朝鮮語の呼称問題

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朝鮮語の呼称問題（ちょうせんごのこしょうもんだい）とは、日本の日本語における朝鮮語の呼び方に関する問題である。

第二次世界大戦中までは朝鮮語という呼称のみが存在したが、戦後に朝鮮語を公用語とする朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）と韓国（南朝鮮。現在はあまり使用されない）が並立し、それぞれの公用語を別の名称で呼び始めたことが問題の発端となった。北朝鮮における「조선어（チォソノ）＝朝鮮語の意」という呼称も韓国における「한국어（ハングゴ）＝韓国語の意」という呼称も共に漢字語であり、日本語の「朝鮮語」と「韓国語」に対応することがあるため、日本語で「朝鮮語」と呼ぶのは中立性の観点から問題が生じたものである。

現状としては「朝鮮語」が言語学的な用語として、「韓国語」が韓国と言う名前が日本では一般に南朝鮮（韓国）のみを指しており、韓国で用いられる朝鮮語という意味の一般用語として用いられることが多く、韓国・朝鮮語のような並列表記もあるが、これもどちらを先にするかという問題があってなかなか打開策とは成り難い。呼称に関する議論は現在も継続中である。

[編集] 朝鮮語

この言語が使われてきた地域が歴史的に「朝鮮」半島と呼ばれてきたことから、学術および公文書では「朝鮮語」と呼ぶのが慣例となっている。学術以外の場においても第二次世界大戦後長らくは「朝鮮語」という呼称が一般的であった。李氏朝鮮の頃の朝鮮語は李朝語または中期朝鮮語と言う。

[編集] 韓国語

韓国との交流が深化するにつれ、韓国で用いない朝鮮語ではなく、「韓国語」という表現が一般化してきている。それにあわせて教育機関で開講される語学としても一部「韓国語」という呼称が採用されている。

[編集] ハングル語

日本放送協会が語学番組を作ろうとした際、朝鮮総連が朝鮮語、民団が韓国語という呼称を用いることを主張したことで対立し、妥協の産物として文字名である「ハングル」を用いた「アンニョンハシムニカ～ハングル講座～」という講座名が用いられることになった。ハングルを用いた間接表現はNHKの語学講座の他にも国際放送（NHKワールド・ラジオ日本）で用いられている。また、NHKのテレビやラジオでのハングル講座やハングル会話の中では朝鮮語ないし韓国語という表現は使われず、「この言語」という表現が使われる（例: 「日本語の『もしもし』に当たる表現は、この言語では『ヨボセヨ』です」）。

ハングルは文字の名称であり、言語の名称ではないため、朝鮮語を「ハングル」もしくは「ハングル語」と呼ぶことは誤っているのである。何故ならば、日本語を「カタカナ語」あるいは「ひらがな語」と呼ぶことと同じだからである。一方でこのような名称が中立的な名称として用いられることに対する肯定的な意見も存在する。言語名に関する定まった規則はなく、慣習的に民族名、国家名、その言語で人間を表す単語（アイヌ語など）などに「～語」をつけて言語名とする慣例が存在するにすぎない以上、文字名に起源をもつ言語名に前例がないというだけでは「ハングル語」という名称を「誤っている」という根拠にはならないという主張である。

「ハングル語」が中立的であるという主張に対する反論として、「ハングル」を北朝鮮では「チョソングル＝朝鮮文字」と呼称することから、この表現は韓国寄りであるとの意見もある。何故ならば、ハングルの意味は「ハン＝偉大、大いなる」「グル＝文字」という意味だが、この「ハン」が韓国・朝鮮語における漢字「韓」の読みが「ハン」であるため、韓国寄りになることを恐れた北朝鮮側が「チョソングル」と呼ぶようになったのである。

[編集] コリア語

朝鮮の南北分断後、「朝鮮語」「韓国語」という表現を避けるために、中立的な言語名称として、朝鮮の英語名称Koreaを用いた「コリア語」（코리아어）という表現が一部で新たに使用されるようになった。日本では、1970年代後半に「コリア語学科」が初めて大学で開設され、現在でも一部大学でこの名称が用いられている。また、南北朝鮮・中国におけるハングルのコンピューター処理の標準化のために1994年から開かれている学会も、「コリアン・コンピューター処理国際学術大会」（코리안 컴퓨터처리 국제학술대회）という名称を用いている。