日出処の天子
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『日出処の天子』(ひいづるところのてんし)は、厩戸王子(聖徳太子)を主人公とする山岸凉子作の漫画作品である。
目次 |
[編集] 概要
厩戸王子(厩戸皇子)の少年時代から、摂政になるまでを描く。白泉社の月刊少女マンガ雑誌「LaLa」に1980年4月号~1984年6月号まで連載された。略称は「ずる天」、「ひず天」
聖徳太子には、一般に知られている話とは別に、『聖徳太子伝暦』などに残された、超能力を持っているとでもしなければ説明できない話が存在する。本作においては、こうした伝承、伝説を積極的に採用し、聖徳太子を天才かつ超能力の持ち主で、あまりの神童ぶりと超然とした態度から母親に怖れられて受け入れられず、一方で同性に懸想して思い悩むなどして苦しみを抱えた、斬新な聖徳太子像を描き出している。
話は、厩戸王子と蘇我毛人(蘇我蝦夷)を中心に展開する。厩戸と毛人は、彼ら自身にもわからない理由で惹かれあい、この理由を問う形で、また、歴史の表と裏への彼らの関わりを描きながら、話が発展していく。
1983年(昭和58年)度、第7回講談社漫画賞少女部門受賞。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
本作は、飛鳥時代を背景に、政治的策謀をめぐらす厩戸王子に毛人をはじめとする蘇我家の人々や、崇峻天皇・推古天皇らが翻弄される形で話が進んでいく。
毛人は王子の並はずれた知性を尊敬し一臣下として接するが、王子にとって毛人は自分の持つ超能力を共有できる唯一の不可欠な存在であった。しかし毛人は無意識下でしか超能力を引き出せず、自分の能力を自覚していない。
王子の毛人への思いはやがて愛へと変わってゆき、毛人も自分が王子に惹かれていることを感じるが、やがて石上神社の巫女であった布都姫と出会い、恋に落ちてしまう。
王子はこれを好まず策謀をめぐらして布都姫を退けようとするが、毛人に気づかれ、いままでの諸事に王子の策略があったことを知った毛人の心は王子から離れる。
作品は毛人に退けられた厩戸王子が孤独のなかに残される一方、政治的実権を握り、遣隋使呼を発案するところで終わる。
なお本作では、山背大兄王は、蘇我毛人と実の妹の刀自古との間にできた不義の子を、厩戸王子がその事情を知りながら自分の子として育てる、また蘇我入鹿は毛人と布都姫との間にできた子という設定で描かれている。 おおまかなあらすじは以下の通り
- 蘇我毛人と厩戸王子の出会い
- 宅部王子と物部守屋の三輪君逆殺害、厩戸王子の忠告で蘇我馬子は中立を保ち、政治的に有利な立場に立つ。
- 物部合戦での奇跡
- 物部合戦で四天王を呼び寄せ危地を脱する
- 四天王の矢で物部守屋を射殺す(このストーリーでは淡水が強弓を使って物部守屋を射殺す)
- 厩戸王子と大姫(菟道貝鮎皇女)の婚礼
- 厩戸王子の雨乞いが成功
- 蘇我馬子が長谷部大王(崇峻天皇)を暗殺
- 蘇我毛人が厩戸王子の自分への想いに気づくが布都姫への想いのため王子を振りきる
- 厩戸王子が膳臣美郎女を妃とする。蘇我馬子は厩戸王子の蘇我氏への非服従に気付く
- 額田部大王(推古天皇)の即位とともに厩戸王子が摂政になり蘇我氏との対立が決定的になる
- 厩戸王子が遣隋使を派遣
[編集] 登場人物
[編集] 王子の血縁(池辺の宮)
()内は王子を基準
- 田目王子(異母兄)
- 佐富女王(異父妹)
[編集] 蘇我氏
[編集] 幸玉宮
[編集] 物部氏
- 布都姫(元石上斎宮)
- 白髪女(布都姫の侍女)
- 物部守屋
- 十市郎女(馬子の妻)
[編集] その他
[編集] 用語
- 郎女(いらつめ)
- 女の子。
- 郎子(いらつこ)
- 男の子。
- 采女(うねめ)
- 後宮に仕える侍女。
- 女儒(めのわらわ)
- 采女見習いの女の子。
- 舎人(とねり)
- 古代、天皇・皇族の身辺で御用を勤めた者。
- 史(ふひと)
- 学問を司る人。
- 禊
- 体を洗い清める事。
- 朝参
- 当時は、午前4時に門の外に並び、日の出とともに入廷して正午には退出した。
- 大后(おおきさき)
- 大王の第一の后。
- 大王(おおきみ)
- 天皇のこと。
- 大兄
- 次期大王の称号。現在の皇太子に当る。
- 花鎮蔡(はなしずめのまつり)
- 春、花が散る時の疫神を鎮めるため供物を捧げ、祓いなどをする宮廷行事。
- 近親結婚
- 当時、異母子は母方の里に離れ住んでおり、異母兄弟なら婚姻するすることが出来た。
- また、一族の結束や権力を強めるためにも必要不可欠であった。
- 家督相続
- 当時は、長子相続よりも兄弟相続のほうが有力だった。
- 夢殿
- 六角堂。この物語、特に厩戸には欠かせない場。
- 湯人
- 王子の身の回りの世話をする使用人。
- 花朗(ふぁらん)
- 新羅の上流階級の青年で作られた宗教的組織。
- 伊香郷(いかご)
- 十市の里、十市と刀自古はこの地に住むことになる。
- 新嘗祭
- 収穫祭。
- 豊原(とゆら)
- 蘇我馬子の居住地。
[編集] 馬屋古女王
本編の続編に当る短編マンガ。物語の主役は王子や毛人の子どもたちに移る。
王子と美郎女が突然亡くなったところから物語は始まる。 刀自古と厩戸王子の子、山背大兄王子は、両親の葬儀に出席させるため、実父の厩戸によって生まれてから15年間軟禁状態であった馬屋古女王を解放する。驚くべきは馬屋古の容姿が厩戸に酷似していたことだ。しかし彼女が現れてから上宮王家に不穏な兆しが見え始めたのだった。 かつて上宮王家と謳われた厩戸一族の滅亡を描く。
厩戸と毛人は、最終的に結ばれる事はなかった。そして、厩戸は国の実権をにぎる。馬屋古と山背は、最後には結ばれるのだが、その結果、滅亡の道をたどる事になる。本編の布都姫は愛を得た代わりに斎宮としての力を失った。「何かを得ると何かを失う」山岸作品に多いテーマである。
[編集] 登場人物
- 馬屋古女王(うまやこのひめみこ)
- 山背大兄王(やましろのおおえのおうじ)
- 蘇我入鹿(そがのいるか)
- 舂米女王(つきしねのひめみこ)
- 難波王(なにわのおおじ)
- 佐富女王(さとみのひめみこ)