既存添加物
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既存添加物(きぞんてんかぶつ)とは、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成7年(1995年)法律第101号)附則第二条第4項に規定される既存添加物名簿に収録された食品添加物のこと。平成8年(1996年)4月16日厚生省告示第120号で名簿の告示が行われた。
既存添加物は2004年12月24日現在、第1号から第451号まで収録されているが、一品目が消除されているので、実質450品目である。ただし、これらの中には「香辛料抽出物」や「高級脂肪酸」等、原料により多数の製品に分かれるものもある。
既存添加物は食品添加物のうち、今まで習慣的に使われてきて危険性が無いとされる物質が収録されている。そのため、食品衛生法第十一条に基づいて成分規格や使用基準が定められた食品添加物(指定添加物)と異なり、規格基準は定められていない。そのため、基本的に使用対象や使用量は限定されない。しかし、添加物として使用した場合、必要に応じてその旨を製品に表示する必要がある。名簿収録物質は定期的に見直しが行われており、使用実績の無い添加物は積極的に消除される傾向にある。
[編集] 既存添加物に関する誤解
既存添加物は以前は天然添加物(てんねんてんかぶつ)と呼ばれており、これに対して、指定添加物は合成添加物(ごうせいてんかぶつ)と呼ばれることが多かった。
実際に、既存添加物には天然物や天然物から抽出された物質が多く、指定添加物には化学的合成品が含まれている。また、告示の備考に「第1号から第451号までに掲げる添加物には、化学的手段により元素又は化合物に分解反応以外の化学反応を起こさせて得られた物質は含まない。」とある。しかし、天然添加物という呼び方は既存添加物の実態に合わない表現であるため、行政や学会、産業界では使われないものである。
また、「天然」という呼び方のせいか、「既存添加物は指定添加物より安全である」と誤解されることが多い(いわゆる天然信仰)。確かに、指定添加物は使用目的や使用量の基準が定められているものが多いのは事実である。しかし、指定及び使用規準の制定にあたっては様々な試験を行ってその安全性を確認しており、使用規準を遵守している限り危険性は無いといってもよい。それに対し既存添加物は、今まで習慣的に使われてきたもので事故が報告されていない(いわゆる「食経験が豊富である」)というだけで収録されており、安全性についての科学的な裏づけはされていない。
現在、厚生労働省は既存添加物についても順次、食品安全委員会において食品健康影響評価を行っている。その結果、既存添加物の一つであるアカネ色素は遺伝毒性及び腎臓への発がん性が認められたため、2004年(平成16年)7月5日に名簿から消除された。
[編集] 付記
食品添加物には製造用剤等も含まれるため、既存添加物の中にも食品とは無縁と思われるようなものや品名からは物質が想像できないようなものも存在する。
- ニガヨモギ抽出物(主な用途:苦味料 フランスのリキュールであるアブサンに含まれる。欧州ではニガヨモギに含まれるツヨンが向精神作用を持つため、一時使用禁止になったが、日本では問題にならなかった。)
- 粗製海水塩化マグネシウム(主な用途:豆腐用凝固剤 いわゆる「にがり」のこと。食品衛生法では食品添加物を使った際は原則的に物質名を書くことになっているが、粗製海水塩化マグネシウムについては豆腐に使った時だけ「にがり」と表示してもよいことになっている。)
- カフェイン(主な用途:苦味料)
- 魚鱗箔(主な用途:着色料 タチウオ等の体表の光沢成分。仁丹などの銀色や菓子類の真珠光沢を表現するのに用いられる。)
- 金、銀(主な用途:着色料 金箔と銀箔のことだが、金は製造用剤としても使われる。)
- 骨灰(主な用途:製造用剤 なお、「骨灰色素」は着色料。)
- 油煙色素(主な用途:着色料 因みに、菜種油の油煙は書道用の墨の原料である。)
- 水素(主な用途:製造用剤)
- 生石灰(主な用途:製造用剤)
- 窒素(主な用途:製造用剤 食品の包装時に酸素を追い出すのに使用される。)
- 電気石(主な用途:製造用剤)
- 銅(主な用途:製造用剤)
- ナフサ(主な用途:製造用剤)
- 酸素(主な用途:製造用剤)
- 活性炭(主な用途:製造用剤 濾過剤や吸着剤に使用。)
- オゾン(主な用途:製造用剤 殺菌剤として使用。)
- コバルト(主な用途:製造用剤)
- 白金(主な用途:製造用剤)
- パラジウム(主な用途:製造用剤)
- ヘリウム(主な用途:製造用剤)
- 木材チップ(主な用途:製造用剤)
- 木灰(主な用途:製造用剤 アルカリ製剤として使用されると思われる。)
- 木炭(主な用途:製造用剤 濾過剤などに使用されると思われる。)