の場合には必要に迫られ、上記の定義以外に「速度の低下した状態」と「心理的な刺激」による渋滞の定義もなされた。
交通情報表示板などに表示されている渋滞とは、前者の「速度の低下した状態」による定義である。この渋滞と見なす速度の閾値は、道路管理者・交通管理者ごとに異なっている。
「心理的な刺激」による渋滞の定義は、心理学のブロッホの法則により導かれる(物理学に類似の言葉があるが、関係は無い)。
なお渋滞という表現は、非常に誤解され易い。これは下記の事情がある。
- 解説本によく見られる「渋滞には先頭がある」(著者が大学や研究機関の研究者の場合に多い)は、渋滞の定義にボトルネック型を採用したものであり、ある意味正しい。しかし、ドライバーにとってはボトルネックがあるとは気づき難いこと、およびこの定義には当てはまらない速度低下が起こることが有るため、一般のドライバーからの感覚と齟齬が起きる。
- 道路管理者・交通管理者は「速度の低下した状態」の定義を使用することが多く、これも定義がそれぞれ異なる場合が多く、研究者との齟齬が起き易い。
渋滞の研究は、土木工学の一部である交通工学の分野、または待ち行列と限定する場合にはオペレーションズリサーチとなるが、現象論を語る場合には物理学の統計力学の分野でも行われる。
渋滞は非線形性が強く、渋滞になるとき、若しくは解消時は一気に状態が変わり、物理学の相転移の一つの対象として見られる。なお、非線形性が強いとはいっても、カオスが起きているかどうかは、現状不明である。
[編集] 渋滞の原因
渋滞の原因としては、どの定義を選択するかによって解釈が違ってくる。ここでは、ボトルネック型の渋滞と、ボトルネックは存在しない場合で「速度の低下した状態」による渋滞の2通りについて説明する。
[編集] ボトルネック型渋滞
[編集] 主に高速道路で多く発生するもの
- トンネル
- トンネルは視覚的に狭く感じかつ明るさが変化するため、ドライバーがその入り口でアクセルを緩める行為に走りやすい。このため交通容量が低下する。
- サグ
- すり鉢状の地形にある道路では、ドライバーが凹状の底の地点(谷底)に到着して上り坂となったときアクセルを強く踏むタイミングが遅れる。この僅かなタイミングにより速度の低下が起こり、結果的に交通容量の低下が起こる。なお、渋滞時のサグの容量は、非渋滞時の容量に比べて一気に低下する。
- 織り込み区間
- ウィービングともいう。
- 料金所
- 待ち行列理論によれば、料金所の平均サービス率が車の平均到着率以下となると待ち行列が発散する。このことにより起こる渋滞(なお到着率がサービス率より小さい場合には待ち行列が有限であるため、ボトルネック型の渋滞では無く、「速度の低下した状態」による渋滞となるが、ここではボトルネック型の渋滞で説明する)。ETC装着の普及により、解消するとも言われてはいるが、もし料金所の渋滞が無くなったとしても、今度は一般道に接続する交差点で渋滞が発生するとも予想されているため、渋滞の位置をシフトさせるだけとも言われている。
[編集] 一般道路でも多く発生するもの
- (有効)車線数の減少
- およそ、道路とは1車線1時間あたり約1800台の交通容量がある。車線数が減少すると、単純に容量が低下する。
- 路上駐車が存在すると、その部分の有効車線数が減るので、交通容量が低下する。特に交差点付近の路上駐車は交通容量を著しく低下させ渋滞を招くことが多く、都市部における渋滞の多くは交差点付近の路上駐車が原因であるという報告もある。
- 道路工事も車線規制を伴うことが多いので容量が低下し渋滞が発生しやすい。道路工事を夜間に行うことが多いのは、夜間は交通量が少なく、車線規制による渋滞の発生を軽減できるためである。
- 信号機・交差点
- 信号機の存在によって、その道路の交通容量は低下する。例えば、信号の青信号の秒数が30秒、黄信号が0秒、赤信号の秒数が30秒という極めて単純な信号モデルを仮定したとき、青信号時間の比率は30/60=50%となり、交通容量は青時間率が100%のときと比べて約半分となる。信号部の交通容量を増やすには、青信号時間の比率を増やすことが最もコストが安く済む方法であるが、それだけでは渋滞が解消しない場合も多い。その場合、後述するように交差点部の車線数を増やしたり、さらに根本的解決を図るには、コスト高ではあるが、立体交差化することが最も効果的な渋滞対策である。交差点においては、交差点部の車線数が交通容量に大きく影響する。従って、渋滞している交差点の解決方法として、直進レーンを増やしたり、右折レーンの整備をすることは非常に有効である。鉄道駅・商店街付近の道路など、横断歩行者が多い交差点においては、左折レーンを整備して滞留左折車を直進レーンから分離すると、直進方向の交通容量向上に大きな効果を得ることができる。
- 踏切
- 踏切では、列車通過時に遮断するため、交通容量が低下する。特に都市部の踏切は遮断率が高い。さらに日本の法規制では、原則的に遮断されていなくても一時停止が義務付けられているため、踏切の存在自体が信号機同様に、道路容量を低下させる原因でもある。都市部を中心に鉄道を高架化あるいは地下化して踏切を無くす連続立体交差工事が盛んに行われている。
- 橋
- 本来、橋は必ずしも交通容量を低下させるわけでは無いが、都市の道路ネットワークの構造として橋の数が少ないため、どうしても交通需要の集中が起きる。
- 事故
- 本来は交通事故により、車線が閉塞されることにより起きる渋滞である。広義には、火事や天災による車線の閉塞も含める。
- 見物渋滞(わき見渋滞)
- 交通工学の本来の用語ではない。対向車線の事故を見たり、ドライバーが景色の綺麗な場所に見とれたり、火事などの野次馬を行うために車の速度を低下させたり、停止することにより発生する渋滞。
- 天候による渋滞
- 雪などでチェーン規制となった場合、チェーンの着脱のために装着場へ入る車が多くなること、サービスエリア・パーキングエリアなどに強制流入させて滑り止め装着の有無を点検することなどから渋滞の原因になる。また雪、雨、凍結の場合、摩擦係数が小さくなりドライバーが慎重に運転するため、道路容量が低下する。更には、霧や大雨の場合には視界が悪く、低速度で運転せざるを得なく、道路容量が低下する。
[編集] 速度の低下した状態
ボトルネックが見当たらない場合で速度の低下した状態による渋滞には下記の原因がある。下記による渋滞には、明確な渋滞の先頭が見られなく、先頭と思える部分は上流へ向かって移動するという性質を持つ。
- 粗密波の伝播
- 交通量が道路の容量に近い臨界状態にある場合に、ほんの僅かなブレーキランプが後続車のブレーキとして増幅して伝播し、数キロ上流に粗密波が形成される。高速道路で見られる現象であり、理論的には正しいとされているが、データによる検証は途上である。
- 信号機
- 複数の信号交差点が連続である場合、信号機のタイミングによっては、信号機での車の停止により、複雑な発進波と停止波が形成され上流に伝播する。交差点容量以下の交通量であっても、その発進波と停止波により何度も車が発進と停止を繰り返し、平均速度が低下する状態が現れることがある。
- 行楽シーズンなどにおける交通量の突発的な増加
- 大型連休や旧盆あるいは年末年始など帰省客の多い時期のほか、紅葉シーズンやスキーシーズンなどの行楽シーズンにおいて、大量の車が押し寄せることによるもの(ラジオなどでは交通集中による渋滞と表現される)。高速道路で数十キロから、ひどい場合には100キロ以上の大渋滞になる。
[編集] 関連項目
- VICS
- 交通情報
- コンジェスチョン・チャージ (渋滞税)
- 輻輳(通信網におけるトラフィックの高い状態)
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